4 (蝦蟇)      218句

老鶏の蟇ぶらさげてあるくかな  飯田蛇笏  山響集

ひきがへる  ひきがえる  蟾蜍  蟇(蝦蟇)  がまがへる

作品
作者
掲載誌
掲載年月
壬生狂言張子の蟇の出でませり 鈴木朗月 万象 200901
蓮の葉に大き顔出す蟇 滝沢伊代次 万象 200906
手をついて庭の主と蟇出づる 高橋和女 春燈 200906
天と地のぶつかり合ひて蟇出づる 近藤喜子 200907
本堂の扉の全開に蟇鳴けり 岩月優美子 200907
すつとぼけ貌で出できし蟇 石脇みはる 200908
蟇蛙出でし寿限無寿限無と鳴いてをる 中島陽華 200908
裏庭に住みつく蟇や走り梅雨 橋本貞二 酸漿 200908
一山の闇知り尽す蟇 菅原末野 風土 200908
まぎれなく去年のお前蟇 斉藤裕子 あを 200908
蟇模索止めよと吾に告ぐ 泉田秋硯 200909
黙の蟇と一会の息を合はしけり 岸田爾子 200909
噴煙や乱を好みし蟇 延広禎一 200909
大吟醸たしかに蟇ののどぼとけ 久津見風牛 200909
裏木戸に足留めされし夜の蟇 齋藤朋子 やぶれ傘 200909
休日の馬場に現れたる蟇 浜口高子 火星 200909
いちまいの石の濡れぐせ蟇 戸栗末廣 火星 200909
かの戦とは応仁の乱蟇の恋 深澤鱶 火星 200909
蟇鳴きて池膨れくる夕べかな 阪上多恵子 雨月 200909
水撒けば何処より来る蟇 斉藤裕子 あを 200909
今日はまだか蟇の心配してをりぬ 斉藤裕子 あを 200909
のびさうな肌をしてをり蟇 斉藤裕子 あを 200909
蟇鳴いて大闇ずらしをり 川崎かずえ ろんど 200909
人去りし夕べの苑に蟇とゐる 小山徳夫 遠嶺 200910
蟇久しく酔を忘れゐし 鎌田篤 雨月 200910
沼杉の聳ゆる森の蟇の声 塩見治郎 雨月 200910
三坪の庭に大蟇飼ふてをり 飯島風花 200910
小暗さに蟇昼をなく法の庭 宮崎正 ホトトギス 200911
庭隅の屋敷稲荷と蟇 國保八江 やぶれ傘 200912
蟇鳴くや母の生家の太柱 山本耀子 火星 201003
蟇出でて睡気覚しの鳴き袋 平子公一 馬醉木 201005
蟇数珠子見付け岸辺に座りこむ 木村コウ 酸漿 201005
山の池顔出し鳴くや蟇 滝沢伊代次 万象 201006
蟇鳴くや文殊菩薩に祈るとき 水原春郎 馬醉木 201007
蟇出でて「歩こう会」の列横切る 持田信子 春燈 201007
目が合うて上目遣ひし蟇 松岡和子 201008
国盗りの城に出でける蟇 延広禎一 201008
蟇交む天満宮の祝詞かな 竹内悦子 201008
太陽は母の光よ蟇交む 本多俊子 201008
旧居かの蟇ともどもに失せたるよ 辻直美 201008
身じろがぬ箱根関所の蟇 石原光徳 酸漿 201008
夕風に蟇鳴立てて恙無し 長崎桂子 あを 201008
土下座せる本性如何に蟇 塩路五郎 201009
蟇出でて大将軍の面構へ 岩下芳子 201009
産卵の蟇裏山を降りて来し 佐野和子 万象 201009
蟇こゑモノクロに写りけり 甲州千草 201009
蟇太郎蟇子と名付け庭の蝦蟇 葦原葭切 春燈 201009
わが祖父の声かと見れば蟇 遠藤若狭男 201010
泥の田の蟇顔をあげ動きけり 石脇みはる 201010
沼神の在すとでんと蟇 近藤きくえ 201010
蝦蟇一歩動きしのちをかしこまる 藤井美晴 やぶれ傘 201010
蟇譜代家老となりて棲む 鈴木直枝 ろんど 201010
庭石にでんとかまえて蟇 筏愛子 201011
蟇鳴くやこの世と違ふ夜の淵に 服部早苗 201011
禅院の回廊くぐる蟇 阿部ひろし 酸漿 201011
蟇戻り池に住みつく猛暑なり 伊藤いな栄 酸漿 201011
穴を出て昨日や今日の蟇でなし 安住敦 春燈 201103
ひやひやと蝦蟇の目あまた大唐津 瀬川公馨 201104
土くれの動くとも見え蟇 熊切修 末黒野 201104
山荘は廃居となりぬ蟇 稲畑汀子 ホトトギス 201106
棲む蟇に明け渡したる山の荘 稲畑汀子 ホトトギス 201106
足許にかしこまりたる蟇 稲畑汀子 ホトトギス 201106
太腹を抱へて蟇の穴出づる 児玉寛幸 馬醉木 201106
大地震の停電の夜を蟇出づる 沼崎千枝 末黒野 201106
裏庭に桜月夜の蟇鳴けり 橋本貞二 酸漿 201106
蟇穴を出て筮竹をさばきけり 柴田佐知子 201107
片脚の遅れて出たる蟇 山田六甲 六花 201107
池の端超低音の蟇鳴けり 坂根宏子 201108
蟇交ると云へばなぜか法善寺 小形さとる 201108
低音は雨を呼ぶ声蟇 藤本章子 201109
夜を醒めて途切れがちなる蟇のこゑ 平野みち代 201109
蟇一期一会といふ構へ 相良牧人 201109
蟇いづこ池は寄進の蓮ばかり 大坪景章 万象 201109
切株が玉座となりし蟇 酒本八重 201109
蟇交る巨きな闇となりゐたり 小形さとる 201109
大海なぞ知らぬ存ぜぬ蟇 正谷民夫 末黒野 201110
夕闇の影ぬらし来る蟇 齋藤厚子 201110
南無三宝撫で肩の蟇穴に入る 柴田佐知子 201111
生きること死ぬこと蟇の目の左右 伊藤希眸 京鹿子 201111
蟇鳴いて戒壇堂の暮れのこる 雨宮桂子 風土 201111
なかなかに一歩が出でず蟇 根岸善行 風土 201201
蟇なくや曾津若松本覺寺 久保田万太郎 春燈 201205
蟇穴を山て無呼吸外来の戸 荒井和昭 201205
蟇出でて居座りゐたり風木舎 山田春生 万象 201206
三月やまかり出でたる蟇 小川玉泉 末黒野 201206
山ひとつ負うて出てくる蟇 柴田佐知子 201207
酢の匂ふ夕べ出でゐし蟇 山尾玉藻 火星 201207
蟇穴を出でまつかうの鳳凰堂 山田美恵子 火星 201207
まほろばに石の顔して蟇出づる 本多俊子 201208
鬱勃の闇のゆらぎを蟇 上谷昌憲 201208
万太郎を知る蟇なるや本覚寺 物江康平 春燈 201208
御尊牌守りてみてらの蟇鳴けり 佐藤美紀 ろんど 201208
蟇鳴いて室生寺の闇ひろごりぬ 天谷翔子 火星 201208
蛇様へ蟇の貫録舌を出す 植木緑愁 201209
蟇出でて子の居ぬ家を賑はす 安住敦 春燈 201209
薄ぐもり蟇鳴く八雲旧居かな 北崎展江 くりから 201209
月赭くして生酔の蟇出づる 竹内弘子 あを 201209
言いたきこと黙して勝ちよ蟇親し 福島しげ子 ろんど 201209
遺伝子の糸脈々と蟇 中田禎子 201210
己が声意外にひびく蟇の鈍 鴨下昭 201210
どの郷も捨て田を抱ふ蟇 森屋慶基 風土 201210
大風の止みしベンチの蟇 浜口高子 火星 201210
穴出でし蟇に日照雨の通りたる 榎本文代 万象 201210
蝦蟇の棲む山懐や新走り 萩庭一幹 馬醉木 201211
往還に蝦蟇ゐる雨後の月 藤井美晴 やぶれ傘 201211
屋敷神の辺りいつもの蟇の出て 國保八江 やぶれ傘 201301
都より赦免は未だ蟇鳴けり 和田照海 京鹿子 201301
蟇家出でてなほ母の圏 田中貞雄 貞雄自註句集 201301
蟇発条ねむらせてゐる容 山尾玉藻 火星 201306
老眼鏡ずらして蟇の眼と合ひぬ 浜口高子 火星 201306
蝦蟇出てきて代田にごりかな 山田六甲 六花 201306
蟇礫かれて紙となりゐたる 福島せいぎ 万象 201310
蟇池塘に浸り動かざる 内藤恵子 万象 201311
仲間内ではソプラノなんです蟇蛙 甕秀麿 201402
がうがうと此の世をなげく蟇 小菅美代子 ぐろっけ 201403
蟇出でて区画整理に遭ひにけり 吉田葎 201405
天竺の岸に着きたるがまがえる 竹中一花 201405
蟇出でてすぐ初陣や沼濁す 鳥居美智子 ろんど 201406
残されしひとはひとりや蟇の闇 竹貫示虹 京鹿子 201406
掃き寄せに重石のごとく蟇 久染康子 201407
蟇の黙ふかし浮世のうたてさに 丸山佳子 京鹿子 201407
外灯のふいに点りし蟇 山尾玉藻 火星 201407
婿をあつめて沼を揺らせり蟇の婚 鳥居美智子 ろんど 201407
棒でよける蟇の體重感じけり 丸山佳子 京鹿子 201407
日の暮れの垣根の下に蟇の待ち 石原健二 やぶれ傘 201407
目瞑りて明日を想へばひき蟇の声 木村ふく 馬醉木 201408
こゑ立てず動かぬ蟇の大きかり 加藤みき 201408
蟇出でて隣りの猫が気がかりに 飛高隆夫 万象 201409
緑青の風流れゐる蟇の恋 城孝子 火星 201409
我が蟇と思へば金色にも見ゆる 飛高隆夫 万象 201409
わが気配捉へ動かぬ蟇 小川玉泉 末黒野 201409
湿原やほしいままなる蟇の声 鈴木鞠子 末黒野 201409
法医学を尻に敷きゐる蟇 鴨下昭 201409
蟇廃墟に残る釣瓶井戸 阿部綾子 ろんど 201411
道真中の蝦蟇がま踏ん張つて通せんぼ 今井充子 201411
根の国を出で来し蟇の仏がほ 熊川暁子 201411
少女来て啓蟄の蟇うらがへす 堀内一郎 堀内一郎集 201412
右足を畳み忘れて春の蟇 奥田茶々 風土 201506
蟇穴を出てしばらくを日溜りに 荒井和昭 201506
蟇のこゑを聞かむと集まりぬ 加藤みき 201507
たぢろがぬ蟇にも風のたはむれり 黒沢登美枝 201507
俳聖の庵かくも侘しく蟇啼けり 錫木妙子 馬醉木 201508
一寸の光陰いかに蟇 豊田都峰 京鹿子 201508
絶交と言ひたし蟇のひとつ跳ぶ 上野紫泉 京鹿子 201508
自分史の晩節汚す蟇 鴨下昭 201508
名を付けむ我家の一員蟇 赤座典子 あを 201509
卵塔の台座に坐り夜の蟇 大崎紀夫 虻の昼 201510
池巡る足を止めぬ蟇の声 片岡さか江 末黒野 201510
称名寺の静けさ破る蟇の声 塩川君子 末黒野 201510
何おもふ動かぬものに蟇 吉澤恵美子 春燈 201510
蟇ふみとどまるといふ力 岩岡中正 ホトトギス 201511
蟇一歩も引かぬ構かな 内海良太 万象 201511
月映る池面に蟇の大合唱 勝木享子 万象 201511
秘め事を語りし友よ蟇 秋川泉 あを 201511
蟇のそり奪衣婆冥し堂の内 大山夏子 201603
蟇出でて沼一枚の深曇り 徳井節子 馬醉木 201605
雨雲のたれて川辺に蟇鳴けり 白石正躬 やぶれ傘 201608
庭棲みの蟇の太郎の茂みかな 荒井和昭 201608
蹲踞して退かざる蟇の面構へ 佐藤山人 201608
通せんぼされて向き合ひ蟇 窪田佳津子 雨月 201608
蟾蜍長子の無口親ゆづり 窪田佳津子 雨月 201608
本陣染野家畏みて蟇 楠原幹子 201608
時空から零れていたる蟾蜍 水野恒彦 201608
白昼の静寂破りし蟾蜍 寺田すず江 201608
蟇山へ帰る月夜の渓明り 薮脇晴美 馬醉木 201609
改築す蟇の住処を安堵して 田嶋洋子 春燈 201609
よそゆきの顔して蟇の通りけり 久米憲子 春燈 201609
山神の小兵なるかな蟇 森屋慶基 風土 201609
鬱蒼とまさに隠沼蟇鳴けり 足立典子 雨月 201609
坪庭へ居候決め蟾蜍太る 伊藤希眸 京鹿子 201610
蟇人間界を問ふ構へ 相良牧人 201610
思案してゐるうち暮るる蟇 笠井敦子 201610
続々と昭和が逝くや蟇の声 田中藤穂 あを 201610
蟇出でて家族のことをきかれけり 中川句寿夫 ここのもん 201705
ふがふがと大器の威厳蟇 細川洋子 201707
世事知らぬ文学館の蟇 杉本光祥 201708
父祖の地を訪ぬる一夜蟇 今村千年 末黒野 201708
蟇歩くことば置きゆくごとくにて 水野恒彦 201708
蟇ないて太子の眼春いづこ 本多俊子 201708
一計を案じゐるかに蟇 佐藤保子 馬醉木 201708
わたくしに物申す貌蟇 阪倉孝子 201709
メタセコイアは森のあるじや蟇蛙 間島あきら 風土 201709
蟇歩めば気力生まれけり 頓所友枝 201709
庭先の何処にゐるのか蝦蟇の声 伊藤更正 やぶれ傘 201709
平和なり小さき庭にも蟇のゐて 須賀敏子 あを 201709
何ゆゑに土下座してをる蟇 中島昌子 201710
癌などに妻負けるなと蟇のこゑ 田中臥石 末黒野 201710
愛しきは逃げるに蟇の三拍子 田部井幸枝 201711
珍客の黄色味深き蟇 坂場章子 201711
空海に学びし多元蟇 瀬川公馨 201807
まかり出る蟇の寿命を問うて見る 佐藤玲子 春燈 201807
放哉の留守続くなり蟇 南うみを 風土 201808
振り向けば草に控へて蟇の貌 浜福恵 風土 201808
蟇が鳴く噴水のいとひそやかに 浜福恵 風土 201808
圓窓の悟り四角に蟇 中田禎子 201808
尼寺の主になりたる蟇 森岡正作 201808
蟇噛み付きもせず火も噴かず 森岡正作 201808
山雨来て誘ひ出されし蟇 和田照海 京鹿子 201808
土塊の動くとみれば蟇 岡田正義 雨月 201809
蟇声を出さねば失せてゆく 本多俊子 201809
きのふまでどこにゐたのか蟇 岩下芳子 201809
ひらめきは何処に失せたか蟇 岩月優美子 201809
命なる物のデフォルメ蟇 三木享 201809
野川まで蟇捨てにゆく葛の花 水原秋櫻子 馬醉木 201809
不幸負ふ顔などすなと蟇 山内碧 201809
蟇まずは扉を叩きけり 鈴木みのり 201809
蟇鳴いて背山前山雨の中 三村純也 ホトトギス 201811
晩年は律儀に生きむ蟇 杉田智榮子 馬醉木 201811
蟇歩く外科医も歩く雨上がり 鶴濱節子 船団 201812
蝦蟇そろり大名びいきの陣のぞく 鈴鹿仁 京鹿子 201907
蟇みなとりどりの王子かな 柳川晋 201909
侘び寂びも消えてしまひし蟇 寺田すず江 201909
諸肩に矜持あらはに蟇 栗原公子 201909
温暖化まだ間に合ふと蟇鳴けり 山中志津子 京鹿子 201910
一邑をねむりに沈めソロの蟇 高堀洋子 京鹿子 201910
鞍馬山の坂蟇疾走す 加藤みき 201911
隠れ蟇秋の湿りに顔を見せ 七郎衛門吉保 あを 201912
蟇 →5      

 

2021年5月14日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。