野 焼 2       203句

火の雫こぼす松ある野焼かな   飴山實   歳時記(講談社)

末黒野  焼野  野焼  野火

作品
作者
掲載誌
掲載年月
すれ違ひざま野焼の香作務衣の僧 木野裕美 ぐろっけ 200507
野焼きあと摘みし蓬の香のつよき 赤松郁代 万象 200507
野焼の炎人語を奪ふ高さもて 福地初江 200601
阿蘇の野を焼く日待たるを旅仕度 稲畑汀子 ホトトギス 200602
風の出て野焼中止の布令走る 稲畑汀子 ホトトギス 200602
佐用郡野焼の跡の棚田かな 山田六甲 六花 200603
野焼き人寝釈迦鴉を荼毘にふす 禰寝瓶史 京鹿子 200603
付け火して飛び火して野を焼きにけり 山田六甲 六花 200604
野を焼くや遙けきものを恋ひわたる 田中藤穂 あを 200604
子等を追ふ母の声鋭き野焼かな 斉藤裕子 あを 200604
くすぶる野焼濡らした藁で叩きをり 鈴木多枝子 あを 200604
阿蘇の空浄し野焼も昨日済み 泉田秋硯 200605
野焼して帰る漢とすれ違ふ 平田紀美子 風土 200605
野焼の指揮子よりも若き自治会長 須原正三 200605
二階窓開けば野焼匂ひくる 中村輝子 酸漿 200605
鯖街道野焼のけむり車中まで 神長裕子 200606
野焼前雨は水輪を広げをり 浜口高子 火星 200606
たちまちに日蝕のさま大野焼 渡邊民子 200607
野を焼いて火の神の舌ちろと見し 本間羊山 風土 200607
野を焼いて夜は俄かなるざんざ降り 糸井芳子 200608
百万遍忽と野焼のけむり立つ 小形さとる 200702
アドバルーン野焼の煙纏ひをり 紺野とも子 200704
競ひ立つものは叩かれ野焼の火 望月晴美 200704
野を焼くや生れくるもの亡ぶもの 藤井昌治 200704
野を焼きてみな百姓の眼となれる 藤井昌治 200704
野を焼きて煤の匂ひの服を脱ぐ 泉田秋硯 200705
野焼済み今日青空の草千里 泉田秋硯 200705
野焼きの火土橋の際に叩かるる 風間史子 200705
野を焼いて朝の雨を呼びにけり 中嶋昌子 春燈 200705
軋みつつ日差し過ぎゆく野焼あと 藤岡紫水 京鹿子 200705
夕闇に夜叉とはだかる野焼人 大橋敦子 雨月 200705
独り野を焼いて今昔物語 小宮山勇 遠嶺 200705
花温室の外をくすべて野焼の火 永田二三子 酸漿 200705
目の前に煙野焼の始まれり 筒井八重子 六花 200705
野焼見にゆけり鞄のななめ掛け 蘭定かず子 火星 200705
野焼人帰る夕日の流れけり 岡本眸 200705
やはらかき枯色に飛び野焼の火 稲岡長 ホトトギス 200706
野焼して火疲れの目の男かな 布川直幸 200706
野を焼いてみんなドラマにしてしまふ 松田都青 京鹿子 200706
見えさうで見えぬ未来図野焼跡 山元志津香 八千草 200707
身の枷の徐々にとかれし野焼かな 横松しげる 遠嶺 200707
野を焼いて還りゆくもの生るるもの 稲畑廣太郎 ホトトギス 200802
勢子のかげ走り野焼の火の行方 稲畑汀子 ホトトギス 200802
野焼せし顔の脂を洗ひをり 山田六甲 六花 200802
夕べには雨となりけり野焼後 山田六甲 六花 200803
地平線消して野焼の広がれり 中村輝子 酸漿 200803
逃げのびしもの等忘然大野焼 泉田秋硯 200805
野を焼くや削られてゆく高麗郡 布施まさ子 風土 200805
明日焼かるる枯野にありし孤愁かな 西川五郎 馬醉木 200805
風の向きぐるぐく変る野焼かな 内海良太 万象 200805
遠近に野の声上り堤焼く 岩下芳子 200805
ほうほうと野焼きに追はれ影法師 栗栖恵通子 200806
野を焼ける火色の中に人動く 西村しげ子 雨月 200806
駆け出せば止まるを知らず野焼きの火 貝森光洋 六花 200806
野を焼いて陰陽石を顕にす 柴崎甲武信 月日 200811
野仏を洗ひに来たる野焼後 山田六甲 六花 200902
いかるがの塔を揺るがす野焼かな 鷹羽狩行 200903
一念のほのほ進めり夕野焼 鷹羽狩行 200903
遠近に野焼の土手の煙りけり 山田六甲 六花 200903
縺れつつ野焼の炎広ごりぬ 山田六甲 六花 200903
野焼の火歩く速さに拡ごりぬ 山田天 雨月 200904
万葉の世も詠まれたる野焼かな 柿本麗子 200904
野を焼いて先手先手と打つ漢 小澤克己 遠嶺 200905
胸中に別の火が立つ野焼かな 小澤克己 遠嶺 200905
風不意に野焼きのあとの闇匂ふ 近藤敏子 200905
懐されし日輪鈍く野焼果つ 森脇貞子 雨月 200905
野を焼くや雨を生まむと雲到り 三由規童 雨月 200905
葦焼の煤ながれゆく渡良瀬野 佐々木力 炎環 200906
喪の一年野焼きの煙流れゆく 伊藤さち 春燈 200906
野を焼けば犬の遠吠え夥し 佐用圭子 200907
火が風を風が火を呼ぶ野焼かな 河野美奇 ホトトギス 200907
野の晴れに声を揃へて野焼かな 鴨下昭 200907
野焼の香まとひし男来て坐る 田原陽子 200907
陽を隠す高き煙の野焼きかな 松吉惠子 遠嶺 200907
洗ひ場に野焼きの匂ひ侵入す 吉村摂護 200908
竹爆ぜる音も混じりて野焼かな 鈴木勢津子 樹間 200911
野は焼かれゐて手鏡に唇(くち)写す 品川鈴子 はらから 200911
記紀の世は海でありし野焼き進む 西村操 雨月 201001
泊りゐし野焼のふれを聞きたりし 井上信子 201001
飛鳥路の石仏の辺の野焼あと 豊田都峰 土の唄 201002
山ふもと小さく野焼してゐたり 豊田都峰 土の唄 201002
大阿蘇の野焼の日取り定まらず 稲畑汀子 ホトトギス 201002
鉄屑になり果てし鎌野焼き跡 山田六甲 六花 201003
野焼見て戦国の世を思ひけり 塩路五郎 201004
虫けらといふ命あり野を焼けり 中島あきら 201004
飽食の骸黒々野焼き跡 鈴木阿久 201004
火の粉とび野焼始る畑かな 小島三恵 酸漿 201004
野焼消す側にまはりし菩薩貌 佐藤山人 201005
つぎつぎに十八番飛出す野焼酒 佐藤山人 201005
村あげて野焼中なる央よぎる 佐藤山人 201005
願つてもなき野焼後の夜雨なり 佐藤山人 201005
ぶつかつて柱なしけり野焼の火 蘭定かず子 火星 201005
振り向きし野焼の顔のおそろしき 涼野海音 火星 201005
野を焼く火人うつくしく逝きにけり 三上程子 春燈 201005
野焼きの火池の葦へと伸びゆける 山田六甲 六花 201005
風読みて野焼の口火放ちけり 守屋井蛙 酸漿 201006
野を燒くや我が身の荼毘を重ね見る 服部郁史 京鹿子 201007
大宰府の方に野焼の煙かな 藤井美晴 やぶれ傘 201007
天平の野に戻したる野焼かな 山本無蓋 201007
風の神騒ぎだしたる野焼かな 倉持梨恵 201008
佐比売野の風雨に野焼果されず 波多野弘秋 ホトトギス 201009
十の香のして野良焼と言ふ日焼 池田崇 201009
渡良瀬の太陽焦がす野焼かな 杉本光 201101
野焼きせる煙の奥の夕明り 松元末則 酸漿 201104
紫立つ銅鐸村の野焼きかな 竹内悦子 201105
消防車土手に陣取る野焼かな 葺石鈴代 馬醉木 201105
デカンショの野や矍鑠と野焼びと 浜福惠 風土 201105
野焼して身の錆かくす面構へ 鴨下昭 201105
屈託を火に走らせて野を焼ける 柴田良二 雨月 201105
野焼とも見えて遥かに煙たつ 川崎良平 雨月 201105
野焼して風上に立つ殺気かな 松本文一郎 六花 201106
野焼き追ふ写真倶楽部の漢どち 鈴木石花 風土 201106
峠まで雲降りて来し野焼あと 外川玲子 風土 201107
阿夫利嶺へ炎一筋野焼かな 城詰操 万象 201107
大阿蘇の表も裏も野焼の日 松田明子 201108
風を読み風に従ふ野焼勢子 松田明子 201108
仙石原赤き野焼の火を待てり 神蔵器 風土 201112
夕映えの秋吉台の野焼かな 中川浩子 末黒野句集 201203
老農夫野焼の煙に影写し 岡野安雅 かさね 201204
野焼あと棘あるものの燃えしぶる 久染康子 201204
野焼女の帰宅全身きなくさし 佐藤山人 201205
ひとまずは煖をとりをり野焼人 佐藤山人 201205
兜太派も汀子派もゐて野焼宴 佐藤山人 201205
背をはたき合うてこれより野焼酒 佐藤山人 201205
野焼男の火を叩きてはカップ酒 塩路隆子 201305
馬手に棒弓手にむすび野焼守 岡崎伸 201305
サイロヘと野焼のけむり届きけり 瀬島洒望 やぶれ傘 201305
婚活や誰か野焼の香を纏ひ 上野進 春燈 201306
阿蘇野焼父の記憶の色であり 菊川俊朗 201306
呑みごとは纏まり速し野焼あと 佐藤山人 201306
雄鶏の一声野焼跡凹み 高尾豊子 火星 201306
昏れかかり野焼きの火屑海に散る 松原智津子 万象 201306
アユタヤの野焼を胸に終列車 大口堂遊 春燈 201404
僧一人畦道歩く野焼かな 柴田久子 風土 201405
対岸の樹形を崩す野焼かな 柴田久子 風土 201405
野焼の火芒の株に残りをり 前田忍 火星 201406
雄心の燃え尽きるまで野焼かな 細川洋子 201406
たんぽぽや野焼の火の粉とんで来し 浜口高子 火星 201406
昼の月野焼の煙の紗に浮み 浜口高子 火星 201406
広野焼く闇の厚さを火が縮め 松田都青 京鹿子 201407
首塚に迫る炎の野焼かな 村田岳洋 ろんど 201408
高千穂の峰をはろかに野焼かな 稲岡みち子 雨月 201501
野焼あと鎮めの雨となりにけり 樋口英子 201501
川べりの小さき炎野焼せり 大日向幸江 あを 201504
めらめらと地を迫り来る野焼の火 岡真紗子 201505
火と風を統べる漢の野焼かな 有松洋子 201505
やりたくて街より来たる野焼勢子 佐藤山人 201505
野焼果て闇に安堵の人の声 武政礼子 雨月 201506
鳥一羽走り出でたる野焼かな 嶋崎豊子 雨月 201506
地を這うてちぎれて飛んで野焼の火 嶋崎豊子 雨月 201506
逃がすなと怒鳴られて追ふ野焼かな 小林輝子 風土 201506
曇天に野焼の煙吸はれゆく 恩塚夕子 馬醉木 201506
志野焼の仄かな紅や春愁 中林晴雄 201507
バーナーを手にうろうろと野焼かな 原田達夫 箱火鉢 201511
ひそむもの飛び立たせつつ野焼かな 稲畑汀子 ホトトギス 201602
野焼して空へ戻しぬ草の霊 山田六甲 六花 201602
岳麓を韋駄天走り野焼の火 神田美穂子 万象 201605
背を拂ひ合うてこれより野焼酒 佐藤山人 201605
望郷のにはかにつのる野焼かな 石黒興平 末黒野 201605
やはらかき夜空もどるや野焼あと 古川幸子 春燈 201605
点火して草はしり出す野焼かな 祐宗千代子 雨月 201605
時に竹爆ぜる音ある野焼かな 宮井知英 201606
消防車揃ひ野焼きの火の手あぐ 野畑さゆり 201606
風呼びて野焼の炎走り出す 岸洋子 201606
黒皮の手帖のやうな野焼きあと 塩貝朱千 京鹿子 201606
灰神楽たちて野焼の矛納め 藤代康明 201607
火を放つ瞬のときめき枯野焼く 杉本光祥 201506
野焼衆一揆のごとき身拵へ 内海良太 青嶺 201612
灰神楽たちて野焼きの矛納め 藤代康明 201701
野焼跡とはあきらかに風匂ふ 稲畑汀子 ホトトギス 201702
火のかたち風のかたちに野焼かな 中村洋子 風土 201705
野焼とも見えて遥かに煙たつ 川崎良平 雨月 201705
鳥を追ふことがはじめの野焼かな 川崎良平 雨月 201705
御嶽のきれいに晴れて野焼かな 山田春生 万象 201705
風が火を火が風を追ふ野焼かな 山本則男 201705
勢子として千里自在に野焼の日 松田明子 201705
乾坤へ野焼の敬や触れ太鼓 田中とし江 201705
わけも無く心昂ぶる野焼かな 石黒興平 末黒野 201705
晴れ渡る空を焦がして富士野焼 岡田ちた子 雨月 201706
千余人火放つ富士の野焼かな 岡田ちた子 雨月 201706
風の音火の音猛る富士野焼 岡田ちた子 雨月 201706
仙石原の地肌顕や野焼跡 安斎久革 末黒野 201706
野焼跡夕星一つ燦とあり 藤浴博子 京鹿子 201707
野焼の火果てて鎮めの雨となる 岩下芳子 201707
爪先に力を入れて野焼見る 高倉和子 201706
水背負ひ炎にかしづける野焼勢子 深川淑枝 201707
夕雲を海へ見送る野焼あと 深川淑枝 201707
川筋に煙そひゆく野焼かな 中村弘 万象 201708
日高路の海へ猛りし野焼の火 林陽子 万象 201709
野焼きして髪の逆立つ漢かな 那須淳男 馬醉木 201804
野焼きして胸底の火やきつくさむ 柴田靖子 201805
空焦がし炎の猛る富士野焼 岡田ちた子 雨月 201806
富士野焼一千余人の勢子走る 岡田ちた子 雨月 201806
野焼あと猛りしづめのやうに雨 佐々木よし子 201806
野焼きせる漢や肩をいからせて 岡田史女 末黒野 201806
ウォータージャケットの水補給して野焼勢子 永淵惠子 201808
氏神の空搦めたる野焼かな 池野つむぎ 馬醉木 201905
野焼の火ときをり躊躇してをりぬ 高橋将夫 201905
横利根の堤にしかと野焼跡 小林共代 風土 201906
猛るほど更の風くる野焼かな 石黒興平 末黒野 201907
音爆ぜて高まる野焼富士裾野 森清信子 末黒野 201907
長梅雨に湿る水指遠野焼 宮田豊子 春燈 201909
火の音に火の道できる野焼かな 安食哲朗 201910
野焼 →3      

2021年4月11日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。