墓洗ふ 1    200句

どの家にも修羅一人あり墓洗ふ   櫂未知子   貴族

墓参 展墓

作品
作者
掲載誌
掲載年月
帰国せし移民一世墓洗ふ 鈴木茂朗 築港 199807
癌の身を詠みて入るべき墓洗ふ 三浦勲 199811
柳生の墓洗へる車椅子の子等 播磨武子 雨月 199811

 夫二十三回忌

本当は捨てられしやと墓洗ふ

岡本眸 199812
墓洗ふ父母の背中を流すごと 保坂加津夫 会者定離 199900
墓洗ふ逝きし手の顔想いつつ 伊藤一歩 いろり 199908
墓洗ふ聞える筈の無き声が 伊藤一歩 いろり 199909
里人の顔相似たり墓洗ふ 山田弘子 円虹 199910
元禄と漸く読める墓洗ふ 石垣幸子 雨月 199910
戒名の彫なぞりつつ墓洗ふ 渡辺政子 俳句通信 199910
線香のけむり真横に墓洗ふ 竹内悦子 199911
辞書になき父情てふ語や墓洗ふ 板垣紫洋 馬醉木 199911
城山に日の出ぬうちに墓洗ふ 斎藤双風 円虹 199911
鎮魂歌めける松籟墓洗ふ 藤田千代江 199911
禅寺丸柿の転がつてくる墓洗ふ 鈴木ふくじ 風土 199911
蝉時雨のいつも真中に墓洗ふ 鈴木ふくじ 風土 199911
墓洗う義姉の切なさ背で語り 桑原敏枝 いろり 199911
お隣りも家族そろひて墓洗ふ 松田裕子 六花 199911
撫でてみて又撫で妻の墓洗ふ 岡有志 ぐろっけ 199911
墓洗ふ老に刺青荒磯風 諏訪一郎 遠嶺 199912
不参詫びつつ亡き父の墓洗ふ 稲畑廣太郎 廣太郎句集 199912
何時逝くもよろしき齢墓洗ふ 大平保子 いろり 200009
先祖とは武士の端くれ墓洗ふ 松沢久子 いろり 200010
三方をビルに囲まれ墓洗ふ 大山文子 火星 200011
蚊に刺さることも供養と墓洗ふ 吉田多美 京鹿子 200011
墓洗ふみとりの頃のしぐさ出て 能村登四郎 200108
墓洗ふ月射すころを思ひつつ 能村登四郎 200108
新嫁と顔を近付け墓洗ふ 辻享子 シャガールの女 200108
雷鳴は父なる声か墓洗ふ 谷合青洋 酸漿 200109
お日様にこの身お任せ墓洗ふ 丸山佳子 京鹿子 200110
幼な名で呼びかけ兄の墓洗ふ 志水千代子 俳句通信 200110
法名となりて半年墓洗ふ 浅井千鶴子 いろり 200110
ゐのししの暴れたる墓洗ひけり 中村雅樹 百鳥 200111
友亡夫の墓洗ひたる秋彼岸 浅井千鶴子 いろり 200111
墓守の先づは去来の墓洗ふ 名和節子 200111
ペトロ名の墓洗ふ娘が会釈せり 岡有志 ぐろっけ 200111
屈つ背に呟きつづけ墓洗ふ 岸本久栄 雨月 200112
墓洗うサンドバッグを叩くよう 片岡秀樹 海程 200112
吾が世にて絶ゆる家名や墓洗ふ 林峰春 ホトトギス 200201
ささやける風に母あり墓洗ふ 遠藤匡子 遠嶺 200201
手桶さげ娘がひとり墓洗ふ 嶋田光枝 築港 200210
悲しきは妣にのみ告げ墓洗ふ 山下佳子 馬醉木 200211
疎まれしこともえにしや墓洗ふ 松原ふみ子 200211
父と子の命日同じ墓洗ふ 佐藤香女 京鹿子 200212
頭とも背とも思ひて墓洗ふ 大井貞一 京鹿子 200212
提げて来し水を大事に墓洗ふ 下平しづ子 雨月 200212
末つ子のまま年重ね墓洗ふ 岡田順子 ホトトギス 200301
松風に背を吹かれつつ墓洗ふ 永岡セツ 酸漿 200301
墓洗ふ腰が曲りて来し思ひ 中山砂光子 200302

 石田波郷墓前

訪ねあて師系づたひの墓洗ふ

能村研三 200309
日曜の一村総出墓洗ふ 阪口美枝子 雨月 200309
「無法松」てふ酒をかけ墓洗ふ 平間裕子 対岸 200310
山の水たつぷり使ひ墓洗ふ 塩川雄三 築港 200310
丹念に一兵卒の墓洗ふ 加藤サヨ子 築港 200310
本堂に近く古りたる墓洗ふ 本荘初枝 築港 200310
征きし兄の軍醫少佐の墓洗ふ 渕脇登女 200311
末つ子の胸を濡らして墓洗ふ 浅田光代 風土 200311
墓洗ふうしろを通り乳母車 木下野生 200311
墓洗ひ終へて煙草を手向けたる 荻島雪子 百鳥 200311
墓洗ふ鳶ははるけき声こぼし 木下ふみ子 馬醉木 200311
墓洗ふ母の齢に届きたる 二村蘭秋 雨月 200311
墓洗ふ食物連鎖まのあたり 平居澪子 六花 200311
山水に父の声する墓洗ふ 長沼三津夫 200311
墓洗ふ長子てふ座の揺ぎなく 四宮一子 200311
まだ父に尋ねたきこと墓洗ふ 辻雅子 ぐろっけ 200311
この墓に入らぬと決めし墓洗ふ 長山あや ホトトギス 200312
素手をもて新しき墓洗ひけり 小黒加支 酸漿 200312
墓洗ふ飲むべからずといふ水で 大井貞一 京鹿子 200312
墓洗い酒も飲ませて父供養 津田霧笛 ぐろっけ 200401
米寿などとてもとてもと墓洗ふ 長谷英夫 馬醉木 200402
父の名を親しく濡らし墓洗ふ 久保知音 対岸 200402
父の手の戒名の墓洗ひけり 中村雅樹 百鳥 200402
病む母をさする思ひに墓洗ふ 橘沙希 月の雫 200404
独り居に馴れて彼岸の墓洗ふ 吉村初代 築港 200405
ラテン語の墓碑銘古りて墓洗ふ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200408
右下り父の書き癖墓洗ふ 細川知子 ぐろっけ 200408
墓洗ひ終へてぬかづくこと長し 谷榮子 雨月 200409
星を見に帰つて来しと墓洗ふ 山田六甲 六花 200409
墓洗ひご先祖様を冷やかしぬ 山田六甲 六花 200409
十年の時改めて墓洗ふ 水谷ひさ江 六花 200409
妻の墓洗ふ水場へ足しげく 伊藤白潮 200410
墓洗ふ清水に石の冷ゆるまで 岩木茂 風土 200410
風立ちて弟の墓洗ひけり 福井隆子 対岸 200410
墓洗ふダイヤの指輪はめしまま 山本圭穂 築港 200410
父の名の一行増えし墓洗ふ 白崎リユ子 築港 200410
告ぐることあまりに多し墓洗ふ 原和善 築港 200410
先づ妣に言葉を交し墓洗ふ 一瀬昭子 馬醉木 200411
墓洗ふ昔と同じ風の中 砂川せい輝 遠嶺 200411
墓洗ふ亡姑送りきし背の風 辻尚子 200411
礎と刻む一字の墓洗ふ 木村幸子 帆船 200411
百寿の母墓洗ふこと忘れをり 狩野みほ 百鳥 200411
ひとり来てこころゆくまで墓洗ふ 板橋智恵子 百鳥 200411
父母恋へば素直になりて墓洗ふ 有山紫於 雨月 200411
青年ひとり太宰治の墓洗ふ 平田紀美子 風土 200411
乳飲み子を洗ふが如く墓洗ふ 永田勇 六花 200411
ゆく雲や享年十九の墓洗ふ 石神洋行 河鹿 200412
あやまりて謝りて子の墓洗ふ 菊池嘉江 帆船 200412
墓洗ふ恋の余韻のなくはなし 藤原照子 200501
バンダナの若きと並び墓洗ふ 大沢美智子 200501
背を流し合ひたる友の墓洗ふ 堀内千鶴子 帆船 200501
杉の秀の雲掃く風や墓洗ふ 吉澤恵美子 春燈 200501
父に問ふこと数多あり墓洗ふ 大串若竹 百鳥 200501
墓洗う供物を狙う鴉二羽 松浦途子 ぐろっけ 200502
とある日の父の本音や墓洗ふ 伊東湘三 春燈 200509
あれこれと語りかけては墓洗ふ 新屋貴子 河鹿 200510
墓洗ふ想ひを戻す父と母 亀井幸子 築港 200510
さきがけて雨の洗へる墓洗ふ 八染藍子 200511
私は入らぬつもりと墓洗ふ 谷田部栄 万象 200511
過ぎ去りしこと話しつつ墓洗ふ 中村碧泉 ぐろっけ 200511
夫の背を流せし如く墓洗ふ 兼子栄子 酸漿 200511
墓洗ふ付き纏ふ蜂躱しつつ 原口洋子 栴檀 200511
教育史にのこれる父祖の墓洗ふ 水谷芳子 雨月 200511
墓洗ふ本家分家の区別なく 鈴木蕗子 築港 200511
もう一度逢ひたき人の墓洗ふ 師岡洋子 ぐろっけ 200602
雲行きの怪しくなりし墓洗ふ 伊藤白潮 200609
背をさする如くに妻の墓洗ふ 小泉豊流 酸漿 200609
息災を頼みて夫の墓洗ふ 福澤乙 酸漿 200609
しがみつく蔓を外して墓洗ふ 中田みなみ 200609
墓洗ふ祖の名いかめし陽よ風よ 鈴鹿仁 京鹿子 200609
墓洗ふ植ゑたるものにかげを得て 豊田都峰 京鹿子 200610
ちちははの齢を生きて墓洗ふ 浜福恵 風土 200610
墓洗ふ龜の子たわし下ろしけり 八木岡博江 酸漿 200610
墓洗ふすでに缶コーヒー置かれ 井上信子 200611
鉄砲水に洗はれし墓洗ひけり 吉田島江 火星 200611
累代の父母を数へて墓洗ふ 吉澤利治 遠嶺 200611
さがり目のうから揃ひて墓洗ふ 浅田光代 風土 200611
共に墓洗ひし夫の墓洗ふ 渡辺寿美子 酸漿 200611
墓洗ふその後のわれを語りつつ 宮野照子 馬醉木 200612
たれよりも足元ぬらし墓洗ふ 井上菜摘子 京鹿子 200612
いきさつは心外なりし墓洗ふ 戸田和子 200612
土にゐる父母のこと墓洗ふ 各務麗至 200705
一人言聞かせつつ墓洗ひけり 梅田秀子 酸漿 200711
酌み交せしことなき父の墓洗ふ 猪狩銀龍 200712
のんびりと墓洗ふのも久しかり 山田六甲 六花 200809
抱くやうに抱かるるやうに墓洗ふ 杉本綾 200810
墓洗ふ水とくとくと吸はせては 梶川智恵子 200810
妻の墓すなはち吾が墓洗ふなり 宮津昭彦 200810
墓洗ふおやぢの背中流すかに 磯崎清 200811
孫のこと句のこと告げつ墓洗ふ 大橋晄 雨月 200811
天守閣見下ろし山の墓洗ふ 荒木甫 200811
流れ藻のさ水を掬ひ墓洗ふ 小谷延子 万象 200811
子の仕草思ひ出しては墓洗ふ 國保八江 やぶれ傘 200811
若くして逝きたる父母の墓洗ふ 小山尚子 雨月 200812
遺骨なき醜の御楯の墓洗ふ 辰巳比呂史 200902
国賊の汚名流して墓洗ふ 中島玉五郎 200908
冨士望む地に眠る夫墓洗ふ 森下康子 200909
みどり児の育ち見ませと墓洗ふ 大橋晄 雨月 200910
先代の建てて逝きたる墓洗ふ 磯村こうき 200910
墓洗ふペットボトルに水汲みて 岡谷栄子 200911
跡継ぎに閼伽桶持たせ墓洗ふ 秋葉雅治 200911
後の事子に聞かせつつ墓洗ふ 永田勇 六花 200912
水の上に水を重ねて墓洗ふ 淺井照子 京鹿子 201001
墓洗ふ無沙汰を夫に詫びながら 中島伊智子 酸漿 201001
張り出せる枝を押しやり墓洗ふ 野田美子 201010
大手術墓を洗いて入院す 鈴木てるみ ぐろっけ 201010
大戦の惨うらむべく墓洗ふ 南光翠峰 馬醉木 201011
剛直の父偲びつつ墓洗ふ 城台洋子 馬醉木 201011
父母の墓洗ひそちらの暮し訊く 川崎真樹子 春燈 201011
小学の男の子二人と墓洗ふ 土井ゆう子 風土 201011
墓洗ふ享年五十八・八十二 荒木甫 201011
木の間より朝日射し込む墓洗ふ 井関祥子 酸奬 201011
ノモンハン隣はレイテ墓洗ふ 内藤三男 ぐろっけ 201011
墓洗うまだ来るなよと石の声 鈴木直枝 ろんど 201011
墓洗ふ姉も無口になりにけり 須賀敏子 あを 201011
丘の上の強き日ざしよ墓洗ふ 島谷征良 風土 201012
墓洗ふちちの山河の風の音 宮川みね子 風土 201101
抑留に耐へたる父祖の墓洗ふ 下平しづ子 雨月 201101
墓洗ふ明石大門を遙かにて 志方章子 六花 201101
常緑の山裾の墓洗ひけり 久世孝雄 やぶれ傘 201101
折からの雨に打たれて墓洗ふ 有賀昌子 やぶれ傘 201104
親不孝の詫び言ぽつり墓洗ふ 竹内悦子 ちちろ虫 201108
ラテン語の文字黒々と墓洗ふ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201108
呑み助も下戸もいるらし墓洗う 貝森光洋 六花 201110
あつけなく還暦を過ぎ墓洗ふ 二宮一知 万象 201111
叱られたことなき父の墓洗ふ 井尻妙子 京鹿子 201111
墓洗ひぬれた手を拭き合掌す 筒井八重子 六花 201111
故郷より移せし父母の墓洗ふ 片山喜久子 雨月 201111
在らば子は六十路如何にや墓洗ふ 本多正子 雨月 201111
墓洗ふはじめに大き背中より 櫻井住江 万象 201112
父母の墓洗ひて妻と酒を酌む 辻紅葉 かさね 201201
父の墓洗うて注ぐ貴腐ワイン 岩永はるみ 白雨 201203
墓洗ふ水たちまちに灼けて来し 山田六甲 六花 201208
戦災死骨無き父母の墓洗ふ 木島茶筅子 かさね 201209
墓洗ふ母の衿足を洗ふ 井上信子 201210
墓洗ふ門前仲町正午 井上信子 201210
冥界の言の葉胸に墓洗ふ 佐瀬晶子 ろんど 201211
墓洗ひついでの昔語りかな 金子つとむ ろんど 201211
墓に映ゆる吾が顔見て墓洗ふ 米澤光子 火星 201211
洗ふ墓妣こだわりし御影石 太田健嗣 ぐろっけ 201211
墓洗ふ母を語りて兄おとと 塩見治郎 雨月 201211
雑魚捕りの川の音とどく墓洗ふ 水谷芳子 雨月 201211
墓洗ふ注ぎし水は桶二つ 松田千枝 春燈 201211
父の背を流す心地や墓洗ふ 近藤ともひろ ろんど 201212
双掌にて墓を洗へり初紅葉 大坪景章 万象 201212
裏側をことに婚家の墓洗ふ 田部井幸枝 201212
祖父の名を一字もらふ子墓洗ふ 横内かよこ ぐろっけ 201212
膝痛に腰痛乗せて墓洗ふ 三橋早苗 ぐろっけ 201212
声かけて洗ふ子の墓遠ひぐらし 安立公彦 春燈 201212
墓洗ふ光背のごと鰯雲 安永圭子 風土 201212
吾に俳句遺してくれし墓洗ふ 古賀しぐれ ホトトギス 201212
迫りくる眉山の緑墓洗ふ 上崎暮潮 ホトトギス 201302
墓洗ふ→2      

 

2021年8月27日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。