空 蝉 4     204句

空蝉の掴みし草の伸びにけり    松下道臣  まんまる

  蝉の殻  落蝉  空蝉  蝉時雨  蝉の穴

作品
作者
掲載誌
掲載年月
枝先に空蝉上り詰めゐたる 山田六甲 六花 201108
空蝉や形見に適ふ品探し 北尾章郎 201109
空蝉の背割れの深き軽さかな 和田照子 201109
我が机上甲虫あり空蝉あり 大橋敦子 雨月 201109
空蝉の真下フリーマーケット 梶浦玲良子 六花 201109
空蝉は梢のこゑの証拠品 伊東和子 201110
空蝉のしがみ付きしは痛みとも 笠井敦子 201110
空蝉の縋るかたちにいのち見ゆ 能村研三 201110
空蝉にあめ色の風詰まりゐる 富川明子 201110
空蝉が己と対峙する鏡 吉村摂護 201110
てのひらの空蝉を子が吹いてをり 中島霞 ぐろっけ 201110
空蝉の老いのかたちに日の名残り 渡邉美保 火星 201110
空蝉の縋りつきをりブロツク塀 山荘慶子 あを 201110
空蝉や浄土の姿さながらに 木村茂登子 あを 201110
空蝉の眼のみを残す風の中 豊田都峰 京鹿子 201110
空蝉や嵯峨野のこゑをためきれず 豊田都峰 京鹿子 201110
空蝉を残せる枝にも秋冷来 ことり 六花 201110
四つ五つ六つ空蝉や砂雪隠 川村文英 ろんど 201111
空蝉のカラカラと行く杖の先 古林田鶴子 ぐろっけ 201111
空蝉のみんな拝んで地に還る 村元香須子 ぐろっけ 201111
空蝉のカラカラ鳴いてをりにけり きくちきみえ やぶれ傘 201111
美意識がどうした空蝉を砕く ことり 六花 201111
空蝉の時を止めたる葉末かな 上辻蒼人 風土 201111
空蝉のからからからと夜を走る 鎌倉喜久恵 あを 201111
空蝉の眼に暁の色残る 大地真理 201112
空蝉へ心配ないと言ひきかす 木戸渥子 京鹿子 201112
空蝉の爪の食ひ込み御神木 西川みほ 末黒野 201112
空蝉の逆しまに見るこの世かな 荻野加壽子 万象 201112
空蝉を踏めば乾びし魂の音 布川直幸 201208
空蝉を無数に残す老桜 中島玉五郎 201208
空蝉の古木の枝に眠りをり 加納淳子 六花 201208
空蝉を手に少年の反抗期 田下宮子 201209
空蝉は風のゆりかご大欅 和田郁子 粥の味 201209
空蝉を残して七日の命かな 青木英林 かさね 201210
蝉死して空蝉もまた風に飛ぶ 池内とほる かさね 201210
空蝉は命あるごと爪たてをり 柳田晧一 かさね 201210
空蝉を一列にして遊ぶ孫 後藤克彦 かさね 201210
密教や空蝉の背のがらんどう 水野恒彦 201210
空蝉にありし命の刻印 近藤喜子 201210
空蝉の列なしてゆく昼の闇 西村純太 201210
空蝉の見届けてゐる宇宙かな 柳川晋 201210
穴の土うつすらと付け空蝉は 南うみを 風土 201210
空蝉のいのち抜けたる湿りかな 阪上多恵子 雨月 201210
空蝉のがらんどうなる未練かな 国包澄子 201211
空蝉と所番地を同じうす 熊川暁子 201211
空蝉の大池のいろを宿しをり 町山公孝 201211
掌の空蝉に入る思考かな 四條進 201211
空蝉や女院の一世しみじみと 尾崎みつ子 雨月 201211
空蝉を拾ひ旅路の連れとせり 安田とし子 ぐろっけ 201211
空蝉の瞬きしたり草の蔭 犬塚李里子 201211
空蝉のうつのかたちの真昼かな 木村和也 船団 201212
翁の碑に縋る空蝉立石寺 松井洋子 ぐろっけ 201212
空蝉に銅熱く流さむか 荒木甫 201212
枝を打つ樹より空蝉零れけり 藤井美晴 やぶれ傘 201301
空蝉やのぞき窓ある遊女塚 石川笙児 201301
空蝉の大地のいろを宿しをり 町山公孝 201301
空蝉の必死の脚の焦げ臭し 原友子 201302
空蝉や余生ぐらゐは力抜け 吉田宏之 201310
空蝉を拾ひこっそり草叢へ 福本すみ子 201310
空蝉となりて其が影失へり 小幡喜世子 ろんど 201310
空蝉を子に持たせやる旅始 石田静 201310
空蝉の指に力を残したる 安部和子 雨月 201310
空蝉の空つかみゐる手の悲し 辰巳あした 雨月 201310
空蝉の爪突き通す八つ手かな 田尻勝子 六花 201310
そここゝと空蝉集む下校の児 吉田光子 ぐろっけ 201310
空蝉や門扉にびたり我を待つ 明石文子 ぐろっけ 201310
空蝉やいのちの限り働けり 市橋香 ぐろっけ 201310
空蝉やきのふはすでにセピア色 岩木茂 風土 201311
絶唱や空蝉の背裂けてをり 江島照美 201311
空蝉の枝にすがりて暮れ近し 吉田きみえ 末黒野 201311
空蝉の足に力の残りけり 滝沢いみ子 末黒野 201311
空蝉の眸のあり処ことに透く 青木朋子 201311
空蝉の目玉と手足衰へず 伊藤マサ子 ぐろっけ 201311
行く季の蝉とをりけり空蝉の 柳本渓光 ろんど 201311
空蝉の縋れる大樹奥深く 久保晴子 雨月 201311
空蝉の背に山風の募り来る 宮平静子 雨月 201311
空蝉の鼓動を打つてゐるやうな 古賀しぐれ ホトトギス 201312
空蝉の三つ連なる枝の揺れ 青木朋子 201312
琥珀色したる空蝉胸に留む 青木朋子 201312
空蝉の主は欅に移りけり 青木朋子 201312
空蝉のみつつよつつを掌に 有賀昌子 やぶれ傘 201312
空蝉の飛べず虚しき足構え 金田けいし ろんど 201401
空蝉となりし一斉てふことも 稲畑汀子 ホトトギス 201407
空蝉をつぶせぱ脚ののこりけり 大崎紀夫 やぶれ傘 201408
空蝉や生きた証の形して 中村喜美子 春燈 201409
空蝉のまだ濡れてゐる眼かな コ田千鶴子 馬醉木 201409
空蝉のまだやはらかき雨上り 本多俊子 201409
空蝉を粉々にして風の中 市川伊團次 六花 201410
空蝉や念力の爪ゆるがざる 水野恒彦 201410
空蝉の刹那を生きし爪なりけり 卜部黎子 春燈 201410
空蝉の風に飛びきし秋の朝 上原重一 201410
空蝉のまなこ此の世の艶失せず 安斎久英 末黒野 201410
空蝉といふたましひの鋳型かな 細川洋子 201410
前方後円墳と空蝉闇に入る 田中藤穂 あを 201410
少年の机に本と空蝉と 本多俊子 201410
空蝉のたしかに鳴きし夜のあり 有松洋子 201410
空蝉の片足かしぐ影ゆれて 小菅澄重 春燈 201410
空蝉を砕き子等のおままごと 國保八江 やぶれ傘 201410
空蝉や「妻」といふ字をしめくくる 有松洋子 緑光 201411
空蝉の狭庭に過ぎし日数かな 齋藤晴夫 春燈 201411
空蝉の背にためらひなきごとく 森清堯 末黒野 201411
空蝉の馬頭観音さま恋ひ来 土屋草子 ろんど 201411
空蝉の頭を下げし父祖の墓 後藤マツエ 201411
空蝉や軽やかにして重きもの 武藤嘉子 201411
空蝉の爪に名残りの生気かな 石田きよし 201411
空蝉の何を見て来し眼かな 飛高隆夫 万象 201411
空蝉の幹へ取り付く力まだ 坂場章子 201411
空蝉や子等の手の中宝物 藤波松山 京鹿子 201411
抽斗の奥空蝉とチヨコレート 高野春子 京鹿子 201411
立木佛胸に空蝉縋りゐて 田中佐知子 風土 201411
空蝉は祈りのかたち朝日射す 古川忠利 ろんど 201412
蝉よ鳴かぬか空蝉になる前に 吉弘恭子 あを 201412
空蝉になりたる位置で空を見る 古川忠利 ろんど 201412
地へ還るもの空蝉が落葉に乗り 堀内一郎 堀内一郎集 201412
一稿ををへ空蝉のごとくなり 岩岡中正 ホトトギス 201501
草蔭に去年の空蝉薄暑かな 飛高隆夫 万象 201508
朝見たる空蝉拾ふ帰り道 飛高隆夫 万象 201510
空蝉の直に奏づる風の韻 森岡正作 201510
白壁をしばらく点す空蝉は 千田敬 201510
空蝉の心の音を忘るまじ 本多俊子 201510
空蝉のまだ闘つてゐるかたち 高橋道子 201510
如何にせん箱いつぱいの空蝉を 平居澪子 六花 201510
空蝉にのこる眼の透くばかり 安立公彦 春燈 201510
空蝉の爪にひめたる月日かな 卜部黎子 春燈 201510
空蝉の割れたる背ナや旅終はる 溝越教子 春燈 201510
空蝉の二つ三つあり今朝の秋 四條進 201510
空蝉や足のふんばり濡れてゐる 上野紫泉 京鹿子 201511
空蝉や嫁がせし娘の置手紙 金子正道 京鹿子 201511
空蝉の縋れる板碑朝の寺 福田禎子 末黒野 201511
空蝉のからまつてゐる竹箒 笹村政子 六花 201511
空蝉の眼に氏神の泥少し 岸洋子 201511
空蝉やいのちのままに脱がれゐて 本池美佐子 201511
下枝に槌る空蝉にはたづみ 青木朋子 201512
空蝉のこの渾身のからつぽよ 内藤静 風土 201512
空蝉にまだ眼光の残りけり 片山煕子 京鹿子 201601
留学子に吾は背割れの空蝉よ 升田ヤス子 玫瑰 201604
樹上に蝉鳴かして吾は空蝉よ 野沢しの武 風土 201609
空蝉の風袋といふ重さかな 楠原幹子 201609
空蝉は背割りて待てり宵の風 丸井巴水 京鹿子 201609
空蝉のなほ魂のあるごとく コ田千鶴子 馬醉木 201610
空蝉や手にせしものの乾く音 松本美簾 馬醉木 201610
空蝉のほの湿りゐるたなごころ 渡部良子 馬醉木 201610
縋り付く空蝉に魂残りしか 岩月優美子 201610
空蝉や台座の傾ぐ父祖の墓 渡辺やや 風土 201610
空蝉の脂ぎったる眼の無気味 森脇貞子 雨月 201610
柴折戸に空蝉すがる直哉の居 山田春生 万象 201610
空蝉や木の幹のぼる構へして 保田榮子 万象 201610
短命に生きて空蝉残したる 相良牧人 201610
空蝉の背に臍の緒のごとく筋 荒木甫 201610
いつぽんの木に啼く蝉と空蝉と 犬塚李里子 201611
露の世の空蝉残る草の葉に 杉本薬王子 風土 201611
空蝉となりて聴き入る蝉の声 杉本薬王子 風土 201611
空蝉の前足拝めるままにあり 野村鞆枝 京鹿子 201611
空蝉の姫ひおうぎにすがりをり 升田ヤス子 六花 201611
空蝉の飴色の爪離さざる 田部井幸枝 201611
夕日はらみて空蝉の琥珀色 宇都宮敦子 201611
空蝉の地に転がれる雨上り 大内マキ子 万象 201611
空蝉の眼のくろぐろとありにけり 宮本加津代 万象 201611
竹垣に残る空蝉女坂 瀬島洒望 やぶれ傘 201611
空蝉の雌雄論争子ら寄りて 斉藤マキ子 末黒野 201611
空蝉と落蝉並ぶ古城址 藤田美耶子 201612
考へて考へぬいて空蝉に 七種年男 輪中の空 201612
空蝉がゆずりあってる椿の葉 須賀敏子 あを 201610
空蝉は元素記号をもてあます 鶴濱節子 船団 201702
空蝉や見えぬからこそ見ゆるもの 江島照美 201708
空蝉のきれいに命抜けゐたり 小山田子鬼 201709
空蝉や詠まねば吾も脱け殻に 座古稔子 201710
空蝉の爪鋭きを記章とす 荒木甫 201710
空蝉を拾へば零れ昨夜の雨 小林輝子 風土 201710
鳴き抜いた空蝉の何と軽きこと 犬塚李里子 201710
空蝉はこの世の名残カタルシス 犬塚李里子 201710
空蝉や墓の継承権放棄 本多遊方 春燈 201710
空蝉の未練や樟に爪たてて 川崎雅子 春燈 201710
空蝉や山風煽る朝の庭 水田壽子 雨月 201710
空蝉のはなれがたさや爪深し 大石恵子 201711
空蝉に風の生まるる松の幹 雨村敏子 201711
空蝉の軽さ命の重さかな 涌羅由美 ホトトギス 201711
空蝉の葉裏に縋る足強し 外山生子 末黒野 201711
空蝉の渾身の爪触れてみよ 南うみを 風土 201711
空蝉のすがる力のまだありし 亀井福恵 京鹿子 201711
空蝉のひねもすのたり広葉かな 寺岡直美 京鹿子 201711
空蝉の魂なほ残る様にあり 大橋晄 雨月 201711
空蝉の爪の力を剥がしけり 藤生不二男 六花 201711
空蝉や主無き家の門柱に 田尻勝子 六花 201711
空蝉に入りさうなる跼みやう 佐藤喜孝 あを 201801
空蝉の魂なほ残る様にあり 大橋晄 ホトトギス 201802
空蝉と同じ高さに殉教碑 林徹也 201802
秋寂びて空蝉背なを閉じにけり 阪野基道 船団 201806
空蝉にビルの谷間といふ褥 稲畑廣太郎 ホトトギス 201807
そこここに空蝉だらけ鎮守さま 衣斐ちづ子 201807
くわつと背ナ割れて空蝉生れゆく 稲畑廣太郎 ホトトギス 201809
約束を違へぬ空蝉のかたち 細川洋子 201809
空蝉や無人駅のがらんどう 西村滋子 京鹿子 201810
空蝉や同窓名簿・不明欄 伊吹之博 京鹿子 201810
空蝉のめざすものある途中かな 藤生不二男 六花 201810
空蝉や目前にある一周忌 林いづみ 風土 201810
空蝉の位置定まれる机かな 中根美保 風土 201810
空蝉をつつむしばしの夕日かな 安立公彦 春燈 201810
金色(こんじき)の空蝉に波鑑真忌 雨村敏子 201811
表札の縁に空蝉すがりをり 辻由紀 雨月 201811
空蝉の拝む形黙祷す 松本峰春 春燈 201811
飛ぶ構へばかり空蝉昆虫展 松本峰春 春燈 201811
空蝉やこの世に普段着ぬいだまま 若森京子 船団 201812
空蝉にいのち半分置いてゆく 秋千晴 201902
空蝉→5      

 

2021年7月6日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。