帰 燕    185句

ゆく雲にしばらくひそむ帰燕かな   飯田蛇笏   山廬集

つばくらめ  つばめ 燕の子

燕帰る  帰燕  秋燕  夏燕

作品
作者
掲載誌
掲載年月
樹海より湧きて帰燕となる三瓶 山田弘子 円虹 199812
さざ波の日向へ走る帰燕どき 前田陶代子 199901
泥染を紡ぎ終へける帰燕かな 延広禎一 199901
会場を出でて帰燕の空仰ぐ 稲畑汀子 ホトトギス 199910
光る海帰燕の空のととのへり 稲畑汀子 ホトトギス 199910
帰燕はや遠くなりたる風の音 岡本眸 199912
御用邸抜けて帰燕となりゆけり 藤井圀彦 200001
木片を引きゆく潮帰燕空 豊岡清子 遠嶺 200001
絹を着し身のひやひやと帰燕かな 高橋さえ子 200002
帰燕けふきのふと数を増しにけり 鷹羽狩行 200010
天空の風速に乗り帰燕せる 松本圭司 200011
日本海帰燕に碧を深めけり 佐々木ミツヱ 200011
筑波山帰燕の空の暮のこる 根岸善雄 馬醉木 200012
朝空に湧くごと帰燕集ひけり 福井久生 200012
点呼受くる如く帰燕の電線占む 福井久生 200012
沖に出て風乗り変へる帰燕かな 新開一哉 円虹 200102
少女期の画帖きばみし帰燕かな 石山正子 銀化 200109
いまにして太虚の広さ帰燕あと 宇都宮滴水 京鹿子 200110
帰燕羨し未練微塵もなきごとく 能村登四郎 羽化 200110
今年も友多く送りて帰燕かな 松崎鉄之介 200110
大利根へ声落しゆく帰燕かな 児島千枝 春耕 200110
どの窓も開け放たれて帰燕かな 岩月優美子 200111
観音の山をめぐりて帰燕かな 木室幸雄 百鳥 200111
川をもて東京劃す帰燕かな 岡本眸 200111
沖空に帰燕溶けゆく壇の浦 田辺博充 200112
誰もゐない砂浜帰燕はじまりぬ 大槻久美 円虹 200112
帰燕かな満天の紺深む中 深田雅敏 200201
ベランダに中七を干す帰燕かな 梶浦玲良子 六花 200202
帰燕しきり水洗ひして駅の階 高橋さえ子 200202
帰燕後の木曽へ流るる雲迅し 加瀬美代子 200202
一の矢につづく帰燕の矢継ぎばや 鷹羽狩行 200210
帰燕はや出羽山上に雲迅き 加瀬美代子 200211
水晶体澄むや帰燕のしきりなり 秋葉雅治 200211
海風が吹き上げそのままの帰燕 今瀬剛一 対岸 200212
高階へ海の風来て帰燕の日 鈴木照子 200212
身を包む紺の深さも歸燕以後 岡本眸 200212
突堤に波立ち上がる帰燕かな 小橋末吉 対岸 200212
見渡して白波たてる帰燕かな 瀬戸悠 風土 200301
仰ぎては帰燕励ます雨の波止 田中美智代 200302
青葦の彼方夕焼と帰燕群 田中芳夫 200310
帰燕かな空に波打つ雲のなり 林裕子 風土 200312
桟橋の揺れかすかなる帰燕かな 荒井千佐代 200312
切通し抜け一閃の帰燕かな 鈴掛穂 200312
高々とすでに帰燕のこころざし 野口みどり 酸漿 200401
昼過の甘きもの欲る帰燕かな 長沼三津夫 200401
帰燕ゆく病床のわれ置き去りに 冨岡夜詩彦 200411
山の池帰燕が天に数知れず 山田清香 酸漿 200411
潮の香や帰燕吸はるる空の青 福嶋千代子 200411
直線の上昇そのままの帰燕 今瀬剛一 対岸 200411
子を帰すやうに帰燕を見送りぬ 菅原末野 風土 200412
川波を擦つて帰燕になりにけり 島すが子 200412
天空に帰燕流るるごとくなり 泉田秋硯 200412
日を容れて雲たるみ出す帰燕かな 岡本眸 200412
磐梯へひとたび翔けし帰燕かな 小林和子 風土 200501
寝不足の指の痩れも帰燕以後 高橋さえ子 200502
しんがりの帰燕よ急げ日本晴 泉田秋硯 黄色い風 200505
ひやひやと槇立ち揃ふ歸燕かな 岡本眸 200511
帰燕見て回想圏となる野原 小澤克己 遠嶺 200511
湖沼いま帰燕支度に快晴す 小澤克己 遠嶺 200511
電線に翅休むるは帰燕かも 西教文江 築港 200511
みな同じ海見るベンチ帰燕はや 長井順子 200512
何となく空見上ぐるも帰燕以後 上林孝子 200512
帰燕には似合ふ日和と仰ぎけり 新田巣鳩 馬醉木 200512
帰燕はや日照雨を波の飛沫とも 長沼三津夫 200512
通院もいつしか帰燕の空の下 石川等 200512
老犬の仰ぎ見ている帰燕かな 菅原健一 200512
帰燕いまきらめく波の秀を越えて 沼口蓬風 河鹿 200601
月山の霧へつつこむ帰燕かな 須永トシ 栴檀 200601
大山寺帰燕の空となりにけり 桑田青虎 ホトトギス 200601
夕ごころ仰げば遥か帰燕かな 宇根綾子 二輪草 200606
身辺の澄みおのづから歸燕以後 岡本眸 200609
帰燕の巣梁にそのまゝがらんどう 滝沢伊代次 万象 200610
一本の川引締むる帰燕かな 浜福恵 風土 200611
帰燕はや筑波山頂岩ばかり 加瀬美代子 200611
地平まで帰燕の空の昨日今日 豊田都峰 京鹿子 200611
また会はむ帰燕の群を眼で送り 石田玲子 200612
嬉々と舞ふ帰燕第一陣なりし 泉田秋硯 200612
夕映の嶺の遠退く帰燕かな 高橋さえ子 200702
ちちははの墓山越えて帰燕かな 宇野慂子 万象句集 200703
巣の周り幾度も飛び帰燕かな 滝沢伊代次 万象句集 200703
サーカスの一族郎党帰燕かな 鈴木勢津子 200711
帰燕けふ殉教の島隠すほど 鷹羽狩行 200711
帰燕はや日照雨のままに夕映えて 長沼三津夫 200711
兵の遺族帰燕に託す思ひあり 南光翠峰 馬醉木 200711
帰燕仰ぐ横長高低一眷族<2023年5月10日 /td> 200712
三番瀬光り帰燕の空ありぬ 三橋泥太 遠嶺 200712
斯くまでに多弁な帰燕第二陣 泉田秋硯 200712
電線に帰燕ずらりと同電位 泉田秋硯 200712
出羽陸中一望にせる帰燕かな 諸岡孝子 春燈 200801
率ゐるはモーゼか帰燕ひたすらに 千田百里 200801
病む父ゆ命名とどく帰燕の日 能村研三 200805
ひるがへりやがて帰燕の群となる 稲畑汀子 ホトトギス 200809
天守閣帰燕の空を低くせり 安原葉 ホトトギス 200812
八九羽の帰燕の空とふと気づく 浅井青陽子 ホトトギス 200812
暁の吹上の浜帰燕かな 緒方輝 炎環 200901
草々の深閑として帰燕かな 松原仲子 200901
良き風を帰燕に知らす風速計 松本圭司 200901
うしとらへ大河かがやく帰燕かな 梶浦玲良子 六花 200902
いつまでも帰燕の空をみつめをり 植田利一 春燈 200910
空蒼く海碧き日の帰燕かな 熊谷尚 200911
中天に群れて飛び交ふ帰燕百 渡辺安酔 200911
帰燕群円周率のごと果てず 泉田秋硯 200912
地には湖空に帰燕の詩満ちぬ 小澤克己 遠嶺 200912
屋根石の雨に濡れゐる帰燕かな 根橋宏次 やぶれ傘 201001
傾ぐ日を追ひて帰燕の夥し 羽田岳水 馬醉木 201001
草むらに跳ぶものあまた帰燕あと 笠井敦子 201001
船溜り帰燕だまりとなりにけり 鷹羽狩行 201009
帰燕けふあすあさつてとつづくらし 鷹羽狩行 201010
たまゆらの帰燕のみ空澄雄逝く 安立公彦 春燈 201011
帰燕いま天つ光となりゆけり 益本三知子 馬醉木 201011
切株がひとつ帰燕の空の下 浜福惠 風土 201012
帯状の帰燕や活火山迂回 泉田秋硯 201012
朝明けや帰燕の一つづつ見ゆる 清海信子 末黒野 201101
富士よりも高く集ひて帰燕かな 山口まつを 雨月 201101
剥製の雉子に紅刷く帰燕かな 梶浦玲良子 六花 201102
鉄路越え帰燕の空となりゆける 稲畑廣太郎 ホトトギス 201109
旅人に帰燕の空の高かりし 安立公彦 春燈 201111
日に抱かれ風に抱かれ帰燕かな 和田一 雨月 201112
旅空の帰燕を案ず空模様 西川みほ 末黒野 201201
野の墓に風さわがしき帰燕かな 松橋利雄 光陰 201203
一点の疵なき空の帰燕かな 神田恵琳 春燈 201210
辻直美逝く高々と洲の帰燕 井原美鳥 201211
帰燕かな空に自由があるかぎり 浅野吉弘 201211
全クラス授業中なる帰燕かな 太田佳代子 春燈 201212
万葉のこころの翳へ帰燕かな 渡邊泰子 春燈 201212
大灘の紺の定まる帰燕以後 松井志津子 201212
出立の力漲る帰燕かな 東良子 201212
赤道をめざし帰燕の小さくなる 石田野武男 万象 201212
青々と帰燕の空のあるばかり 柴田志津子 201212
帰燕いま加茂の流れに触れゐたり 本多俊子 201301
おのづから帰燕の空となりにけり 根橋宏次 やぶれ傘 201301
濁流に折々ふれてゆく帰燕 根橋宏次 やぶれ傘 201311
丹念に揚舟洗ふ帰燕かな 松井志津子 201312
帰燕後の安房の山稜一歩寄す 田中貞雄 ろんど 201312
ふり返る帰燕の空の高さかな 西岡啓子 春燈 201312
腰越に帰燕の自由有りにけり 密門令子 雨月 201401
発掘調査の空高く舞ふ帰燕かな 石垣幸子 雨月 201411
帰燕日々黒で固めし男の婚 堀内一郎 堀内一郎集 201412
ストリートジャズで見送る帰燕かな 石橋公代 春燈 201501
帰燕の空五重塔の空となり 安藤久美子 やぶれ傘 201502
片減りの靴の気になる帰燕かな 土谷倫 船団 201505
人里のこゑを遠見に帰燕かな 卜部黎子 春燈 201511
軒下も帰燕の空となりにけり 柴田佐知子 201511
酒蔵の片屋根くらき帰燕かな 笹村礼子 六花 201512
帰燕後の抜けたる空の大欅 生田恵美子 風土 201512
帰燕もう宇宙の塵にまぎれけり 原友子 201601
いくたびも地を掠めゆく帰燕かな 古川夏子 201602
校庭を過る帰燕や空の紺 石本百合子 馬酔木 201611
大いなる帰燕の翼翻す 浜福惠 風土 201611
昼灯台帰燕の空の遙かなり 浜福惠 風土 201611
空に充つる帰燕の声の賑やかな 田中藤穂 あを 201611
天おほふ帰燕の今し海上へ 田中藤穂 あを 201611
無事ゆけと帰燕見送り砂の浜 田中藤穂 あを 201611
塔頭に影をふやして帰燕かな コ井節子 馬醉木 201612
山と畑かすめ帰燕となりにけり 森和子 万象 201612
大阿蘇の帰燕の空に火山灰混じる 山本則男 201701
岬山の一樹帰燕のよりどころ 池谷鹿次 末黒野 201704
風紋の音なく流る帰燕かな 高橋和女 風紋 201709
帰燕仰いで立ち番の巡査かな 定梶じょう あを 201711
磯桶を小屋に干しある帰燕かな 下山田美江 風土 201711
鉄骨の駅舎残して帰燕かな 沼崎千枝 末黒野 201712
くるくると川灯台を帰燕かな 上岡佳子 万象 201801
近づきて去りし一会の一帰燕 松尾龍之介 201803
凪を待つ送電線の帰燕かな 鈴木鳳来 春燈 201811
常念岳の裾まで晴るる帰燕かな 徳井節子 馬醉木 201811
ひとしきり蔵町めぐる帰燕かな 西村潭 201811
整列に少し間のある帰燕かな 山田正子 201904
空に入る佐渡の生まれの帰燕かな 山田六甲 六花 201912
愛着も執着も断つ帰燕かな 仲里貞義 201912
渦潮の真上帰燕の空広げ 能美昌二郎 201912
葦原の風入れ替はる帰燕かな 佐々木みどり 馬醉木 201912
丹沢の稜線しるき帰燕かな 赤石梨花 風土 201912
海峡を一直線の帰燕かな 加瀬伸子 末黒野 202001
もう誰も見えぬ高さの帰燕かな 山本則男 202005
目の前を帰燕のつばさ峪深し 山田六甲 六花 202010
空高く帰燕を試す一家かな 七郎衛門吉保 あを 202010
あかね雲帰燕見送りさらに濃し 高木嘉久 202011
渦潮の真上帰燕の空広げ 能美昌二郎 201911
愛着も執着も断つ帰燕かな 仲里貞義 201911
葛飾の帰燕の空を行きませり 栗坪和子 202012
高々と大き円描く帰燕かな 矢野美沙子 202012
翔つ風を待つや帰燕の横並び 甲州千草 202101
水積んで出る船帰燕高かりき 深川淑枝 202102
晴れ上り風静かなる帰燕かな 宮崎浩美 末黒野 202103
青空に仰ぐ帰燕よ安かれと 安立公彦 春燈 202111

 

2022年8月27日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。