大 綿    192句

大綿のひとつ自力で浮く日和    斎藤嘉久

作品
作者
掲載誌
掲載年月
日に失せし大綿影に浮かみをり 稲畑汀子 ホトトギス

199811

大綿のひとかたまりに通りけり 石脇みはる 199902
大綿の空に紛れし白さかな 稲畑廣太郎 廣太郎句集 199912
大綿の水面に吹かる罔象女 栗栖恵通子 200003
大綿の浮遊銅鏡より出しか 長田等 200102
大綿の指にふれたる身のしまり 武藤嘉子 木椅子 200102
大綿に弱法師われ導かる 木村杏子 雨月 200102
大綿を吹き放ちたる水の上 小山森生 200103
大綿の日に透けて日に吸はれけり 稲畑汀子 ホトトギス 200111
軽々と風の大綿流さるる 稲畑汀子 ホトトギス 200111
大綿のふくれ切つたる日和かな 稲畑汀子 ホトトギス 200111
大綿の雲より抜けしとき光る 稲畑汀子 ホトトギス 200111
武蔵野に大綿舞へり波郷の忌 水原春郎 馬醉木 200201
綿虫のはや大綿となりて飛ぶ 阿部ひろし 酸漿 200201
大綿の罷りいでたる能舞台 立石萌木 雨月 200201
手応へのなき大綿を捉へけり 高見岳子 雨月 200201
大綿のわが鼻筋にあたりけり 石脇みはる 200202
光堂出づ大綿が目の高さ 今井妙子 雨月 200202
大綿のただの浮遊と思へざり 杉本美智江 雨月 200202
大綿の日のさす方へ消えゆきぬ 小山尚子 雨月 200202
捨舟のあたり大綿湧きゐたる 西郷利子 200202
大綿の遊行のごとき浮遊かな 中島知惠子 雨月 200203
大綿の綿引きずって飛んでをり 綿谷美那 雨月 200203
大綿を躱して着けり観覧車 飯塚ゑ子 火星 200204
大綿を捉へし風の立ちにけり 稲畑汀子 ホトトギス 200211
鎖もりて大綿日和なりしかな 稲畑汀子 ホトトギス 200211
大綿に空気濃淡ある如く 稲畑汀子 ホトトギス 200211
大綿の消ゆると見しが目の高さ 稲畑汀子 ホトトギス 200211
笙の音や大綿浮ける神の庭 長谷川通子 雲の峰 200212
大綿の飛び猛禽を恐れざる 塩川雄三 築港 200302
大綿に濡れ紙いろの日暮来る 藤岡紫水 京鹿子 200302
鐘楼門入るに大綿ついてくる 杉本美智江 雨月 200302
大綿や石橋渡る日の柱 石脇みはる 200303
大綿や池にもしづかなる流れ 八染藍子 200303
日に蕩けゆく大綿の行方かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200311
大綿の風になりゆく疾さかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200311
大綿の深呼吸めく風出でぬ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200311
大綿を考かとおもふ母かとも 竹内弘子 あを 200402
大綿の綿あたためて大夕日 花岡豊香 酸漿 200402
大綿の失せて無聊の顔となる 水谷芳子 雨月 200403
大綿の出入自在に詩仙の間 中島知恵子 雨月 200403
大綿の俄に急ぐ意志見たり 安達風越 雨月 200403
図書館を出で大綿にぶつからる 小島みつ代 200403
大綿の神へ向へり吾も蹤く 小島みつ代 200403
大綿のついて乗り込む特急車 品川鈴子 六香 200501
彌白き大綿ただよふ石鎚駅 品川鈴子 六香 200501
大綿や病棟古りし神経科 西郷利子 200501
昼月へ大綿虫の青みたる 西郷利子 200501
大綿の行方定めぬ行方かな 橋本之宏 風土 200502
大綿の瓢々然と逢ひに来し 大橋敦子 雨月 200503
大綿のひとつが視野を遠ざかる 佐藤淑子 雨月 200503
大綿の宙返りける貴船川 飯塚ゑ子 火星 200503
大綿を部屋に獲へて運が憑く 泉田秋硯 200503
大綿の飛び来て髪に溺れけり 橋爪隆 春燈 200503
大綿にさきがけられて芭蕉塚 谷ナミ子 200503
傾ける日を大綿の惜しみとぶ 吉年虹二 ホトトギス 200505
風止みて大綿の意志ありにけり 小川龍雄 ホトトギス 200507
ぶつかつて大綿ふつと消えにけり 高橋将夫 炎心 200510
大綿に空の黙してをりにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200511
大綿の三次元てふ宇宙かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200511
大綿に影の存在ありにけり 稲畑汀子 ホトトギス 200511
大綿に遊子の心ただよへる 稲畑汀子 ホトトギス 200511
大綿や上下左右に置く視線 稲畑汀子 ホトトギス 200511
大綿の光と影の入れ替る 稲畑汀子 ホトトギス 200511
日当りて大綿見えずなりしなり 加藤みき 200601
うきうきと大綿虫のよぎりたる 高橋将夫 200602
何ならむ大綿すいと流れゆき 石垣幸子 雨月 200602
大綿の日暮のいろを負ひ来る 岡淑子 雨月 200603
大綿や小さき掌くうを舞ふ 吉弘恭子 あを 200603
大綿を不意につかみし法の山 本多俊子 さくらの音 200605
大綿と気づきたるより目を高く 稲畑汀子 ホトトギス 200611
今日も晴大綿の飛ぶ日和かな 稲畑汀子 ホトトギス 200611
大綿の見えかくれして寒きこと 市場基巳 200703
風に運まかせ大綿まよひなし 内藤呈念 ホトトギス 200704
綿虫のはや大綿となりて舞ふ 阿部ひろし 二の杉 200710
大綿に影なき日向あることを 稲畑汀子 ホトトギス 200711
大綿の湧いて離れぬ面ひとつ 小形さとる 200802
どんよりと大綿日和高山寺 磯崎清 200803
大綿の飛ぶ三次元生れけり 上崎暮潮 ホトトギス 200805
大綿やてんでんしのぎの海のこゑ 藤井みち子 200901
大綿や遺品は三味線一丁よ 中島陽華 200903
大綿と遊び視線を交し得ず 井田実代子 雨月 200903
業平の墓の大綿瑠璃の濃し 手島伸子 雨月 200903
大綿やしまひつつ売る古本屋 竹内水穂 火星 200903
大綿や筆禍流罪といふがあり 小形さとる 200905
大綿や鑑真和上御廟前 中村洋子 風土 201002
ふあんと大綿ふあんと大欠伸 布川直幸 201002
大綿はかがやき海月死んでゐし 中村恭子 201003
大綿の魂吸ひ込める虚空かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201011
大綿舞ふ老いの吹く息いなしつつ 北尾章郎 201102
大綿の回向の舞ひと思はずや 上山永晃 春燈 201102
大綿もみちの賑はひ日暮刻 北尾章郎 201105
大綿や母なき月日ふはふはと 服部早苗 201105
大綿に二次元三次元の空 稲畑廣太郎 ホトトギス 201111
大綿の虚空現となりゆけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201111
阿夫利嶺に大綿の飛ぶ七七忌 小林愛子 辻楽師 201206
大綿に日暮れの早き出羽の郷 赤川誓城 ホトトギス 201207
大綿や引き際が頭を離れざる 田中貞雄 貞雄自註句集 201301
大綿や燭ささげゆく行者堂 山田春生 万象 201302
先導の大綿につき行きにけり 加藤みき 201302
大綿のただよふ暮色鍵をさす 宮川みね子 風土 201303
大綿や魂どこに輪廻する 江島照美 201303
大綿の舞へば日和のつづかざる 稲畑汀子 ホトトギス 201311
大綿の他にかがやくものを見ず ほんだゆき 馬醉木 201401
大綿と遊ぶ一っ時妻の墓 新海英二 春燈 201402
大綿や行方定めず漂へる 服部珠子 雨月 201402
暮れ色に染まり大綿とけてゆく 涌羅由美 ホトトギス 201403
大綿のけふのこころのありどころ 小幡喜世子 ろんど 201403
大綿の空に奥行できてをり 涌羅由美 ホトトギス 201403
大綿の夕ぐれ時を知つてをり 木多俊子 201403
大綿のけふのここちのありどころ 小幡喜世子 ろんど 201403
振り向けば大綿につつまれてをり 今橋眞理子 ホトトギス 201404
大綿のはたとほどけて夕まぐれ 今橋眞理子 ホトトギス 201404
大綿の舞ひて歳月流れだす 水野恒彦 201404
大綿の逢魔が時を誘へる廣太郎 千原叡子 ホトトギス 201406
大綿の命の透ける昼下り 稲畑廣太郎 ホトトギス 201411
大綿や白銀を呼ぶ使者として 稲畑廣太郎 ホトトギス 201411
大綿の軽さ命の重さかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201411
大綿や天に昇らず地に着かず 稲畑廣太郎 ホトトギス 201411
大綿に京都の空といふ自在 稲畑廣太郎 ホトトギス 201411
大綿をあやすがごとき微風かな 布川直幸 201412
大綿や農具を肩に帰る母 後藤マツエ 201502
大綿を押し遣る軌道緩らかに 柳本渓光 ろんど 201503
大綿の真昼の黙の池渡る 宮崎正 ホトトギス 201503
大綿を払うて手持ち無沙汰かな 笹村政子 六花 201504
大綿の隠し持ちたる火種かな 寺田すず江 明日葉 201505
大綿の飛びて伝説多き寺 稲畑廣太郎 ホトトギス 201511
大綿に備前の空は柔らかく 稲畑廣太郎 ホトトギス 201511
吉備津彦神社大綿従へて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201511
大綿を明るき空へ見失ふ 今井肖子 ホトトギス 201512
大綿や帰りは怖いわらべうた 根岸善行 風土 201512
嵐あと大綿ふかき青見する 小林愛子 万象 201602
大綿の青きが空へ吸はれけり 森岡恵子 万象 201602
大綿は浮くかのごとく飛びゐたる 小林はじめ 六花 201603
大綿や北国は荒れ止まざると 安原葉 ホトトギス 201604
大綿の一瞬うかぶ夕日か 今井千鶴子 ホトトギス 201604
大綿のうたかた消えて翁塚 熊岡俊子 雨月 201702
大綿小綿おまへも舞ふか翁の忌 橋添やよひ 風土 201702
大綿やボート乗り場の板乾き 柿沼盟子 風土 201702
大綿と新宿御苑逍遙す 山本漾子 雨月 201703
大綿の綿おもたげにさまよへる 佐藤貞子 雨月 201703
大綿の日差に入れば日のかけら 山田佳乃 ホトトギス 201704
大綿や芭蕉の化身めく飛翔 稲畑廣太郎 ホトトギス 201711
漂ふと見せて大綿消えてをり 稲畑汀子 ホトトギス 201711
ただよふは無限の大地大綿に 稲畑汀子 ホトトギス 201711
今過ぎし大綿といふ無音かな 岡本秀子 201802
大綿の自在夕日へまぎれけり 米山のり子 馬醉木 201802
大綿の消えて光と風のあと 和田華凛 ホトトギス 201803
大綿の蒼き影曳く千鳥塚 岡田ちた子 雨月 201803
大綿の息に立入り禁止札 井尻妙子 京鹿子 201804
大綿に囚はれてゐる生返事 原叡子 ホトトギス 201807
義仲寺に大綿飛べば偲ぶ人 稲畑廣太郎 ホトトギス 201811
大綿の飛翔天下を俯瞰して 稲畑廣太郎 ホトトギス 201811
大綿や閼伽桶の棚乾きゐて 柿沼盟子 風土 201902
大綿や雲切れてきし東山 柿沼盟子 風土 201902
大綿の透きとほる空千姫墓 鈴鹿呂仁 京鹿子 202003
大綿の綿の溶けゆく空の青 稲畑廣太郎 ホトトギス 202009
大綿に空明け渡す古刹かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 202009
大綿を点景として古都の空 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
大綿の一つに空の騒きかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
大綿の飛んで古刹の静寂かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
大綿や古刹の庭を狭めゆく 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
蒼天を掴み大綿消えゆける 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
大綿に空明け渡す古刹かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
大綿の綿の溶けゆく空の青 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
大綿の飛んで名園引き締まる 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
大綿を潰さぬやうに服払ふ 森なほ子 あを 202101
毘沙門天くわつと大綿放ちけり 森岡正作 202101
大綿を握つてしまひ一詩人 浅田光代 風土 202102
大綿の空を染めたる青さかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 202111
大綿を攫ひてゆきし塔の風 岩木茂 風土 202202
大綿の塵へと変はり身の早さ 伊藤原志 ホトトギス 202203
大綿に空の緊張解れゆく 稲畑廣太郎 ホトトギス 202211
大綿の蒼天と色分ち合ひ 稲畑廣太郎 ホトトギス 202211
大綿の魂青く燃えてをり 稲畑廣太郎 ホトトギス 202211
大綿の空より青く消えゆけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 202211
大綿の魂遊ばせてゐる虚空 稲畑廣太郎 ホトトギス 202211
大綿のふはりと姫の化身とも 稲畑廣太郎 ホトトギス 202211
大綿を現に放ちゆく虚空 稲畑廣太郎 ホトトギス 202211

 

2023年12月9日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。