衣 被 1       200句

衣被  きぬかつぎ

今生のいまが倖せ衣被   鈴木真砂女

作品
作者
掲載誌
掲載年月
こころもち彈んでをりし衣被 小澤克己 遠嶺 199812
衣被こはれ易さと言ふ固さ 宇都宮滴水 京鹿子 199904
衣被酒の進みてより所望 稲畑廣太郎 ホトトギス 199910
裏通り老舗小さき衣被 稲畑廣太郎 ホトトギス 199910
船旅を終へし食卓衣被 稲畑廣太郎 ホトトギス 199910
つると皮剥けて子の笑み衣被 稲畑廣太郎 ホトトギス 199910
衣被四季ある里の塩の味 武岡東西 俳句通信 199910
衣被つるりと老にさしかかり 中村堯子 銀化 199911
おのれ消すことにも慣れて衣被 小澤克己 遠嶺 199912
桂郎の指を逃げたる衣被 神蔵器 風土 199912
歯の数の足らぬうれしさ衣被 櫂未知子 銀化 199912
生きざまの傷には触れず衣被 小澤克己 遠嶺 200001
百歳と雲を見てをり衣被 小林あつ子 火星 200011
酔ひ残る卓に残りし衣被 高野清風 春耕 200012
衣被空へ盛られてありにけり 塙告冬 ホトトギス 200101
妻留守の歯に冷たしや衣被 棚山波朗 春耕 200101
指先の遊んでをりぬ衣被 稲畑汀子 ホトトギス 200109
衣被熊野詣の一夜さに 神原操 雨月 200110
目笊よりこぼれんばかり衣被 矢島久栄 200111
六つかしき世とはなりたる衣被 蓮尾あきら 風土 200112
清貧は死語となりたり衣被 塩路五郎 200201
土器に味噌そへられて衣被 宮本俊子 雨月 200201
晩節や織部の皿の衣被 西村しげ子 雨月 200201
塩からきジュラ紀の匂ひ衣被 小田元 六花 200201
口開けの「卯波」に入りぬ衣被 林裕子 風土 200201
母恋ふや剥きてぬくとき衣被 田中藤穂 あを 200201
衣被ぎ洗ひ上げたる實母散 雨村敏子 200202
三つ指は使者に限らず衣被 高崎武義 200209
衣被干潟に夜の潮流れ 雨村敏子 200211
衣被のごとちよこなんと坐りゐる 梅村すみを 200211
御仏蘭西贔屓熱熱ハフハフ衣被 暮岸江 銀化 200211
やうやうに馴染むすりこぎ衣被ぎ 小林輝子 風土 200212
五つまで宛行あてがい扶持の衣被 能村研三 200310
雨音に囲まれてをり衣被 今瀬剛一 対岸 200310
塩ふれば桂郎の来て衣被 神蔵器 風土 200311
海鳴りにとりかこまれつ衣被 小澤克己 遠嶺 200311
目鼻つけたきひと剥きの衣被 高橋あさの 200312
指先でいつきに脱がす衣被 小松誠一 200401
衣被わが菜園を出自とし 深田雅敏 200401
臨月の娘に初掘りの衣被 雨村敏子 200401
衣被十代でもう母となり 長田等 200401
真砂女亡しつるりと剥けし衣被 松山正江 河鹿 200401
不機嫌な胃へすべらせる衣被 山元志津香 八千草 200404
衣被縁起絵巻を拝見す 加藤みき 200411
もう隠すものなきめをと衣被 淵脇護 河鹿 200412
衣被腹を満たして嬰ら眠る 有島扇水 河鹿 200412
知らぬ間に子に盗まれし衣被 中島陽華 200412
生涯を頑周に徹す衣被 間島あきら 風土 200412
衣被つるりと落ちし僧の膝 中田みなみ 200412
衣被いつまで続く夫の黙 富沢敏子 200501
日も月も東山から衣被 中野京子 200501
肘ついて食うべて二人衣被 大山文子 火星 200501
いもの子が衣被がむと鍋の中 武井哲 八千草 200505
銀のやうな句の欲し衣被 曷川克 遠嶺 200506
しがらみもつるり剥きたや衣被 北川隆子 200512
満足に形ありとせば衣被 代田幸子 200512
明日嫁ぐ娘と剥いてをり衣被 岸本久栄 雨月 200512
衣被夫古里を話し出す 上田明子 雨月 200512
衣被あましよ稿にせかされつ 定梶じょう あを 200512
井の神のめくばせありし衣被 延広禎一 200601
衣被どうでもよきことひきずりて 荒井千佐代 200601
常の夜の酒一合と衣被 小澤克己 塩竃 200608
六畳に妻と二人の衣被 滝沢伊代次 万象 200609
衣被那須与一の男振り 木多芙美子 春燈 200611
井の神に供へてありし衣被 近藤きくえ 200611
あめ色の竹笊吊られ衣被 工藤義夫 馬醉木 200611
素直なれと父母の教へや衣被 上原朝子 200612
子どもらの来てすぐ帰る衣被 宮島宏子 200612
ゆつくりと生きることかな衣被 本多俊子 200612
あらあらと雲の過ぎ行く衣被 岩月優美子 200612
もの言はぬ雨のひと日や衣被 奥田茶々 風土 200612
衣被つねにおのれを戒めて 小澤克己 遠嶺 200709
相年の気やすさに食ふ衣被 中江恵子 200711
止り木に雨音を聞く衣被 安居正浩 200711
深追ひの話御法度衣被 五十嵐光郎 200712
威儀正し三方飾る衣被 島田山流 春燈 200712
餓鬼の日へ繋ぐ粘ねば衣被 藤原たかを 馬醉木 200801
こざつぱり生きて候ふ衣被 荒川清司 遠嶺 200801
屋酒屋に笑顔の満ちて衣被 丸山勝利 遠嶺 200801
衣被遺りし姉妹膝寄せ合ふ 西山薫 200801
衣被はらから遠くなりにけり 小泉万里子 200801
石と語るこころ待ちたし衣被 近藤公子 200802
衣被皮の外れぬ一ところ 稲畑汀子 ホトトギス 200809
指先の器用不器用衣被 稲畑汀子 ホトトギス 200809
衣被長女はいつも父母に添ひ 大橋敦子 雨月 200811
衣被の塩味ほどの余生かな 梅村すみを 200811
白ふきん掛け大笊の衣被 田中藤穂 あを 200811
衣被世の少子化をとどめたし 田中藤穂 あを 200811
茹で上げて芋名月の衣被 木村茂登子 あを 200811
衣被つるりと剥けし日本晴 青木ちづる 200812
手ひねりの歪みとっくり衣被 藤見佳楠子 200812
衣被芭蕉につづく末座にて 浅田光代 風土 200901
衣被つるりと剥いて五歳の子 有賀昌子 やぶれ傘 200901
金銀に縁なき暮らし衣被 原島ふじ子 遠嶺 200902
塩味のかくもまろやか衣被 鷹羽狩行 200909

 守武祭献句

俳諧の祖の伊勢に来て衣被

鷹羽狩行 200911
旅終へてまたの旅恋ふ衣被 水原春郎 馬醉木 200911
衣被すわり直して横座る 風間史子 200911
まなかひの黄道光なり衣被 加藤みき 200912
気楽さのうらはらありて衣被 近藤きくえ 200912
トルソーに影のありけり衣被 中田禎子 200912
衣被ぎ跳んで気まづさほぐれをり 後藤とみ子 ぐろっけ 200912
小上がりの壁に番付衣被 松本善一 やぶれ傘 201001
衣被夫に言へざることの増え 伊藤トキノ 201002
岩塩のくれなゐほのか衣被ぎ 佐藤美紀 ろんど 201002
衣被厨の母をなつかしむ 家塚洋子 酸漿 201002
小窓より風の入りきし衣被 藤澤陽子 201011
マスターは今日も饒舌衣被 安居正浩 201011
うなづいてばかりゐる母衣被 松本圭司 201011
札所ごと山は暮れたり衣被 柴田佐知子 201011
名にし負ふ料亭にして衣被 古田考鵬 雨月 201011
松花堂の吉兆膳や衣被 山口キミコ 201012
供へたるしばらく湯気の衣被 辻直美 201012
はらからも二人となりし衣被 犬嶋テル子 春燈 201012
老いるとは母に似ること衣被 中村洋子 風土 201012
福相に黛画くや衣被 小瀧洋子 ろんど 201012
親芋は煮〆子芋は衣被 木村茂登子 あを 201012
ふつと出る故郷ことば衣被 鈴木浩子 ぐろっけ 201101
衣被母在りし日を思ひけり 青木政江 酸漿 201101
衣被酒呑のちちの呵々大笑 延広禎一 201102
再会の衣被なり朱雀門 瀬川公馨 201102
はらからの七十路八十路衣被 藤原照子 201102
衣被歌舞伎もどきの早変り 宮内とし子 201102
酒二合塩少々と衣被 能美昌二郎 201102
嫌はれてゐるやも知れぬ衣被 丸井巴水 京鹿子 201102
衣被つるりと故郷裏返す 稲畑廣太郎 ホトトギス 201103
頰張ればつるりと一句衣被 今村征一 ホトトギス 201103
衣被つるりと脱皮同窓会 品川鈴子 ぐろっけ 201108
衣被ころがるランチョンマットかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201109
衣被ころりと皿をはみ出して 稲畑廣太郎 ホトトギス 201109
恋語る時衣被少し邪魔 稲畑廣太郎 ホトトギス 201109
衣被君より白く剥かれたる 稲畑廣太郎 ホトトギス 201109
歯形つけころり転がる衣被 稲畑廣太郎 ホトトギス 201109
衣被転がる先の白き指 稲畑廣太郎 ホトトギス 201109
居酒屋の割箸不用衣被 塩路五郎 201110
親孝行さるるも淋し衣被 コ田千鶴子 花の翼 201111
衣被四季ある峡にくらしをり 松岡和子 201112
衣被真砂女のやうには生きられず 直江裕子 京鹿子 201112
衣被ぎ誰かれ遠き人となる 野口喜久子 ぐろっけ 201112
衣被運は呼ぶもの手繰るもの 石川笙児 201112
語り継ぐ真実ひとつ衣被 服部早苗 201201
仮の世に生死のありぬ衣被 和田照海 京鹿子 201201
意地通す歳にもあらず衣被 加藤八重子 末黒野 201202
一合の酒にこそ合ひ衣被 松本文一郎 六花 201202
今にして思ふやさしさ衣被 安居正浩 201210
今はもう枷なき暮し衣被 白澤よし子 馬醉木 201211
衣被ほどにたやすく脱ぐものか 高橋将夫 201211
百歳のまだ見ぬこの世衣被 雨村敏子 201211
友情は宝なりけり衣被 宮崎高根 201301
パスポート切れて久しき衣被 佐渡谷秀一 春燈 201301
ひとつこと思ひて二人衣被 浅田光代 風土 201301
雨音を聞きそれからの衣被 安居正浩 201301
ことひとつ杞憂に過ぐる衣被ぎ 安田とし子 ぐろっけ 201301
あれそれの通ずる二人衣被 外山節子 末黒野 201301
ジャズが好き志ん朝が好き衣被 小田嶋野笛 末黒野 201301
釣宿に強き雨音衣被 池田華甲 201301
しなやかな指にてつまむ衣被 久世孝雄 やぶれ傘 201302
桂郎の啖呵とび出す衣被ぎ 神蔵器 風土 201310
本復のたふさぎ干しそ衣被 延広禎一 201311
天界の父母酌むや衣被 田嶋洋子 春燈 201312
通夜の席ひとつつまみぬ衣被 久世孝雄 やぶれ傘 201312
辛き事まとめつるりと衣被 塩千恵子 201312
父母ありしころの縁側衣被 野畑さゆり 201312
晩年はシンプルが良し衣被 阪本哲弘 201312
何もかも知らぬふりして衣被 平野加代子 春燈 201312
参道の確かな記憶衣被 久米なるを 201312
今生の仕上げのメニュー衣被 笠井清佑 201312
ふるさとは禿山ばかり衣被 涼野海音 火星 201312
津軽焼に津軽の酒と衣被 土井三乙 風土 201401
収穫の小さきを選りて衣被 野口宗久 京鹿子 201401
手紙にも訛りのありて衣被 中山皓雪 201401
衣被隠岐の藻塩を振りかけて 塩見英子 雨月 201401
玄海の藻塩の欲しや衣被 野畑さゆり 201402
手にするやつるりと落ちし衣被 牛窪啓詞 やぶれ傘 201402
これがその料亭ぶりの衣被 後藤比奈夫 ホトトギス 201402
衣被亡母は詠まずに想ふべし 田中貞雄 ろんど 201402
つれ合いは後期高齢衣被 中村あいこ 船団 201403
衣被手の内すぐに読まれたる 宮内とし子 201403
信楽の皿に塩添へ衣被 小川玉泉 末黒野 201411
衣被つまむ紅差指が邪魔 千田百里 201411
何の欲なしとは言へず衣被 中野さき江 春燈 201412
団欒の遠くなりけり衣被 中山皓雪 201412
連衆の口角泡を衣被 甕秀麿 201501
参道で買ふむくつけき衣被 望月晴美 201502
止まり木は何時もと同じ衣被 小松誠一 201502
衣被節榑の指隠れなし 田岡千章 201502
亡き母が傍に来てゐる衣被 山内碧 201502
手紙にも訛りのありて衣被 中山皓雪 201502
少子化の世とも思へず衣被 赤座典子 あを 201510
衣被布巾に包み剥きにけり 山田六甲 六花 201511
衣被小躍り宥め剥がれゐる 能村研三 201512
嫁と呼ぶ響も久し衣被 円城寺清 201512
無味の皮味引き立てて衣被 田中涼平 201512
脱ぎし衣おんぼろぼろや衣被 原友子 201512
衣被珍な稚児僧突如出で 井上石動 あを 201511
衣被ツルリと口に逃げ込めり 吉野夢宙 201512
父の真似父にほめられ衣被 松崎雨休 風土 201512
こんなものですがと出さる衣被 佐藤山人 201601
塗り箸をつるりと抜けて衣被 山本茂子 末黒野 201601
衣被天こ盛りして若女将 江島照美 201601
次の世へ手ぶらで行かん衣被 安居正浩 201611
みつよつで足りる至福よ衣被 吉田政江 201611
衣被つまむ指にも為人 山田夏子 雨月 201612
衣被歯に衣着せぬ丸(まろ)さかな 竹内悦子 201612
園児みな揃ひの帽子衣被 中貞子 201612
衣被 →2      

 

2021年9月30日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。