虫の夜     136句

虫の夜の洋酒が青く減つてゐる  伊丹三樹彦  読本・歳時記

  虫時雨  虫しぐれ  虫すだく  虫の声  虫の音

 虫の闇  虫の夜  虫売  昼の虫  残る虫

作品
作者
掲載誌
掲載年月
そば殻の枕が好きで虫の夜 鹿野佳子 199901
一ときの安らぎ虫の夜の更けて 松尾緑富 ホトトギス 199908
虫の夜の近き忌日でありしかな 稲畑汀子 ホトトギス 199909
ファックスの音消え虫の夜でありし 稲畑汀子 ホトトギス 199909
虫の夜やこころに襞のあることを 浅井勝子 199911
虫の夜や和紙の表裏を手で探り 柳生千枝子 火星 199912
虫の夜の灯をりんりんと鉄工所 木内憲子 199912
蟲の夜や戸を叩かれてゐる不安 柴田朱美 京鹿子 200001
虫の夜や父そっくりの兄の声 田中藤穂 水瓶座 200002
虫の夜の婆が手帳を開きけり 大山文子 火星 200011
虫の夜の野に二・三灯動きをり 保坂加津夫 いろり 200110
ごたごたのつづく日々なり虫の夜 保坂加津夫 いろり 200110
虫の夜や横顔美しき占ひ師 高村洋子 遠嶺 200112
そばに居るだけでよかりし虫の夜 花島玲子 風土 200201
青虫の夜に肥るらし誘眠剤 芝尚子 あを 200207
稿債に向ふ一人の虫の夜 稲畑汀子 ホトトギス 200209
虫の夜書に伏す肘のしびれけり 斉藤由美 ぐろっけ 200210
虫の夜の一会しみじみ般若湯 荒木英雄 対岸 200212
虫の夜のどこかで車庫の閉まる音 古川洋三 遠嶺 200212
蟠り解けし二人に虫の夜 小島左京 ホトトギス 200302
忌日過ぎそれより虫の夜を重ね 稲畑汀子 ホトトギス 200309
人に蹤き人を離れて虫の夜 稲畑汀子 ホトトギス 200309
今生の火星接近虫の夜 竹内悦子 200312
次の間も檜の匂ひ虫の夜 井口光雄 200312
積まれたる蛸壺虫の夜となれり 木下玉葉子 酸漿 200312
足もとへふとん掛け替ふ虫の夜 沖汐妙子 火星 200312
夫の座に夫ゐる虫の夜の長き 生方ふよう 200312
虫の夜や術後の手帳白きまま 諸星美智恵 200312
虫の夜を何か忘れてゐるやうな 生方ふよう 200401
菓子買ひに妻をいざなふ地虫の夜 水原秋櫻子 馬醉木 200404
蟲の夜の御櫃の箍の弛みかな 八田木枯 夜さり 200409
虫の夜や五右衛門風呂の記憶ふと 岡本眸 200410
海鳴りに馴れ虫の夜の岬宿 櫻井幹郎 百鳥 200411
半跏思惟の形をしてみる虫の夜 内藤ゑつ ゑつ 200411
子と遊ぶとんとん相撲虫の夜 山路紀子 風土 200412
虫の夜へ出でゆくをんな帯たたく 雨宮一路 200412
蟲の夜の六つ重ねし茶碗 佐藤喜孝 あを 200412
虫の夜看護日誌の涙文字 松本恒子 ぐろっけ 200412
二人ゐて思ひを異に虫の夜 木村仁美 馬醉木 200501
宥めつつ母の爪切る虫の夜 野口孝子 栴檀 200501
虫の夜となる熊笹に雨の跡 坪井洋子 200501
虫の夜へ刈り残し置く草の丈 鈴木栄子 酸漿 200511
虫の夜やペンを転がす青二才 伊藤希眸 京鹿子 200511
虫の夜や告知の言葉見つからず 足立みどり 栴檀 200602
半蔀の能始りぬ虫の夜 芝尚子 あを 200611
ひとつ家に灯を異にして虫の夜 横田初美 春燈 200612
補聴器を外して母の虫の夜 笹村政子 六甲 200612
虫の夜や来し方などを娘に話し 金田きみ子 200612
長病みて命ふかまる虫の夜 松崎牧子 200612
惑星の一つ減りたり虫の夜 舩越美喜 京鹿子 200701
虫の夜ひとり外へと出でにけり わかやぎすずめ 六花 200701
灯を点けず湯浴みしてをり虫の夜 水谷ひさ江 六花 200710
虫の夜半雨戸しづかにたてにけり 水谷ひさ江 六花 200710
虫の夜や陶土に粗布のかぶせある 蘭定かず子 火星 200711
虫の夜のオンザロックの瑠璃の音 七種年男 200711
虫の夜や人肌といふ熱きもの 七種年男 200711
波音のするまで歩く虫の夜 笹村政子 六花 200711
奈良太郎聞ゆる虫の夜の舞楽 萩谷幸子 雨月 200712
虫の夜の電光文字が文字追うて 西口鶴子 遠嶺 200801
虫の夜や人が動いてをりにけり 小林正史 200801
虫の夜の赤湯に漬かる湯掻棒 垣岡暎子 火星 200802
むなしさのまたも襲へる虫の夜々 杉本綾 200810
難聴の吾も包みて虫の夜 苑田ひろまさ 200901
虫の夜や聞きやるのみに子は足らひ 間宮あや子 馬醉木 200912
無気力に下着の干され虫の夜 関根誠子 炎環 200912
虫の夜や播くこころとり戻し 水田壽子 雨月 200912
飛車といひ王手と言ひて虫の夜 伊藤希眸 京鹿子 200912
一歌手の小さき訃報虫の夜 中村紘 ぐろっけ 200912
虫の夜の更けては綴る一行詩 船橋とし 200912
抱き上げて嬰の泣きやむ虫の夜 岡村尚子 火星 201001
返信に筆すすみけり虫の夜 高木千鶴子 酸漿 201001
強がりの姿勢くづるる虫の夜 小倉正穂 末黒野 201002
先づソロで始まる虫の夜さりかな 竹内悦子 201011
虫の夜を沢市木偶は目を伏せて 塩路隆子 201012
乾杯はノンアルコール虫の夜 高橋芳子 火星 201012
虫の夜を師の安らかに眠りをり 山田春生 万象 201012
虫の夜の追伸長しつまらなし 井上信子 201110
糸尻でナイフ研ぎゐる虫の夜半 山田六甲 六花 201110
虫の夜五人の孫に絵手紙を 山口美貴子 火星 201111
顔上げて妻のひとこと虫の夜 松嶋一洋 201112
卓はさみ妻と二人や虫の夜 松本三千夫 末黒野 201112
アセロラと言ふはむづかし虫の夜 井上信子 201112
夫に肩叩いてもらふ虫の夜 杉浦典子 火星 201112
虫の夜の左右に揺れつ皿沈む 荒井千佐代 201112
生中継の「宇宙の渚」虫の夜 清水佑実子 201112
置き時計文鎮にして虫の夜 ことり 六花 201112
虫の夜や言葉を選ぶ見舞文 大橋伊佐子 末黒野 201201
万の翅見えてきさうな虫の夜 後藤桂子 万象 201201
良き方に思ひは動く虫の夜 高倉和子 夜のプール 201203
釦付け糸のからまる虫の夜 井村和子 風花 201206
虫の夜にもどす熱気の画像消し 秋葉雅治 201211
虫の夜の箱に戻らぬ玩具かな 浅田光代 風土 201212
虫の夜のひとりを余し歯をみがく 山田美恵子 火星 201301
虫の夜の畳に沈む鉄亜鈴 蘭定かず子 火星 201301
虫の夜の北斗七星かぞへけり 石橋邦子 春燈 201311
虫の夜の話上手と聞き上手 原田しずえ 万象 201312
虫の夜のこむら返りを恐れをり 原田しずえ 万象 201312
止静中いつしか虫の夜となれり 瀧春一 花石榴 201312
虫の夜や映画に泣きし妻連れて 上野進 春燈 201411
虫の夜眠くなるまで辞書読んで 杉浦典子 火星 201412
虫の夜の避難袋にもの足せり 湯谷良 火星 201412
虫の夜や客衣でまじる友の葬 橋本榮治 馬醉木 201512
とりどりのこゑの身に添ふ虫の夜 安立公彦 春燈 201512
認知症の番組またも虫の夜 原田しずえ 万象 201512
虫の夜の音量上げて「未完成」 田中藤穂 あを 201512
めぐりくるものに忌日や虫の夜 鈴木庸子 風土 201512
虫の夜や道にこぼるる忌中の灯 斉藤マキ子 末黒野 201601
虫の夜と気づきてよりの詩心 稲畑汀子 ホトトギス 201609
地のほてり残りて虫の夜となりぬ 能美昌二郎 201611
父の手を握る別れや虫の夜 江見悦子 万象 201611
白髪の妻におどろく虫の夜 山田春生 万象 201612
色褪しモノクロ写真虫の夜 今村千年 末黒野 201612
虫の夜や長き手紙に知るこころ 清水節子 馬醉木 201701
めぐり来るものに忌日や虫の夜 鈴木庸子 風土 201701
虫の夜いよよ一人と思ひけり 高倉和子 201612
虫の夜年々若くなる遺影 岸洋子 201702
戦の愚語り継ぐべし虫の夜 高橋和女 風紋 201709
戦の愚語り継ぐべし虫の夜 高橋和女 風紋 201709
戸締りの早目に虫の夜を一人 稲畑汀子 ホトトギス 201709
虫の夜や水たつぷりと水仕妻 松本三千夫 末黒野 201711
虫の夜やそんな言葉は似合はぬと はしもと風里 201712
その一言の多きが仇に虫の夜 清水美子 春燈 201712
灯を消して濁世離れて虫の夜 及川照子 末黒野 201804
試し鳴きのごと始まりぬ虫の夜 新海英二 春燈 201911
ふるさとの話は尽きず虫の夜 清水節子 馬醉木 201911
バーボンをチェイサーにして虫の夜 谷口一献 六花 201912
復旧の灯またたく虫の夜 岡井マスミ 末黒野 202001
虫の夜を更かす家居を楽しみに 稲畑汀子 ホトトギス 202009
一行事済みてくつろぐ虫の夜 稲畑汀子 ホトトギス 202009
虫の夜の寝ねがてに来し福寿かな 善野行 六花 202012
添ひ寝して子に起こさるる虫の夜 えとう樹里 202104
虫の夜や句集幾度も読み返し 内田梢 末黒野 202104
虫の夜や祈るでもなく仏前に 農野憲一郎 春燈 202112
長雨の去るや何時しか虫の夜に 前原マチ 末黒野 202112
虫の夜の入れ替はりたる主旋律 六車佳奈 風土 202112
虫の夜の更けて届きぬ師の訃報 山田閏子 ホトトギス 202202

 

 

2022年9月20日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。