蜃気楼    104句

見つけしは非番の厨夫蜃気楼    山口誓子

蜃気楼  海市  貝櫓

作品
作者
掲載誌
掲載年月
蜃気楼に誘はれさうな昼の酔 能村研三 199905
蜃気楼のかげろうの敦煌涅槃像 董振華 海程 199907
昔家の框に一服蜃気楼 野澤光代 ぐろっけ 199907
沖滲みをり蜃気楼顕つならむ 宮津昭彦 199908
手を振って沖へ沖へと蜃気楼 三宅やよい 玩具帳 200004
蜃気楼つかみに行きし草の舟 宇都宮滴水 京鹿子 200005
大砲を撃ち始めたる蜃気楼 土井田晩聖 銀化 200006
蜃気楼偶然でない偶然の一致 松山律子 船団 200007
蜃気楼から燕でてきてずぶ漏れなり 斉木ギニ 海程 200008
ベニス行きのバス発車せり蜃気楼 村山和子 海程 200101
駅の名に浦・浜・江・あり蜃気楼 品川鈴子 船出 200104
戦死せる戦友の町蜃気楼 松崎鉄之介 200106
蜃気楼魚津の海の底深し 棚山波朗 春耕 200205
懇望は遥か沖まで蜃気楼 永沢達明 円虹 200207
濱にいで蜃気楼の空位置探す 山田耕子 京鹿子 200304
濱人に尋ねし蜃気楼話聞く 山田耕子 京鹿子 200304
蜃気楼師をみちびきし車馳す 山田耕子 京鹿子 200304
見てよりはゴビもやはらぐ蜃気楼 池上栄子 ぐろっけ 200305
呑み込みし言葉の行方蜃気楼 曽根治子 銀化 200305
蜃気楼脚立に踵ありにける 栗栖恵通子 200305
蜃気楼母の日月思ひをり 清水節子 馬醉木 200305
蜃気楼より戻りくる大漁旗 三代川次郎 雲の峯 200306
蜃気楼消えて確かに蜃気楼 山本素竹 円虹 200307
心眼のありと信じて蜃気楼 島谷征良 風土 200307
二本ある水平線や蜃気楼 山本素竹 円虹 200307
はじめての目に疑はれ蜃気楼 山本素竹 円虹 200307
蜃気楼消えて手ぶらの顔ばかり 長沼三津夫 200308
蜃気楼この世をふいの鴉鳴く 長沼三津夫 200308
空爆の炎の奥に聳つ蜃気楼 山陰石楠 200308
船影の二重すなはち蜃気楼 長沼三津夫 200308
いつか師と見たる景かも蜃気楼 長沼三津夫 200308
灯台のふやけ始めし蜃気楼 長沼三津夫 200308
蜃気楼めく丸ビルの高さかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200404
蜃気楼都市にオアシスなかりけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200404
蜃気楼出生届に印を押す 宇都宮滴水 京鹿子 200405
条件の揃ひて待てる蜃気楼 稲畑汀子 ホトトギス 200405
蜃気楼触れてはならぬ過去もある 柴田朱実 京鹿子 200406
蜃気楼未来語るに刻老いて 柴田朱実 京鹿子 200406
蜃気楼おくれ毛程の脆さかな 柴田朱実 京鹿子 200406
耐へてゐる母の漂ふ蜃気楼 柴田朱実 京鹿子 200406
眼を病みて視野は無限に蜃気楼 小林朱夏 200407
蜃気楼見よと告げゐて見失ふ 泉田秋硯 200407
飛行機の飛ぶ空にして蜃気楼 牧原佳代子 酸漿 200505
蜃気楼さらりと船を通しけり 水野恒彦 200507
肩車されて見てゐる蜃気楼 川口襄 遠嶺 200508
西へ玄奘東へポーロ蜃気楼 吉田かずや 春燈 200512
バオバブは祈りの形蜃気楼 岩月優美子 200606
尾の白き猫が尾を立て蜃気楼 定梶じょう あを 200606
転た寝の覚め際心地蜃気楼 久染康子 200606
蜃気楼立つ辺りと言ふ不確かさ 浜田南風 200607
蜃気楼生はいとしくありにけり 本多俊子 200705
蜃気楼立てり砂漠に川流れ 宇田紀代 200705
蜃気楼島が浮いたり沈んだり 中島玉五郎 200706
蜃気楼人の来てまた人の去り 水野恒彦 200707
蜃気楼むかし女帝の御代ありき 織田高暢 200811
管弦の音は聞えず蜃気楼 大森春子 200907
暮れ方の無縫の海の蜃気楼 水野恒彦 200907
法螺の穴からのつと蜃気楼 柳川晋 200907
まぼろしの橋を湖上に蜃気楼 山口順子 200908
故郷はこの浜伝ひ蜃気楼 綱徳女 春燈 201006
歩をかさね重ねてゆくも蜃気楼 中野京子 201006
蜃気楼地球をすこしはみ出せり 千田敬 201104
屋上の吏員その時蜃気楼 定梶じょう あを 201105
魔法派と科学派のゐて蜃気楼 藤井啓子 ホトトギス 201109
今日出るぞ今日こそ出るぞ蜃気楼 藤井啓子 ホトトギス 201109
追ふほどに蜃気楼とは逃げてゆく 藤井啓子 ホトトギス 201109
とのぐもり絆といふは蜃気楼 山崎@青史 ろんど 201206
観音や遥かにビルの蜃気楼 北村淳子 ろんど 201207
秋の虹消えをり沖の蜃気楼 田中臥石 末黒野 201211
蜃気楼半島北にねぢれけり 中村嵐楓子 春燈 201307
人いつかこの世追はるる蜃気楼 樋口英子 201405
欄干にかもめが並び蜃気楼 定梶じょう あを 201405
珈琲に泛ぶミルクや蜃気楼 浜福恵 風土 201405
蜃気楼に一船崩れ大津沖 小澤菜美 201405
蜃気楼現れてタンカー金縛り 千田百里 201407
指されたる蜃気楼とはあんなもの 河野美奇 ホトトギス 201410
蜃気楼の国へ行きたく魚になる 有松洋子 緑光 201411
蜃気楼消えてやうやくその辺り 稲畑汀子 ホトトギス 201504
有り得ぬが有り得む現蜃気楼 小松誠一 201504
風評に居ても立つても蜃気楼 堀岡せつこ 201506
あんたはんなんはや蜃気楼出とがやぜ 八木健 八木健俳句集 201509
蜃気楼音の消えたるわたつうみ 水野恒彦 201605
魞舟の蜃気楼より戻り来ぬ 服部鹿頭矢 馬醉木 201605
釣糸と浮きの随に蜃気楼 七郎衛椚吉保 あを 201607
共有する静かな時間蜃気楼 定梶じょう あを 201704
現はれて海の気を吸ふ蜃気楼 岩下芳子 201705
蜃気楼に立てかけてある梯子かな 高橋将夫 201705
蜃気楼いま消えなんとして不安 岩月優美子 201707
釣人の大物狙ひ蜃気楼 荻布貢 201708
萌え出づる心の生むや蜃気楼 江島照美 201805
羅針盤にぎる背後の蜃気楼 鈴鹿呂仁 京鹿子 201806
沖へ沖へ未だ蜃気楼抱けず 鈴鹿呂仁 京鹿子 201806
蜃気楼海の彼方へうからたち 齊藤實 201807
蜃気楼アプリに神の手隠されて 平野多聞 201909
秋の町雲が作れる蜃気楼 中西厚子 202002
パンデミックと印籠かざす蜃気楼 赤座典子 あを 202005
ウイルスがあまた人呑む蜃気楼 熊川暁子 202007
遠き日のたましひぬれて蜃気楼 えとう樹里 202010
現し世の不測の傾れ蜃気楼 鈴鹿呂仁 京鹿子 202105
蜃気楼合せ鏡を遠見せむ 村田あを衣 京鹿子 202107
蜃気楼溶け込んでゆく遠汽笛 村田あを衣 京鹿子 202107
地下出れば塾ビル街衢蜃気楼 奥田筆子 京鹿子 202109
いくさあり蜃気楼に血のにじむ 奥田筆子 京鹿子 202205
汽笛より入る港や蜃気楼 太田良一 やぶれ傘 202207

2023年4月14日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

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