敗 戦 1    449句

敗戰日妻子入れむと風呂洗ふ    秋元不死男

敗戦  終戦

作品
作者
掲載誌
掲載年月
敗戦日非業の死者と風の島に 金子兜太 海程 199811
城垣にむかしの匂ひ敗戦日 岡本眸 199811
敗戦日五つ違ひの兄逝かせ 岡本眸 199811
干し物を妻たたみゐる敗戦日 青山丈 199812
敗戦の日や箸箱に箸しまふ 鳥居真里子 船団 199812
敗戦日非業の死者と風の島に 金子兜太 海程 199902
敗戦や以後スクランブル交叉点 竹貫示虹 京鹿子 199908
千羽鶴影の細りて敗戦忌 保坂加津夫 いろり 199908
平成もはやひとむかし敗戦忌 保坂加津夫 いろり 199908
妻来ると電話のありぬ敗戦忌 保坂加津夫 いろり 199908
敗戦忌知らぬ若者増えにけり 伊藤一歩 いろり 199909
敗戦を知らぬ家族と住みにけり 久保田一豊 いろり 199909
敗戦日不足なき世を感謝して 林田加杜子 いろり 199909
天皇もわれも白髪の敗戦日 木田千女 199910
露草の色は変らず敗戦忌 長谷川通子 俳句通信 199910
敗戦忌九段を思ひ吟じけり 末益冬青 俳句通信 199910
敗戦忌この世に生きて淋しかり 保坂加津夫 いろり 199910
清貧に生きて悔なし敗戦日 山本潤子 いろり 199910
生き堪えて豊かになりし敗戦忌 山本潤子 いろり 199910
一冊の手記の重みや敗戦忌 本城布沙女 雨月 199911
敗戦忌死にゆく戦友は妻呼んで 保坂加津夫 いろり 199911
生きるより死にてよき身の敗戦忌 保坂加津夫 いろり 199911
ビニール袋にクラゲ泳がせ敗戦日 佐々木峻 船団 199912
釘ばかり抜いて釘抜き敗戦日 鳥居真里子 船団 199912
敗戦日真赤な花をわれも買ふ 雨宮照代 風土 200002
日々を飢ゑて一途なりしよ敗戰忌 田中藤穂 水瓶座 200002
自殺せし父の忌であり敗戦忌 保坂加津夫 いろり 200009
何もかもふり返る日の敗戦忌 保坂加津夫 いろり 200009
敗戦の思ひ出苦し夾竹桃 山本潤子 いろり 200009
海を見に敗戦の日の峠越す 宮崎山景 俳句通信 200010
敗戦忌あれから空は亡父ちちのもの 大場佳子 銀化 200010
敗戦が近づいてくる蟹の眼よ 彌榮浩樹 銀化 200010
敗戦忌いくさを知らぬ子は父に 林田加杜子 いろり 200010
復員の笑顔今なほ敗戦日 中野辰子 いろり 200010
勝つと信じ逝きにし父や敗戦日 林翔 200010
敗戦日友垣中国残留孤児 糸山由紀子 海程 200011
敗戦時さながら藷の蔓食ぶる 大堀鶴侶 雨月 200011
敗戦日開きしままの埴輪の目 北畠明子 ぐろっけ 200011
敗戦日父の胸中娘は知らず 真鍋瀧子 ぐろっけ 200011
父の名刺しろより白く敗戦忌 舘岡誠二 海程 200012
転覆す水上バイク敗戦日 内田利之 海程 200012
敗戦の日の露草を指で拭く 岡本眸 200012
脂出して傷癒す松敗戦日 八幡酔鵬 200106
戦捷の明治に生れ敗戦日 能村登四郎 200108
敗戦忌一番星が野にうるむ 岡田和子 馬醉木 200110
一杯の井戸水供ふ敗戦日 木下節子 俳句通信 200110
敗戦忌知らぬ世代のふえしこと 高樋洋子 いろり 200110
きれぎれの軍歌ざらつく敗戦日 岡田貞峰 馬醉木 200111
小指立て水のむ男敗戦忌 竹貫示虹 京鹿子 200111
敗戦日戦争知らぬ人ばかり 浮田胤子 ぐろっけ 200111
到来の葉子箱重ね敗戦日 向井由利子 200112
アルミ鍋使ひ減りして敗戦日 毛利慶子 200112
しつかりと敗戦の日を盆に置く 岡本眸 200112
棗の実一粒を染め敗戦日 倭文ヒサ子 酸漿 200112
波を追ふ波の砕けて敗戦忌 田中武彦 六花 200201
新世紀となりても来たる敗戦忌 折原あきの 船団 200201
特攻の墨跡凛と敗戦忌 阪本哲弘 200202
敗戦のビラ舞ひし村田草取る 木田千女 200208
敗戦日文箱の底の君の文 泉京子 帆船 200208
三線のロックを奏づ敗戦忌 斉藤由美子 ぐろっけ 200208
夜光虫燃えゐし記憶敗戰日 宮原みさを 花月亭 200208
敗戦日聞こえるやうに声を出せ 吉弘恭子 あを 200209
満月に白き海あり敗戦日 渡邊千枝子 馬醉木 200210
グラマンを操縦せし顔敗戦日 児玉修 200210
水を買ふことにも慣れて敗戦日 三村武子 酸漿 200210
戦争の経験もなし敗戦忌 塩川雄三 築港 200210
裕仁といふ稀有の人敗戦忌 藤井晴子 200210
木の瘤に杖を預くる敗戦日 加藤はま子 200210
敗戦日夜釣の浮子の青光り 村上喜代子 百鳥 200211
父に倣ひ我もさう呼ぶ敗戦日 酒井康正 百鳥 200211
敗戦日甘納豆を食べてゐる 酒井康正 百鳥 200211
二の腕に老斑しるき敗戦日 酒井康正 百鳥 200211
月へ月へ真白き花や敗戦忌 廣井良介 円虹 200211
病床にゐて原爆忌敗戦忌 守屋井蛙 酸漿 200211
他人の肩に肩触れ敗戦忌と思ふ 櫻井多恵 200211
樹々の間の空を見上ぐる敗戦忌 櫻井多恵 200211
日に晒す空の米櫃敗戦日 神田美穂子 万象 200212
埋火や敗戦論者たりし父 長山あや 円虹 200303
機関銃君は射てるか敗戦忌 泉田秋硯 鳥への進化 200303
そののちの束の間なりし敗戦日 渡邊千枝子 馬醉木 200310
敗戦忌蓋の飯粒より食うぶ 坂ようこ 200310
敗戦日父母の一生の浮き沈み 黒坂綾子 200310
敗戦や蝶が止まりて沈む草 今瀬剛一 対岸 200310
敗戦忌活字に飢えし日もありし 塩川雄三 築港 200310
飢ゑ知らぬ孫の偏食敗戦日 大関とし子 築港 200310
藷粥の今は親しき敗戦忌 小林成子 200311
戦死墓野の花献花敗戦日 上岡末喜 築港 200311
仰向けや俯せに寝て敗戦日 青山丈 200311
特攻碑読み蘇る敗戦日 西村梼子 ぐろっけ 200404
若きらの四肢美しや敗戦忌 橘沙希 月の雫 200404
今生や喜寿を越したり敗戦忌 橘澄男 山景 200408
ひつつみといふすいとんや敗戦日 神蔵器 風土 200409
敗戦忌自動車免許取れず老ゆ 吉田かずや 春燈 200410
東京を沖より見たり敗戦忌 坂ようこ 200410
敗戦日といふ壮大なゼロありき 菅原健一 200410
失うてその大きさや敗戦忌 亀井幸子 築港 200410
その時が今につながる敗戦日 芝宮須磨子 あを 200410
言葉なき遺品の重み敗戦忌 彦坂範子 ぐろっけ 200410
竹槍を振りし少年敗戦日 藤田かもめ ぐろっけ 200410
備へてもいくさはするな敗戦忌 泉田秋硯 200411
二の腕に水じやぶじやぶと敗戦忌 藤井明子 馬醉木 200411
生き延びし学徒兵われ敗戦忌 木暮剛平 万象 200411
敗戦忌勲七等の兵の墓 二宮一知 万象 200411
敗戦日十七文字に執しけり 大串章 百鳥 200411
敗戦忌電気ブランを舐めてをり 成澤桂助 百鳥 200411
地球儀の日本赤き敗戦日 松崎雨休 風土 200411
アルバムをすり抜けてゆく敗戦日 内藤ゑつ ゑつ 200411
母の目が全てを語る敗戦日 徳田正樹 河鹿 200412
荒鷲といふ少年や敗戦忌 九万田一海 河鹿 200412
敗戦のことなどおもひ稲刈れる 林彌生 草の花 200412
鉄錆の匂ふ井戸水敗戦忌 清水雅子 200412
痩せたさに食を控へて敗戦日 久我八干代 200412
疎開せし者同士酌み敗戦忌 丁野弘 200508
死語となりし言葉の数や敗戦忌 水原春郎 馬醉木 200510
敗戦日いくさを知らぬ人ばかり 水原春郎 馬醉木 200510
生を得しこと大切に敗戦日 水原春郎 馬醉木 200510
天心も何をかこらふ敗戦日 岡田和子 馬醉木 200510
敗戦忌友のたれかれ引揚者 鈴木榮子 春燈 200510
水尾を曵くブリキの戦艦敗戦忌 木戸渥子 京鹿子 200510
敗戦忌文机におく水一椀 淵脇護 河鹿 200510
戦前とすまじと誓ふ敗戦日 赤座典子 あを 200510
敗戦忌吾語り部とならむかな 泉田秋硯 200511
贅沢なパンの黒焦げ敗戦忌 石岡祐子 200511
廃線レール錆の香たてる敗戦忌 白神知恵子 春燈 200511
セミナーの椅子かたづけし敗戦日 野澤あき 火星 200511
生き埋めの闇甦る敗戦日 八木玲子 百鳥 200511
敗戦日父の机上の整へり 大和あい子 百鳥 200511
丹念に布巾を洗ふ敗戦日 小林朱夏 200511
砂時計かへしてみても敗戦日 大村美知子 京鹿子 200511
敗戦忌悔ひて還らぬ事思ふ 木内美保子 六花 200511
腰伸ばせ姿勢を正せ敗戦日 二瓶洋子 六花 200511
飽食の現世に生きて敗戦忌 松沢芳子 四葩 200512
子に語る神田の昔敗戦日 小川晃枝 馬醉木 200512
飯粒の布巾に乾ぶ敗戦忌 清水雅子 栴檀 200512
口中に梅干の種敗戦日 藤井寿江子 馬醉木 200601
鬼灯の赤おそろしき敗戦日 塚本富士子 栴檀 200601
生涯の記憶空腹敗戦忌 中原吟子 雨月 200601
一兵の夫生き残る敗戦忌 関戸文子 酸漿 200602
買出しの父のメモ帳敗戦忌 宮森毅 六花 200602
敗戦日畑に南瓜がごろごろと 高倉恵美子 200602
敗戦の日や一望の川の照り 岡本眸 200608
這ふごとく敗戦の日の畳拭く 岡本眸 200608
敗戦日配給軍靴履きて聴く 鈴木榮子 春燈 200610
素足もて敗戰の日の疊踏む 岡本眸 200610
敗戦日しみじみ白い米を磨ぐ 木村茂登子 あを 200610
山河荒る敗戦のそののちのこと 木村茂登子 あを 200610
敗戦日猫が手の甲舐める舐める 定梶じょう あを 200610
馬糧頒ち凌ぎし記憶敗戦忌 田中芳夫 200611
冷えしビールの倖せに居り敗戦忌 田中芳夫 200611
朝からのグルメ番組敗戦忌 刈米育子 200611
ソロモン諸島機窓に捜す敗戦忌 藤本章子 200611
パンプキンスープ作りし敗戦忌 西畑敦子 火星 200611
敗戦忌夷狄の容喙ゆるすまじ 村岡春夫 春燈 200611
まつ白な太陽一つ敗戦日 伊東恵美子 馬醉木 200611
土手の上の道を帰りぬ敗戦日 青山丈 200611
御魂みな故郷にあり敗戦忌 山田智子 200612
棒読みの不戦の誓敗戦忌 山田智子 200612
手術台にをり敗戦の日なりけり 西川五郎 馬醉木 200612
敗戦日熱き夕刊取りに出て 立石萌木 雨月 200612
一億分の一の責負ひ敗戦忌 有働亨 馬醉木 200701
パン種を寝かせてをりぬ敗戦日 笹村政子 六花 200701
どこへゆくともなく出かけ敗戦日 藤井圀彦 200703
ふと浮かぶ明治の軍歌敗戦日 安陪青人 雨月 200709
頑として青空なりき敗戦日 青山丈 200709
少女期を異国にゐたり敗戦日 中野京子 翁草 200710
敗戦日父泣く姿焼付いて 鈴木多枝子 あを 200710
夢に立つ白旗の軍使敗戦忌 有田蟻太 200711
草と草結ばれてをり敗戦忌 田村園子 200711
知れば迷路の米軍地下道敗戦以後 鈴木栄子 春燈 200711
田園とオーケストラと敗戦忌 代田青鳥 風土 200711
敗戦日駆逐艦にて引揚げし 岩崎靖子 200711
高階に落暉見てゐる敗戦忌 山本康 200711
嵌めてより軍手に左右敗戦日 塚本五十鈴 200712
敗戦忌命惜しめと夢の母 平賀扶人 馬醉木 200712
かなかなやふと蘇る敗戦日 木下忠雄 酸漿 200712
あつといふ間に昼となる敗戦日 青山丈 200809
縁側に妻と居てまた敗戦日 青山丈 200809
いまどきの藷は美味なり敗戦日 長谷川翠 馬醉木 200810
敗戦日留守を守りてまた眠る 鴨下昭 200810
敗戦忌遊就館に子を連れて 中嶋昌子 春燈 200810
触れてみる心の胼胝や敗戦忌 高橋亮二 春燈 200810
佛壇に山盛の飯敗戦忌 緒方輝 炎環 200810
心より黙信捧ぐ敗戦忌 前川干恵子 雨月 200810
敗戦日ソ聯の捕虜となりし吾 松崎鉄之介 200810
奉天にて自刃思ひぬ敗戦日 松崎鉄之介 200810
米櫃に米あり敗戦日の正午 田中藤穂 あを 200810
セピア色にしてはいけない敗戦日 長崎桂子 あを 200810
敗戦日なほ戦へと百日紅 泉田秋硯 200811
原爆の阿修羅忘れず敗戦忌 泉田秋硯 200811
死さば地獄生くるも地獄敗戦忌 泉田秋硯 200811
敗戦のあの日のごとく夾竹桃 小池唯夫 200811
海底に礫のとどく敗戦日 栗栖恵通子 200811
敗戦忌梅干一つ粥すする 水谷靖 雨月 200811
慟哭の銃創疼く敗戦忌 水谷靖 雨月 200811
敗戦忌蒼天のほか何も見ず 清水幸治 200811
あの空の蒼さそのまま敗戦忌 天野正子 200811
板チョコの銀紙まるめ敗戦日 宇都宮敦子 200811
あうあうと鴉鳴き合ふ敗戦日 榎本文代 万象 200811
昭和秘史など今言はれても敗戦忌 田中芳夫 200812
敗戦日後期高齢少国民 北畠明子 ぐろっけ 200812
敗戦に拾ひし命屠蘇祝ふ 柴田良二 雨月 200904
灯の覆ひこの手が剥ぎぬ敗戦日 横井博行 万象 200905
ふくらはぎ揉んで居るなり敗戦日 竹内弘子 あを 200909
今はただ灯のあかあかと敗戦日 水原春郎 馬醉木 200910
敗戦の玉音聴きし馬場町 山下青坡 200910
早稲刈つて空の青さよ敗戦忌 安立公彦 春燈 200910
英雄がある日国賊敗戦忌 二宮一知 万象 200910
宅配のピザのぬくもり敗戦日 小熊幸 炎環 200910
漂白剤余分に入るる敗戦日 金原亭馬生 炎環 200911
店頭に米の山積み敗戦日 窪田粧子 馬醉木 200911
家中の開け放たるる敗戦日 岩木茂 風土 200911
勲等に功罪ありや敗戦忌 福田周草 風土 200911
国民の裁きは未完敗戦忌 泉田秋硯 200911
「断腸亭日乘」を読む敗戦日 中野あぐり 春燈 200911
面影の彼の日の母や敗戦忌 大嶋洋子 春燈 200911
人遠し海を見てゐる敗戦忌 大嶋洋子 春燈 200911
紙一重の「運隊うんたい」に生き敗戦日 長浜徳三 春燈 200911
敗戦忌だれも覗かぬ天水桶 高橋道子 200911
ははそはの母の服買ふ敗戦日 竹島勝代 200911
暑き昼の畳の記憶敗戦日 藤井美晴 やぶれ傘 200911
夫語る生還奇蹟敗戦日 植村よし子 雨月 200912
はや五十過ぎし三人子敗戦忌 小川玉泉 末黒野 200912
敗戦の旗指物か破れ芭蕉 小倉純 末黒野 200912
消え残るB29の音敗戦日 松木清川 ぐろっけ 200912
火の記憶終生消えず敗戦忌 坂本哲弘 山ざくら 201009
軍服色雀が群るる敗戦忌 木田千女 201009
語らざる言葉の重さ敗戦日 徳田千鶴子 馬醉木 201010
地獄絵を大地に浮かす敗戦日 四條進 201010
敗戦日ご飯の白さまぶしめり 松本圭司 201010
回天てふおそろしき武器敗戦す 田中藤穂 あを 201010
語り部の学徒の顔に敗戦日 中村春宵子 春燈 201011
明日あらば遺書とはならじ敗戦日 渡邊泰子 春燈 201011
もの言はぬ兵の名を呼ぶ敗戦忌 川越栄一 末黒野 201011
敗戦忌蝉の合唱妙に静か 泉田秋硯 201011
生命軽き世なりし昭和敗戦忌 泉田秋硯 201011
沈艦を撫でて鎮魂敗戦忌 泉田秋硯 201011
米兵の無法懲らせず敗戦忌 田中芳夫 201011
この川を流れゆきしか敗戦忌 山本絢子 万象 201011
手水舎に真紅の手拭敗戦日 矢野百合子 201011
八十路生き銃後乙女や敗戦日 家塚洋子 酸奬 201011
先輩の遺稿を読みて敗戦忌 屋塩見治郎 雨月 201011
疎開地に住みしも縁敗戦日 中原敏雄 雨月 201011
闇市のミルクで育ち敗戦日 伊勢弘江 201012
粛然と敗戦日の記憶克明に 植村よし子 雨月 201012
長き夜を亡夫の残せし敗戦記 千坂美津恵 201101
片付かぬものに埋れる敗戦日 松本アイ ぐろっけ 201101
終戦といふ敗戦といふ水を飲む 小林幹彦 201105
夢にては兄と語らふ敗戦忌 平賀扶人 馬醉木 201108
秋蝉の急に鳴きだす敗戦日 上原重一 201110
尖塔は見上ぐるばかり敗戦日 細川洋子 201110
敗戦忌少女に八十路近づき来 藤原照子 201110
足裏刺す熱き砂浜敗戦日 藤原はる美 201110
拳骨を握り締めたる敗戦日 吉村摂護 201110
遠い木の空を見てをり敗戦忌 本多俊子 201110
仙台の澄切つた空敗戦日 赤座典子 あを 201110
兵たりし老の語り部敗戦忌 丹生をだまき 京鹿子 201110
流れ藻の行き止りけり敗戦忌 荒木甫 201111
風呂熱く沸してゐたり敗戦日 波田美智子 火星 201111
道場に正座黙想敗戦忌 史あかり ぐろっけ 201111
「母上」と書き出す遺書や敗戦日 和田照海 京鹿子 201112
船虫や敗戦しらず出陣す 和田照海 京鹿子 201112
前掛で汗を拭へり敗戦忌 内山タエ 末黒野 201112
父の日記ひと日白紙に敗戦日 城台洋子 馬醉木 201201
失ひし物の多さよ敗戦日 水原春郎 馬醉木 201210
遺言状書くべき齢敗戦日 東良子 201210
似たる家の似たる窓の灯敗戦忌 荒井千瑳子 201210
生き続け後期高齢敗戦日 松嶋一洋 201210
敗戦日父の号泣忘れ得ず 大橋敦子 雨月 201210
敗戦翌日宮城前に佇ちつくす 田中藤穂 あを 201210
白桃のゆたかな重み敗戦忌 米山のり子 馬醉木 201211
朝顔の虚空に一花敗戦忌 西村純太 201211
吊皮に身をゆだねゐる敗戦日 菅谷たけし 201211
敗戦日近しすつくと昆陽碑 荒井千瑳子 201211
膝小僧揃へ聞きにし敗戦日 中村紀美子 春燈 201211
麦飯の饐える記憶や敗戦日 和田照海 京鹿子 201211
一期一会の距離に似てゐる敗戦忌 鴨下昭 201211
老いて死ぬことのしあはせ敗戦忌 大木清美子 201211
死と生の生の疼ける敗戦忌 水谷靖 雨月 201211
葬送はラッパの記憶敗戦忌 松木清川 ぐろっけ 201211
玉音の耳朶に確と敗戦忌 佐瀬晶子 ろんど 201211
敗戦日宮城前に実きしこと 土田亮 末黒野 201211
裏山に避難の記憶敗戦忌 柚木澄 末黒野 201211
敗戦忌語らぬ兄の卒寿かな 鍋島武彦 末黒野 201211
語り継ぐ人老いゆけり敗戦忌 塩井志津 万象 201212
八十路生くる証の敗戦記録書く 植村よし子 雨月 201212
敗戦の父の形相忘るまじ 植村よし子 雨月 201212
敗戦忌みな正直に齢を言ふ 村田岳洋 ろんど 201212
夕映えの入道雲や敗戦忌 久世孝雄 やぶれ傘 201301
この日より濁世の徒なり敗戦日 手島靖一 馬醉木 201311
暗黙の思ひ切なり敗戦忌 岡田和子 馬醉木 201311
清貧の松に蝉泣く敗戦忌 小野寺節子 風土 201311
裏返しの袖を引き抜く敗戦日 生田恵美子 風土 201311
敗戦日記憶の空の青さかな 生田高子 春燈 201311
硫黄島ゆ葉書古りたる敗戦忌 石橋邦子 春燈 201311
敗戦忌蛋白質のなき夕餉 太田良一 末黒野 201311
敗戦日掃除機反転横転す 荒木甫 201311
神鏡に何も映らず敗戦日 野上杳 201311
敗戦日庭を畑にせしことも 小川凉 201311
強いられし封印のあり敗戦日 桑名さつき ろんど 201311
前後して父の忌母の忌敗戦忌 松川悠乃 ろんど 201311
手の罅に歳月滲む敗戦日 高地勝峰 馬醉木 201312
八歳の記憶まざまざ敗戦忌 柚木澄 末黒野 201312
球児みなくりくり坊主敗戦忌 瀧春一 花石榴 201312
黙祷にこだはつてゐる敗戦忌 鴨下昭 201401
敗戦憲法以来五月を否みけり 滝沢幸助 春燈 201408
目に結ぶあまたの蜻蛉敗戦日 安立公彦 春燈 201410
砂時計返せば戻る敗戦日 貞吉直子 馬醉木 201410
敗戦日焼売に染む辛子の黄 池田澄子 201410
遺骨まだかへらぬ父や敗戦忌 石橋邦子 春燈 201410
瑕瑾なき空の青さや敗戦日 青柳雅子 春燈 201411
白日に黒白晒す敗戦日 小張志げ 春燈 201411
文鎮の指に重たき敗戦日 齋藤晴夫 春燈 201411
敗戦忌かすかな記憶忘れじと 石井雲雀 末黒野 201411
敗戦日千人針の錆みがく 鴨下昭 201411
教科書の変われどやはり敗戦日 入江節子 ろんど 201411
敗戦日終戦日いや敗戦日 熊谷ふみを ろんど 201411
フェードアウトの就寝ラッパ敗戦日 熊谷ふみを ろんど 201411
天皇のすこし猫背や敗戦忌 梅村すみを 201411
遠い日の空を見てをり敗戦日 本多俊子 201411
海底に波は立たざり敗戦忌 高橋道子 201411
空耳の空の爆音敗戦忌 太田良一 末黒野 201412
遠き日の玉音を聴く敗戦日 貞吉直子 馬醉木 201509
兵はたち敗戦玉音放送今も胸に 滝沢幸助 春燈 201509
敗戦日を終戦と美化しいつはりし 滝沢幸助 春燈 201509
敗戦日この方忠孝両全以て生きし 滝沢幸助 春燈 201509
井の中のしづかな西瓜敗戰日 佐藤喜孝 あを 201509
敗戦日波は挽歌をくり返し 白井友梨 馬醉木 201510
敗戦日生き証人の言重く 望月晴美 201510
敗戦日陽射しに音のあるごとし 松井志津子 201510
ヘルペスを発症恰も敗戦日 大橋胱 雨月 201510
寄書の当時を偲ぶ敗戦忌 丸山允男 春燈 201510
敗戦忌暑かつたことの記憶のみ 松嶋一洋 201510
知らされぬ秘話の多かり敗戦日 四條進 201510
敗戦日だれも日の丸ふりもせず 木村嘉男 201511
星砂を賜ひし友よ敗戦日 渡邊千枝子 馬醉木 201511
暴走の折り返し点敗戦日 鴨下昭 201511
敗戦日昭和のものを提げてくる 池田光子 201511
今だからはなせる話敗戦日 近藤牧男 春燈 201511
敗戦忌ひとそれぞれの七十年 卜部黎子 春燈 201511
老楽に居る答のあり敗戦日 齋藤晴夫 春燈 201511
拭きなほす眼鏡敗戦日のコラム 福島照子 京鹿子 201511
ひそかなる廊下の音や敗戦忌 本多俊子 201511
存在の証も消えて敗戦忌 江島照美 201511
敗戦忌大戸を閉ざす荻外荘 藤田裕子 万象 201511
たやすくは涙は出でず敗戦忌 中島芳郎 201511
敗戦日心重たくひと日過ぐ 大橋晄 雨月 201511
恐竜の飛び出す映画敗戦忌 上谷昌憲 201511
終戦でなく敗戦と生身魂 松井志津子 201511
ひまはりの実になるを待つ敗戦日 久世孝雄 やぶれ傘 201512
天秤の揺れの止まらじ敗戦忌 近藤真啓 春燈 201512
敗戦日おばあは今朝も蛸を突く 高島正比古 京鹿子 201512
敗戦日柩の底は畳敷き 山本則男 201512
いまあらば兄は白寿や敗戦忌 菅野日出子 末黒野 201512
抽出しに考の勲章敗戦日 斉藤マキ子 末黒野 201512
沖よりのわだつみの声敗戦忌 谷貝美世 末黒野 201512
大雑把に言えば猛暑や敗戦日 池田澄子 201602
献灯の黄色つらなる敗戦日 大山夏子 201603
敗戦のいろなり夾竹桃の赤 岸洋子 201609
あの人もかの人も過去敗戦日 窪田佳津子 雨月 201610
敗戦日正座の背ナがよみがへる 窪田佳津子 雨月 201610
一粒の飯も貴き敗戦忌 奈辺慶子 雨月 201610
敗戦日用の有る顔洗ひけり 数長藤代 201611
爺さまはけさも軍歌や敗戦日 大坪景章 万象 201611
敗戦記読みつつ鰻食ふ列に 松原智津子 万象 201611
散髪に眼鏡をはづす敗戦日 根橋宏次 やぶれ傘 201611
敗戦日十七歳の彼の日かな 松浦哲夫 末黒野 201611
兵俑の昏き眼窩や敗戦日 三輪温子 雨月 201612
年毎に記憶の新た敗戦忌 久世孝雄 やぶれ傘 201612
敗戦日赤とんぼうの現はるる 松村光典 やぶれ傘 201612
心して食む銀舎利や敗戦忌 安斎久英 末黒野 201612
切れ切れの記憶をつなぎ敗戦日 森清堯 末黒野 201612
溜息は母の安堵か敗戦日 鍋島武彦 末黒野 201612
水団を好物の子ら敗戦忌 加藤昌安 末黒野 201612
メダル沸く地球の裏側敗戦忌 七郎衛門吉保 あを 201610
爆音の羽田に平和敗戦忌 工藤はる子 201701
買ひ置きのものを買ひ足す敗戦日 中川句寿夫 ここのもん 201705
梅漬けの種が大粒敗戦日 中川句寿夫 ここのもん 201705
鶏血草かの日も咲いて敗戦忌 加茂達彌 201707
敗戦日祖母は麦酒を喇叭呑み 山田六甲 六花 201708
修正ペンふれば鳴るなり敗戦日 田辺博充 201710
語りても語りてもなほ敗戦忌 高橋道子 201710
富めるとも子宝持てぬ敗戦忌 物江康平 春燈 201710
敗戦忌散華の叔父の美男にて 数長藤代 201711
点眼の逸れる一滴敗戦忌 坂場章子 201711
思ひ起す人皆若し敗戦日 佐藤澄世 馬醉木 201711
敗戦日歴史に人は学はねば 密門令子 雨月 201711
掌に十粒の薬敗戦忌 中原敏雄 雨月 201711
知る世代最後と語り敗戦忌 高塚三枝 馬醉木 201712
マンションの柱無き部屋敗戦忌 山内碧 201712
敗戦日朝から烏鳴き交はす 矢野百合子 201802
七十三年かへらぬ遺骨敗戦日 石橋邦子 春燈 201810
米櫃を満たし迎ふる敗戦日 河本由紀子 春燈 201810
九十年見しさまざまや敗戦忌 田中藤穂 あを 201810
しづかなる正午日本の敗戦日 稗田寿明 201811
もう何も言ひたくはなし敗戦忌 三上程子 春燈 201811
語る背の人それぞれや敗戦日 森清堯 末黒野 201812
しづかなる正午日本の敗戦日 稗田寿明 201901
敗戦日叔父のカタカナの葉書 山田くみこ 201901
敗戦忌百まで生くる時代来る 阿部重夫 末黒野 201904
詔勅や卒寿に重き敗戦日 石川東児 201904
敗戦記語り尽くせぬ八十路かな 工藤はる子 201904
敗戦日浮浪児思う猛暑かな 渡辺節子 201904
鰯雲敗戦よりの長き時 田中藤穂 あを 201910
敗戦日昭和の悲惨老にけり 長崎桂子 あを 201910
復員の故郷無になり敗戦忌 長崎桂子 あを 201910
戦時下の竹筋コンクリート敗戦忌 長崎桂子 あを 201910
窟に書きし父従軍記敗戦日 密門令子 雨月 201911
前日の大空襲や敗戦日 辻田玲子 雨月 201911
糠床の古漬刻む敗戦日 飯塚トシ子 201911
終戦忌とまやかすなかれ敗戦忌 懸林喜代次 春燈 201911
敗戦忌唯一葉の父の顔 池上昌子 春燈 201911
閉ぢる目に見ゆるものあり敗戦忌 本多俊子 201911
平成に続く令和や敗戦忌 荻布貢 201911
山鳩の声の太さや敗戦忌 菅谷たけし 201911
日暮待つ敗戦の日をしみじみと 安斎久英 末黒野 201911
敗戦忌記憶の端が欠けはじむ 亀井福恵 京鹿子 201911
時間差で変る信号敗戦日 平居澪子 六花 201911
ひもじさの話ばかりや敗戦忌 湯本実 やぶれ傘 201912
「米」てふ字どう回しても敗戦日 大政睦子 京鹿子 201912
戦捷の明治に生れ敗戦日 能村登四郎 202005
飯茶碗離さぬ子なり敗戦日 奥田茶々 風土 202010
真青なる知覧の空や敗戦日 宮岡弘 202010
敗戦日兵隊さんの父の文 赤座典子 あを 202010
敗戦日喉下りゆく心太 藤井美晴 やぶれ傘 202010
敗戦忌畳に拾ふ吾の白髪 小原紀子 末黒野 202011
玉音の定かならずや敗戦日 室井津与志 春燈 202011
語りたきことの山程敗戦忌 菅野日出子 末黒野 202011
朝食のバナナしみじみ敗戦忌 小原紀子 末黒野 202011
敗戦日生きて兄居て弟も 大山夏子 202011
炎の迫る川の記憶や敗戦忌 斉藤マキ子 末黒野 202012
天仰ぐ敗戦投手いわし雲 梅田武 末黒野 202102
敗戦日ビルの四面に窓あまた 小島良子 202110
敗戦の史実はるかや蝉時雨 牛島晃江 202110
遺言が「ほととぎす」選敗戦忌 七郎衛門吉保 あを 202110
敗戦前夜一睡もせず明けしこと 田中藤穂 あを 202110

 十六歳

辱め受けたら死ねと敗戦日

古谷昌女 春燈 202110

 三年間ソ連に抑留

亡き夫の抑留の手記敗戦日

古谷昌女 春燈 202110
不発弾今も残るや敗戦忌 武田巨子 春燈 202111
語り部として何語れるか敗戦忌 日置游魚 202112
遠くなる昭和敗戦日を胸に 若泉真樹 202112
南瓜煮て美味しと思う敗戦日 都築繁子 あを 202210
敗戦忌永久に敗戦忌の日本 宮坂秋湖 202210
カーラジオ不意のノイズの敗戦日 広海あぐり 202210
敗戦忌森の谺の戻りくる 荒川心星 202211
敗戦忌ぴたりとドアの閉まる音 中内敏丸 202211
パプアに餓死軍医の伯父の敗戦日 眞田忠雄 やぶれ傘 202212
幾万の恋を蹴散らし敗戦忌 高畑太朗 202212
贅肉を持て余しをり敗戦忌 小田嶋野笛 末黒野 202212
語部へ耳傾けり敗戦忌 喜田君江 末黒野 202212

 

2023年8月14日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。