蝉の殻    156句

梢よりあだに落ちけり蝉の殻    芭蕉

  蝉の殻  落蝉  空蝉  蝉時雨  蝉の穴

作品
作者
掲載誌
掲載年月
蝉殻を脱ぎて眼光残しけり
山田弘子
春節
199503
白日の海坂なりし蝉の殻
水野恒彦
199810
蝉の殻子ら来るまでを吹かれをり
杉浦典子
火星
199811
向きむきに生命の森の蝉の殻
栃内和江
199907
蝉殻を胸にすがらせ来たりけり
田畑幸子
火星
199910
空家となり低くすがりぬ蝉の殻
山西みち子
火星
199910
方丈に置いてありけり蝉の殻
木下野生
199911
蝉殻を並べてゐるよ濡れ縁に
石田邦子
遠嶺
199912
手にかろしかたち全き蝉の殻
柳沢杏
酸漿
200009
文机にまじまじと置く蝉の殻
能村研三
200009
蝉の殻確と眼の生きてをり
久保田ヤスエ
酸漿
200010
人の訃や捨て所なき蝉の殻
木村杏子
雨月
200011
山寺に蝉の声なし蝉の殻
大塚洋子
酸漿
200101
うそつきがまた蝉殻にもどっている
入江一月
船団
200102
天を摩るビルの礎石に蝉の殻
石丸孝子
京鹿子
200103
蝉の殻蓮の葉裏のをちこちに
富岡伸子
春耕
200109
蝉の殻云ひ出しにくいことありて
大田かづみ
いろり
200109
うしろより声かけられし蝉の殻
杉浦典子
火星
200110
年輪のごときを尻に蝉の殻
矢島久栄
200111
累代の墓二十基に蝉の殻
鈴木ゆき子
風土
200111
蝉殻の吹かれてゐたる湾の口
小形さとる
200111
森の家網戸に残る蝉の殻
長谷川登美
ぐろっけ
200111
爪立てゝ大樹を抱く蝉の殻
佐々木スガ子
ぐろっけ
200111
満身の力のこれる蝉の殻
鵜飼紫生
雨月
200201
蝉の殻二つ拾ひて落着かず
皆川盤水
春耕
200208
大木戸の蝉殻ふたつ忌日かな
木山杏理
京鹿子
200209
幻日や蝉の蛻の流るるとき
水野恒彦
200209
理想より少しく重し蝉の殻
岡崎るり子
銀化
200210
甲冑の艶をとどめて蝉の殻
山口速
200211
生きものの匂ひも失せて蝉の殻
八染藍子
200211
諦めし誤植の一字蝉の殻
徳永真弓
百鳥
200211
山並に雨雲およぶ蝉の殻
田口傳右ヱ門
銀化
200211
走り根が持ち上ぐ岩の蝉の殻
小阪律子
ぐろっけ
200212
蝉殻の背中に立てし五円玉
吉田康子
青山椒
200303
掃き寄せて驚く程の蝉の殻
中井久子
雨月
200309
蝉鳴いてをりその幹に蝉の殻
木下野生
200310
不可解なニュースの多し蝉の殻
竹下昭子
ぐろっけ
200310
雨続き庭下駄につく蝉の殻
中尾廣美
ぐろっけ
20031
しがみつき冬木に耐ゆる蝉の殻
土生逸磨
河鹿
200406
ハンカチをひろげて貰ふ蝉の殻
菊地光子
200409
岨道を行くや蝉穴蝉の殻
林典子
雨月
200410
前の世の風吹いてをり蝉の殻
山田六甲
六花
200410
思ひまでもつて行かれし蝉の殻
山田六甲
六花
200410
脱ぎ捨てし蝉の殻干す下つ枝
中谷喜美子
六花
200410
蝉の殻過去完了になつてをり
片山タケ子
200411
接続詞の前後が消えて蝉の殻
坂本敏子
京鹿子
200412
蝉殻を置く空海の硯石
岩月優美子
200510
盆栽にすがらせ愛づる蝉の殻
白神知恵子
春燈
200510
子離れのあとをただして蝉の殻
水谷ひさ江
六花
200511
蝉殻の転がってゐる坊泊り
大西正栄
雨月
200511
蝉の殻熱き土よりはづしけり
浅田光代
風土
200601
蝉殻のやうな衣をまとひたり
小澤克己
遠嶺
200610
生の意味死の意味蝉の殻は殻
小澤克己
遠嶺
200610
縁側の小函に残る蝉の殻
延川五十昭
六花
200610
魂のまだとどまりし蝉の殻
高橋将夫
200709
まだ足に土塊つきし蝉の殻
加藤みき
200709
狛犬の台に縋りて蝉の殻
上原重一
200710
幼子の夕日にかざす蝉の殻
飯田明己
遠嶺
200711
爪立ててたましひ残る蝉の殻
片野光子
ぐろっけ
200711
記されざる歴史の多し蝉の殻
中野京子
200711
拍動のまだ遺りたる蝉の殻
貝森光洋
六花
200711
雨は霧に碑の面にすがる蝉の殻
渡邉友七
あを
200711
何時からの空家か戸口に蝉の殻
衣斐ちづ子
200801
蝉の殻ころつと魂転がりぬ
くらたけん
200809
桃の実の下に落ちある蝉の殻
山田六甲
六花
200809
蝉の殻水に浮かべてみたりけり
近藤公子
200809
朝早きパン屋の戸口蝉の殻
山荘慶子
あを
200810
蝉の殻透明の刻宿しをり
水谷芳子
雨月
200811
三尺の若木を頼み蝉の殻
宇都宮敦子
200811
母の手を握り殻脱ぐ蝉を見る
高橋スミ子
万象
200811
一途なる高さも半端蝉の殻
湯川雅
ホトトギス
200901
思ひ切り鳴く為に脱ぐ蝉の殻
野坂民子
馬醉木
200909
きさらぎの槐に蝉の殻ひとつ
天谷翔子
火星
201005
蝉の殻命半分あるやうな
秋千晴
201007
蝉の殼昨夜のバケツの雨水に
浜囗高子
火星
201008
自由かと蝉の抜け殻より問はる
柴田佐知子
201009
背を裂いて我も飛びたや蝉の殻
松岡和子
201010
宝もの持つごと渡す蝉の殻
吉沢陽子
201010
己が声聴き入る容蝉の殻
岩永充三
201010
蝉の殻童女の墓に縋りをり
八木岡博江
酸奬
201010
雨雫樹に爪たてて蝉の殻
田村幸子
201011
蝉の殻ちからをぬくをまだ為さず
海村禮子
春燈
201011
蝉の殻誰が供へしか夫の墓
降幡加代子
万象
201011
蝉の殻草の穂先の先知らず 山田六甲 六花 201108
父の忌の庭に見出でし蝉の殼 水原春郎 馬醉木 201109
神神しき貌くつきりと蝉の殻 近藤喜子 201110
とこしなへ戦後はつづく蝉の殻 篠田純子 あを 201110
閻魔より脱衣婆こはし蝉の殻 篠田純子 あを 201110
安心のいろ曲げゐたり蝉の殻 城孝子 火星 201111
掌にとれば掌に縋りつく蝉の殻 上原重一 201208
蝉殻を脱ぐや波郷の墓の上 山田春生 万象 201210
蝉死して猶残りをる蝉の殻 池内とほる かさね 201210
落ち蝉の屍の側に抜け殻も 池内とほる かさね 201210
諾ひてはたと忘れぬ蝉の殻 酒井秀郎 返り花 201211
カーテンに止めては数ふ蝉の殻 平田恵美子 ぐろっけ 201211
ほんたうの空つぽがあり蝉の殻 辻美奈子 201211
白壁を蝉の脱殻まぶしめる 磯田せい子 ぐろっけ 201212
木洩れ日のまたもゆさぶる蝉の殻 原友子 201302
にがむしや仁王の乳に蝉の殻 山田六甲 六花 201309
六道の辻にころがる蝉.の殻 尾崎みつ子 雨月 201310
細枝に二匹抱き合ふ蝉の殻 青木朋子 201312
神木を登りかけたる蝉の殻 南うみを 風土 201405
けふ我は何を為せしか蝉の殻 渕上千津 201410
蝉殻を舳先につけて舟花壇 能村研三 201410
石段や宙に爪立て蝉の殻 上原重一 201410
殻抜けしばかりの蝉の濡れごころ 上原重一 201410
旅立ちはここからと告ぐ蝉の殻 江濱百合子 火星 201410
艶々とした蝉の殻拾ひけり 瀬島洒望 やぶれ傘 201411
蝉の殻脱げざるままに転びけり 村上和義 万象 201412
蝉殻を雑誌の上におく晩夏 竹内弘子 調 201412
いま抜けしばかりか蝉の殻濡れて 樋口英子 201501
蝉殻をぬぎつつあればセミヌード 八木健 八木健俳句集 201509
木の肌に爪の食ひ込む蝉の殻 久世孝雄 やぶれ傘 201510
蝉の殻かも縋るけなげなり 定梶じょう あを 201510
白樺の幹にびつしり蝉の殻 岡本敬子 万象 201511
蝉殻のついてゐる葉をそつと折る 宮本加津代 万象 201511
戦場のごところがれる蝉の殻 秋千晴 201511
菩提樹に縋り付きゐる蝉の殻 西村しげ子 雨月 201511
いつの間にいくつも庭に蝉の殻 岩井京子 201610
蝉の殻鉋屑ごと掃かれたる 秋千晴 201610
抜け殻となれざる蝉のいのちはも 西千代恵 雨月 201610
朝毎にブロック塀の蝉の殻 山荘慶子 あを 201610
俊寛のつひえし島や蝉の殻 沼田巴字 京鹿子 201707
俊寛のつひえし島や蝉の殻 沼田巴字 京鹿子 201707
蝉の殻輪と葉と幹にしがみつく 長崎桂子 あを 201709
身を裂きて我は生まれし蝉の殻 江島照美 201710
蝉の殻ボルダリングの元祖かな 本多遊方 春燈 201710
魔女の鍋には欠かせない蝉の殻 柳川晋 201711
欲望を解き放ちたる蝉の殻 柳川晋 201711
金輪際岩はなさじと蝉の殻 玉置かよ子 雨月 201711
吐息ほどの土をこぼせり蝉の殻 波悠 201712
蝉の殻はがすに力いりにけり 志方章子 六花 201712
拾ひ来し蝉の殻なり置きどころ 定梶じょう あを 201810
カサカサと飛ばされてゆく蝉の殻 高野昌代 201811
蝉の殻抜けぬ指輪で生きてゐる 丸井巴水 京鹿子 201811
積年の夢かなひしや蝉の殻 藤田美耶子 201812
自分の殻は己で破り蝉現る 渕上千津 201908
鴻司木槿に飴色の蝉の殻 谷口摩耶 201910
一草にまだ濡れてゐる蝉の殻 伊藤真代 201910
後の世の測り難しや蝉の殻 本田豊明 201910
歓喜に鳴く朝午後二時に蝉の殻 長崎桂子 あを 201910
金輪際草にすがりて蝉の殻 齋藤晴夫 春燈 201911
渾身で殻脱ぐ蝉や薄緑 福田禎子 末黒野 201911
窓枠のない窓だなあ蝉の殻 つじあきこ 202011
蝉の殻そのままにして墓洗ふ 藤生不二男 六花 202011
かほ足に泥の固まり蝉の殻 岡本尚子 風土 202011
川鳴りの耳許蝉の殻つぶす 亀田虎童子 202107
掃き寄せて髪一本と蝉の殻 浅田光代 風土 202110
まだ力ぬけてはをらぬ蝉の殻 石黒興平 末黒野 202111
道草の子のランドセル蝉の殻 今村千年 末黒野 202111
蝉の殻歩道にふたつ儚さを 長崎桂子 あを 202111
物想ふ容してをり蝉の殻 亀田虎童子 あを 202204
懐郷や指に絡むる蝉の殻 長尾タイ 末黒野 202211
固き壁をむんずと掴み蝉の殻 小林拓路 末黒野 202211
転生の奇しき形や蝉の殻 大曲ゆき枝 末黒野 202211
そこここに蝉の脱け殻終戦日 濱野新 やぶれ傘 202212

 

2023年8月19日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。