都 鳥     161句

三月十一日、一夜に焼けたる本所深川をまはる。

被服廠跡に立つ。大震災の記憶の日の中に立つ。

都鳥群れなに事も無きごとく    京極杞陽

ゆりかもめ  都鳥

作品
作者
掲載誌
掲載年月
南座へにぎはふ橋や都鳥 長谷川翠 馬醉木 199903
たとえばみやこどりわすれる個人個人 神田夏果 海程 199904
対岸は浜町河岸や都鳥 安陪青人 雨月 199904
みやこどり良夜の船を慕ひくる 能村登四郎 芒種 199911
皇居濠までや名残の都鳥 江木紀子 雨月 200006
ビル街となりし佃や都鳥 稲畑廣太郎 ホトトギス 200012
都鳥大き蛇行の隅田川 皆川盤水 春耕 200012
舟運の廃れし河岸や都鳥 能村研三 200101
都鳥からくり時計鳴りにけり 三澤福泉 俳句通信 200101
都鳥不況の川を打ちてゆく 後藤志づ あを 200101
一僧やもし餌を撒かば都鳥 沼田巴字 京鹿子 200101
勝鬨橋は戦捷記念都鳥 芝尚子 あを 200102
さざ波の光よせあふ都鳥 祐森弥香 遠嶺 200103
都鳥帰りし後の草青む 中島徳子 酸漿 200106
潮入りの運河なだめて都鳥 鷹羽狩行 200201
都鳥おきばりやすと切火受け 徳田千鶴子 馬醉木 200202
都鳥川の名変はる水の音 谷口みちる 200202
波の穂に浮ぶ光や都鳥 岸本すみゑ 酸漿 200203
梅若の寺に群れ飛ぶ都鳥 安藤衛門 春耕 200203
人去りし橋へ降り立つ都鳥 門田陽子 200204
小名木川低くとび交ふ都鳥 越桐三枝子 春耕 200204
電線にドレミファソラシ都鳥 宮原みさを 花月亭 200208
上げ潮に寄りて離れて都鳥 稲畑廣太郎 ホトトギス 200301
都鳥ふはと雀はちよろちよろと 稲畑廣太郎 ホトトギス 200301
番所址川辺にありて都鳥 落合絹代 雨月 200303
島に往く船を見送る都鳥 森脇多恵子 帆船 200303
カリヨンの尖塔までと都鳥 米須あや子 遠嶺 200304
マイク持つ窓辺をたたく都鳥 本山卓日子 京鹿子 200304
都鳥強がり風に問はれ貌 沼田巴字 京鹿子 200304
都鳥京の薄味好む年齢トシ 服部郁史 京鹿子 200305
この橋を結界として都鳥 稲畑廣太郎 ホトトギス 200312
天涯の濤にただよふ都鳥 遠藤和彦 遠汽笛 200312
水抜きし池やたちまち都鳥 朝妻力 雲の峰 200401
雨降り出して船かげの都鳥 五十嵐唐辛子 草の花 200401
定宿と決めておりたる都鳥 柴田靖子 200402
都鳥水の都の波に浮き 大石登志美 築港 200402
群れに背を向けて一羽の都鳥 原田伸夫 雲の峰 200402
夕映の浜群れて立つ都鳥 小石秀子 酸漿 200402
江戸までの近道都鳥群れて 津田礼乃 遠嶺 200403
都鳥みなむかふ向き隅田川 清水喜造 帆船 200403
遠目路に光りてをりぬ都鳥 細井紫幸 草の花 200403
都鳥空中戦の如く舞ひ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200412
都鳥不老橋てふ御成道 山口マサエ 雲の峰 200502
都鳥浮いて臨海副都心 八巻匡子 対岸 200502
橋脚に風の屯す都鳥 中根喜与子 200502
ふる里へ渡る鉄橋都鳥 吉川与音 200503
汽水より始まる海や都鳥 太田佳代子 春燈 200503
嶺々遥か舟に伴ふ都鳥 稲辺美津 遠嶺 200503
都鳥誰を待ちおる海を向き 佐藤仁 200505
都鳥一羽見付けてよりの数 稲畑廣太郎 ホトトギス 200601
言問はむ今も昔も都鳥 櫛原希伊子 百鳥 200602
都鳥数へるたびに数うごき 安田とし子 ぐろっけ 200603
観阿弥の芸は世阿弥に都鳥 林日圓 京鹿子 200603
割箸を口もて割りぬ都鳥 高千夏子 200603
一杯の杯とは船ぞ都鳥 天野きく江 200604
都鳥芸妓のあかき袖袂 小林愛子 万象 200604
暮れすこしおそき気配や都鳥 折橋綾子 200604
若き日の友がきいかに都鳥 稲嶺法子 遠嶺 200605
下校チャイムきいて帰りぬ都鳥 石川英利 百鳥 200605
清らなる波もわびしや都鳥 瀧春一 瓦礫 200606
都鳥風になりゆく白さかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200608
都鳥気をつけ休め回れ右 稲畑廣太郎 ホトトギス 200611
都鳥我も旅人でありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200612
都鳥言問橋は何問はん 稲畑廣太郎 ホトトギス 200612
千住橋あたりに浮かぶ都鳥 安陪青人 雨月 200701
都鳥待ち人は来ぬ渡し跡 鈴鹿けい子 京鹿子 200701
ふる里を東京として都鳥 鈴木榮子 春燈 200702
都鳥うはさはデマEメール 佐々木新 春燈 200704
都鳥白く川鵜は黒く寝る 稲畑康太郎 ホトトギス 200712
都鳥ハイジャンプせし白さかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200801
托鉢に卍巴の都鳥 井上あき子 ぐろっけ 200802
都鳥島に文楽見に行かな 戸栗末廣 火星 200803
高速道の上を飛び交ふ都鳥 戸村朗子 200804
吉良の忌と言ふがありけり都鳥 中田みなみ 200804
掛軸のさて見納めの都鳥 小澤克己 遠嶺 200804
東都人らの羨しかりける都鳥 大橋敦子 雨月 200805
都鳥集ふ隅田川の夕景色 藤見佳楠子 200901
古利根の深きにごりや都鳥 藤田良 炎環 200902
翁像のまなざしに入る都鳥 落合絹代 雨月 200902
余白なき便りの届く都鳥 村上ひで香 炎環 200903
都鳥マストの鳴れば外方向く 高田令子 200903
波に乗る一ト日の白は都鳥 有働亨 馬醉木 200904
いとほしやこんなところに都鳥 前川明子 200904
向ふ河岸は橋場辺りか都鳥 折橋綾子 200904
広沢の池や数多の都鳥 梶井和呼 酸漿 200910
都鳥目が言問うてをりにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200912
都鳥水面弾いてをりにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200912
都鳥の羽音を被り籤買ひに 山尾玉藻 火星 200912
都鳥一羽は君の化身とも 稲畑廣太郎 ホトトギス 201001
都鳥雨の大川波立てる 青木政江 酸奬 201002
都鳥北へ火急の一羽あり 曷川克 遠嶺 201004
南座へ急ぐ袂や都鳥 大西逸子 京鹿子 201004
彦様は業平似とや都鳥 稲畑廣太郎 ホトトギス 201012
都鳥橋の向かうに仁左衛門 佐藤千恵 京鹿子 201101
都鳥去りて戻りし静寂かな 永塚尚代 ぐろっけ 201102
都鳥両翼風に膨らませ 大島みよし 201103
スカイツリー嬉々と隅田の都鳥 北村香朗 京鹿子 201103
人間に終の住処や都鳥 中島讃良 ろんど 201103
故郷の空広がりて都鳥 柴田靖子 201104
都鳥ブーメランより先に下り 猪爪皆子 201104
繋留の船多き日や都鳥 古川夏子 201106
羽根いちまい使ひ切りたる都鳥 倉持梨恵 201106
都鳥琵琶湖ホールにかよひ来る 竹内悦子 201202
ふる里の定義とは何都鳥 青山正生 201205
謂れある地名消えゆく都鳥 吉田葎 201302
水都大阪日の斑こぼせる都鳥 池田華甲 201302
鴨集ふ池を掠めて都鳥 城戸緑 末黒野 201303
あらたまの白を散らせり都鳥 片山煕子 京鹿子 201304
羽広ぐより詩を紡ぐ都鳥 稲畑廣太郎 ホトトギス 201312
白々と水を褥に都鳥 稲畑廣太郎 ホトトギス 201312
都鳥浮いて沈んで飛んで消ゆ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201312
あんた其処出たら都鳥とちやふで 稲畑廣太郎 ホトトギス 201312
都鳥言問ふやうにたゆたへり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201312
水を恋ひ詩を恋ひたる都鳥 稲畑廣太郎 ホトトギス 201312
漕艇の水脈にむらがる都鳥 落合晃 201401
都鳥雲引つ張つてをりにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201401
先週は未だ都鳥だつた君 稲畑廣太郎 ホトトギス 201402
遠峯にまだ雪あらず都鳥 林範昭 火星 201404
大川の名残を今に都鳥 安立公彦 春燈 201502
都鳥人待つことの久しかり 鈴木直枝 ろんど 201502
釣船に即かず離れぬ都鳥 安斎久英 末黒野 201503
深川は蕉風の故地都鳥 塩田博久 風土 201503
業平の歌胸中に都鳥 木村みどり 春燈 201503
片足を畳み直してみやこ鳥 内田梢 末黒野 201505
川すぢの光を散らす都鳥 豊田都峰 京鹿子 201505
日のかけらまきて橋越ゆ都鳥 豊田都峰 京鹿子 201505
鳴きもせず翔ゆきもせず都鳥 平子公一 馬醉木 201601
夕日入るさざなみのなか都鳥 石原節子 春燈 201602
お台場の日をまとひをり都鳥 龍町子 末黒野 201603
隅田川の変らぬ流れ都鳥 堀田こう 雨月 201604
不忍池になじみて都鳥 足立良雄 201604
都鳥学生服を騒がせて 甲州千草 201702
一湾の海平らかに都鳥 柴田久子 風土 201702
都鳥今日鴨川のどのあたり 安居正浩 201704
逆光の眩しき川面都鳥 新谷フクヱ 末黒野 201705
晴れ渡る海辺に並ぶ都鳥 秋川泉 あを 201802
川床寂びて水にさすらふ都鳥 亀井福恵 京鹿子 201803
大川のベンチの人も都鳥 平井奇散人 船団 201805
都鳥の飛交ふ中を曳航す 野口希代志 やぶれ傘 201902
都鳥水布浪布雪の布 佐藤喜孝 あを 201902
都鳥川辺に小さき佃煮屋 福岡かがり 雨月 201903
都鳥京より遠き浮舟碑 塩貝朱千 京鹿子 201903
言問の団子ひと皿都鳥 岡本一路 京鹿子 201903
都鳥日暮は町を遠くせり 栗坪和子 202002
鴨川の陣を乱せり都鳥 鈴鹿呂仁 京鹿子 202002
都鳥水上バスは向きを変へ 瀬島洒望 やぶれ傘 202003
逢うてゐる刻の短かさ都鳥 菊池和子 京鹿子 202006
都鳥木場に角乗橋遺る 楠本和弘 202006
せせらぎの光に休む都鳥 菊池和子 京鹿子 202101
鴨川は学びの師なり都鳥 菊池和子 京鹿子 202104
橋の名に残る渡し場都鳥 楠本和弘 202105
都鳥羽に抱かるる一行詩 稲畑廣太郎 ホトトギス 202201
都鳥脚伸び切つてゐる飛翔 稲畑廣太郎 ホトトギス 202201
都鳥積る話がありさうな 稲畑廣太郎 ホトトギス 202201
都鳥売られた喧嘩買うてをり 小林陽子 202201

 

2022年12月26日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。