秋深し 3   200句

秋深し真夜の瞳として鏡   本橋怜加

作品
作者
掲載誌
掲載年月
秋深しそんなに飲むんやめなはれ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200911
父も亡く子も無き夫婦秋深し 井田実代子 雨月 200911
言ひ訳の先にある闇秋深し 吉弘恭子 あを 200911
秋深し身をつらぬける能一管 船越和香 馬醉木 200912
暗闇教会の壁画鮮やか秋深し 坂根宏子 200912
秋深し御堂に響くサキソホン 前川ユキ子 200912
秋深しチョコレート色の山の手線 田中まや 炎環 200912
傾きしままの道標秋深し 沖倉好秋 酸漿 200912
ガムかめば命の泉秋深し 鷲見多依子 201001
秋深しカクテル毒のごとく澄み 泉田秋硯 201001
「マクベス」を観に来て能登の秋深し 刈米育子 201001
秋深しわが人生を顧みる 佐藤健伍 201001
真夜に聴くナッキンコール秋深し 竹内慶子 春燈 201001
鵲の声に暮れゆく秋深し 中島伊智子 酸漿 201001
身ほとりに芝居の余韻秋深し 小澤淳子 201001
名刹の秘仏にまみゆ秋深し 船橋とし 201001
丸墓山といふ塚山秋深し 白石正躬 やぶれ傘 201001
空き箱にしまふ空き箱秋深し きくちきみえ やぶれ傘 201001
日本は葉と実と花と秋深し 鎌田悟朗 ろんど 201002
文台の裏にも一句秋深し 橋本良子 遠嶺 201002
秋深し宛先不明の友如何に 古林田鶴子 ぐろっけ 201002
秋深し外湯の門の阿咋像 工藤美和子 酸奬 201002
一法会済みし峰寺秋深し 安原葉 ホトトギス 201003
住古りてなほ知らぬ町秋深し 松本文一郎 六花 201003
ブティックに寄道をして秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201010
きざはしを抜け星空へ秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201010
旅先の滞在長し秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201010
秋深し鐵路は川に沿ひ曲る 竹貫示虹 京鹿子 201010
そこそこの手相なりけり秋深し 高橋秋子 201011
秋深し池の水輪が人諭す 鈴鹿仁 京鹿子 201011
遣唐使の辛苦をまざと秋深し 大橋晄 雨月 201012
秋深し雨降ればなほさらのこと 本田保 春燈 201101
大欠伸してよりの黙秋深し 泉田秋硯 201101
印伝の根付を苞に秋深し 刈米育子 201101
一切経煙のごとく秋深し 小堀寛 京鹿子 201101
三本の足も二本に秋深し 林美智 ぐろっけ 201101
頂上は空の真中秋深し 白石正躬 やぶれ傘 201101
秋深し太極拳は音たてず 今中道子 201102
秋深し燃ゆる血今は薬づけ 苑田ひろまさ 201102
遷都祝ぐ掉尾の蹴鞠秋深し 河本利一 201102
秋深しチェンソー響く庭手入 中尾廣美 ぐろっけ 201102
鳥声の澄みて山陵秋深し 中島霞 ぐろっけ 201102
秋深し円空佛の傾ぎゐて 有賀昌子 やぶれ傘 201102
物忘れ笑ふ二人に秋深し 内藤三男 ぐろっけ 201103
堰越ゆるまでのさざ波秋深し 長憲一 201104
瀬戸に雲映して島の秋深し 上林富子 やぶれ傘 201104
朝の間の一人の時間秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201110
門前町湯気をゆたかに秋深し 武井美代子 万象 201110
隧道に大き我が影秋深し 篠田純子 あを 201110
秋深し牛の寝そべる草千里 山崎里美 201111
野仏と亡き父重ね秋深し 米山喜久子 201111
秋深し襟足撫づる風さへも 辰巳あした 雨月 201111
秋深し寺院の静寂ことさらに 辰巳あした 雨月 201111
秋深し乗換ホームの夜のベンチ 谷山友夫 春燈 201112
秋深し友のすすむるブラームス 赤座典子 あを 201112
秋深し傷なつかしき旅鞄 堀田順子 馬醉木 201201
秋深しハンバーガーは好きに食ふ 常田創 201201
千年を褪せぬ朱の裂秋深し 鈴木照子 201201
秋深し杜の奥なるまだ見ぬ世 谷岡尚美 201201
葬列の遺影の笑顔秋深し 陳妹蓉 春燈 201201
就活に慌てる姪や秋深し 後藤克彦 かさね 201201
木洩日をのぼりゆく塵秋深し 千田百里 201201
秋深しハーブ叢に顔つつ込んで 村上留美子 火星 201201
予報士の指示棒自在秋深し 田村園子 201202
手賀沼の波の燦然秋深し 佐藤喜仙 かさね 201202
談笑の中に入れず秋深し 藤井久仁子 ぐろっけ 201202
秋深し熊の糞ある山毛欅の道 北郷和顔 末黒野 201202
グライダー上りゆく空秋深し 白石正躬 やぶれ傘 201202
抽象の男具象の女秋深し 吉田葎 201203
秋深し背中にいつもゐる他人 松田都青 京鹿子 201203
久に来し患者と握手秋深し 滝川あい子 雨月 201203
火渡りの足の抜きさし秋深し 秋葉貞子 やぶれ傘 201203
秋深し心に積みてゆく知識 稲畑汀子 ホトトギス 201210
風強き一掃の雲秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201210
白石に名代の麺を秋深し 酒井秀郎 返り花 201211
秋深しみすゞ自筆の詩のつづり 泉本浩子 馬醉木 201212
秋深し同期が集ふ古希の旅 青木英林 かさね 201212
秋深し古希目交の投句かな 荒井慈 春燈 201212
秋深し砂を歩むにかかとから 山田六甲 六花 201212
秋深し修行者めきて滝しぶき 坂根宏子 201301
秋深しふり分けてをり些事大事 山口ひろよ 201301
秋深し谷津遊園の古写真 安井和恵 201301
お先にと知己の逝きしや秋深し 井上正子 春燈 201301
砂浜に人影もなく秋深し 本郷宗祥 かさね 201301
山の湯に木洩れ日浮かせ秋深し 前川京子 201301
隣り家の表札変はり秋深し 藤原冬人 火星 201301
秋深し人波吸ひ込む競馬場 福田かよ子 ぐろっけ 201301
秋深し漢ばかりの職場バス 三浦澄江 ぐろっけ 201301
秋深し口ついて出る肥後ことば 島谷征良 風土 201302
脾睨の閻魔が二体秋深し 吉野川三郎 万象 201302
縮緬の波立つ諏訪湖秋深し 福田かよ子 ぐろっけ 201302
朝のカフェ豆挽く音ぞ秋深し 向江醇子 ぐろっけ 201302
クリスタルに触るる匙音秋深し 中島陽華 201302
秋深し和池(わち)の千年大桂 谷村幸子 201302
秋深し蕎原(そぶら)の里の秘境めく 古林田鶴子 ぐろっけ 201303
幾多郎の哲学復習ひ秋深し 落合由季女 雨月 201304
よべ荒れしなごりの山路秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201310
澄み渡り天地一体秋深し 山本草風 かさね 201311
朝顔の花色薄く秋深し 田島昭久 かさね 201311
秋深し樹齢は知らず並木道 桑原逸子 201312
雲変化緑も褪せて秋深し 山本草風 かさね 201312
手すさびの胡桃の艶や秋深し 土屋啓 馬醉木 201312
秋深し須磨に伝はる一弦琴 野崎昭子 春燈 201312
秋深し木樽仕込みのウイスキー 石川かおり 201312
現世の笑顔戻りて秋深し 須賀敏子 あを 201312
向日葵の茎まだ残り秋深し 後藤克彦 かさね 201312
永久に眼をつむらぬ埴輪秋深し 宮井知英 201401
年号を戸惑ふ齢秋深し 市橋香 ぐろっけ 201401
散り散りに虫すがれゆき秋深し 菊谷潔 六花 201401
秋深し吾が家をとこの匂ひなき 宮崎左智子 201401
秋深し消費期限にルーペ当て 白神知恵子 春燈 201401
秋深し身の内にある隠し部屋 松田都青 京鹿子 201401
秋深し凛と立ちたる五重塔 坂根宏子 201401
玉砂利を鎮める木沓秋深し 岩木眞澄 ぐろっけ 201401
道場に子供のきあひ秋深し 佐藤喜仙 かさね 201402
秋深しふたつの閾跨ぎけり 有賀昌子 やぶれ傘 201402
秋深し指に残りし栂印の朱 上野紫泉 京鹿子 201402
秋深し石に還りし石仏 高山良順 万象 201402
秋深し漢ばかりの職場バス 三浦澄江 ぐろっけ 201402
詠み出でて宇治橋断碑秋深し 木本蓚 ぐろっけ 201402
秋深し身ほとりといふことば好き 岩岡中正 ホトトギス 201404
昨日会ひ今日又会ひぬ秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201410
秋深し謙虚な心忘れまじ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201410
観音の天衣瓔珞秋深し 後藤大 春燈 201411
秋深し麹塵の壁に色紙掛く 布川直幸 201411
山国に青空の蓋秋深し 柴田佐知子 201411
脳細胞の覚めゆく心地秋深し 大島みよし 201412
「ありがたう」と五字の碑秋深し 大島みよし 201412
秋深し地球病巣深くなり 大島みよし 201412
定年近き息子の白髪秋深し 井上義郎 201412
秋深し夫のひと言大丈夫 斉藤裕子 あを 201412
眠さうな空つぽのバス秋深し 栗原完爾 春燈 201412
草叢は風のふところ秋深し 大島みよし 201501
秋深し旅の荷を解き崎陽軒 伊東和子 201501
家系図に幾度も見入り秋深し 木村みどり 春燈 201501
百名山百名城や秋深し 樋口みのぶ 201501
秋深し郵便受けに置き手紙 門伝史会 風土 201501
秋深し玉座の下にねずみとり 藤本千鶴子 火星 201501
秋深し餃子作りは十八番 中谷富子 201501
喜寿米寿一瞬の間に秋深し 増田甚平 ろんど 201501
硫黄煙ぶる足湯の里や秋深し 成井隆之 末黒野 201502
涙して読み返す書や秋深し 鈴木石花 風土 201502
アイロンに残るぬくみや秋深し 生方義紹 春燈 201502
靴べらは水牛の角秋深し 中島陽華 201503
秋深し伊丹に古き良き家並 井上浩一郎 ホトトギス 201503
友想う谷津ばら園の秋深し 植木やす子 201504
秋深し坂の入り組む熱海かな 布川直幸 201510
秋深し昔は汽笛流れきし 井上信子 201512
秋深し我が番号の十二桁 石井美智子 風土 201512
西鶴の句の話など秋深し 瀬島洒望 やぶれ傘 201601
秋深し青竹色の抹茶ラテ 小山陽子 やぶれ傘 201601
病室に定席ありて秋深し 高倉和子 201601
秋深し能楽堂の黒光り 秋千晴 201601
秋深し刻字うするるしるべ石 中峯雍子 京鹿子 201602
秋深し日毎にオレンジふえる森 水谷直子 京鹿子 201602
秋深し米寿の祝ひにある疲れ 野中圭子 京鹿子 201602
秋深し棚田の水の赤錆びて 森清信子 末黒野 201602
青空の果ての果てまで秋深し 今橋眞理子 ホトトギス 201603
秋深し何もなき卓また拭きて 柴田佐知子 201603
とろ火もて煎ずる薬秋深し 田岡千章 201603
秋深し西に東に忌を修す 稲畑廣太郎 ホトトギス 201610
もう聞けぬ子規のあれこれ秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201610
池の面に写して樹々の秋深し 都築繁子 201611
現し世に四悪は絶えず秋深し 安立公彦 春燈 201612
船箪笥にからくりありぬ秋深し 後藤眞由美 春燈 201612
二度かけて通せぬ電話秋深し 野沢しの武 風土 201701
秋深し鶏のくしやみを聞きにけり 延川笙子 六花 201701
秋深し布団袋にある布団 早瀬淳一 船団 201701
秋深し自傷顕に山の襲 平井奇散人 船団 201701
日差しまだ豊かなるとも秋深し 志方章子 六花 201702
具沢山の味噌汁を食み秋深し 溝渕弘志 六花 201702
濃茶一ぷく名邸の庭秋深し 野中圭子 京鹿子 201702
秋深し植木業者の悲観説 佐藤山人 201702
秋深し電車ごつこの葉の切符 板谷俊武 末黒野 201702
秋深し掘り起されしままの畑 秋山信行 やぶれ傘 201702
秋深し歩けば歩く影法師 武藤節子 やぶれ傘 201702
秋深し山門高き禅の寺 高木邦雄 末黒野 201704
雨も又自然の恵み秋深し 稲畑汀子 ホトトギス 201709
秋深し書架より抜きし『罪と罰』 有賀昌子 やぶれ傘 201712
秋深し右に左に雲流れ 黒木東吾 やぶれ傘 201712
想ひ出はみんな細切れ秋深し 黒木東吾 やぶれ傘 201712
敷きつめし貝殻の音秋深し 宮内とし子 201712
酔ふほどに語らふほどに秋深し 谷口一献 六花 201801
秋深し権現道は寺を据ゑ 下村たつゑ 201801
秋深し悲喜こもごもの文届き 永澤千恵子 201801
彩雲や外人墓地の秋深し 田中信行 201801
秋深し足指太きロダンの像 森高武 風土 201801
秋深し狂言の鬼子煩悩 飛高隆夫 万象 201801
秋深し陶の蛙の勢揃ひ 石田野武男 万象 201801
秋深し空家のはずの灯れば 定梶じょう あを 201801
秋深し鏡に映す天邪鬼 小山繁子 春燈 201801
陸上げの小舟の手入れ秋深し 持田信子 春燈 201801
さらさらと桂打つ雨秋深し 山崎稔子 末黒野 201802
秋深し玄ム墓に水そそぎ 西住三惠子 201802
秋深し風からませて車夫の足 宮元陽子 末黒野 201804
嵐にも齟齬にも負けず秋深し 稲畑廣太郎 ホトトギス 201810
街騒をのみ込む杜や秋深し 持田信子 春燈 201812
秋深し空に風ある去来句碑 斉藤玲子 馬醉木 201901
シャンソンを聞く夕べあり秋深し 荻巣純子 雨月 201901
秋深し書肆と酒肆ある神保町 内山照久 201901
秋深し→4      

 

2021年11月6日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。