冴返る 3     189句

鯉跳ねて躍れる籠や冴返る    朴魯植

料峭 春寒 凍返る・凍戻る 寒戻る 冴返る 余寒

作品
作者
掲載誌
掲載年月
私心なきほど冴返る真夜の耳
菅原健一
200307
日常の景が一語に冴返る
小林朱夏
200307
天覧の炭窯爛れ冴えかへる
伊藤廸代
ぐろっけ
200308
胡蝶蘭愛でる一日の冴返る
増田八重
酸漿
200311
煉瓦橋明治いろして冴え返る
鈴鹿仁
京鹿子
200402
梵鐘の冴返りたり壇の浦
前田美恵子
200403
冴返る羅漢力んでおはします
岸田雨童
草の花
200403
手の大き千体仏よ冴返る
岸田雨童
草の花
200403
冴返る兄弟は皆病気持つ
岸田雨童
草の花
200403
雨音のやがて波音冴返る
高橋ちよ
200404
恐竜の骨格白し冴え返る
清原彰子
河鹿
200404
冴返る男ごころのうら表
鈴鹿仁
京鹿子
200404
冴返る葉巻の灰の縞模様
宮津昭彦
200404
石垣に石一つづつ冴返る
村越化石
200404
六甲を背負ふ洋館冴返る
平居澪子
六花
200404
冴返るつんぼになりし仏かな
神蔵器
風土
200404
兼定の二尺三寸冴返る
神蔵器
風土
200404
冴返るかすかに蜷の動きしか
田中佐知子
風土
200404
暮れてより氏神移転冴返る
小林絹子
帆船
200404
冴返る甲冑背筋あるごとし
斉藤道子
対岸
200404
手を振りて作る笑まひや冴え返る
中田みなみ
200404
冴返る雲の形相見てゐたり
塩川雄三
築港
200404
冴返る頭の無きほとけ数多見て
前田陶代子
200404
あの時のこの一曲の冴返る
高橋将夫
200405
冴返る五百羅漢の葛折り
岩月優美子
200405
冴え返る日比谷界隈今昔図
齋藤和江
帆船
200405
階段におとす鍵束冴返る
梅村達子
帆船
200405
冴え返る納屋に道具の整然と
秋田谷明美
帆船
200405
地獄草紙絵巻の赤に冴返る
服部満
草の花
200405
冴返るこころは鬼の棲むところ
村井美意子
草の花
200405
冴返る杭あらはれて小名木川
佐々木咲
草の花
200405
漉桁をゆする水音冴返る
北村和子
草の花
200405
冴返る足裏に御所の廻り廊
矢野節子
草の花
200405
とんぼりの灯の煌煌と冴返る
三島富久恵
草の花
200405
五体打つ僧の蒼白冴返る
萩谷幸子
雨月
200405
意に染まぬ陶割る音や冴返る
河野高明
雲の峰
200405
牛丼の消えし食堂冴返る
河野高明
雲の峰
200405
冴返る書架に古びし罪と罰
田下宮子
200405
日は梢に公園通り冴返る
高梨美佐子
遠嶺
200405
白骨樹抜きん出し山冴返る
高橋瑛子
河鹿
200405
冴え返る足裏に陶の缺けを踏み
大磯幸子
河鹿
200405
冴え返る暁の厨に菜を刻む
上薗シヅ子
河鹿
200405
産土の雁皮紙守りて冴返る
高松由利子
火星
200405
会心の一撃の声冴返る
平野きらら
百鳥
200405
面影てふ銘の小刀冴返る
鍬形幸子
百鳥
200405
アーケード抜けてネオンの冴返る
若林杜紀子
百鳥
200405
冴返る沢庵禅師流刑の地
石川英利
百鳥
200405
晩年の晶子の歌集冴返る
川井政子
風土
200405
読みさしの雑誌閉づれば冴返る
保田英太郎
風土
200405
冴返る逃ぐる日差しを追ひかけて
岡村容子
築港
200405
冴返るご紋散らしの陣羽織
木村仁美
馬醉木
200405
虐殺の鶏の怨念冴返る
有田蟻太
200406
冴返る勧誘されし癌保険
小林正史
200406
夫の名刺の社長の文字や冴返る
飛鳥由紀
200406
幽明をつなぐ一笛冴返る
長谷川祥子
馬醉木
200406
冴返る葬送曲は二楽章
史あかり
ぐろっけ
200406
威風堂々甲斐連山や冴返る
小池津や子
帆船
200501
弟の亡き部屋空し冴返る
松尾緑富
ホトトギス
200501
冴返り耳底に脈の搏つ夜かな
三由規童
雨月
200501
冴返り海底火山ふるへやまず
竹内弘子
あを
200502
一匹の鯉の死に冴返るかな
山田六甲
六花
200503
山湖には当らぬ予報冴返る
稲畑汀子
ホトトギス
200503
冴返る男ひとりの音立てて
鈴鹿仁
京鹿子
200503
冴返るこれやこの山京を守る
鈴鹿仁
京鹿子
200503
玻璃ぬちの出土の壼の冴返る
岡崎和子
200503
軍靴軍服展示の館冴返る
桜井菜緒
200504
冴返る船溜りには船を見ず
塩川雄三
築港
200504
冴返る峡間の里に星零る
谷口秋翠
築港
200504
表具師とある奈良格子冴返る
田村七三栄
築港
200504
雑木山針山のごと冴返る
西野通代子
築港
200504
冴返る役行者の堂に座し
中御門あや
雲の峰
200504
冴返る宮や狛犬みじろがず
大木千鶴子
雲の峰
200504
冴返る椀に卵を解きをれば
高野美佐子
雲の峰
200504
冴返る琅いよよ際やかに
橋本恭二
雲の峰
200504
掌にのるチョコレート冴返る
石毛恵美子
対岸
200504
雲ひとつうすひかりして冴えかへる
豊田都峰
京鹿子
200504
冴えかへる城郭多面に切りたてて
豊田都峰
京鹿子
200504
正夢の夢入れ替はり冴返る
神蔵器
風土
200504
長い長いエスカレーター冴返る
木村茂登子
あを
200504
赤か面の憎体口や冴返る
岩井泉樹
春燈
200505
立ち上がる熊の剥製冴返る
藤田満枝
万象
200505
梢みな槍のやうなり冴返る
渡辺民親
遠嶺
200505
しつけ糸抜きたる指の冴返る
丹羽啓子
馬醉木
200505
冴返る吾が身動きに土星の環
近藤喜子
200505
山襞のかげりを深く冴えかへる
荻野みゆき
対岸
200505
自画像の顔冴え返る無言館
高橋邦夫
風土
200505
冴返る黒の社殿の鳥衾
内藤静
風土
200505
黒雲をまとふ遠嶺や冴返る
荒嶋かがみ
河鹿
200505
狂ひ鳴る柱時計や冴返る
荒嶋かがみ
河鹿
200505
夕空を急ぐ鳥かげ冴返る
荒嶋かがみ
河鹿
200505
冴返る熔岩むき出しの桜島
荒嶋かがみ
河鹿
200505
生々しき猫のむくろや冴返る
荒嶋かがみ
河鹿
200505
冴返る耐へねばならぬ時は耐へ
尾堂Y
河鹿
200505
をちを見てゐる横顔の冴え返る
高橋将夫
星の渦
200505
冴え返る萎縮海馬の失語症
境良一
京鹿子
200505
葬列にセーラー服や冴返る
渡邊春生
百鳥
200505
合戦の跡に寄せ墓冴返る
加藤夕陽子
百鳥
200505
冴返り外出の足の鈍くなる
二村蘭秋
雨月
200505
冴返る画架に遣りし未完の絵
堀井英子
雨月
200505
からたちの棘のみどりも冴返る
野口みどり
酸漿
200505
蝉丸の面に穴なく冴返る
細川知子
ぐろっけ
200505
冴返る熱血の師の逝かれけり
武田美雪
六花
200505
冴返る夜やペン先の翳走り
岡本眸
200505
石庭の砂利の流れも冴返る
佐東志乃
200505
冴え返る遺品の中の手擦れ辞書
原田竜子
河鹿
200506
一笛に冴返りゆく月の道
三崎由紀子
遠嶺
200506
冴返る薬種問屋の通し土間
奥田弦鬼
風土
200506
老僧とすれ違ふ坂冴返る
岩田都女
風土
200506
冴返る庭に餌を待つ雀あり
石井邦子
酸漿
200506
石落し塞ぎたる城冴返る
鳴海清美
六花
200506
北斗の柄うす雲かかり冴返る
二瓶洋子
六花
200506
冴返る脱衣に派手な静電気
二瓶洋子
六花
200506
塗り替へし遊具の赤は冴返る
森津三郎
京鹿子
200506
中筋は風の中筋冴返る
森津三郎
京鹿子
200506
冴返る辛夷は樹相整へつ
岡本眸
200506
深々と大樹の亀裂冴返る
佐東志乃
200506
冴返る梅花ひたすらふくらみて
中川みよ子
200506
写し絵に偲ぶばかりや冴返る
桑田青虎
ホトトギス
200507
冴え返るレッスン室の楽器たち
内山芳子
ぐろっけ
200507
刀研ぐ匠の眼冴返る
石川賢吾
200507
口尖るより冴返る話など
稲畑廣太郎
ホトトギス
200508
少年の目の冴え返る割礼日
霧野萬地郎
200508
冴返る大志を刻む床柱
中嶋陽子
風土
200508
白波に通ひみちあり冴返る
鹿野佳子
200508
冴えかへる沓十一足の大交響
横井博行
万象
200510
冴返る石にはせをの筆の跡
宮澤さくら
今生
200510
冴返る焼かれてもなほ竹の性
高橋あゆみ
200510
冴え返るスタツカートのハイヒール
松田有伽
河鹿
200602
冴返る聖堂クレド和してをり
稲畑廣太郎
ホトトギス
200602
確かめし消息なりし冴返る
稲畑汀子
ホトトギス
200602
雨止みて夕べとなりぬ冴返る
稲畑汀子
ホトトギス
200602
古書店に手が出ぬ一書冴返る
島谷征良
風土
200602
冴返る桜の樹皮に日の当たり
山田六甲
六花
200603
竹林の奥まで見えて冴え返る
中田みなみ
200603
ばん打つて法然院の冴返る
神蔵器
風土
200604
冴返るルネ・ラリツクの砂時計
神蔵器
風土
200604
添乗して行く救急車冴返る
廣瀬義一
雨月
200604
冴返り山肌馳する雲の翳
大畠政子
雨月
200604
筆となるむささびの尾や冴返る
乗光雅子
雨月
200604
遠目にも冴え返りをる椿かな
山田六甲
六花
200604
捨てられし駄菓子紙屑冴返る
長崎桂子
あを
200604
命拾ふ大空襲や冴返る
沼口蓬風
河鹿
200605
鍵をさす音冴返る独りの夜
芝生南天
河鹿
200605
冴返る浜の漢の無精髭
松永弥三郎
河鹿
200605
不合格の京都検定冴返る
武田あつみ
200605
冴返る耳のかたちの管楽器
山田三江子
200605
消しゴムに揺るる机や冴返る
徳丸峻一
風土
200605
土肥一族の墓五十基や冴返る
島田和子
風土
200605
冴返る貧しき者は死に近し
村本真由美
遠嶺
200605
暗がりへ戻す地図帳冴返る
田村園子
200605

 悼望月ひろゆき君

憎しみの癌にて逝けり冴返る

松崎鉄之介
200605
川音の荒き山峡冴返る
米屋道子
200605
池の底の鯉みじろがず冴返る
米屋道子
200605
鳩の羽落ちてをりけり冴返る
寺田すず江
200605
冴返る玉菜むらさき色なりし
石脇みはる
200605
冴返り野菜の花の日色かな
中野京子
200605
冴返る夜空一枚生半ば
岩月優美子
200605
一と文字を毀たれし墓冴返る
長屋璃子
火星
200605
冴返る閂太し城の門
寺沢千都子
万象
200605
冴返るひと日文机恃みとし
窪田佳津子
雨月
200605
冴返る壁を相手に独り言つ
杉山瑞恵
雨月
200605
球を追ひあそぶに風の冴返る
溝内健乃
雨月
200605
葬とどめの僧の一喝冴返る
足立典子
雨月
200605
夕暮れの鼻の先より冴返る
江崎成則
栴檀
200605
町までの信号三つ冴返る
伊東省子
百鳥
200605
製図引く鉛筆の音冴返る
藤井智恵子
百鳥
200605
本堂の今朝の勤行冴返る
細川房代
百鳥
200605
冴返る僧の直角歩行かな
城間芙美子
対岸
200605
冴え返る薩摩切子の嚥脂いろ
淵脇護
河鹿
200606
冴返る耳たぶ二つありしかな
高橋瑛子
河鹿
200606
電球の切れて納戸の冴返る
下山和美
200606
炭木割る金矢打つ音冴え返る
山形悦子
万象
200606
山門に監視カメラや冴返る
阿部澄
万象
200606
冴返る寺門脇なる花売女
福間須美江
200606
急患へ医師等急行冴返る
岡谷栄子
200607
折れ癖の兎の耳に冴返る
西村葉子
京鹿子
200607
冴え返る近くに八百屋出来にけり
青木洋介
六花
200607
進水式近づく海の冴え返る
室生つみき
六花
200607
蛇口固し盆栽棚の冴返る
藤原りくを
八千草
200608
冴え返る今朝は短く軍鶏の鳴く
井上博
八千草
200608
冴えかへる故国より来て夏の風
田中章子
酸漿
200609
語部の頬に一筋冴返る
須藤美智子
風土
200701
よく耐へて来られし命冴返る
稲畑汀子
ホトトギス
200702
冴返る心遣ひに執しけり
稲畑汀子
ホトトギス
200702
冴返る雨に家居の心あり
稲畑汀子
ホトトギス
200702
冴返る雨降りはじめたることも
稲畑汀子
ホトトギス
200702
雨つのり来て冴返る夕べかな
稲畑汀子
ホトトギス
200702
冴返るさらに雨又風押して
稲畑汀子
ホトトギス
200702

 吉村ひさ志様 悼句

上州に思ひ出重ね冴返る

稲畑廣太郎
ホトトギス
200702
冴返る 4→      

 

2021年3月6日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。