惜 春 1   203句

生涯にわたり惜春の如きもの    和田魚里

暮春  晩春  春惜しむ  暮の春  惜春  春暮るる・春の果

作品
作者
掲載誌
掲載年月
師弟像秘め惜春の白障子
小澤克己
遠嶺
199807
惜春や足組みなほすカフエテラス
松田曼莉
京鹿子
199809
惜春のはるかな声の返り来る
稲畑汀子
ホトトギス
199904
惜春の虹を立たせて夕べ来し
稲畑汀子
ホトトギス
199904

 「千鳥」五百号記念大会

惜春の線路繋ぎて祝の座へ

稲畑廣太郎
ホトトギス
199904

 悼 川上訓子様

惜春の心を重ね悼みけり

稲畑汀子
ホトトギス
199905
惜春や前ばかり見て人波は
保坂加津夫
いろり
199906
惜春の連山の脈(なみ)やさしかり
安井明子
199907
惜春の人や水辺に目を落とし
金國久子
遠嶺
199907
惜春や水辺の鳥の名を知りぬ
穴澤光江
花菜風
199907
惜春や月のかけたる厨窓
水田清子
199907
つまは深雪の吾は惜春のひとり旅
本橋怜加
冬牡丹
200003
惜春や佐保川にちひさき渦生まれ
辻井桂子
俳句通信
200006
惜春の諸仏平安鎌倉と
大橋宵火
雨月
200007
惜春や入院の荷に一句集
立石萌木
雨月
200007
惜春や土産の櫛のほろり欠け
木内美保子
六花
200007
惜春の雨の中なる舟着場
伊田和風
円虹
200008
惜春や鳩の羽裏へ夕日濃く
坪井洋子
200008
惜春や紙飛行機の置手紙
三神あすか
船団
200011
惜春の寺より城祉めぐりけり
柴田久子
風土
200107
惜春の杖を返しぬ如意輪寺
山田弘子
円虹
200107
惜春の炉辺に一人の時間かな
栗林眞知子
円虹
200107
惜春の猪口を湯呑に替へにけり
亀田愚風
銀化
200107
惜春や暮れなづみゐて竹の奥
村上瑪論
銀化
200107
惜春の農夫に旅はなかりけり
降矢郊二
百鳥
200108
惜春や詩人愛せしマンドリン
川端和子
星月夜
200112
惜春の雨音消して森深し
稲畑汀子
ホトトギス
200204
惜春の心砕きて風の苑
稲畑汀子
ホトトギス
200204
惜春や旅共にせし人と会ふ
稲畑汀子
ホトトギス
200204
黒猫に惜春我も歩を返す
後藤志づ
あを
200206
惜春の旅終へ無我に衣を解けり
西岡残照
京鹿子
200207
惜春やはらからと背を流し合ひ
山路紀子
風土
200207
惜春や火の見と並ぶ開墾碑
中谷葉留
風土
200207
惜春や性懲りもなく日の昇る
亀田憲壱
銀化
200207
惜春の思ひそれぞれ吉野の夜
武井良平
ホトトギス
200209
惜春の鳥語明るし吾山句碑
小島とよ子
遠嶺
200209
惜春の渚に星とあそびたり
邑橋淑子
遠嶺
200209

 祝・岩田育左右句集『蘂』

惜春やもののふ貌の巨木あり

小澤克己
遠嶺
200210
咲き替る庭惜春の人集ふ
稲畑汀子
ホトトギス
200304
惜春の心の隅に置く多忙
稲畑汀子
ホトトギス
200305
惜春の椀に透けゆく吉野葛
樋口英子
200305
惜春や一石投ず池の渦
鈴鹿仁
京鹿子
200305
惜春の灯台星の満つるまで
祐森彌香
遠嶺
200306
惜春といふ雛僧のくるぶしに
小野寺節子
風土
200306
惜春の一水に歩を合せゆく
清水節子
馬醉木
200307
惜春のサブレの鳩も歌わんか
坂井法
200307
惜春や芭蕉一茶にかかはりて
雲所誠子
帆船
200307
惜春やゆつくり崩す鯛のかま
大島翠木
200307
白き衿立て惜春の森にあり
堀本祐子
遠嶺
200308
妻逝きてより惜春のひとり旅
葛馬房夫
雨月
200309
惜春の虚子の世遠く偲ばるる
安原葉
ホトトギス
200311
人偲ぶ惜春の情もち寄りて
安原葉
ホトトギス
200311
惜春や裸一貫手術台
竹内方乃
ぐろっけ
200312
惜春の旅は吉野といふ慣ひ
稲畑廣太郎
ホトトギス
200404
惜春やルーペのついたミニマツプ
安部知子
帆船
200407
惜春の旅にしくなきドラの音
三由規童
雨月
200407
「イエスタデー」聞く惜春の旅茶房
山中宏子
200407
惜春の一樹一樹に詩霊満つ
小澤克己
遠嶺
200407
惜春やこけしの貌(かほ)の薄眉根
淵脇護
河鹿
200407
惜春の椅子になりたる石ひとつ
松井のぶ
200407
惜春の湯呑の茶渋洗ひをり
岡村葉子
栴檀
200408
惜春の一語もて足る心いま
三村純也
ホトトギス
200409
惜春や卓に貝殻砂こぼす
鳴海清美
六花
200409
惜春の無口となりし丹波壺
中川美代子
ぐろっけ
200409
ビルの影にも惜春のありにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
200504
再会の句碑惜春の鈍色に
稲畑廣太郎
ホトトギス
200504
惜春や波止に汽笛を聞けばなほ
稲畑廣太郎
ホトトギス
200504
刻々の惜春の情抱く寡黙
稲畑汀子
ホトトギス
200504
惜春や煮こぼすガス火立ち上がる
淵脇護
河鹿
200507
惜春やくつくつ佃煮炊いてをり
二階堂妙子
河鹿
200507
惜春や栄本町香炉択る
森津三郎
京鹿子
200508
惜春の己が道行くわが歩み
北川孝子
京鹿子
200508
惜春や歌舞伎看板見すごすのみ
加地芳女
雨月
200508
降り出でて惜春の情深むかな
園多佳女
雨月
200508
惜春の虚しく鋤田ばかりなる
瀧春一
菜園
200509
惜春の心伊賀路へ向かひけり
稲畑汀子
ホトトギス
200604
調弦を了へ惜春の大ホール
能村研三
200605
惜春や丹の廣蓋に酒も冷ゆ
瀧春一
常念
200606
惜春やレールを伝ふ汽車の音
松田有伽
河鹿
200606
惜春やひそかに老いの未来形
前田陽子
200607
惜春や妻伴へば砂丘冷ゆ
淵脇護
河鹿
200607
惜春や肋木の影地に伸びて
淵脇護
河鹿
200607
庭湖石惜春の日を寄せたたむ
豊田都峰
京鹿子
200607
惜春のトランペットや膝を抱く
飛鳥由紀
200607
惜春の野に出づ座禅組まんとす
小澤克己
遠嶺
200607
惜春や杖もて探る松ぼくり
村越化石
200607
惜春や今は用なき恋みくじ
平島利男
酸漿
200607
ものを煮て惜春の刻たしかにす
戸村よねこ
遠嶺
200608
西方へ向く惜春の犀の角
岩月優美子
200608
惜春や鯉からまつて池にごる
秋千晴
200608
惜春の止まることなき輪転機
松田都青
京鹿子
200608
惜春の胸を離るる一句かな
細江久美子
春燈
200609
惜春の情落ちこめる火口かな
竹下陶子
ホトトギス
200611
惜春や尼僧は足音持たず行く
白井友梨
馬醉木
200705
惜春と書く極太のモンブラン
伊藤白潮
200705
惜春や老の生きざま車椅子
安達加寿子
200706
病室に在り惜春の情濃ゆし
大橋敦子
雨月
200706
惜春の旅やをみなの箸づかひ
遠藤和彦
遠嶺
200707
誰待つとなく惜春の茶房かな
川崎良平
雨月
200707
もう履けぬ吾が惜春のハイヒール
隅田享子
200708
夢二生家訪ひ惜春を深めたり
仙石君子
雨月
200708
惜春の堆朱の筒や供花叶ふ
渕上千津
200806
惜春や小さき切符の植物園
林昭太郎
200806
雨になだれて惜春の石畳
野路斉子
200806
立ち止り惜春の音聞きにけり
岩月優美子
200807
惜春や食器がちやがちや洗ひをり
淡路久仁子
春燈
200807
惜春や杜のにほひの句碑ほとり
千田百里
200807
惜春の回送列車ゆつくりと
安田久太朗
遠嶺
200808
惜春や文がら吸ひ込むシュレッダー
三谷道子
万象
200808
惜春の旅はかりごと密にして
稲畑汀子
ホトトギス
200904
惜春の何処かは言はず坐り込む
泉田秋硯
200907
惜春や鉄腕アトムなら描ける
齋藤朝比古
炎環
200907
惜春や古地図に塩の六浦津むつらのつ
下山田美江
風土
200907
惜春のブレーキを踏む九十九折
七種年男
200907
惜春や汐さび著き真砂女句碑
岩永はるみ
春燈
200907
惜春や本の余白の覚書
矢口笑子
春燈
200907
惜春や月をかかげし浮御堂
宇田喜美栄
200907
皇子眠る山惜春の歩を返す
小澤淳子
200907
惜春の窓に日影の移りけり
東芳子
酸漿
200907
惜春の白砂踏みゆく浦曲かな
小山徳夫
遠嶺
200908
惜春や蛤塚の片身照り
千田百里
201006
房総惜春なめろう食べて貝ひらふ
益田寿美子
春燈
201006
惜春のゆつくり閉ぢる絵具箱
成宮紀代子
201007
惜春は口には出さず句に残す
浜田南風
201007
惜春の脳天を打つ滝の音
和田崎増美
雨月
201007
惜春のこころに訪ひし水亭に
浅井青陽子
ホトトギス
201008
惜春の富士の裾野のさくら棒
中島陽華
201008
惜春や海へ向く窓開け放ち
岩崎慶子
201008
惜春や等伯の画に佇ちつくし
井口淳子
201008
一塔を落つ惜春の雨雫
古賀しぐれ
ホトトギス
201009
月に添ふ星惜春の泪めく
峰尾秀之
201009
惜春の庭にかそけし宵の風
井上浩一郎
ホトトギス
201010
惜春や庭師の怪我もほぼ治り
稲畑汀子
ホトトギス
201105
追悼文書き惜春の思ひ切
稲畑汀子
ホトトギス
201105
皆胸に抱く惜春の情として
稲畑汀子
ホトトギス
201105
惜春の想ひ重なりゆく無情
稲畑汀子
ホトトギス
201105
惜春や水面の顔の他人めく
黒澤登美枝
201107
惜春や禿びたる4Bまた削り
丹生をだまき
京鹿子
201107
惜春や海馬の位置をたしかむる
谷岡尚美
201107
惜春や山襞白き伊吹山
加藤静江
末黒野
201108
惜春や影をひきずる夕鴉
熊切光子
末黒野
201108
惜春や爪先に置く花の色
山田佳乃
ホトトギス
201109
惜春の瓦礫の中に探す物
赤川誓城
ホトトギス
201110
水辺ゆくとき惜春の人となる
岩岡中正
ホトトギス
201110

 悼 下村與三郎君

惜春や死亡広告切り抜きて

野沢しの武
風土
201110
惜春や海の香残る髪ほどく
岩永はるみ
白雨
201203
快晴といふ惜春の会となる 稲畑汀子 ホトトギス 201205
惜春や碇としたる父と母 佐藤喜孝 あを 201205
惜春や向き合ひ朝の卵割る 大森道生 春燈 201206
甘樫の丘惜春の貌・顔・かほ 千田百里 201206
惜春や雨のち晴れの旅果つる 柴田久子 風土 201207
惜春の歩幅学生街の午後 稲畑廣太郎 ホトトギス 201304
惜春の雨音加ふ過疎の郷 小山繁子 春燈 201307
惜春の人が大吊橋の上 岩岡中正 ホトトギス 201310
惜春の口中にあり貝の砂 千田百里 201406
惜春や無傷の空のひろがりに 北川孝子 京鹿子 201407
惜春や川越夜舟着きし河岸 柴崎富子 春燈 201407
惜春や生き来し八十路うべなひつ 武藤嘉子 201407
惜春や幾人送る俳句の師 鈴木良戈 201407
惜春の風を通して四つ目垣 菊地光子 201407
惜春の沖より波紋ふたみすぢ 豊田都峰 京鹿子 201407
いのちまんまる惜春の大入日 遠藤真砂明 201407
自画像の惜春の瞳や無言館 山下健治 春燈 201407
惜春や無縁めきたるクルス墓碑 嵐弥生 末黒野 201408
惜春の心繙く師の句集 足立典子 雨月 201408
惜春の味とは元祖カレーパン 稲畑廣太郎 ホトトギス 201505
惜春の錠前固し子規の蔵 宮内とし子 201506
惜春やみ幸野わたる軽便車 和田照海 京鹿子 201507
惜春や小町通りの人の中 岸上道也 京鹿子 201507
惜春やぐらり揺らして舟に乗る 福永幸子 末黒野 201507
鍵盤に触れ惜春の指となる 山本ひろ 雨月 201507
惜春の正座で射貫く四半的 田代民子 201508
惜春のいつ失ひし備忘録 木下夕爾 春燈 201508
惜春や広げて朱鷺の風切羽 山口ひろよ 201508
惜春の旅戻りなるその人と 今井千鶴子 ホトトギス 201509
惜春の風吹いてゐる水の上 岩岡中正 ホトトギス 201510
惜春の人とはみよし野に集ふ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201604
惜春の情自ら琵琶湖畔 稲畑汀子 ホトトギス 201705
惜春の虚子の曽遊地琵琶湖畔 稲畑汀子 ホトトギス 201705
惜春のフランスパンはかき抱く 松井志津子 201706
ひらがなのにあふなのはな惜春忌 町山公孝 201706
惜春の青春十八切符買ふ 荻布貢 201706
惜春の心に寺町そぞろ歩す 金森信子 雨月 201707
惜春の眼が追つてゆく鳥の声 湖東紀子 ホトトギス 201709
うしろより惜春の風吹いてゐる 岩岡中正 ホトトギス 201710
惜春の旅絶景のみよし野へ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201804
惜春のヴィオロンあすへ旅立つ娘 塩貝朱千 京鹿子 201806
惜春の掌にやはらかき野面積 町山公孝 201806
惜春や右耳に聞く踏切音 井尻妙子 京鹿子 201808
惜春や心の扉閉めしまま 杉井真由美 京鹿子 201808
惜春や日に三回のスクワット 増谷とし子 京鹿子 201808
み吉野の惜春の庭あるがまま 今橋眞理子 ホトトギス 201809
惜春の宴映して雨の窓 今橋眞理子 ホトトギス 201809
惜春や細き枝もて貝つつく 服部早苗 201809
惜春 →2      

 

2021年5月4日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。