引鶴 (鶴引く)       117句

引鶴の先達の鶴雄々しかり   小沢さは子

鶴帰る  鶴引く    鶴来る

作品
作者
掲載誌
掲載年月

 悼井尾望東様

鶴引いて面影のなほ偲ばるる

稲畑汀子 ホトトギス 199903
引鶴の雲居の聲の落ちきたる 大橋櫻坡子 雨月 200003
江の島の凪ぎてまぶしや鶴引く日 皆川盤水 春耕 200003
鶴引くや深空に湖のあるやうに 小澤克己 遠嶺 200004
清め塩してより鶴の引きにけリ 華明日番 銀化 200004
引鶴に百帆の向き揃ふなり 山田美恵子 火星 200005
鶴引くや国見ごこちで見てゐたり 能村研三 200005
中空に声を残して鶴引けり 吉川郁美 200007
引鶴や骨あげの灰しほはゆし 延広禎一 200007
引鶴の孤高の翼広げけり 稲畑汀子 ホトトギス 200103
鶴引くとしばし平伏して山河 鷹羽狩行 200104
玄海の濤音天に鶴引けり 一瀬昭子 馬酔木 200106
鶴引きて形見のごときみ空かな 鷹羽狩行 200204
まなぶたの裏を経ずして鶴引けり 華明日香 銀化 200204
鶴引くやそのあと昏き日本海 政木紫野 馬醉木 200205
鶴引くや予報は北まで渦のなし 豊田都峰 京鹿子 200205
引き鶴の群れ中にゐる鶴のつう 山本耀子 火星 200205
引鶴や山の半分日の中に 谷口佳世子 200206
報恩のきぬを引鶴残しけり 大林淳男 銀化 200206
鶴引くにかなふ日和と仰ぎけり 渕脇登女 200305

 鈴木真砂女さんを悼み

引鶴の中の一羽となられしや

鷹羽狩行 200305
引鶴のこゑ束となる天路かな 近藤喜子 200305
鶴引いて棚田百枚風ばかり 山田弘子 草の蝉 200305
青墨の乾く速さに鶴引けり 水野恒彦 200306
鶴引くと地に雄叫けびの特攻碑 淵脇護 河鹿 200406
引鶴に大きな声をかけてみる 三橋泥太 遠嶺 200406
鶴は引く人差指のあひだより 八田木枯 夜さり 200409
鶴は引くこころのなかに灯を入れて 八田木枯 夜さり 200409
引鶴の消えてしまひし飲み門かな 八田木枯 夜さり 200409
引鶴や空と対話をしてをりぬ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200503
峙てる嶺々越えて引く鶴ならん 稲畑汀子 ホトトギス 200503
午後晴れて引鶴に空開け渡す 稲畑汀子 ホトトギス 200503
引鶴のもう振り向けぬ頸となり 宮内とし子 200505
稲架の杭畦に残して鶴引けり 淵脇護 河鹿 200505
中天に日輪の炎や鶴引けり 淵脇護 河鹿 200505
引く鶴は引きて恋鶴まだ引かず 淵脇護 河鹿 200506
鶴引くや空港公団解体さる 樋口愚堂 200508
鶴引くやIMAGINE讃美歌のごとく 辻美奈子 200604
引き近し空へ啼き交ふ鶴の声 小野千枝子 万象 200604
引き鶴のひたぶる声の暁け来たる 宮脇ちづる 200605
引鶴や惜しみをしみて左樣奈良 芝尚子 あを 200605
引鶴の一直線の帰心かな 荒木英雄 対岸 200605
引き鶴の遅れを囃す海女の声 平山風鳥 河鹿 200606
引鶴に山河まぶしく展けたる 尾辻のり子 河鹿 200606
鶴引くやくれなゐ零すこともなく 水野恒彦 200606

 悼 吉田明氏

鶴引くや番ひの一羽のみ攫ひ

北川英子 200607
遠ざかる鶴の残像引きにけり 稲畑汀子 ホトトギス 200703
引鶴の直なる頸に迷ひなし 望月晴美 200704
鶴引くや甲斐の山々平伏し 鷹羽狩行 200705
鶴引いて女ののんど動きけり 水野恒彦 200707
鶴引いてもとの木阿弥村となる 佐藤山人 200707

 中村孝一氏を悼み

鶴引くや長崎の鐘鳴るなへに

鷹羽狩行 200805
引鶴に風の介添ありにけり 吉田明子 200806
千の田鶴引きて名残の田畑かな 三輪温子 雨月 200806
鶴引くや旋回のたび光得て 鶴岡加苗 200807
鶴引きしあとの田何もなかりけり 稲畑汀子 ホトトギス 200903
鶴の引く大気漲りはじめけり 稲畑汀子 ホトトギス 200903
引鶴や天に標のあるごとし 大室恵美子 春燈 200906
村びとのこころの空虚鶴引きぬ 小泉貴弘 春燈 200907
風立ちて鶴引く日和となりにけり 田島洋子 200908
引鶴のまぎれてしまふ空の色 田島洋子 200908
引鶴や我が恋仇の訃報聞く 遠藤実 あを 201005
引鶴の峰越え宙に棹消ゆる 水野節子 雨月 201006
引鶴の千羽の羽ばたきすさまじき 水野節子 雨月 201006
田鶴八羽無事に引きけり八代村 川村欽子 雨月 201007
引き際の鶴唳いまも耳朶にかな 川村欽子 雨月 201007
鶴引きし里曲ひとまづ農に帰し 川村欽子 雨月 201007
引鶴を空の隠してしまひけり 松田明子 201008
引鶴や天へ水音山の音 間島あきら 風土 201011
鶴引くかあしたの月に声しぼり 山口貴志子 馬醉木 201012
引鶴や岬端あはく野馬立てる 山口貴志子 馬醉木 201012
引き鶴のはるかへ声を絞りけり 浜口高子 火星 201106
鶴引きし観察日誌吊られあり 浜口高子 火星 201106
鶴引くやじやがたらの芽のくれなゐに 戸栗末廣 火星 201106
引きどきの鶴を思へば酒余し 深澤鱶 火星 201106
望郷や夢の中にも鶴の引く 関根瑤華 201205
引き鶴の落しものめく水の月 石田きよし 201205
鶴泣かせ鶴を引かせて俳諧師 佐藤喜孝 あを 201212
引鶴の空の昏みに消えにけり 佐藤喜仙 かさね 201305
天心の影を濃くして鶴引けり 水木沙羅 201306
引鶴のこゑ逆縁を悼むかに 水木沙羅 201306
鶴引くや眠れぬ夜は眠らない 水野恒彦 201306
鶴は引きぐつすり睡らねばならぬ 水野恒彦 夢寐 201306
夕月に影絵となりて鶴引ける 村上美智子 雨月 201306
引鶴のまこと鉤なす棹をなす 辻佳子 馬醉木 201307
引鶴の声に祈りのありにけり 近藤喜子 201405
引鶴へ光り惜しまぬ水面かな 原友子 201405
鶴引いて塒に水を残しけり 板坂良子 馬醉木 201406
引鶴となりし消息ありそめし 稲畑汀子 ホトトギス 201502
大方は引きたる鶴の消息も 稲畑汀子 ホトトギス 201503
鶴引きしあと青空の呆けやう 安居正浩 201504
鶴引くや遥けしのぞみ追ひつづけ 寺田すず江 201506
引鶴の別れ大きく弧を描き 一民江 馬醉木 201506
鶴引けば帰ってきたるつばくらめ 高橋将夫 201507
鶴引くや女の腕しまふもの 大政睦子 京鹿子 201601
引鶴のひかりとなりし虚空かな 犬塚李里子 201605

 悼・上山先生

引鶴のひとすぢ目指す虚空かな

佐藤信子 春燈 201605

 悼・上山先生

鶴引くや一撃受けし胸の内

加藤良子 春燈 201606
思ひだすことも祈りや鶴の引く 辻美奈子 201705
百歳の遺影祀りて鶴引く日 塙誠一郎 201705
引鶴に星の光芒見て啼けり 水野恒彦 201706
たまきはる命つらねて鶴引けり 近藤喜子 201706
引鶴の遠嶺に向かひ羽搏きぬ 犬塚李里子 201706
引き鶴や天のまほらに一声を 吉田順子 201706
鶴引きて入動き出す干拓田 永淵惠子 201707
暁の大地ごと鶴引かむとす 柴田佐知子 201709
引鶴や豊旗雲に入日見し 水野恒彦 201805
引鶴のいつしか宙に混じり合ふ 岩月優美子 201807
引鶴の空塗りかへて遠ざかる 松田明子 201807
引鶴の声たかだかと北を指す 吉田順子 201904
引鶴や耶蘇集落に影落とし 荒井千佐代 202104
引鶴の風をとらへし空のあり 藤生不二男 六花 202106
引鶴や耶蘇集落に影落とし 荒井千佐代 202107
引鶴や段々畑に影ゆがみ 笹村政子 六花 202207
引鶴の終へしみ空の碧深し 伊藤希眸 京鹿子 202208
これよりは大灘の風鶴引けり 荒井千佐代空 202211
引鶴仰ぐハライソを見るごとく 荒井千佐代空 202211

 

2023年3月10日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

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