枇 杷 3   200句

枇杷を食ふ腕あらはに病婦かな   皆吉爽雨   雪解

作品
作者
掲載誌
掲載年月
枇杷したたる今日の別れの種を吐き 加藤美代子 炎環 200907
枇杷青し鴎のはこぶ風の唄 木村梨花 春燈 200907
鳥よけの赤い袋や枇杷熟れて 坂根宏子 200908
ビル街に在り処を告げる枇杷の色 黒澤登美枝 200908
枇杷の種とり出し母を取り出しぬ 近藤喜子 200908
枇杷うるる芭蕉生家の午後にをり 谷村幸子 200908
枇杷の皮つるりとむけり山のかぜ 中山純子 万象 200908
初枇杷をすするや種をぽつと吹き 遠藤真砂明 200908
お隣の犬とあそぶや枇杷うるる 中西蘭子 炎環 200908
枇杷熟るる自動演奏ピアノかな 佐藤良重 炎環 200908
食べる気もあらぬ山枇杷もぎにけり 寺岡宏 雨月 200908
犬枇杷の生り放題の雨つづき 竹内弘子 あを 200908
通じあふ喃語と喃語枇杷熟れて 塩路隆子 200909
枇杷映る川面をすべる手漕舟 松田洋子 200909
青年となりし横顔枇杷を捥ぐ 小澤菜美 200909
枇杷すする男幼き顔となる 奥野初枝 万象 200909
枇杷山に磯の香りの届きけり 廣瀬雅男 やぶれ傘 200909
枇杷あまた落して壊さるる生家 辻美奈子 200909
枇杷を食み抜きさしならぬ話せり 加藤峰子 200909
触れさうで触れぬ江ノ電枇杷熟るる 落合絹代 風土 200909
言伝を差し込む戸口枇杷熟るる 桐島教子 風土 200909
休校の間に校庭の枇杷熟るる 佐方敏明 ぐろっけ 200909
枇杷熟るる芭蕉生家や昼深き 豊谷青峰 春燈 200910
熟れ頃の枇杷よ鴉に見付かるな 高橋ひろ 万象 200910
遠く見て枇杷枇杷色に育ちをり 井口初江 酸漿 200910
枇杷の種まただまされてあげている 中原幸子 船団 200912
枇杷島は枇杷のかたちや夕時雨 河合とき 末黒野 201005
枇杷の葉に二月の雨のひかるかな 藤井美晴 やぶれ傘 201006
枇杷熟るるけふも夕日は海に落ち 荒井千佐代 201007
ミサイルの射程圏内枇杷をもぐ 柴田志津子 201007
葉の間の細き枇杷の実黝し 赤座典子 あを 201007
ゆりかごのやうな纎月枇杷灯る 石田厚子 馬醉木 201008
右耳にブルース左手に枇杷の実 近藤公子 201008
枇杷熟るる山肌を這ひ雨意の雲 小川玉泉 末黒野 201008
千枚田守る山里枇杷うるる 岡久枝 酸奬 201008
強風に折れたる枝に青き枇杷 井関祥子 酸奬 201008
ローカル線がたんと揺れて枇杷撓む 三川美代子 201009
枇杷甘し風にカーテンふくらんで 上原重一 201009
枇杷熟るる千の棚田に千の空 能美昌二郎 201009
枇杷熟るる媼ひとりの住居かな 藤村達江 春燈 201009
運転の恩師健在冷し枇杷 数長藤代 201009
枇杷のたね吐いてより辯よくまはる 佐藤山人 201009
枇杷食ぶと五人家族でありしこと 遠山みち子 201009
全員に行き渡らない枇杷の数 高田令子 201009
枇杷剥くや手首まで蜜滴らし 中根美保 風土 201009
枇杷の種ばかり置かれし白き皿 秋葉貞子 やぶれ傘 201009
枇杷の実をつるりとむけば滴落つ 島純子 ぐろっけ 201009
枇杷熟るるまはりは田井の畝高し 佐藤凉宇子 ろんど 201009
外洋をのぞむ山畑枇杷熟るる 菅野雅夫 ろんど 201009
枇杷熟るるかつては友の住居たり 片岡良子 雨月 201009
刻々の入日に映えて枇杷熟るる 宮平静子 雨月 201009
枇杷の実の熟るるを今日も鳥覗く 伊藤公子 酸奬 201009
枇杷つつむ地方紙のいろ褪せにけり 遠山みち子 201010
枇杷もいで志賀のをんなの漁休 柴田志津子 201010
黄金色の艶よく描けし卓の枇杷 菅澤陽子 春燈 201010
枇杷熟れて父母より長寿の日々なりし 豊田都峰 京鹿子 201010
枇杷の子の谷を出るときふり返り 梶浦玲良子 六花 201102
うらら枇杷羊羹は糸で切り 鈴木榮子 繭玉 201105
枇杷は実に旅のハンケチ汚れけり 成瀬櫻桃子 櫻桃子選集 201105
枇杷の実や一家団欒はいポーズ 平井奇散人 船団 201107
枇杷たわわ女ふたりの気侭旅 石川かおり 201108
枇杷熟るる太平洋の黒潮に 神蔵器 風土 201108
薄紙に黄の色ほのと走り枇杷 青野安佐子 201108
枇杷すする遠くの雨の灯をおきて 豊田都峰 京鹿子 201108
放蕩もゐる家系図や枇杷啜る 能村研三 201108
枇杷熟れて胸襟ひらく安房の海 上谷昌憲 201108
段畑の聖母の風や枇杷うるる 清水佑実子 201108
柔毛密なる枇杷の実に手を濡らす 渡邊美保 火星 201108
枇杷の種大きすぎたる憾みかな 大橋晄 雨月 201108
大方は鳥がつつけり庭の枇杷 大橋晄 雨月 201108
雨の夜をひそと熟れゆく枇杷あまた 竹内悦子 201109
枇杷の種大きく話前後せり 太田昌子 馬醉木 201109
潮風を真つ向に受け枇杷青き 中村紀美子 春燈 201109
下宿屋の枇杷が減りゆく低きより 柴田志津子 201109
裏窓を占めて枇杷の実明りかな 高橋道子 201109
枇杷熟れてうすき日ざしの連子窓 大橋伊佐子 末黒野 201109
遠き日を語る母の忌枇杷熟るる 和沢有理子 風土 201109
押すだけの木戸の開閉枇杷熟るる 宮内とし子 201109
枇杷青し平衡感を失ひし 石脇みはる 201109
枇杷の実やふつと洩らせし独り言 吉田順子 201109
枇杷すすり終へ小説のつづき読む 玉置かよ子 雨月 201109
枇杷熟れて倉に蔵せる縄梯子 水谷靖 雨月 201109
枇杷熟す寸前又も台無しに 藤田宣子 ぐろっけ 201109
沈黙の活断層に枇杷熟るる 成田美代 201110
むりやりの家苞の枇杷種ばかり 中田寿子 ぐろっけ 201110
恐竜の化石に巨岩枇杷流る 水野範子 ぐろっけ 201110
山枇杷の黙契に蟻辿りつく 松川悠乃 ろんど 201110
老人守る文具店枇杷熟るる 田所洋子 雨月 201110
平凡に生きてうっふん枇杷の種 鶴濱節子 始祖鳥 201206
枇杷の実をそっと包むや手すき和紙 須藤美佐子 万華鏡 201206
枇杷剥いてはつと己れの持ち時間 樋口英子 201207
枇杷の実を揺らす一輌電車かな 石川かおり 201208
指の間に枇杷やはらかく歪みけり 吉田希望 201208
鳥啄み日に日に減れる熟し枇杷 後藤克彦 かさね 201208
枇杷熟れて包む袋も枇杷の色 小林朱夏 201208
枇杷の実の熟すを狙ふ鴉かな 中山静枝 201208
大き葉の影にちんまり青き枇杷 泉和美 末黒野 201208
枇杷の実へ伸ばしし肘をまぶしめる 蘭定かず子 火星 201208
枇杷熟れて媼ひとりの町家かな 中川すみ子 201209
枇杷は黄にひと逝きひとを語るのみ 荒木甫 201209
枇杷は黄の荒れて二日の島泊り 近藤幸三郎 風土 201209
枇杷の実の高きにあれば詮もなし 大橋晄 雨月 201209
枇杷の実を食ぶことなしに家を越す 岡田満喜子 ぐろっけ 201209
京に住み山家風邸走り枇杷 小澤菜美 201210
枇杷剥くや旅を了へたるひとりの夜 藤原若菜 春燈 201210
この家にあの家に枇杷町の雨 島谷征良 風土 201210
一の蔵二の蔵のあり枇杷熟るる 伊川玉子 万象 201210
幾年を朽ちし山家か枇杷熟れて 尾崎みつ子 雨月 201210
ののしりて枇杷の皮剥ぐ丹念に 堀内一郎 あを 201302
口ずさむ唐行き唄や枇杷饐えて 桂樟蹊子 201305
枇杷の種子つやつやとして綾子の句 中山純子 万象 201305
枇杷熟るる子が泣けばその母もまた 田嶋洋子 七線譜 201306
青竹の天秤棒に枇杷あふれ 江見悦子 朴の青空 201307
枇杷実る寺町の路地義経忌 鶴岡紀代 春燈 201307
蹲を目掛けて枇杷の種を投げ 瀬島洒望 やぶれ傘 201309
お互ひの独り言なり枇杷の種 伊藤紀子 ろんど 201309
枇杷の木にオレンジ色の袋掛 平居澪子 六花 201309
人稀に通る杣道枇杷実る 溝渕弘志 六花 201309
枇杷包む和紙やはらかに退院日 小河原清江 201310
房総は真砂女の国よ枇杷すする 橋本リエ 春燈 201310
武家屋敷案内は親子枇杷たわわ 水野範子 ぐろっけ 201310
脚立より天仰ぐごと枇杷をもぐ 松井洋子 ぐろっけ 201310
枇杷の実をほどほど濡らす日照雨かな 安藤久美子 やぶれ傘 201310
好きでなし嫌ひでもなし枇杷すする 志方章子 六花 201312
枇杷熟るる頭の中を種こぼれ 本田和子 201401
青枇杷や木偶の一座の荷の着きぬ 山本耀子 絵襖 201404
枇杷たわわ女ふたりの気まま旅 石川かおり 福袋 201404
枇杷熟るる袋の中の明るさに 林昭太郎 201407
海光を返して枇杷の熟るるころ 松田明子 201408
裸枇杷ばつてん訛の媼より 木下慈子 馬醉木 201408
枇杷熟るる中空に陽を引き留めて 楠原幹子 201408
枇杷みのる空手道場傍らに 瀬島洒望 やぶれ傘 201408
なんだかね自分に飽きて枇杷をむく はしもと風里 201409
杣道に枇杷のしづくを滴らす すずき巴里 ろんど 201409
海胆の名に分福茶釜枇杷離離と 柳本渓光 ろんど 201409
海昏れて枇杷に明るさ漂ひぬ 寺田すず江 201409
海光の縞羅の寄せくるはしり枇杷 すずき巴里 ろんど 201409
枇杷の種子歯にぶつかりて恐縮す 中田みなみ 201409
変はりなきは良きかな枇杷の実だくさん 佐用圭子 201409
枇杷落つる山門深く茶の湯かな 綱川恵子 万象 201409
枇杷熟れる一番いい顔して並ぶ つじあきこ 201409
枇杷甘し種はころんところころと 飯田久美子 末黒野 201409
枇杷の実を盗るにとどかぬ背丈かな 荒木甫 201409
枇杷の実に今日の朝日がやはらかい はしもと風里 201409
青枇杷の屋根に落ちたり二度三度 野村重子 末黒野 201409
田翁亡し畑の真中の枇杷熟れて 間宮あや子 馬醉木 201409
ほほのうぶ毛愛らしきかな枇杷の雨 服部早苗 201409
引き寄せて枇杷捥ぐ人のよろめけり 鈴木初音 201409
枇杷熟るる時の流れの高瀬川 北村淳子 ろんど 201410
おほかたは器量良しなる今年枇杷 平居澪子 六花 201410
枇杷熟れて昔のままの輪中かな 下平しづ子 雨月 201410
枇杷高く熟れてチブサン古墳かな 中島陽華 201410
枇杷の種散らばつてをりましら 前田美恵子 201410
枇杷の実や段畑越しの地平線 元橋孝之 京鹿子 201410
園児等の指啣へをり枇杷熟るる 波多野孝枝 末黒野 201410
電波塔どこまで飛ぶの枇杷の種 長沼佐智 船団 201502
初枇杷を行きつ戻りつして買ひぬ 村上倫子 201506
枇杷青しねむり全き水の神 宮崎紗伎 春燈 201507
箱入りの枇杷に産毛や道の駅 中山静枝 201507
母の日の枇杷ほくほくと頂戴す 赤座典子 あを 201507
豆電球の下にありても枇杷匂ふ 定梶じょう あを 201508
犬枇杷を黄金と見つつ梅雨籠る 竹内弘子 あを 201508
ひそひそと下葉隠れの枇杷育つ 久染康子 201509
小粒なれど鈴なりの枇杷土手の家 福田雅子 万象 201509
海光を纏ひて枇杷の色づきぬ 田賀楳恵 万象 201509
届きたる枇杷の産毛のうひうひし 志方章子 六花 201509
天辺の枇杷は烏に呉れてやる 松本文一郎 六花 201509
放心の指細くして枇杷剥けり 高田令子 201509
枇杷の実も実梅も青し母逝けり 山本則男 201510
帳尻は身の丈ほどに枇杷のたね 元橋孝之 京鹿子 201510
内緒よと言ひつつ枇杷のたねを吐く 神田美千留 京鹿子 201510
枇杷熟るる妹のひとりは東京に 笹村政子 六花 201510
欲しいもの無し枇杷の種手に三つ 伊藤希眸 京鹿子 201511
ひと本に千の枇杷の実鴉啼く 岡野里子 末黒野 201511
偲ぶこと多き齢や枇杷の花 久保久子 春燈 201602
ちから弱き日の枇杷の実の産毛 津波古江津 船団 201602
ランドリー待つ間の枇杷を見てゐたる 升田ヤス子 玫瑰 201604
父が好きなりし枇杷とて送らるる 稲畑汀子 ホトトギス 201606
言ひ過ぎし身の疎ましく枇杷すする 祐宗千代子 雨月 201608
ふるさとや種たのもしき枇杷熟るる 宇都宮敦子 201609
半農半漁路地から路地へ枇杷熟るる 稗田夏子 201609
枇杷甘し遠き記憶の海に来て 浜福惠 風土 201609
初々しき甘さと思ふ枇杷ふふみ 楠原幹子 201609
熟れ初むる枇杷千の燭ともしゆく 川崎良平 雨月 201609
枇杷の葉が光る皐月の高曇 藤井美晴 やぶれ傘 201609
木蔭から鳥たちの声枇杷たわわ 延川五十昭 六花 201610
傘の柄に枇杷の実手繰り寄せにけり 赤松赤彦 六花 201610
軍手にも枇杷ふくらませ戻りけり 赤松赤彦 六花 201610
手の届く処に枇杷のたわわなり 永田万年青 六花 201610
伐りくれし枝より枇杷を捥ぎにけり 住田千代子 六花 201610
食べごろに枇杷の色づく栄西忌 佐津のぼる 六花 201611
小粒枇杷熟るる港の見ゆる丘 山ロ千代子 万象 201611
ふるさとや種たのもしき枇杷熟るる 宇都宮敦子 201702
路地神の燭の枇杷いろ雪催 佐藤保子 馬醉木 201703
枇杷熟れてとうに絶えたる無尽講 井原美鳥 201708
小さくなれ気塞ぎの種枇杷の種 栗原公子 201708
庭の枇杷わたしがゐるやうに剥く 佐藤喜孝 あを 201707
枇杷捥ぐやぬくとき雫首すじに 南うみを 風土 201708
本に天と地枇杷の実の青々と 竹内悦子 201708
枇杷熟るる夕日に幸を祝ぐ様に 安立公彦 春燈 201708
枇杷→4      

 

2021年7月3日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。