春の潮 (汐)     160句

暁や北斗を浸す春の潮   松瀬青々   妻木

春の潮  春潮

作品
作者
掲載誌
掲載年月
澪すぢの細めつ春の潮引けり 渡部節郎 199805
両国橋渡るに満てり春の潮 松崎鉄之介 199805
大穹は孔雀なりける春の潮 岡井省二 199902
虚空蔵足裏に春の潮満つ 小形さとる 199905
石ぶみの碑文ひそひそ春の潮 葉月ひさ子 船団 199906
おだやかに木々あり遠く春の潮 木内憲子 199907
春の潮寄せて鳥居を低くせり 金國久子 青葉潮 199907
ナザレより瀬戸内までの春の潮 品川鈴子 ぐろっけ 200002
塑像一体満面に春の潮 岡井省二 200003
春の汐岬の岩根あらはにし 鎌倉喜久恵 あを 200304
基督や山の上まで春の潮 岡井省三 200005
天地の濡れては乾き春の潮 高橋将夫 200005
雲影をところどころに春の潮 宮津昭彦 200005
水牛の尻の行き交ふ春の潮 竹内悦子 200006
抱き受けて春の潮なる赤ん坊 今城知子 船団 200102
人間を発明したる春の潮 ロツキイ 六花 200104
踝に能野の砂と春の潮 各務耐子 200105
春の潮静かに満ちてきたりけり 出原博明 円虹 200106
島よりも橋にかをりて春の潮 中根美保 風土 200106
白象のからだは春の潮かな 男波弘志 200106
島尻に水尾引きそめぬ春の潮 上崎暮潮 ホトトギス 200109
ひたすらな青せめぎあふ春の潮 能村登四郎 羽化 200110
南無遍照金剛春の潮かな 岡井省二 200201
盃に猩々泛かぶ春の潮 延広禎一 200204
入相の淀に差しくる春の潮 伊藤重美 雲の峰 200204
民宿の生簀へ桶の春の潮 小林啓子 春耕 200204
春の潮連絡船が離れけり 浜崎壬午 円虹 200205
だんだんに春の潮満つ槐の木 谷村幸子 200205
鳶の笛不意に低くて春の潮 土肥屯蕪里 雲の峰 200206
若き日もこの照り返し春の潮 鷹羽狩行 200207
豪華なる没日が染めし春の潮 永井雪狼 200207
白蓮洞春の潮目に磯巾着 磯野たか 風土 200207
神歌の喉に出でし春の潮 中島陽華 200207
それぞれの石にも貌が春の潮 長沼紫紅 200211
波囲む飛島ひとつ春の潮 上崎暮潮 ホトトギス 200212
早春の潮の騒きでありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200302
限りなく広き海原春の潮 稲畑汀子 ホトトギス 200304
捨てられし自転車洗ふ春の潮 岸直人 築港 200304
黒猫の黄金くがねの眼春の潮 竹内悦子 200305
しなしなと鱪の乾く春の潮 関口ゆき あを 200306
春の潮しづかにかへる消防車 土屋酔月 火星 200307
春の潮船近づけば渦たける 清水明子 遠嶺 200308
はじまりは鴎の合図春の潮 沼田巴字 京鹿子 200308
臨月が近づいてゐる春の潮 松田都青 京鹿子 200401
あの辺り佐渡があるてふ春の潮 長沼紫紅 200405
言ひたくて砂でつぶやく春の潮 蓮尾あきら 風土 200405
日蓮の俎岩に春の潮 鈴木とおる 風土 200405
春の潮怒れるもあり笑むもあり 川角としえ 築港 200405
濃淡に変化の兆し春の潮 小野博志 築港 200405
海に浮く灯台の影春の潮 喜多初枝 雨月 200406
太陽を折畳みゐる春の潮 塩川雄三 築港 200406
落日の色呑み込めり春の潮 大森玲子 築港 200406
空映しをり岩上の春の潮 今瀬剛一 対岸 200407
崖上の学校晴れて春の潮 今瀬剛一 対岸 200407
春の潮引きよく回る風車 今瀬剛一 対岸 200407
流れ藻のむらさきまだら春の潮 細野恵久 ぐろっけ 200502
吹かれゐる和毛(にこげ)や春の潮満ち来 渡辺周子 雲の峰 200504

 祝・翔先生詩歌文学館賞

ゆるぎなき光年届く春の潮

能村研三 200504
半跏坐の辨天春の潮のなか 鎌倉喜久恵 あを 200504
泊船のあたり犇めく春の潮 塩川雄三 築港 200505
波と言ふ波三角に春の潮 田村和彦 築港 200505
崩れてはがばりと音を春の潮 田村和彦 築港 200505
年金の暮し始めむ春の汐 三輪慶子 ぐろっけ 200506
貝ひとつ残して引けり春の潮 徳田正樹 河鹿 200506
名和公にゆかりの舟津春の潮 浜田南風 200506
突きすすむトンネルいくつ春の潮 葛馬房夫 雨月 200509
闇穴に満ちてきたりし春の潮 高橋将夫 200605
大川に春の潮満ち船遊び 木村茂登子 あを 200605
本校と分校へだつ春の潮 荒井千佐代 200605
立神岩は大和の墓標春の潮 木原紀幸 河鹿 200606
日の姿なく春の潮きらきら燃え 瀧春一 瓦礫 200606
サーファーの首押し返す春の潮 伊藤晴英 対岸 200606
連れ潜る母子海女かや春の潮 博多永楽 雨月 200606
岩礁に藻の色深き春の潮 木内美保子 六花 200606
わが墓は片側空けよ春の潮 岡崎るり子 200704
春の潮あひたくなりて車駆く 藁谷文枝 遠嶺 200706
小魚の群れ来る春の潮だまり 森山のりこ あを 200706
春の潮千畳岩をひた走る 高橋さえ子 200706
春の潮匂ふ岬径いく曲り 佐々木幸 200706
春の潮深く陥ち去る岩間かな 瀧春一 200706
春の潮波と波との間へこみ 山田六甲 六花 200802
回遊のあはあはとせる春の潮 石脇みはる 200805
春の潮寄せてみなぎる気魄かな 高橋将夫 200806
生まれ次ぐ大渦小渦春の潮 吉野川三郎 万象 200807
春の潮渦巻きしまま迫り来る 大信田梢月 万象 200808
砂岩また砂にもどりし春の潮 中田禎子 白猪 200901
春の潮とろりとろりと巻きはじむ 岡田満壽美 夢のごとしと 200904

 「港」二十周年を祝して

港より湾よりあふれ春の潮

鷹羽狩行 200904
せんぐりせんぐり回す大数珠春の潮 竹内悦子 200904
八十の師の声ぬらす春の潮 和田政子 200905
小宰相局入水す春の潮 山口耕堂 万象 200906
補陀落へ綱切島に春の潮 吉田光子 ぐろっけ 200906
海猫の群泡のごとくに春の潮 永田二三子 酸漿 200906
甘苦き春の潮でありにけり 岩下芳子 200907
ひかり合ふ帆影や春の潮満つ 大谷茂 遠嶺 200907
回旋橋抜ける漁船や春の潮 長瀬節子 ぐろっけ 200907
渋滞を見上ぐ鳴門の春の潮 近藤倫子 ぐろっけ 200908
一湾の白砂の光る春の潮 石川政男 200909
澪すぢを細めつ春の潮引けり 渡部節郎 転舵の渦 200911
厳めしき橋桁に添ふ春の潮 赤座典子 あを 201005
編集長の乗馬や春の潮湿り すずき巴里 ろんど 201006
春の潮人形橋まで遡る 石川友江 風土 201007

 悼

春の潮「ひようたん島」は旅立てり

吉澤恵美子 春燈 201007
春の潮鳴門に力溜めてをり 涌羅由美 ホトトギス 201008
向き変へて稚魚の群ゆく春の潮 松田泰子 末黒野 201008
ワイナリーに春の潮騒響きけり 坂根宏子 201105
瀬戸内の春の潮満ち厳島 岡野ひろ子 201105
帆船発つ春の潮の秀にふれて 川井秀夫 ろんど 201106
崖裾の節理を洗ふ春の潮 浜田南風 201107
春の潮ひたひた雁木洗ふかな 川村欽子 雨月 201107
岩を捲く走り根強し春の潮 ふじの茜 201108
帆柱の揺れる音あり春の潮 平田恵美子 ぐろっけ 201108
波頭崩れては引く春の潮 久永つう 瀬戸の海 201203
煌めきや太平洋の春の潮 片岡久美子 201206
渡船わたし清盛塚に春の潮 岡田満喜子 ぐろっけ 201206
実盛を松に偲べり春の潮 北崎展江 くりから 201209
源平の戦決せし春の潮 蒲田豊彦 雨月 201301
立春の潮マリアの御裾打つ 荒井千佐代 201303
立春の潮差して来し能衣裳 延広禎一 201304
理不尽な死を賜りし春の潮 吉田葎 201304
久々に島へ花嫁春の潮 藤見佳楠子 201305
みちのくの災ひ今も春の潮 小山繁子 春燈 201305
火の島の裾引く春の潮かな 田嶋洋子 七線譜 201306
澪標に春の潮来る渡舟かな 小幡喜世子 ろんど 201405
礁呑み礁吐き出し春の潮 大橋伊佐子 末黒野 201405
水垢離の水に映りし春の潮 柳川晋 201406
流れ藻を置いてけぼりや春の潮 松本三千夫 末黒野 201505
廃船が夢をみてをる春の潮 近藤紀子 201506
日矢のさす綺羅ひとところ春の潮 野村重子 末黒野 201506
いくつもの橋くぐり来る春の潮 矢野百合子 201506
荷積み待つ外国船や春の潮 小渕二美江 春燈 201507
夫婦岩つなげて春の潮かな 鈴木庸子 風土 201507
門司に母誘ひし日や春の潮 野畑さゆり 201508
春の潮浪を擡げて陸を恋ふ 和田絢子 春燈 201604
一湾をひと舐めずりの春の潮 前田美恵子 201604
岩礁のみな笑窪持ち春の潮 森岡正作 201605
春の潮高鳴り駒の疾走す 古川夏子 201606
大渦に船のかたむく春の潮 野畑さゆり 201606
遥かなる島引き寄せて春の潮 片桐紀美子 風土 201705
茫漠と富士あるは良し春の潮 宇都宮敦子 201705
艫綱のこつんこつんと春の潮 落合絹代 風土 201706
ひたひたと春の潮濃き船着場 大内佐奈枝 万象 201707
神守の鳶のこゑ舞ふ春の潮 岡村清美 馬醉木 201712
岬には灯台ありて春の潮 藤生不二男 六花 201805
春の潮きらめく果てに富士浮かむ 櫛橋直子 雨月 201806
海人の墓標みな海を向き春の潮 櫛橋直子 雨月 201806
俊寛の無念に荒るる春の潮 福岡芳子 雨月 201806
春の潮満ちて近うす安房上総 松本三千夫 末黒野 201905
モザイクの光つてをりし春の潮 植木戴子 201905
軍神のねむる川岸春の潮 中澤弘 春燈 201906
潜水艦浮いて重たき春の潮 石黒興平 末黒野 201907
春の潮ひねもす小舟あやしをり 斉藤マキ子 末黒野 201907
春の潮鰐を数へて跳ぶうさぎ 菊川俊朗 202004
春の潮テトラポットの隙間まで 小島良子 202005
江の島の桟橋洗ふ春の潮 宮崎他異雅 末黒野 202005
幾千の真珠の館春の潮 森なほ子 あを 202005
たをやかに砂連れ帰る春の潮 加藤静江 末黒野 202007
逸る気の白濁均す春の潮 吉田政江 202106
真珠抱く貝蕩揺と春の潮 加賀荘介 202107
早春の潮のにほひも明石焼 石田康明 春燈 202205
切り通し越ゆれば春の潮にほふ 藤井美晴 やぶれ傘 202205
船ばたに踊る大鯛春の潮 木下晃 末黒野 202205
ゆるやかに砂を鞣すや春の潮 加藤静江 やぶれ傘 202207
壇ノ浦スカル舳に春の潮 眞田忠雄 やぶれ傘 202208
たたみきて伝ふるは何春の潮 岡井マスミ 202208 202208

 

2023年4月18日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。