夜 桜 1     219句

夜桜やうらわかき月本郷に   石田波郷   鶴の眼

作品
作者
掲載誌
掲載年月
夜桜の子に蛸焼があれば足り 松尾火炎樹 金属地帯 199806
夜桜や立入禁止の過去に逢う 河野志保 海程 199808
しらじらと光照らさる夜桜よ 岡本七生 ぐろっけ 199812
夜櫻やひよつとこ面の後むき 野口光江 遠嶺 199905
夜桜を抜けて魚となる五体 朝長美智子 199907
声洩れてくる夜桜の映画館 青山丈 199907
夜桜の咲き満ちて音失へり 朝長美智子 199907
夜ざくらやくらがり好きの尉と姥 沼田巴字 京鹿子 199908
本当は独りがよいの夜桜は 尾上有紀子 船団 199908
夜桜に水満ちてくる錦砂町 三宅やよい 船団 199909
夜桜の冷たき白に出会ひけり 吉村玲子 船団 199909
夜桜がすむ雪洞の灯を消して 永野秀峰 ぐろっけ 199910
みつみつの夜桜鬼気を醸したる 能村登四郎 芒種 199911
夜桜にだまされにゆくつもりです 津田このみ 月ひとしずく 199912
夜桜や私が死んでまだ百年 津田このみ 月ひとしずく 199912
夜桜を扇びらきに御苑かな 鷹羽狩行 200005
夜桜や白一色にただよへり 山本潤子 いろり 200005
夜桜を抽きてけぶれる欅かな 藤田宏 200005
夜桜や酒の蔵元鍵開けて 保坂加津夫 いろり 200005
夜桜の水音抱へゐたりけり 三村純也 円虹 200006
夜桜や枝のむこうに三日月 茂木とみ いろり 200006
夜桜の花の隙間に闇詰まる 三浦如水 ぐろっけ 200007
夜桜をみにゆく紅を引きにけり 小島美智子 風土 200007
夜桜や誰かが穴を掘ってゐる 小山徳夫 遠嶺 200007
夜桜やはらと天鼓の舞に触れ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200104
夜桜や紅の蹴出しが笑ひ出す 柳未央 いろり 200104
夜桜やあっといふ間に一生過ぐ 田中藤穂 あを 200104
夜桜の一と枝は手をさし伸べし 藤田宏 200104
夜桜の風重くなる城下町 鷹羽狩行 200106
夜桜に息白くして佇みぬ 松本米子 あを 200106
夕ざくら夜ざくら篝まだ入れず 鷹羽狩行 200106
夜桜に開け放ちけり大手門 垣尾美智子 200107
夜桜のけふが過ぎゆく波の音 藤木竹志 馬酔木 200107
夜桜や三味線の音聞こえくる 林田加杜子 いろり 200107
夜桜の息聞いてゐる静寂かな 稲岡長 ホトトギス 200108
夜桜を抱く虚空を怖ぢにけり 稲岡長 ホトトギス 200109
夜桜や雨に光りて弁天堂 芝宮須磨子 あを 200205
夜桜のまだ完全に昏れてゐず 塩川雄三 築港 200206
夜桜やペアーウオッチのずれし刻 角田信子 六花 200207
夜桜やかたまりならでかたまれる 深澤鱶 火星 200207
夜桜の道後に宿のとれしこと 永井雪狼 200207
夜桜の中ゆく禊受くるごと 手島靖一 馬醉木 200207
夜桜に昂り月の細くとも 吉田眞弓 雨月 200207
神の火を入れて夜桜能となる 村上喜代子 百鳥 200207
たなごころ濡れ夜櫻の前にゐる 雨村敏子 200207
夜櫻へまぐはひ火照りさましゆく 小澤克己 遠嶺 200210
夜桜の妖しき翳り湖の風 刈米育子 200302
夜桜や月出て人の立姿 森田蝌蚪 200302
夜桜や声を嗅(か)らして母帰る 森本さやか 雲の峰 200305
夜櫻のてつぺんにあり五芒星 中田禎子 200305
夜桜の一歩の先は宿世かも 豊田都峰 京鹿子 200306
夜桜や平和な日本感じをり 山下悦子 酸漿 200306
夜桜へ走らせボンネット熱し 吉田政江 200306
夜桜に来し船の音波の音 塩川雄三 築港 200306
夜櫻を見してのひらの湿りかな 清水晃子 遠嶺 200307
たなごころ濡れ夜櫻のまへにゐる 雨村敏子 200307
夜桜にあらぬ二人を見かけたり 年森恭子 ぐろっけ 200307
夜桜に触れ会ふ人の顔も見ず 松本和代 築港 200307
夜櫻や髪を束ねてをりにける 竹内悦子 200307
夜櫻やうへむいてゐる獏の鼻 雨村敏子 200307
夜桜をちちははと見し記憶なし 藤井昌治 200307
古き湯の八十八夜櫻満つ 中澤文次郎 200307
白く散りゆき夜桜となりにけり 山下しげ人 ホトトギス 200308
艶めきし夜桜に酔い戦火ふと 中野英歩 八千草 200309
夜ざくらを来て聞く喜劇役者の訃 伊藤白潮 200405
夜桜や彼方に月のおぼろなる 大内恵 酸漿 200406
夜桜や鍍金の剥げし指輪嵌む 篠田純子 あを 200406
夜桜を揺らし爆音とどろけり 杉江茂義 雲の峰 200406
夜桜を見上げ生者の側に居る 大串章 百鳥 200406
夜桜や切なき恋の思ひ沸く 大内恵 酸漿 200406
夜ざくらを抜けて銀座の騒にをり 久保一岩 雲の峰 200406
夜桜やうち連れわたる鴨のこゑ 北崎珍漢 草の花 200406
夜桜や年に一度の露店立ち 志水芳秀 雲の峰 200406
夜櫻や人声に似し風の音 伊藤敬子 遠嶺 200406
夜桜や背負ひし闇の深かりき 内山照久 200407
夜桜の紗にくるまるる思ひかな 杉山瑞恵 雨月 200407
夜桜の食事に父を誘ひけり 菊地登紀子 百鳥 200407
夜櫻能はじまる笛の流れかな 長志げを 遠嶺 200407
夜桜のどこか揺れゐて一人なり 平田はつみ 馬醉木 200407
夜桜へそろそろ声のかゝる頃 田原陽子 200407
乗り越えし日々を語らひ夜桜に 浅利恵子 ホトトギス 200409
行燈に屋号夜桜草増やし 中田みなみ 200412
夜桜に降り立つ無人駅なりし 松尾緑富 ホトトギス 200502
乗り過したる駅頭の夜桜に 松尾緑富 ホトトギス 200502
夜櫻へ着物のなかの我いそぐ 八田木枯 晩紅 200503
夜桜や猩猩講は筵から 吉弘恭子 あを 200504
夜桜の舞ひワキ出づるシテ出づる 稲畑廣太郎 ホトトギス 200504
夜桜や終着駅のまだ見えず 水原春郎 馬醉木 200506
夜桜となるまでの苑人疎ら 福嶋紀子 築港 200506
魔界より来て夜櫻の宴にゐる 小澤克己 遠嶺 200507
夜桜や肌の潤ふほど歩く 浜和佳子 百鳥 200508
夜桜を見て来しあとの長湯かな 佐藤司 200508
夜桜の散り込む川の黒さかな 卓田謙一 万象 200509
夜桜へおとなの課外授業かな 山元志津香 八千草 200510
夜桜や月があってもなくっても 四戸和彦 八千草 200510
院展の夜桜大画賞に入る 牧原佳代子 酸漿 200511
夜桜に闇の呟きありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200604
夜桜をきりあげて肉食べに行く 中村房枝 六花 200604
夕桜夜桜となる身拵へ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200604
恐いもの見たさ半分夜桜に 稲畑廣太郎 ホトトギス 200604
夜桜に酔ひてつかの間女旅 森山のりこ あを 200606
夜櫻のまはりは湖の匂ひかな 小澤克己 遠嶺 200606
夜櫻やすぐ鳴きやみし青葉木菟 瀧春一 常念 200606
夜櫻やゆめまぼろしの月あかり 長崎桂子 あを 200606
夜桜を見上ぐたこ焼あつ熱し 内海良太 万象 200606
夫とゐて夜桜に酔ふ誕生日 海老名ムツヱ 酸漿 200606
川べりに夜桜眺む焼肉屋 早崎泰江 あを 200606
誰袖棚赤絵水指夜桜棗 東亜未 あを 200606
夜桜の闇に濃淡ありにけり 大竹淑子 風土 200607
夜桜の息づかひあび眠られず 宮川みね子 風土 200607
夜桜や雨の雫に頭垂れ 池崎るり子 六花 200607
夜桜や肌に染み込む闇ありて 大竹淑子 風土 200607
夜櫻に茶屋より三味の音流る 秋田直己 ぐろっけ 200607
夜桜やささやくほどの堰のこゑ 問宮陽夫 馬醉木 200607
夜桜に夫と腕組み歩きたる 水上貞子 ぐろっけ 200607
夜桜や田舎役者の村芝居 関まさを 酸漿 200607
夜桜へ懸かつてをりぬ吾妻橋 青山丈 200608
夜桜や余生の旅の北枕 松田都青 京鹿子 200608
夜桜となり雨上る星現るる 稲畑廣太郎 ホトトギス 200704
夜桜に庭の奥行生れけり 稲畑汀子 ホトトギス 200704
夜桜へふたたび開かず白障子 山尾玉藻 火星 200705
夜桜の余呉湖に人魚住むといふ 永井雪狼 200706
夜桜や隣にははの座りをり 岩木茂 風土 200706
終電のあとに夜桜残さるる 倉持梨恵 200706
夜桜の光曼陀羅池の面 金山藤之助 200707
夜桜やあしかの水の真つ平 浜口高子 火星 200707
夜櫻のさそひのままに迷ひこむ 安田三千代 遠嶺 200707
夜櫻や料亭裏の半のれん 黒須洋子 遠嶺 200707
夜ざくらの枝垂れを支ふ水あかり 藤岡紫水 京鹿子 200707
夜桜の底に結びし夢のいろ 山田弘子 ホトトギス 200709
投光器無き夜桜に威容あり 大滝香釈 八千草 200710
母とふたり夜桜少し見て帰る 掛井広通 200801
夜桜となりゆく先に何かゐる 稲畑廣太郎 ホトトギス 200804
夜桜の残像しかと濃かりけり 水原春郎 馬醉木 200805
夜桜や動くと思ふゴヤの裸婦 大島翠木 200806
夜桜に少し紅濃く待ち合はす 藤見佳楠子 200806
夜桜の奥に星影ありにけり 松村光典 やぶれ傘 200806
夜桜の宙を電線つらぬけり 浜口高子 火星 200807
夜桜の白き炎誰のレクイエム 後藤眞由美 春燈 200807
夜桜や媚薬にほはせ歩く女 和田照子 200807
夜桜にはめを外して踊りけり 赤松丹山 雨月 200807
夜桜へ宿の灯届く眺めかな 田中靜龍 ホトトギス 200810
夜桜や遠きところに城と月 鷹羽狩行 200904
夜桜を光背として篝かな 鷹羽狩行 200904
夜櫻に別れて倶に一人ぐらし 岡本眸 200904
夜桜ややはり何かが居るやうな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200904
夜桜や火に身を反らし篝守 鷹羽狩行 200905
夜桜や天女の衣舞ひ踊る 森山のりこ あを 200905
宴果ててなほ夜桜の酔ひのなか 中山静枝 200906
夜桜のかぶくもしだれ桜かな 北川英子 200906
やはらかき夜桜となり桜餅 米山喜久子 200907
灯されて夜桜の影校庭に 渡邉孝彦 やぶれ傘 200907
夜ざくらに集ひし影を想ひけり 小澤克己 遠嶺 200907
夜桜に凭りて白狐の化身めく 刈米育子 200907
夜桜や電車消灯徐行せる 河本利一 200907
夜桜のもどりコロッケ買ひにけり 松山直美 火星 200907
夜桜や狐面ともすれ違ふ 辺見狐音 炎環 200908
夜桜へ妻の形見の杖連れて 淺場英彦 万象 200910
夜桜の闇に出会ひて一揖す 鎌倉喜久恵 あを 201005
夜桜の闇に潜める魔女妖精 船越美喜 京鹿子 201006
夜桜や妖精宿る揺れ少し 小山繁子 春燈 201006
夜桜や男言ひ訳用意して 苑実耶 201008
夜桜や鬼女も嘆くよな朽ち社 伊藤希眸 京鹿子 201101
夜桜や至福のときの人ばかり 西村雪園 風土 201101
夜桜や黄泉戸喫よもつへぐいの遠からず 天野みゆき 風土 201106
夜桜や水草生ひたる舫ひ舟 竹内悦子 201107
夜桜や母の造りし密造酒 卯木尭子 春燈 201107
夜桜や明日新月の月あかり 加賀葉子 万象 201107
篝火にゆらぐ夜桜龍馬像 高谷栄一 嵯峨野 201107
夜桜や老いての帯を胸高に 木下ふみ子 馬醉木 201108
闇ありてこその夜桜匂ひたつ 浅岡麻實 末黒野 201207
夜桜の提灯ともり風に揺るる 吉田博行 かさね 201207
夜桜の揺れて零るる月の影 大橋伊佐子 末黒野 201207
夜桜や僧が通へる書道塾 柴田佐知子 201207
夜桜を賞づる彼方に高田城 菅原孟 かさね 201207
夜桜や座れる石に温みまだ 山本素竹 ホトトギス 201210
夜桜や般若の狂ふ能舞台 五ヶ瀬川流一 六花 201212
夜桜となる妖しさを秘めし色 稲畑廣太郎 ホトトギス 201304
夜桜に囲まれてゐる静心 稲畑汀子 ホトトギス 201304
夜桜を染め上げてゆく山気かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201304
城跡に緋の夜桜や城の悲話 伊舎堂根自子 万象 201304
星を見に出て夜桜に包まるる 稲畑汀子 ホトトギス 201304
夜さくらや飼犬をまた連れて来て 井上信子 201305
夜ざくらや鬼のたぐひも往き来して 千田敬 201306
夜桜に風出でにけり合戦址 服部鹿頭矢 馬醉木 201306
夜桜の宴を締むる校歌かな 末吉治子 春燈 201306
夜櫻へ位置をたがへし庭箒 佐藤喜孝 あを 201306
夜桜に灯るは如意輪院ならむ 熊岡俊子 雨月 201406
夜桜は熟寝の最中起こすまじ 上野進 春燈 201406
夜桜を仰ぎ吉野の悲史に更く 熊岡俊子 雨月 201406
夜桜を仰ぐ梢に星一つ 横田矩子 201406
飲み会のあとは夜桜高瀬川 志貴香里 201406
夜桜にかなふ昔の話して 三上程子 春燈 201407
夜桜の奥に夜ざくら父の立つ 本多俊子 201407
夜桜や海の奥なる兵舎の灯 浜福恵 風土 201407
夜桜や身の潔白は自刃にて 樋口みのぶ 201407
夜桜を観に行く紅を引き直し 柴崎富子 春燈 201407
灯を消してくれ夜桜が見たいから 大久保白村 ホトトギス 201408
働きに働き夜桜に集ふ 藤井啓子 ホトトギス 201408
眼裏に夜桜残し長湯かな 小田嶋野笛 末黒野 201408
夜桜やスカイツリーも桜色 須藤美智子 風土 201506
夜桜や天平美人の舞ひ姿 中島昌子 201507
夜桜や仮面をつけし人の波 中田禎子 201507
夜桜や音なく堀の水位増す 鈴木良戈 201507
煮詰りし玉蒟蒻と夜桜と 高田令子 201507
夜桜や小さき闇に躓きて 上野紫泉 京鹿子 201507
夜桜やぼんぼりの灯の橋二つ 大橋伊佐子 末黒野 201507
夜桜を愛でつお七に誘はるる 谷口一献 六花 201508
夜桜へ木星距碓を近づけて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201604
夜櫻のゆらゆら波を踏むやうな 井上信子 201605
夜桜の明かり幽かに能舞台 岩月優美子 201606
夜桜を隔つしじまや子規球場 藤原照子 201606
夜桜の白光放つ大手門 泉本浩子 馬醉木 201607
夜桜や千の紙燭の近江宮 山口順子 馬醉木 201607
夜桜にさてと机を離れけり 近藤牧男 春燈 201607
夜桜や女香具師売るジャガバター 瀬島洒望 やぶれ傘 201607
またも地震夜ざくらの香音立てて 伊藤希眸 京鹿子 201607
夜桜や香る葷酒はゆるされよ 布川孝子 京鹿子 201608
夜桜や明日なき如く咲き誇り 今橋眞理子 ホトトギス 201609
夜桜 →2      

 

2021年3月27日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。