蠛蠓(まくなぎ)     196句

まくなぎとなりて山河を浮上せる    斎藤玄

蠛蠓  めまとい  糠蚊

作品
作者
掲載誌
掲載年月
まくなぎや聴禽書屋の古机
皆川盤水
春耕
199807
まくなぎを連れて水辺に出でにけり
生田恵美子
風土
199808
むらさきの念珠うち振る蠛に
品川鈴子
ぐろっけ
199905
まくなぎの支離滅裂を水の上
鷹羽狩行
199906
塵はみな人の世のものまくなぎも
鷹羽狩行
199907
山門を出て蠛蠓にたぢろぎぬ
田淵定人
春耕
199908
干網に立つまくなぎの太柱
菰田晶
199910
蠛蠓にぐらっと巻かれ忘れ物
前田保子
海程
199910
まくなぎと黙って座る電車かな
榎本祐子
海程
199911
まくなぎを沸ひ大聖不動明
丸山佳子
京鹿子
199912
蠛蠓をはらひつぎつぎ女過ぐ
内田美紗
船団
199912
まくなぎの蹶起集団ことなかれ
鈴鹿仁
京鹿子
200006
まくなぎの陣は一つに媛の墳
豊田都峰
京鹿子
200007
まくなぎや放哉の島離るとき
浜口高子
火星
200008
蠛蠓を耳で払うて牛の午后
岩崎憲二
京鹿子
200008
まくなぎを払ふ其の手で家教へ
岩崎憲二
京鹿子
200008
さびしさの蠛蠓に身を投じけり
竹村悦子
銀化
200008
雄滝よりまくなぎ雌滝まで及ぶ
笹村政子
六花
200008
県境の碑に蠛蠓の柱立つ
中川濱子
ぐろっけ
200008
まくなぎや自刃の墓の前うしろ
高木悠悠
200009
まくなぎを幾たび払ひ父死にし
山尾玉藻
火星
200009
蠛蠓に強かな顎ありにけり
相原澄江
海程
200010
まくなぎに好かれてしまひ大迷惑
高木伸宜
ヒッポ千番地
200010
まくなぎを峠で払ひ来て除幕
丸山佳子
京鹿子
200011
蠛蠓にベンチの二人立たさるる
小西瑞穂
ぐろっけ
200012
まくなぎや静御前の舞ふ縁に
岡和絵
火星
200102
まくなぎや愛とは違ふ至近距離
奥田筆子
京鹿子
200106
まくなぎを掻き混ぜし棒落ちてをる
中原道夫
銀化
200106
風止んでまくなぎが目の前にいる
ロツキイ
六花
200107
錫杖を振つてまくなぎ払ひをり
深川知子
春耕
200107
日に透けて蠛蠓動くレースたる
篠田純子
あを
200107
まくなぎをやり過ごしたる上野かな
南浦輝子
火星
200109
擦れ違ふときまくなぎの吾へ向く
大山文子
火星
200109
払つてもまくなぎ群るる六合目
河野友子
六花
200109
まくなぎが山の上までついてきし
有本惠美子
200109
まくなぎの火の粉なしたる旅疲れ
高橋さえ子
200110
まくなぎに道ふさがれし仏みち
能村登四郎
羽化
200110
蠛蠓に行き先知れてしまひけり
間宮洋子
200206
まくなぎや痴漢注意の札立ちて
岩尾みち子
京鹿子
200207
まくなぎのうなりに敏く耳動く
北原東洋男
200207
まくなぎを連れて乗り込む山のバス
當麻幸子
雲の峯
200207
まくなぎの柱の中に突入す
塩川雄三
築港
200207
橋渡る順まくなぎに巻かる順
下村志津子
銀化
200207
車捨つよりまくなぎの攻にあふ
大橋敦子
雨月
200207
蠛蠓に写生派の目を酷使せる
土井田晩聖
銀化
200207
一筋の雨まくなぎを貫通す
土井田晩聖
銀化
200208
巡礼の杖に蠛蠓払はるる
丸尾和子
雨月
200208
まくなぎや闇の重層払ふべく
尾上直子
200208
銀河系ぐらゐのまくなぎと出会ふ
青山茂根
銀化
200209
出会ふたび蠛蠓の数濃くなるよ
木内憲子
200209
まくなぎの中を葬列進みけり
おおた敏
銀化
200210
まくなぎを悪夢のごとく打ち払ふ
山口速
200211
まくなぎをまとひつ僧の歩みくる
遠藤匡子
遠嶺
200211
蠛蠓に目もと虐げられてをり
高橋さえ子
200212
まくなぎを払ひて何か失くしさう
田中美智代
200302
まくなぎを払ひ鉛筆供養の僧
吉田康子
青山椒
200303
まくなぎの高さ定めて漂へり
秋千晴
200306
蠛が百面相をしてをりぬ
佐藤喜孝
あを
200306
人ごゑにまくなぎは囲を解きにけり
木内憲子
200307
戻り道同じところに蠛蠓が
赤座典子
あを
200308
まくなぎのなか全力で走り抜け
小森英郎
200310
まくなぎや道をきかれてをりし辻
古賀トシ江
200312
何も聞えずまくなぎの修羅柱
小川匠太郎
200406
まくなぎのもつれ合ひつつ群解かず
熊口三兄子
築港
200406
酷使せる身にまくなぎのやさしかり
西川五郎
馬醉木
200408
蠛蠓につつまれてゆくうつつかな
中野京子
200408
まくなぎの吾が目も豚の目も纏ふ
長村雄作
栴檀
200408
足弱の我まくなぎに好かれをり
田所節子
200408
目に入りてまくなぎ不運われもまた
望月晴美
200408
まくなぎや疑心ふくらみはじめたる
清水節子
馬醉木
200409
まくなぎに緊急動議かかりけり
山口奈代
河鹿
200409
まくなぎや貨車の過ぎゆく高架線
安食守
200410
まくなぎの夕べの修羅場みぬふりに
山口奈代
河鹿
200410
獅子舞のまくなぎ拂ひ出を待てり
澁江阿喜子
万象
200410
一払ひせしまくなぎの大逆襲
中谷藤房
200411
まくなぎに遇うて君とは逢へざりし
木村享史
ホトトギス
200502
味噌蔵の前まくなぎの柱成す
今瀬剛一
対岸
200506
子曰く顔もてまくなぎは破れ
今瀬剛一
対岸
200506
蠛のをどりをどりてつと消ゆる
森理和
あを
200507
まくなぎの狼藉を森許しけり
斎藤道子
馬醉木
200508
まくなぎや舞妓の持てる蛇の目傘
竹内悦子
200508
蠛蠓の黒子めきたる動きかな
加藤みき
200508
橋暮れてまくなぎに顔汚されし
五十嵐暢子
対岸
200508
まくなぎや器用貧乏の指の胼胝
鈴鹿仁
京鹿子
200508
襲ひくる蠛蠓逃れ自刃の地
堀田清江
雨月
200508
参道のまくなぎ数珠で払ひけり
橋本典男
築港
200508
まくなぎをくぐつて通夜に参じけり
橋本典男
築港
200508
野外劇見んとまくなぎ抜けて来し
山田晴久
築港
200508
西行忌春のまくなぎ群なさず
佐藤佐代子
200508
まくなぎの人の頭のかたちほど
木村みかん
200509
まくなぎの児童画伯に戯るる
山本喜朗
雨月
200509
蠛蠓の音なき攻めに会ふばかり
西村しげ子
雨月
200510
山城を出てまくなぎに攻めらるる
九万田一海
河鹿
200510
まくなぎや生家に深き車井戸
松内佳子
百鳥
200511
まくなぎが酸素を練つてゐて夢中
佐藤喜孝
あを
200607
蠛蠓を払ひ払ひて石舞台
伊藤稔代
200608
蠛蠓を双手打ちして打ち損ず
西村しげ子
雨月
200608
まくなぎを払ひて通る谷戸の路地
清水けい子
八千草
200612
まくなぎや金と女が聳(そび)へをる
小形さとる
200703
蠛蠓の狂ひの中を抜けきたる
滝沢伊代次
万象
200706
まくなぎを払ひ果せぬ思ひなほ
稲畑汀子
ホトトギス
200706
蠛蠓の群れゐるのみが憎まるる
柴田佐知子
200708
まくなぎを払ひて鑑真廟の前
浅田光代
風土
200709
月給もなくまくなぎも寄りつかず
森下賢一
春燈
200709
まくなぎの住み継ぐ荷風旧居かな
伊藤真代
200709
蠛蠓の不幸よ口に飛び込みし
近藤紀子
200710
推量の溢れ出でをり蠛蠓も
吉田明子
200710
まくなぎの右によければ右に寄る
服部早苗
200710
まくなぎに追はれて少し躓きし
高倉恵美子
200711
まくなぎの福澤先生像かこむ
高久清美
200808
まくなぎや背伸びの運動から始む
石田きよし
200808
まくなぎのここを先途とするごとし
藤田宏
長城
200808
蠛蠓や聞かぬふりして聴く噂
秋葉雅治
200809
まくなぎを払ひ一人の門に入る
田所洋子
雨月
200809
まくなぎは手打ちと致す師の墓前
岸はじめ
ぐろっけ
200809
なんのため蠛蠓われに慕ひくる
米須あや子
遠嶺
200810
まくなぎに押され吊橋渡り切る
山田六甲
六花
200905
まくなぎを払ひつゝ峠登りたり
滝沢伊代次
万象
200907
まくなぎの付いて来るなり入徳門
亀田やす子
万象
200908
まくなぎの真中にありし歎異抄
戸栗末廣
火星
200909
まくなぎを払へば空気払ふなり
原田達夫
200910
蠛蠓を抜け来て塩辛声となる
小林正史
200911
まくなぎを仏陀の方へ払ひけり 柴田佐知子 201007
まくなぎや眼を閉ぢて見ゆるもの 手拝裕任 201008
蠛蠓のなか自転車に浮き来たる 松井倫子 火星 201008
尾根をゆく蠛蠓はらひ払ひては 鈴木千恵子 万象 201009
まくなぎに追ひつめられてゐたりけり 中村洋子 風土 201009
まくなぎのかたまり解けし暮色かな 中田みなみ 201009
まくなぎをとらへてしまひたる睫毛 川山本素竹 ホトトギス 201103
蠛蠓を払ふ手足のをどりけり 久染康子 201108
つぎつぎとまくなぎを吐く弁才天 山田春生 万象 201108
まくなぎに再発行のパスかざす 久米なるを 201109
蠛蠓を払ひはじまる地鎮祭 土屋実郎 末黒野 201110
蠛蠓や身を躱してもまとひつき 松本文一郎 六花 201112
はや春の蠛蠓に君好かれたる 西田孝 ろんど 201208
蠛蠓に組し易しと見られけり 佐藤山人 201208
中空(なかぞら)にまくなぎ渦を巻く夕べ 丹生をだまき 京鹿子 201208
まくなぎに取り囲まれて日暮坂 丹生をだまき 京鹿子 201208
あらあらとまくなぎ吹かれやすきかな 田丸千種 ホトトギス 201209
まくなぎの本気になりてかかりくる 十川たかし 201209
蠛蠓を避けたる母の日和下駄 卯木尭子 春燈 201209
蠛蠓のかたまり薄暮移し替ふ 安藤しおん 201209
蠛蠓の柱沸騰してゐたる 原友子 201210
まくなぎや出入り少なき鯨幕 江見巌 六花 201212
木洩日に組むまくなぎの一柱 田中貞雄 ろんど 201306
まくなぎや山の祠に山の神 大島英昭 やぶれ傘 201309
蠛の解散してゐる駅の前 篠田純子 あを 201307
出奔の蠛Aの浮游かな 篠田純子 あを 201308
鴨川でランチまくなぎ舞ひどほし 篠田純子 あを 201406
蠛蠓)の毬弾まざり弛まざり 山尾玉藻 火星 201407
まくなぎに力と違ふ闘志かな 能村研三 201407
まくなぎの芯あるやうな無きやうな 布川直幸 201407
子規俺の蠛蠓ひかる入日かな 高木邦雄 末黒野 201408
目瞑りてなほまくなぎを増やしけり 森岡正作 201409
まくなぎに簗の瀬音の立ちのぼる 大山文子 火星 201409
まくなぎは顔のあたりが好きらしき 楠原幹子 201409
まくなぎや多勢といふを力とし 田所節子 201409
まくなぎや昼を眠れる猿田彦 大山文子 火星 201409
おめおめと夕蠛蠓に道譲る 和田紀夫 201410
まくなぎの遅れじと蹤く渡し舟 佐藤山人 201410
まくなぎを乱して夫の墓拝む 大橋伊佐子 末黒野 201410
蠛蠓に弓引き絞るブロンズ像 上谷昌憲 201507
まくなぎの動きに意志のあるやうな 和田紀夫 201510
蠛蠓のたましひ分けてゐる容 甕秀麿 201510
吊橋の途中蠛蠓待ちゐたり 渡真利真澄 万象 201606
まくなぎの群の無音を恐れけり 竹内タカミ 201608
蠛蠓や煩惱を糧に生くるなり 中島芳郎 201609
まくなぎのくづれんとしてくづれざる 南うみを 風土 201609
蠛蠓の群れて明日はきつと雨 柴田志津子 201609
まくなぎを抜くれば闇のやはらかし 荒井千瑳子 201708
蠛蠓まくなぎに遭うてその字を忘じけり 山田六甲 六花 201708
まくなぎを払ふ彼方に天主堂 上柿照代 馬醉木 201709
むちやくちやにしてまぐなぎの柱なす 原友子 201801
まくなぎのまだ渦巻かぬ雨あがり 篠田純子 あを 201806
まくなぎの向うの水のゆれてをり 根橋宏次 やぶれ傘 201807
蠛蠓やいざ鎌倉と云ふ時に 中貞子 201809
まくなぎと路地を出て来し検針員 中田みなみ 201809
まくなぎを払ひて次の世を覗く 三上程子 春燈 201810
まくなぎは重さを知らず漂へり 横井遥 201908
退けばまくなぎの群見えて来し 笹村政子 六花 201909
さよならの手に蠛蠓を払ひけり 住田千代子 六花 201909
預かりしまくなぎすぐに返しけり 田尻勝子 六花 201909
まくなぎを払ふ払ひ切れない過去 鷺山珀眉 京鹿子 201909
まくなぎに顔を泳がす橋の上 小倉征子 201910
蠛蠓の真中に何か守るもの 高橋まき子 風土 202006
まくなぎと共に市役所裏通り 甲州千草 202007
まくなぎや説明不足と思ひつつ 犬飼典子 京鹿子 202010
まくなぎやちろちろ小さな嘘をつく 西村白杼 京鹿子 202011
まくなぎや抱へ込みたる些事大事 能村研三 202107
いくばくの乱心雨後のまくなぎは 高橋あさの 202109
どうにでもなれと叫びてまくなぎへ 南うみを 風土 202109
登四郎の地よ蠛蠓のここかしこ 増成栗人 202109
まくなぎや小兵力士の猫だまし 里村梨邨 202110
蠛蠓や見守られつつ夕散歩 菅野日出子 末黒野 202111
一僧のまくなぎ払ふこともなし 山本則男 202112

 

2023年6月26日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。