滴 り 3    203句

滴りの思ひこらせしとき光る  中村汀女  読本・歳時記

滴り  山滴る

作品
作者
掲載誌
掲載年月
したたりのつぎの雫におもひ罩め 成瀬櫻桃子 春燈 200807
地球まだ脈拍正常滴れり 北川英子 200809
愛も恋も心ふふみて滴れり 河本由紀子 春燈 200809
滴りの間に滴りのいのち生む 塚本みのる 春燈 200809
滴りの洞くぐり抜け蓮如堂 勝野薫 ぐろっけ 200809
待つともなく次の滴り返り見し 中田みなみ 200809
滴りの絶え間なく降る溪の木木 長崎桂子 あを 200809
滴りや隧道の駅日を恋ひぬ 荻野嘉代子 春燈 200810
脳天に受く滴りの二つ三つ 森岡正作 200810
滴りや銀坑道に踏み入りし 外川玲子 風土 200810
滴りや二千余段の磴を踏み 井上あい 風土 200810
ホルンの音滴る山へ消えゆけり 小谷延子 万象 200811
余りにもかろき死があり滴れり 藤田守啓 船団 200901
滴りに濡れにぞ濡れて岩たばこ 瀧春一 深林 200901
熊楠の紀の国あをし滴れる 藤井みち子 200907
山城の水門の址滴れり 須賀允子 万象 200907
岩滴る索道の荷のゆきもどり 渡辺昭 200908
滴りや磐石の根の底知れず 鷹羽狩行 200908
滴りにきらめく苔や遠忌なる 浜口高子 火星 200908
阿仏尼の墓に供花あり滴れり 島田和子 風土 200908
滴りの養老に踏む記紀の径 水谷洋子 200908
蘊蓄の間合をもつて滴れり 田中貞雄 ろんど 200908
滴りや灯芯かばひ窟めぐる 田中貞雄 ろんど 200908
密教の縁の訓滴りぬ 菅野雅生 ろんど 200908
鑿跡の語らふごとく滴れり 中島讃良 ろんど 200908
滴りや地底伽藍の大宇宙 伊藤紀子 ろんど 200908
滴りやスイングしてゐる杉の山 東亜未 あを 200908
磐が根の凝しき窟の滴れる 石田厚子 馬醉木 200909
ときめきの速さとなりて滴れる 片山由美子 200909
滴りや目を閉ぢて聞く山の音 高橋秋子 200909
山彦に応ふる山の滴れり 大谷茂 遠嶺 200909
滴りや随道出口の掘削碑 小嶋泰家 炎環 200909
滴りを汲み死火山の裾に住む 山田春生 万象 200909
寒山寺鐘の余韻の滴りぬ 伊舎堂根自子 万象 200909
掬ひあぐ滴る山の延命水 甕幸子 200909
トンネルの出口入口滴れり きくちきみえ やぶれ傘 200909
山の日を撥ねて一すぢ滴れり 池田達二 風土 200909
言葉よりつめたきものが滴りぬ こうのこうき ろんど 200909
滴りや吉野にあまた獣道 藤井圀彦 200910
でで虫に一滴雨の葉擦かな 奥山絢子 風土 200910
滴りや賽銭びかり十六井 高埜良子 春燈 200910
滴りや乾坤潤す粒光る 瀬戸峰子 春燈 200910
滴りや日矢のとどかぬ遊歩道 笠井敦子 200910
滴りの手に幽かなる樹のにほひ 前川明子 200910
背山負ふ摩尼殿の屋根滴るる 國永靖子 ぐろっけ 200910
媛神の島の滴り沖晴るる 青山悠 200910
滴りの岩を離れるとき光る 足利徹 はらから 200911
洞窟の滴り混じるディープキス 品川鈴子 はらから 200911
滴りの鍾乳洞のこだまかな 曷川克 遠嶺 200911
滴りの落ち行く瀞のあをさかな 齋藤朋子 やぶれ傘 200911
滴りのメトロノームを打つてをり 竹下陶子 ホトトギス 201001
襟足に滴りの叱咤虚子の墓 篠田純子 あを 201007
滴りや木立の中の能舞台 石脇みはる 201008
静謐な祈りとなりて滴りぬ 頓所友枝 201008
掌を遺れば貫くごとし滴れる 北尾章郎 201009
滴りの命はぐくみをりしかな 近藤きくえ 201009
岩肌の苔ことごとく滴れり 谷田部栄 万象 201009
大本営跡の不気味さ滴れる 宮入河童 201009
滴りの甕張り詰めてはりつめて 中村恭子 201009
滴れる洞の地蔵に灯を点す 石原光徳 酸漿 201009
清しさと不思議をかもし滴れり 長崎桂子 あを 201009
滴りに古きみ仏竹生島 石田康子 201010
水軍の砦の洞滴れる 川崎利子 201010
熊楠の森の滴り聞いてをる 雨村敏子 201010
滴りの穿つ地蔵の頭かな 山本無蓋 201010
マリア像の肩に音なく滴れり 森岡恵子 万象 201010
標高二千滴りを掬み小休止 丹生をだまき 京鹿子 201010
滴りの正しき譜なり磨崖仏 古俣万里 ろんど 201010
滴りのきざむ時空の榧化石 田中一美 ろんど 201010
天よりの啓示を待ちて滴れる 水谷芳子 雨月 201010
滴りの深山の霊気賜はりぬ 宮崎正 ホトトギス 201011
滴りの崖に水神祠かな 黒滝志麻子 末黒野 201011
岩被ふ苔柔らかや滴れり 辻井ミナミ 末黒野 201011
生きよのエール貰へり永久の滴りに 高根照子 201011
滴りのかたちに少女愁ふかな 直江裕子 京鹿子 201011
夫婦喧嘩青嶺滴るばかりなり 守屋井蛙 酸漿 201011
剥き出しとなりたる地層滴れり 西宮舞 201012
滴りや生きて使ひし水の嵩 伊勢弘江 201012
冷やかに油滴天目星を生み 片山博介 春燈 201012
滴りの岩根を穿つ静寂かな 森清信子 末黒野 201012
朝日射す郁子に光れる雨滴かな 東芳子 酸漿 201012
滴りて焔青めく明王像 佐藤真隆 京鹿子 201101
滴りのしたたりて草打ちやまず 山田六甲 六花 201105
鐘乳洞は神の手遊び滴れる 藤見佳楠子 201107
山の日をひとつにあつめ滴れり 豊田都峰 京鹿子 201107
滴りの音も昏れゆく岩の上 舩越美喜 京鹿子 201107
滴りに心の澱を流しけり 川崎真樹子 春燈 201108
熊野古道名なき祠の滴れり 大村美知子 京鹿子 201108
滴りやそのうちに遠國の娘は帰る 堀江惠子 201108
男体山を出づる朝日や滴れる 福永みち子 馬醉木 201109
滴りの道の奥処の芭蕉堂 服部早苗 201109
滴るや虚構ばかりの一行詩 松田都青 京鹿子 201109
滴りは点されど地球は回りをり 千田敬 201109
一点に青絞り出し滴れり 望月晴美 201109
滴りや無味無色てふ放射能 栗原公子 201109
屋久杉も岳人もみな滴れり 藤井久仁子 ぐろっけ 201109
したたりの音の集まる橅林 小林輝子 風土 201110
滴りの一音づつの光かな 熊切光子 末黒野 201110
隧道の滴る谺浴びにけり 熊切光子 末黒野 201110
さいはてや埋没林はしたたりて 中村恭子 201110
滴りや詩の推敲に果てのなく 細川洋子 201110
山も又生くる鼓動に滴れり 宮内とし子 201110
滴りの澄み切る底にいのちあり 佐野ときは 201110
餓鬼岳は崖岳とかや滴れり 中原俊之 201110
滴りに聖地の如く跪く 白水良子 201110
滴りの時にはげしき高野道 根本ひろ子 火星 201110
滴るや一問一答するやうに 定梶じょう あを 201110
滴りがはぐくむ苔の寂光土 藤岡紫水 京鹿子 201110
滴りや道祖神在す岐れ径 大橋晄 雨月 201110
滴りや岩の起伏にさからはず 笹村政子 六花 201111
三輪山の滴りやまず酒の神 雨宮桂子 風土 201111
滴りとなりゆく一部始終かな 井上浩一郎 ホトトギス 201112
滴りを朝な夕なの観世音 安武晨子 201112
滴りをぐぐりて一歩墓前かな 神蔵器 風土 201206
山水の滴りとなるところかな 稻畑汀子 ホトトギス 201207
滴りのここより山路なりしこと 稻畑汀子 ホトトギス 201207
滴りのその一滴の重みかな 松本信子 かさね 201207
白亜紀の地層を洗ふ滴りや 川崎真樹子 春燈 201207
滴りや山の涙腺枯るるなし 北川英子 201207
ゆつくりと愉しみながら滴れり 高橋将夫 201208
滴りを手窪に受けてリユックサック 古川千鶴 かさね 201209
滴りや橅は古武士の相に立ち 大畑善昭 201209
新東名滴る山河走り抜け 須賀敏子 あを 201209
滴りが一つの形となりにけり 川南隆 ろんど 201209
絵地獄の木偶の採掘滴れる 中本吉信 201210
ウェストン像鋳込めし巨岩滴れる 岡田貞峰 馬醉木 201210
内部より光ふくらみ滴れり 田所節子 201210
滴りて隧道暗く響きけり 美田茂子 末黒野 201210
わき水の滴る中を蛍飛ぶ 筒井八重子 六花 201212
ねぢれゐる根を伝つて滴りぬ 山田六甲 六花 201307
滴りて京の水護る加茂御祖みおや 山口キミコ 201308
滴りの次の膨みまついとま 堀園子 201308
滴りの乾かぬ岩のひかりけり 佐津のぼる 六花 201309
ふくらんできては滴りゐたりけり 根橋宏次 やぶれ傘 201309
岩窟にをさまる社滴れる 佐藤喜仙 かさね 201310
ためらひも丹念に苔滴れり 上野進 春燈 201310
山滴るタダでもろうた命なり 江島照美 201310
山小屋の見えて一息滴れる 鈴木照子 201310
滴りの多き崖下苔多し 山中蕃 末黒野 201311
磐座の滴り神の鼓動とも 石黒興平 末黒野 201311
石筍や滴りの音連綿と 久保東海司 201311
滴りに穿子(ほりこ)人形ぎくしやくと 瀧春一 花石榴 201312
岩肌に文字書くごとく滴りぬ 矢野百合子 201312
沖に船見ゆる洞窟滴れり 福島せいぎ 万象 201312
滴りの一滴語彙の生まれけり 本郷公子 京鹿子 201401
滴りの旅の途中とおもひけり 鷺山珀眉 京鹿子 201401
ドッジボール山滴るを借景に 布川直幸 201406
滴りも木霊も深しブナの森 伊藤厚子 ろんど 201408
川沿ひに滴り多き和泉町 村上倫子 201408
滴りも木霊も深しブナの森 伊藤厚子 ろんど 201408
滴りを受くる岩間の筧かな 青木由芙 末黒野 201409
滴りや鳥語明るきやぐら墓 松本三千夫 末黒野 201409
滴りの遥かなる音刻みけり 蘭定かず子 火星 201409
滴りの音軽やかに婚約す 藤井彰二 馬醉木 201409
滴りに苔の匂ひの移りをり 森清信子 末黒野 201409
千年の慈悲滴らす高野槇 藤岡紫水 京鹿子 201410
岩肌に入日とどめて滴れり 安斎久英 末黒野 201410
六界を潤す山の滴れり 岩月優美子 201410
滴りを十色に染むる風の中 平野みち代 201410
滴りの一滴光る瞬時かな 大橋伊佐子 末黒野 201410
わが息と同じリズムに滴れり 平居澪子 六花 201410
太古より言霊のごと滴れり 吉武千束 太古のこゑ 201411
滴りの落つる刹那を光りけり 大橋伊佐子 末黒野 201411
廃線の隧道の径滴りて 橋場美篶 末黒野 201411
滴りの闇に呟く御厨洞 仙頭宗峰 万象 201411
滴りのおはじきをする里の山 藤井杏愛 京鹿子 201501
滴りて山の霊気を湿らせる 上野進 春燈 201508
滴りや死は重しとも軽しとも 中山皓雪 201508
滴りの落つる力を貯めて落つ 林昭太郎 201508
滴りに舌の根湿しなほしけり 山田六甲 六花 201508
彫刻家の鑿かろやかや滴れる 長谷川祥子 馬醉木 201509
野仏と分つ滴り岩間草 米山のり子 馬醉木 201509
滴りの水輪を映す小宇宙 本多俊子 201509
山いくつ潜り潜りて滴れる 岩下芳子 201509
滴りのわが脈拍となりゆけり 広渡敬雄 201509
滴りの風に抗ふ力あり 塩野谷慎吾 201509
滴りや富士の行者の水垢離場 大長文昭 万象 201509
山滴る錨のマークふところに 山田夏子 雨月 201509
滴りの満を持したる形かな 楠原幹子 201510
滴りや草臥れてゐるふくらはぎ 上谷昌憲 201510
甲矢絞る比叡の嶺の滴れり 石崎和夫 201510
つはぶきの青に滴りありにけり 竹内悦子 201510
大日の呟きのごと滴れり 犬塚李里子 201510
滴りのいのちふくらむやうに充ち 阪上多恵子 雨月 201510
凛々と罔象の神に滴れる 熊岡俊子 雨月 201510
大岩の一つが奥社滴れる 笹倉さえみ 雨月 201510
その肩に指に滴り磨崖仏 笹倉さえみ 雨月 201510
山中に大いなる音滴れり 定梶じょう あを 201510
トンネルの出口入口滴れり きくちえみこ 港の鴉 201510
水源の多摩の滴り祀らるる 岡田貞峰 馬醉木 201511
滴りの一粒ほどの言葉欲し 岸洋子 201511
山滴る句碑になる石ふところに 山田夏子 雨月 201511
鍋の中に滴る汗や糸取女 横山昭子 雨月 201511
滴りて滴りて岩砕くかな 渡部節郎 201511
滴りを絞り出したる巌かな 中村襄介 ホトトギス 201601
一本の草を伝ひて滴れる 戸栗末廣 201604
滴りて九頭竜と名の変りゆく 上坂渥子 雨月 201607
滴りし延命地蔵の水を汲む 上坂渥子 雨月 201607
滴りて一水となり河となる 上坂渥子 雨月 201607
熊笹をもて滴りをすくひ飲む 上坂渥子 雨月 201607
一途なる追慕のごとく滴りぬ 上坂渥子 雨月 201607
山滴る楼門の丹のあざらけし 多方清子 雨月 201608
滴りの鋼光りに岩を打つ 田所節子 201608
滴りやいつかは滝になるつもり 高橋将夫 201608
滴りが河童の皿を濡らしけり 高橋将夫 201608
階も急息も急なり滴れり 中山皓雪 201609
生の井戸黄泉の井戸とや滴りぬ 岡本尚子 風土 201609
鎌倉の十六井戸や滴れり 水井千鶴子 風土 201609
滴りにコロボックルの集まりぬ 中嶋陽子 風土 201609
滴りの窟に日の矢や銭洗ふ 太田良一 末黒野 201609
滴りの音常闇を穿ちをり 吉田葎 201609
分け入りし賀茂の大岩滴れり 中島陽華 201610
地底湖は大河の音に滴れり 中村洋子 風土 201610
滴りや下書き消してまた書いて 有賀昌子 やぶれ傘 201610
木霊宿る大楠の洞滴るる 上野紫泉 京鹿子 201610
滴りに大曲りせる滝のみち 今井妙子 雨月 201610
息詰めて待つ滴ゆの次の音 金森教子 雨月 201610
須磨寺の背山まぢかに滴れる 藤生不二男 六花 201611
滴りを南無とぞ享けむ岩祠 田岡千章 201611
渓谷の奇岩の肌へ滴れり 紅露恵子 万象 201611
滴りや苔の青さのさやかなる 安斎久英 末黒野 201611
滴りやこの一瞬に誰か消え 中田みなみ 桜鯛 201701
滴りに引つ張られては滴れり 角野良生 201612
滴り→4      

 

2021年8月28日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。