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聞くうちに蝉は頭蓋の中にゐる   篠原梵   石楠

  蝉の殻  落蝉  空蝉  蝉時雨  蝉の穴

作品
作者
掲載誌
掲載年月
ひんがしにターナーの空朝の蝉 大村峰子 万象 201111
爪切るや鳴きかけて止む油蝉 岩藤礼子 やぶれ傘 201111
呼び鈴にピタリと止みし蝉の声 高橋泰子 201111
犬噛んで羽音激しき落下蝉 増本明子 ぐろっけ 201111
はたと止む瞬時の静寂法師蝉 本多寿美子 雨月 201111
ここよりは唖蝉世界写経堂 伊東和子 201111
窓開くる度飛び込めり蝉の声 福島松子 ぐろっけ 201111
熊蝉の気合入れ鳴く劫暑かな 谷口俊郎 201111
蝉声の囃してチョイナ湯揉唄 コ田千鶴子 花の翼 201111
蝉声にせかされ我が身立て直す コ田千鶴子 花の翼 201111
蝉生るる時を孤独に耐へつづけ 安部和子 雨月 201111
蝉穴をほじりたる跡暮れなづむ 大島英昭 やぶれ傘 201111
蝉穴が笛を吹くかな夕翳り 田中貞雄 ろんど 201111
蝉ひとつぷいと吐き出し大欅 市村健夫 馬醉木 201111
蝉の声だけの一日でありにけり 笹倉さえみ 雨月 201111
蝉どちの楽終章となる調べ 鈴木石花 風土 201111
ダムに沈むを遁れ蝉飛ぶ千年家 密門令子 雨月 201111
石坂の落蝉風に揺れにけり 天野美登里 やぶれ傘 201111
ふと聞きつ木蔭に入りし法師蝉 岡田愛子 京鹿子 201111
とりついて木膚の色に油蝉 坂場章子 201111
燭ゆらぐ弁財天や法師蝉 坂上香菜 201111
間歩出れば坑夫迎ふる法師蝉 中井登喜子 201111
松蝉の声に瓦礫の村遠し 赤川誓城 ホトトギス 201111
初蝉を高層にきく旅の明け 恒成久美子 ぐろっけ 201111
落蝉の額にルビー三個あり 田尻勝子 六花 201111
落蝉のしばらく鳴いて止みにけり 藤生不二男 六花 201111
落ち蝉や舖道に落ちてなほ踠き 藤波松山 京鹿子 201111
落蝉の時に声出す日暮れかな 高橋みつ 201111
夕蝉やまはりさびしくなるばかり 中山純子 万象 201111
鳴き通すことの余生や夜の蝉 相良牧人 201111
歯ぎしりの釣瓶あふるる油蝉 梶浦玲良子 六花 201111
野路歩き心地よく聞く法師蝉 増田一代 201111
七年を土中に蝉よ叫ぶべし 池内結 ろんど 201111
七年の闇を残して蝉の穴 中尾廣美 ぐろっけ 201111
法師蝉豊臣の世は瞬く間 大橋晄 雨月 201111
法師蝉苔守り遅々と石と化す 森理和 あを 201111
時かけて爪を抜きけり蝉の羽化 永田万年青 六花 201111
夏をくひとめたいか蝉がまだ鳴く ことり 六花 201111
飛込みし蝉と一夜を過ごしけり 藤井久仁子 ぐろっけ 201111
慌てるな仰向けの蝉いま起こす 大西よしき ろんど 201111
日時計に影なき午後の法師蝉 手島靖一 馬醉木 201111
蝉を食ひ尽くす蟻翅が残つた ことり 六花 201111
今日は晴蝉のひときは高く鳴き 筒井八重子 六花 201111
踏めるものなら踏めと蝉が転がる ことり 六花 201111
ねんごろに鳴き終りたる法師蝉 米山喜久子 201111
唖蝉と一脈通じ合ふ性根 田中貞雄 ろんど 201111
フェリー来る島の熊蝉鳴くなかに 大崎紀夫 やぶれ傘 201111
ポストから遠ざかる背夜の蝉 村高卯 201111
一泊のルームキー受く蝉涼し 吉成美代子 あを 201111
大樹下命果てたる蝉の嵩 福田かよ子 ぐろっけ 201112
息通ふ七年前の蝉の穴 岡山敦子 京鹿子 201112
潜みゐるヒマラヤ杉の法師蝉 安藤久美子 やぶれ傘 201112
蝉鳴けり空向く形を疑はず 松本文一郎 六花 201112
蝉めぐる諍ひに兄泣きにけり 志方章子 六花 201112
蝉の声落し流るる浅野川 今村征一 ホトトギス 201112
祇園より僧の出て来し夜の蝉 織田高暢 201112
真昼間は蝉も眠つてをるらしく 今村征一 ホトトギス 201112
だしぬけに篠突く雨や法師蝉 熊切光子 末黒野 201112
初蝉や沢入り口に「猪注意」 萩原渓人 やぶれ傘 201112
逍遙の湖畔しづかに油蝉 有本南陵 ろんど 201112
法師蝉鳴いて夕日を戻しけり 池田光子 201112
落蝉の草葬となる風のなか 熊川暁子 201112
落ち蝉の声を絞りて飛び立ちぬ 橋本美代 やぶれ傘 201112
揺らぐかに蝉に膨るる卯辰山 今村征一 ホトトギス 201112
鳴き疲れ蝉横たはるビーナス橋 仲田眞輔 ぐろっけ 201112
明日はなき命を鳴きて法師蝉 田所洋子 雨月 201112
何かちよつとする気の出でしちつち蝉 折橋綾子 201112
法師蝉つくつく思ふ独りの歩 古田考鵬 雨月 201112
法師蝉しみじみ賎ヶ岳しづか 有本惠美子 ろんど 201112
法師蝉この夜限りと鳴きつづく 北村香朗 京鹿子 201112
しやかりきとなつて励むや朝の蝉 鳳蛮華 201112
透きとほる翅おもむろに蝉生るる 鈴木加代子 末黒野 201112
身の丈の蝉の鳴く木を墓標とす 亀井福恵 京鹿子 201112
山歩むごとく蝉鳴く朝かな 今村征一 ホトトギス 201112
蝉の尿(しと)まともに浴ぶる石仏 藤田かもめ ぐろっけ 201112
熊蝉にしつこく鳴かれ再起動 木戸渥子 京鹿子 201112
杜を抜け声の遠のく法師蝉 城戸緑 末黒野 201112
更けてなほ啼きつづけをり法師蝉 北村香朗 京鹿子 201112
アルデンテまでの一分法師蝉 平野みち代 201112
朝の蝉明日の辞世を繰り返す 和田照海 京鹿子 201201
誰が指揮大合唱の油蝉 上辻蒼人 風土 201201
にいにい蝉ブランチ無縁の日々が過ぎ 杉井真由美 京鹿子 201201
いち速く生れ二の丸の蝉となる 北村梢 京鹿子 201201
語尾ばかり聞えくるなり法師蝉 上崎暮潮 ホトトギス 201202
法師蝉裏六甲を鎮めたる 宮崎正 ホトトギス 201202
法師蝉声の終りは祈りめく 長山あや ホトトギス 201202
法師蝉森林浴といふ言葉 上崎暮潮 ホトトギス 201202
蝉捕りや式神混じる夕社 吉田葎 201204
初蝉や講師も窓に目を向けぬ 美田茂子 末黒野 201204
蝉落ちて歩く真昼のアスファルト 小林朱夏 201204
蝉捕りや式神混じる夕社 吉田葎 201205
松風と聞き松蝉の声と聞く 稲畑汀子 ホトトギス 201205
松蝉や西から天気下り坂 稲畑汀子 ホトトギス 201205
松蝉の日表といふ昂りに 稲畑廣太郎 ホトトギス 201205
水音のつづき松蝉つづかざる 稲畑汀子 ホトトギス 201205
熊蝉の歌ふ駅前広場かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201207
松蝉やエースの背中激励し 岡野安雅 かさね 201207
落蝉の草葬となる草のなか 熊川暁子 201207
油蝉泣けばなくほど土渇く 佐藤喜孝 あを 201207
言霊の消えて初蝉ふいに鳴く 水野恒彦 201208
初蝉を聴きつつ渡る平家谷 大西八洲雄 万象 201208
落蝉を土産としたる佳人かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201208
ちちとのみ一声鳴きし夜の蝉 山田六甲 六花 201208
四阿に蝉をひとりで聞いてをり 山田六甲 六花 201208
全集の背文字も見飽き油蝉 細野恵久 ぐろっけ 201208
朝蝉のにぎやかに夢奪ひけり 山田六甲 六花 201209
朝蝉に耳を洗へる寝覚めかな 山田六甲 六花 201209
この暁のこの蝉声のなにならむ 山尾玉藻 火星 201209
はやばやと蝉鳴かずして仰向けに 早崎泰江 あを 201209
雨のあと陽射す木立に油蝉 丸山酔宵子 かさね 201209
蝉声にのこりし夫の尿袋 山尾玉藻 火星 201209
却初より闇深かりし蝉の穴 水野恒彦 201209
初蝉や鎮守の杜の大欅 藤原繁子 春燈 201209
落蝉のひととき羽をばたつかす 中江月鈴子 201209
木の音より風の運べる蝉の声 安藤虎酔 かさね 201209
法師蝉日々手習ひで暮れにけり 中島玉五郎 201209
松蝉の音域森をふくらませ 橋本くに彦 ホトトギス 201209
蝉の穴よりたたかひの音すなり 本多俊子 201209
蝉声に包囲されゐる蕎麦屋かな 塩路隆子 201209
魂おくる蝉の寄る木と寄らぬ木と 神蔵器 風土 201209
絞りつつ鳴きあげてゆく油蝉 山田六甲 六花 201209
一本の松を陣取る油蝉 大信田梢月 万象 201209
朝蝉に夢の離れて行きにけり 山田六甲 六花 201209
長鳴きの蝉読経と共に止む 大畑善昭 201210
地上へと登りし人に蝉の声 出口誠 六花 201210
托鉢か門に蝉来て鳴きにけり 松嶋一洋 201210
原城の土より生れし蝉のこゑ 中島久子 馬醉木 201210
穴探し蝉の脱皮を見きわめし 田島昭久 かさね 201210
蝉涼し機にかかれる上田縞 宇都宮敦子 201210
蝉鳴き繼ぐ中學校の大きな木 佐藤喜孝 あを 201210
蝉の聲充分浴びしおむつかな 佐藤喜孝 あを 201210
蝉の声三味の音消す奥座敷 安藤虎酔 かさね 201210
蝉のなか汗の己が身鎮めけり 吉弘恭子 あを 201210
絶叫の蝉許します聞く我慢 竹内悦子 201210
水音に負かされてをり蝉の声 出口誠 六花 201210
身に余る迎賓館の蝉の声 和田政子 201210
塩きかせ肉焼くかをり蝉の昼 坂本依誌子 春燈 201210
松蝉や砂立ち上がる風の道 山田佳乃 ホトトギス 201210
山車の如蝉曳かれゆく蟻の道 小池清司 かさね 201210
初蝉をしかと捉へし老の耳 水原春郎 馬醉木 201210
初蝉の二日違はずあらはるる 加藤みき 201210
初蝉についと帽子のつば上ぐる 阪上多恵子 雨月 201210
肛門科嵐山堂の蝉鳴けり 竹内弘子 あを 201210
終の日の蝉の乱舞は朴樹下に 能村研三 201210
落蝉や藁をも縋る術の無き 東良子 201210
夕爾忌の近しと告ぐる蝉の声 平絵美子 春燈 201210
黙祷の胸に蝉声届きけり 松嶋一洋 201210
鳴く力まだ調はず朝の蝉 大橋晄 雨月 201210
鳴き切つて蝉の骸の軽さかな 松嶋一洋 201210
じじと鳴く落蝉はなほ羽撃きて 池内とほる かさね 201210
初蝉や声の息継ぎ繰り返し 国包澄子 201210
放課後の数へ切れない蝉の声 高田令子 201210
蝉の羽化千里の道を一歩づつ 東良子 201210
蝉声のもう始まつてゐる薄明り 丹生をだまき 京鹿子 201210
豪雨あと蝉も啼かざる大暑かな 中山純子 万象 201210
降りしきる蝉声戦後永かりし 安立公彦 春燈 201210
行合の暮れ残る空法師蝉 吉田啓悟 かさね 201210
軒端より蝉降り落ちる夕まぐれ 能村研三 201210
リーゼント頭がのぞく蝉の穴 藤田素子 火星 201210
一言が心の隅に夜の蝉 野坂民子 馬醉木 201210
吾一人ひかりと来たり蝉生る 安田一郎 京鹿子 201211
朝蝉や樹木にもある木の番地 柴田久子 風土 201211
朝蝉の声が覗きし目玉焼 丸井巴水 京鹿子 201211
忠魂碑にシャワーさながら法師蝉 村上倫子 201211
竹寺の深き矢倉や蝉の声 加藤静江 末黒野 201211
地下駅をあがり出づるや蝉集く 戸辺信重 春燈 201211
谷間ひに平家の館蝉暑し 大西八洲雄 万象 201211
元興寺蝉と塔跡なにもなし 木本蓚 ぐろっけ 201211
大寺の楠の枝ぶり蝉涼し 大橋伊佐子 末黒野 201211
みんみん蝉みんみんみんと鳴き通す 舩山東子 ろんど 201211
熊蝉や墓標はなべて山を背に 上野進 春燈 201211
蝉噪の不意に止みたる原爆忌 堀内五齢 春燈 201211
蝉涼し富士のかたちの釘隠し 有本惠美子 ろんど 201211
蝉眠る時折寝言放ちつつ 板倉眞知子 ぐろっけ 201211
蝉捕りにゆく作文の出来ぬまま 柴田佐知子 201211
蝉盛ん太陽旺ん熔岩を踏む 渡邊千枝子 馬醉木 201211
蝉死して夕日の中に裏返へる 清海信子 末黒野 201211
蝉の穴一斉に吾を訝しむ 田中貞雄 ろんど 201211
一山の蝉を気にせず座禅組む 久保東海司 201211
降るほどのなかに一匹法師蝉 柿沼盟子 風土 201211
初蝉や未だ覚めやらぬ宮の杜 中野久雄 末黒野 201211
何蝉といふことなくて鳴きはじむ 十川たかし 201211
法師蝉鳴き声帰路の足軽し 菊地崇之 かさね 201211
落蝉に触るればじじと飛び立てり 榊山智恵 末黒野 201211
幼子のポケットの蝉ふいに鳴く 斉藤マキ子 末黒野 201211
夕蝉やクレーン一基残る空 松下信了 万象 201211
鳴き疲れ蝉も静もる夕厨 古林田鶴子 ぐろっけ 201211
鳴きながら旋回をして蝉落ちぬ 赤松赤彦 六花 201211
鳴ききつてまだ余力ある油蝉 上谷昌憲 201211
叱らるる子の手に蝉がちよつと鳴く 柴田佐知子 201211
七年のタイムトンネル蝉生る 古沢幸次 ろんど 201211
初蝉や小径の苔のやはらかき 岡野里子 末黒野 201211
法師蝉夕日の余韻広げをり 伊藤平八 末黒野 201211
法師蝉二人にもどる朝餉かな 佐々木みどり 馬醉木 201211
法師蝉向うの山の木霊とも 十川たかし 201211
変る世をつくづく嘆く法師蝉 向江醇子 ぐろっけ 201211
払暁の蝉の背を割る気配かな 鈴木鞠子 末黒野 201211
複眼の蝉と知りつつ浴びし尿 古沢幸次 ろんど 201211
真夜中や九月の蝉の声ひとつ 岩下芳子 201211
微睡の蝉の羽ばたきにて目覚む 山内碧 201211
蝉 →9      

 

2021年7月18日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。