行く春 1   229句

花もみな散りぬる宿は行く春の故郷とこそなりぬべらなれ  紀貫之

行く春  春行く   春逝く  逝く春  ゆく春  春ゆく

作品
作者
掲載誌
掲載年月
行く春や浦びと浦のほか知らず 鷹羽狩行 199904
行く春の漢方薬をのみこぼす 大和田鏡子 俳句通信 199905
行く春の五重塔の鴟尾の空 小澤克己 遠嶺 199905
行く春の麓に残る陣屋門 山口たけし 俳句通信 199905
行く春の細き雨降る貯木場 大和田鏡子 俳句通信 199906
行く春の茶筒がぽんと音たてる 朝妻力 俳句通信 199906
行く春の鏡の面テ磨かれし 福井啓子 199907
行く春の水門に灯の入りけり 小林共代 風土 199907
行く春や遺品の中に今治水 大場燈児 風土 199907
行く春や鎌倉彫を硝子越し 竹内悦子 199907
行く春や宿着の紐の色ゆたか 小川時子 199907
行く春のお好み焼を二度たたく 松永典子 船団 199909
行く春や腋毛きにする女房殿 平井奇散人 船団 199909
行く春の自画像とする足の裏 小枝恵美子 ポケット 199911
行く春の二の腕に顔埋めたる 津田このみ 月ひとしずく 199912
行く春のきのうのご飯なんだっけ 三宅やよい 船団 199912
行く春の影絵のうしろ覗きみる 田中藤穂 水瓶座 200002
行く春を形状記憶の一家族 星野早苗 空のさえずる 200002
行く春や昨日のご飯なんだっけ 三宅やよい 玩具帳 200004
行く春の山の名を云ひあひにけり 大和田鏡子 俳句通信 200006
行く春やキリストは垂れ釈迦は臥し 鷹羽狩行 200006
行く春や深夜ラジオのわらべ唄 光枝晴子 200007
行く春やガレのランプに昆虫図 代田青鳥 風土 200007
行く春の樹下にて五感研ぎ澄ます 小澤克己 遠嶺 200008
行く春のめがねのつるの速力 南村健治 船団 200011
行く春の版画にたどる関所跡 渡辺政子 俳句通信 200106
行く春や煙出るほどパン焼いて 後藤志づ あを 200106
行く春や挺子で動かぬこころもて 中原道夫 銀化 200106
行く春の低き音曳く飛行船 川畑良子 200107
行く春の髭動かする大なまづ 野澤あき 火星 200107
行く春や胸に棲みつく天の邪鬼 牛田修嗣 200107
行く春や薄き日のさす源氏の間 大柳篤子 俳句通信 200107
行く春の花より白き岩の照 岡本眸 200108
行く春の不眠症なる魔法瓶 水上博子 船団 200109
行く春を死でしめくくる人ひとり 能村登四郎 羽化 200110
行く春を伏して雨音ばかりなり 朝妻力 雲の峰 200205
行く春の鍵屋に香るごんぼ汁 清わかば 雲の峰 200206
行く春の町屋に残る虫籠窓 杉江茂義 雲の峰 200206
行く春の檻の中より人のこゑ 小澤克己 遠嶺 200206
行く春や熱さの残る登り窯 辻井桂子 雲の峰 200206
行く春の街のごと船灯りをり 男波弘志 200207
行く春の眼鏡の奥に目のうるみ 池部久子 酸漿 200207
行く春の座つてゐたる巨岩かな 篠原俊博 銀化 200207
行く春の柄杓の中に青き空 堀本祐子 遠嶺 200207
行く春や雲の図鑑をとりだして 船山博之 百鳥 200207
律儀とは行く春映す捨て鏡 松本康司 銀化 200207
行く春の一ト日深川江戸資料館 宮原みさを 花月亭 200208
行く春の湖を背に画架を置く 花島陽子 遠嶺 200208
行く春の城址に佇つも旅ごころ 青砥真貴子 200208
行く春の浄土庭園巡りをり 曷川克 遠嶺 200208
行く春や隅田川に架かる橋幾つ 宮原みさを 花月亭 200208
行く春や大吟醸の注ぎこぼし 浜麻衣子 六花 200208
行く春や池に立ちたる石一つ 曷川克 遠嶺 200208
行く春や背にしたるとき沼重く 岡本眸 200209
行く春の鳥舎に赤き傘ひとつ 小澤克己 遠嶺 200210
行く春のワインの染みを勲章に 高田令子 200301
行く春やふはつと生きて五十年 須佐薫子 帆船 200303
行く春の手にずつしりと種子島 朝妻力 雲の峰 200305
行く春の焼け失せしてふ舞どころ 森脇恵香 雲の峯 200306
行く春の選者となりし噂かな 大串章 百鳥 200306
行く春や貝殻山の貝に雨 木村風師 馬醉木 200306
行く春の句碑を名残に北へ発つ 上田繁 遠嶺 200307
行く春の深夜堰なす選句稿 岡本眸 200307
行く春の壁にあまたの伎楽面 環順子 遠嶺 200307
行く春や水切つて干す丸絵筆 房安栄子 築港 200307
行く春や灯を入れてより天守閣 十河波津 200307
行く春や童舵とる縄電車 雲所誠子 帆船 200307
行く春や母の笑顔の遠ざかり 田中清子 遠嶺 200307
行く春の片側開きし蔵の窓 清水晃子 遠嶺 200308
行く春の娘の書架にみすずの詩 内藤三男 ぐろっけ 200308
行く春の天にまかせて大手術 伊藤光子 ぐろっけ 200406
行く春や御身あはせて道祖神 鎌倉喜久恵 あを 200406
行く春の灘の宮水ふふみをり 谷村幸子 200407
行く春の列車見送る無人駅 荻島雪子 百鳥 200407
行く春のにほひとかほり分け難し 井上信子 200407
行く春や雨のまたるる寺の苔 渡辺玄子 酸漿 200407
行く春や仕立て直しのものを着て 猪俣洋子 200407
行く春を告ぐるが如き風雨なり 小林幸子 酸漿 200407
行く春や真珠筏の漂ひぬ 平尾信一 帆船 200408
行く春やとろりと光る水の貌 高橋瑛子 河鹿 200408
行く春の湖に素顔のうつりけり 水田清子 200505
行く春や湖はあふれてゐたりけり 豊田都峰 京鹿子 200506
行く春に杖の歩みの追ひつけず 井上春子 春燈 200507
行く春の枕馴染まぬ夜なりけり 石川英利 百鳥 200507
行く春のあまたの弔旗ひるがへる 小澤克己 遠嶺 200507
行く春のガラスのピエロ蚤市に 三好かほる 万象 200509
行く春のわかしゆひそと日に湛へ 瀧春一 菜園 200509
行く春の峠西行歌碑ひとつ 菅野末野 風土 200511
行く春や家猫となりジャズを聴く 赤座典子 あを 200606
行く春や猶やまくさの咲き絶えず 瀧春一 常念 200606
行く春や峽の町なる釣瓶鮓 瀧春一 常念 200606
行く春やさくら献げて杉蒼し 瀧春一 常念 200606
行く春の雲が麒麟の首あたり 高橋照葉 ぐろっけ 200607
行く春や口に転がす薄荷飴 代田幸子 200607
行く春の彩を集めて万華鏡 千坂千津恵 200608
行く春や楓に通ふ風の音 菊谷潔 六花 200608
行く春や銀座ボーグの請求書 桑原泰子 八千草 200610
行く春の松笠拾ふ法隆寺 三好かほる 万象句集 200703
行く春のひかりの渦や堆砂垣 松原仲子 200704
行く春に波と阿吽の島灯かり 布川直幸 200707
行く春の沖遠からぬあたりかな 北川英子 200707
行く春の叶はぬ夢の残りたる 林いづみ 風土 200707
行く春や嫁ぐ日近き人とゐて 八木岡博江 酸漿 200707
行く春や寄木細工のオルゴール 鈴木清子 遠嶺 200707
行く春やいにしへの世の封泥展 小平恒子 酸漿 200707
行く春の椅子手回しの蓄音機 遠藤和彦 遠嶺 200708
行く春の魚開けば眼が二つ 浅田光代 風土 200708
行く春の地震とも風の触れしとも 吉原一暁 200708
行く春や捨つる言葉のうづたかし 保田英太郎 風土 200708
行く春や神戸元町一期会 池崎るり子 六花 200709
行く春も佐保の美化とて子等の作務 奥村鷹尾 京鹿子 200801
行く春の黒猫の目にゆきあたる 坪内稔典 稔典句集U 200804
行く春の雀色時長きかな 能村研三 200804
行く春の道筋見ゆる湖上かな 米山喜久子 200806
行く春や寺の本尊目をつむり 宇治重郎 200806
行く春や頬杖の眼遺影の眼 米山喜久子 200806
行く春と尽きる連休惜しみをり 松嶋一洋 200807
行く春の火焔太鼓の竜・鳳凰 林いづみ 風土 200807
行く春の愚陀仏庵に下駄二足 松原智津子 万象 200807
行く春や橋の上より魚透けて 高橋道子 200807
行く春や夫の納骨袋縫ふ 杉本綾 200807
行く春やらくだの鼻の穴あいて 中島陽華 200807
行く春を寄席に笑うて惜しむかな 清水明子 遠嶺 200807
行く春や短く紅き松の蕊 瀧春一 深林 200901
行く春や昭和の色の理髪灯 遠藤実 あを 200904
行く春や竹人形は腰ひねり 杉良介 200904
行く春の山一斉に葉の怒涛 岡佳代子 200905
行く春の穴太積てふ味噌重石 北川英子 200906
行く春や虚子展終の日となりぬ 木村茂登子 あを 200906
行く春や五十七の訃突然に 須賀敏子 あを 200906
行く春や星粒あらき鬼ヶ島 植田桂子 馬醉木 200906
行く春や肘大袈裟に泣く羅漢 山田庫夫 炎環 200906
行く春の身細く在す百済佛 大竹欣哉 200907
行く春の噴水池の日を撥ぬる 遠藤和彦 遠嶺 200907
行く春や開け閉てに鳴る蝶番 有山八洲彦 200907
行く春や床屋の椅子に一眠り 林紀夫 春燈 200907
行く春や赤い服など着てみても 折橋綾子 200907
行く春の舐めて細らす長寿飴 伊藤トキノ 200908
行く春の隠岐の荒布ぞ煮て甘き 永田二三子 酸漿 200909
行く春や暖炉の上の古時計 市橋敬子 200909
行く春や折鶴の千翔たせたき 北川英子 201006
行く春の近江の米の届きたる 辻美奈子 201006
行く春を来て細道のむすびの地 吉田政江 201006
行く春やたゆたふ一語きめもして 鈴鹿仁 京鹿子 201006
行く春や坂上にある駐在所 代田青鳥 風土 201006
行く春の水の近江の浮御堂 菅原末野 風土 201006
行く春の剥落深き国分尼寺 代田青鳥 風土 201007
行く春を翁偲びの句碑いし二十 菅谷たけし 201007
行く春や寺歴を秘むる高野槙 清水美子 春燈 201007
行く春を流れは岩を乗り越えて 小林愛子 万象 201007
病む夫に行く春の窓ありにけり 柳田和子 酸奬 201008
歌舞伎座の行く春惜しむ甘栗屋 有賀昌子 やぶれ傘 201010
行く春や壁紙替ふる美容院 青木由芙 末黒野 201104
行く春の卓に並べて水ボトル 吉田政江 201106
行く春や竹の葉擦れの音乾き 松本三千夫 末黒野 201107
行く春や鳴かぬ烏が電柱に 金森涼 春燈 201107
行く春の犬吠埼に夢二の碑 小俣剛哉 春燈 201107
行く春の癒ゆるなき傷誰も負ふ 大畑善昭 201107
行く春や鏡の前のバレリーナ 奥田茶々 風土 201107
行く春に菓子の空箱捨てがたし 野口喜久子 ぐろっけ 201107
行く春の曲屋上る煙かな 大場ましら 201108
行く春の靴よりこぼす海の砂 岩永はるみ 白雨 201203
行く春や真珠筏の透きとおる 鶴濱節子 始祖鳥 201206
行く春や光とどむる刺繍糸 徳田千鶴子 馬醉木 201206
行く春や柄のある小鍋慣れ使ひ 中山純子 万象 201206
行く春や禊の川に桶一つ 中山純子 万象 201206
行く春や琵琶湖周航歌口の端に 塩田博久 風土 201207
行く春の八日をかけて予定詰め 柿沼盟子 風土 201207
行く春や海の青さの伊勢木綿 宇都宮敦子 201207
行く春や留守番電話に声のこし 栗原公子 201207
行く春の水口水音漲れり 山本久江 201208
行く春を噛んで甘さを滴らす 松田都青 京鹿子 201208
行く春やみぞおちに染む瞽女の三味 岡山敦子 京鹿子 201208
行く春を惜しみ草加の松並木 北崎展江 くりから 201209
行く春や鼓のひびく能舞台 森美佐子 やぶれ傘 201210
行く春に庵たたむ日思ひをり 能村研三 201306
行く春や仙台石の船着場 鈴木鳳来 春燈 201307
行く春や襞に雲おく八ヶ岳 鈴木靜恵 春燈 201307
行く春や沈黙の日も暮れゆける 黒澤登美枝 201307
行く春やバス停は蘆花恒春園 瀧春一 花石榴 201312
行く春や人工渚浪音無し 瀧春一 花石榴 201312
行く春の藁屋根ばかり見てあるく 瀧春一 花石榴 201312
行く春の駅のギャラリー迷路めく 宮内とし子 201406
行く春へぽつりと洩らすひとり影 鈴鹿仁 京鹿子 201406
行く春の波音ためて水城址 豊田都峰 京鹿子 201407
行く春の弁財天の唇のいろ 大山文子 火星 201407
行く春やハンカチの木と教へられ 菊地葉子 やぶれ傘 201407
行く春や釈迦生涯の絵図拝し 大橋晄 雨月 201407
行く春や寝ねられず聴く「深夜便」 山下健治 春燈 201407
行く春を追うてみちのく俄旅 頓所友枝 201407
行く春や赤児の眼まだ見えず 藤丸誠旨 春燈 201407
行く春のクラリネツトを主流とす 山中志津子 京鹿子 201407
行く春のサックスの音後ろより 川村文英 ろんど 201408
行く春の沼や夕風湿りもつ 内海良太 万象 201506
行く春や母の月日の古ミシン 大森道生 春燈 201506
行く春や秩父に古き目の薬師 小林昌子 馬醉木 201507
行く春や小さき額の小さき顔 藤丸誠旨 春燈 201507
行く春や根岸の里の松愛でて 武藤嘉子 201507
行く春に風はときをり強くあり 市川伊團次 六花 201507
行く春や窓の灯明き巨船出づ 辻井ミナミ 末黒野 201508
行く春を言葉の遅き子とおりぬ 林昭太郎 201510
行く春の魚板を打つや翁堂 津川かほる 風土 201512
行く春や新世界より駒の音 加藤みき 201605
行く春や眼らんらん筆持ちて 加藤みき 201606
行く春の鳶や高みに輪を絞り 千田百里 201606
行く春や余白の増えし日記帳 小松誠一 201606
行く春や栗鼠の尾走る宮の黐 深澤厚子 馬醉木 201606
行く春の机上に雲形定規かな 楠原幹子 201607
行く春や背筋伸ばして杖一本 吉澤恵美子 春燈 201607
行く春の気儘脱いだり羽織つたり 卯木堯子 春燈 201607
行く春の楽屋のれんに空の色 中嶋陽子 風土 201607
行く春の島に一会の放哉碑 落合絹代 風土 201607
行く春や波の奪へる虚貝 安斎久英 末黒野 201607
行く春の波の巻き込む藻屑かな 安斎久英 末黒野 201608
行く春や高圧線に作業員 小倉純 末黒野 201608
行く春や雨降り頻る鳰の湖 多方清子 雨月 201608
行く春や机の上に歎異抄 田中信行 201608
行く春や触れてはならぬ人の恋 高野昌代 201608
行く春の築地の吐丹(トタン)寂れたる 細川洋子 201705
行く春やおもひ思ひに坐る牛 高橋あさの 201707
行く春や背に散りかかる花ごろも 菊谷潔 六花 201707
行く春を園児の列について行く 新海英二 春燈 201707
行く春のスマホに覗く潮見表 成田美代 201708
行く春の汐に褪せたる能舞台 宇都宮敦子 201708
行く春の島へ乗り合ふ能楽師 橋本榮治 馬醉木 201708

2021年4月11日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。