麦 秋 10     234句

麦秋の中なるが悲し聖廃墟    水原秋桜子

麦の秋  麦秋

作品
作者
掲載誌
掲載年月
麦秋を走つても走つてもひとり 竹貫示虹 京鹿子 200806
麦秋や仰ぎ見ること多きころ 高倉和子 200806
麦秋や端山の掲ぐ星ひとつ 塩路隆子 200807
麦秋やボサノバ昼にひとり聴く 笠井清佑 200807
麦秋や日のあるうちに片付けよ 石脇みはる 200807
麦秋やくわつと日の射す拓き畑 神田美穂子 万象 200807
麦秋の大河流れり小さき村 米澤しげる 春燈 200807
戦争を捨てられぬまま亦麦秋 菅原健一 200807
麦秋の鐘碌山の野を渡る 水原春郎 馬醉木 200808
麦秋の空の明るさ若狭道 竹内悦子 200808
麦秋や古道に抜くる通学路 あさなが捷 200808
麦秋の道少年の走る音 本多俊子 200808
麦秋の髪失ひし姉を訪ふ 石田きよし 200808
麦秋の舟出払つてをりにけり 山路紀子 風土 200808
麦秋の駅に短かき旅信書く 落合絹代 風土 200808
麦秋や画布に祈りの朱き色 奥田順子 火星 200808
麦秋の風が満ち満つ軍港に 森津三郎 京鹿子 200808
麦秋や未だ秘仏の秘を解かず 丸井巴水 京鹿子 200808
麦秋や雉子掛けしてふ釘の錆び 朝妻力 雲の峰 200808
麦秋の色濃き平野鳶舞へり 宮川秀穂 200809
麦秋や政庁跡の礎石群 村上絢子 馬醉木 200809
麦秋の焼けて泡立つ朴葉味噌 田所節子 200809
麦秋や揖保さうめんの里豊か 有元文子 風土 200809
麦秋の風やたかだか鷺帰る 梶浦玲良子 六花 200809
麦秋の道一本の白さかな 一ノ木文子 炎環 200809
麦秋の伊賀上野なり翁の碑 近藤きくえ 200809
麦秋の近づいている遠賀川 坪内稔典 船団 200809
麦秋の少年光る筑後川 坪内稔典 船団 200809
麦秋をぬけて鎌倉古道かな 飯塚洋 遠嶺 200810
麦秋や旅に減らせし靴の底 成瀬櫻桃子 春燈 200810
麦秋や女は家で飯を炊く 久永つう 六花 200811
烏籠茶運ぶ長江麦秋路 中島玉五郎 200905
麦秋や渡る千曲のささにごり 徳田千鶴子 馬醉木 200907
麦秋や乳張る牛のこゑとほる 稲見寛子 炎環 200907
麦秋の一色空と分かち合ふ 福島茂 200907
麦秋や引き込み線に貨車一つ 寺村年明 春燈 200907
麦秋や空爆ありし日と同じ 中川すみ子 200908
麦秋の匂ふ躯を運ぶかな 久津見風牛 200908
麦秋の早刈迷路子等遊ぶ 金澤明子 200908
麦秋や手習ひといふ習ひ方 安居正浩 200908
麦秋や尾を高々と畦の犬 江本路代 酸漿 200908
麦秋の村に墳山七つかな 岩木茂 風土 200908
麦秋のひとりに一つづつ木椅子 風間史子 200908
麦秋や丈山苑のぱつたんこ 成田なな女 春燈 200908
麦秋や自転車に来る老校医 栗山恵子 雨月 200908
麦秋のまつただ中を風渡る 鈴木隆子 200909
麦秋や祈る形に湿布貼る 高橋みつ 200909
麦秋や宿の欄間の眠り猫 坂口夫佐子 火星 200909
麦秋や髪切る音のつづきをり 奥田順子 火星 200909
麦秋の道来てフランスパンを買ふ 江木紀子 雨月 200909
麦秋や造酒屋の樽乾され 小俣剛哉 雨月 200909
麦秋の日のながながと太き脚 梶浦玲良子 六花 200910
麦秋やみな屋号ある村の家 鈴木多枝子 あを 200911
麦秋のすこし向こうに愛と罪 陽山道子 船団 200912
麦秋や大きな竈の坐る家 武井美代子 万象 201005
麦秋へ突つ込んでゆくハイウエイ 上谷昌憲 201007
麦秋や北の大地はゴッホ色 池本喜久恵 201008
麦秋の日矢でまぶせよ生きる道 布川直幸 201008
麦秋や余呉湖を出づる川ひとつ 深澤鱶 火星 201008
麦秋やかをる遠野の河童淵 小俣剛哉 雨月 201008
麦秋や文字びつしりと従軍記 木下慈子 馬醉木 201009
麦秋や琵琶の奏づる波の音 佐野和子 万象 201009
麦秋の雨の匂ひの籠りけり 稲岡長 ホトトギス 201009
麦秋や火柱立てて時が行く 松田都青 京鹿子 201009
デジカメで麦秋を一人占めの時 東秋茄子 京鹿子 201009
麦秋や下校子乗する一両車 森清信子 末黒野 201009
麦秋の関東平野遠筑波 山本無蓋 201009
麦秋と坂を上りて気付きけり 椿和枝 201009
麦秋や隠しの中の手付金 島谷征良 風土 201009
麦秋や女消えたる停留所 根岸善行 風土 201009
麦秋の馬磨かるる磧なか 戸栗末廣 火星 201009
麦秋や白衣を着たる研修医 瀬川流一 六花 201009
麦秋や少年馬に語りかけ 松田泰子 末黒野 201010
麦秋や駐在さんの国訛 佐々木智子 201010
麦秋や出土の瓶に火の襷 玉田瑞穂 万象 201011
麦秋や孵りしひよこ雄ばかり 成瀬櫻桃子 櫻桃子選集 201105
麦秋の只中をくる僧と子と 山尾玉藻 火星 201106
麦秋の没日に触れし匂ひせり 北川英子 201107
麦秋を走り去りたるのぞみ号 藤本秀機 201108
麦秋の村ゆるやかに川曲がる 伊藤憲子 201108
麦秋やハーモニカめく一輌車 松岡和子 201108
麦秋や音の百選時の鐘 榎本ふじえ 風土 201108
麦秋や列車も軽き音のこし 泉田秋硯 201108
麦秋の海光返し天主堂 吉田政江 201108
麦秋や塩をきかせて魚焼く 海老根武夫 201108
麦秋の村に来てをり検診車 佐藤山人 201108
麦秋の励みてひとりひとりなる 深澤鱶 火星 201108
麦秋や竿のシーツに垂る力 坂口夫佐子 火星 201108
麦秋や天上すこし寂しきよ 近藤喜子 201108
麦秋を通園バスの「くぢら号」 松岡和子 201109
麦秋や土蔵の壁に地震の罅 亀田やす子 万象 201109
麦秋の夕焼この身小さくなり 小川玉泉 末黒野 201109
麦秋やローランの月永久の蒼 山根征子 201109
麦秋の荒野を帰るきつね雨 梶浦玲良子 六花 201109
麦秋のまつただ中を迷ひけり 苑実耶 大河 201203
大陸といふ麦秋の一枚に 稲畑廣太郎 ホトトギス 201205
麦秋の風麦秋の日差かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201205
麦秋や父と同じの病来て 山田六甲 六花 201206
喉かゆくなる麦秋のバスに揺れ 竹内弘子 あを 201206
麦秋や目ぐすり左眼それ易し 滝澤千枝 春燈 201207
行く他はなし麦秋の深轍 森岡正作 201207
麦秋やうかと帽子を飛ばされし 高橋あさの 201207
麦秋のSLを追ふカメラマン 藤本秀機 201208
麦秋や切手の王妃ひだり向き 林昭太郎 201208
麦秋や穀臼たたく水車小屋 小松昭子 風土 201208
麦秋の日にち薬といふ言葉 内藤静 風土 201208
麦秋の風の中なる牛舎かな 石黒興平 末黒野 201208
麦秋や柱時計が二時を打つ 高野春子 京鹿子 201208
麦秋や記憶一気にさかのぼる 高倉和子 201209
麦秋や親の介護を旧友とも語る 田中信行 201209
麦秋や兵たりし日のおけさ節 寺村年明 春燈 201209
麦秋の野へしがらみを解き放つ 笠井敦子 201209
麦秋やけふも元気に働かう 山本無蓋 201209
麦秋の中を走つてもう米寿 松田都青 京鹿子 201209
麦秋の雲浮びゐる伯耆富士 北崎展江 くりから 201209
麦秋や畚にほりこむランドセル 松井倫子 火星 201209
麦秋の廻して運ぶワイン樽 城孝子 火星 201209
麦秋の刈り残されて道祖神 古川千鶴 かさね 201210
もの思へとや麦秋の水のいろ 岩岡中正 ホトトギス 201210
麦秋のひとりの旅もよかりけり 岩岡中正 ホトトギス 201210
麦秋や一身紙のごと吹かれ 岩岡中正 ホトトギス 201211
麦秋や野の果てに浮く藍筑波 大橋伊佐子 末黒野 201211
麦秋の水傷ついて流れけり 木村和也 船団 201212
麦秋のすこし向うに愛と罪 陽山道子 おーい雲 201304
いまはただ麦秋さやぐ殉教地 熊丸淑子 馬醉木 201307
麦秋に近付いてゆく主翼かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201307
麦秋や小学校が又消ゆる 吉村摂護 201310
麦秋や鳶天空を余すなく 安斎久英 末黒野 201310
麦秋や出土の土器に指のあと 田中佐知子 風土 201311
麦秋やうどんの県といふ誇り 稲畑廣太郎 ホトトギス 201405
麦秋へ寄道をして送りけり 山田六甲 六花 201406
麦秋の旅どこまでもどこまでも 稲畑汀子 ホトトギス 201406
ポプラ遠く並みて麦秋の野なりけり 水原秋櫻子 馬醉木 201406
麦秋の埃の中を郵便夫 水谷文謝子 雨月 201407
麦秋や水満ち満ちて奥多摩湖 山本丈夫 201407
麦秋や女三人気まま旅 黒澤登美枝 201407
麦秋や雀の声に励まさる 大嶋洋子 春燈 201408
麦秋や変らぬ笑みの伎芸天 今井充子 201408
麦秋や畑よりのぼる薄煙 福山和枝 201408
麦秋や竹刀打ち合ふ体育館 山本孝夫 201408
麦秋や太鼓連打の鬼まつり 十時和子 201408
麦秋や多感な頃は目を伏せし 近藤喜子 201408
麦秋や空翻す曲芸師 柴田久子 風土 201408
麦秋やどの家も昼のしづけさに 安立公彦 春燈 201408
麦秋の湖東秘仏の力得て 宮田香 201408
麦秋の湖東を眼下百済寺 片岡久美子 201408
麦秋といふ郷愁を子は知らず 川崎良平 雨月 201408
淋しきは麦秋の午後黙す妻 齋藤晴夫 春燈 201409
麦秋や没日に急ぐ貨車の列 石黒興平 末黒野 201409
麦秋の野をて淡海観世音 室伏みどり 雨月 201409
枝折戸を出で麦秋の真只中 西畑敦子 火星 201409
麦秋や心もとなき道の幅 高倉和子 201409
麦秋や捨てる写真に尚執す 笠井敦子 201409
麦秋や犬も眼なうら痒さうな 島田浩美 201409
麦秋の畦を廻れる郵便夫 岸本久栄 雨月 201409
さつぱりと刈られて麦秋終はりけり 時澤藍 201409
麦秋や水蒼々と溶岩に湧く 曽根満 万象 201410
麦秋や幼なじみの農具鍛冶 石黒興平 末黒野 201410
麦秋や川の落合ふ堰の音 辻井ミナミ 末黒野 201410
麦秋といふ望郷のやうなもの 岩岡中正 ホトトギス 201410
麦秋の日暮れは母のにほひする 吉武千束 太古のこゑ 201411
麦秋や箒かつぎて箒売 安住敦 春燈 201503
麦秋の湖は瑠璃なす真田の地 錫木妙子 馬醉木 201609
麦秋をひりひりトムヤムクンの昼 はしもと風里 201609
麦秋やホルンの響く国に入る 落合絹代 風土 201609
麦秋や蔵を支へて梁の古る 内藤静 風土 201609
麦秋は胸中にあり直せにけり 七田文子 201609
麦秋や対向車なき峠越え 斉藤マキ子 末黒野 201609
麦秋の小諸に刻む歩数計 斉藤マキ子 末黒野 201609
麦秋や球児の声の小学校 伊藤武文 末黒野 201609
雨上り麦秋の風すがすがし 宮地静雄 末黒野 201609
麦秋や折んでみたき空一枚 田中とし江 201609
麦秋の真中を横切る一輌車 吉村幸子 雨月 201609
麦秋のレンガの壁の茶房かな 升田ヤス子 六花 201609
麦秋や縁に湯呑の置かれあり 藤生不二男 六花 201609
麦秋やサイロの影に眠る牛 安斉久英 末黒野 201610
麦秋や今日の一日を若きまま 岡山敦子 京鹿子 201610
麦秋や小樽の海の青々と 赤堀洋子 万象 201701
麦秋の白布巻かれて床柱 中川句寿夫 ここのもん 201705
麦秋の印南平野夕ぐもり 山田六甲 六花 201706
麦秋や印南平野の大夕日 山田六甲 六花 201706
麦秋のさなか在所の凱旋門 大久保志遼 201708
縦笛や麦秋童子瞼とぢ 定梶じょう あを 201707
麦秋や昔のままの散歩道 柴山久子 風土 201708
麦秋を遠く機関車連結す 赤石梨花 風土 201708
麦秋や黒穂一節手折りたる 瀬川公馨 201708
麦秋やバルーン競技の始まれり 荒井和昭 201708
麦秋の縷々たる水にこだはれり 伊丹さち子 馬醉木 201708
麦秋や話の弾む下校生 大嶋洋子 春燈 201708
傾動の地なり麦秋弓なりに 浅井青二 雨月 201708
麦秋や近江一国晴れ渡り 大石喜美子 雨月 201708
麦秋の中を迷うて帰りけり 住田千代子 六花 201709
麦秋といふ一枚の色となる 本多俊子 201709
麦秋や国庁跡の礎石群 竹澤竹里 万象 201709
麦秋や真水のごとく空清く 松本三千夫 末黒野 201709
近江路を行くや麦秋また麦秋 大橋晄 雨月 201709
麦秋や棚田虚空へ展けをり 森清信子 末黒野 201710
人逝きて麦秋の野の遺さるる 岩岡中正 ホトトギス 201711
麦秋や島にすつくと塔の先 安斎久英 末黒野 201711
近江路を行くや麦秋また麦秋 大橋晄 ホトトギス 201712
麦秋の山路踏みしめ登りけり 平沢恵子 春燈 201712
麦秋のつれなき空となりにけり 山田六甲 六花 201806
麦秋の距離を置きたる鷺孤高 稲畑廣太郎 ホトトギス 201806
麦秋や動かぬ塔の影まぶし 安立公彦 春燈 201807
麦秋や野良着のままに昼眠り 石田阿畏子 馬醉木 201807
麦秋や木簡の文字読めぬまま 山田暢子 風土 201808
麦秋や金座銀座のありし江戸 奥田茶々 風土 201808
麦秋や当主の守る長屋門 持田信子 春燈 201808
麦秋や暮れても青き海の空 佐久間由子 201808
麦秋や軒先に古る酒林 佐々木よし子 201808
麦秋の入日地球をひと色に 伊藤よし江 201808
麦秋の村遠くなる無縁墓 村田あを衣 京鹿子 201808
麦秋や毎朝しぼる山羊の乳 藤井啓子 ホトトギス 201809
麦秋や三三五五の下校の子 志方章子 六花 201809
麦秋を来て最果ての海の色 岩岡中正 ホトトギス 201810
麦秋や送り来し子とハイタッチ 中田みなみ 201811
麦秋や平らな魚に裏表 曽根富久恵 201811
麦秋や独り所帯の鍋小さき 田代貞香 201812
麦秋を女三人ツーリング 鶴濱節子 船団 201812
風の綾麦秋と空繋ぎゆく 稲畑廣太郎 ホトトギス 201905
のぞみ一号麦秋の風ひろふ 鈴鹿呂仁 京鹿子 201905
麦秋のきぎすに耳を澄ましけり 山田六甲 六花 201905
麦秋や村に一軒なんでも屋 橋添やよひ 風土 201906
麦秋の勝山うどん歯が立たず 山田六甲 六花 201906
麦秋や生まれ日印すモルト樽 大沢美智子 201907
麦秋や常念岳の尾根ゆるびたる コ井節子 馬醉木 201908
麦秋や遠ざかるもの多くして 七田文子 201908
麦秋や捨つるべき憂さ握りしめ 松本三千夫 末黒野 201908
麦秋やゴッホに似たるピアニスト 堀江久子 末黒野 201908
麦秋や風の中なる塚一基 笹村政子 六花 201908
麦秋や追憶といふ旅の中 及川照子 末黒野 201909
麦秋や書架にあまりし文庫本 安住敦 春燈 201909
麦秋や赤子の四肢の深くびれ 林昭太郎 201909
麦秋や泣く子は育つもっと泣け 植村蘇星 京鹿子 201909
JR遅延麦秋積み残す 小西雅子 船団 201910
まつさきに麦秋となる麓村 荒川心星 201910
麦秋や女に長き水馴れ棹 岡澤田鶴 201910
麦秋のしんかんたるに耐へゐたる 安住敦 春燈 201912
麦秋を走る走る恩返さねば 井上菜摘子 京鹿子 202005
麦秋 →11      

 

2021年6月1日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。