咳・しわぶき 1        321句

 

作品
作者
掲載誌
掲載年月
咳き入れば妻も小さき咳をせり 保坂加津夫 自在抄 199600
咳一つ落とし高層ビル仰ぐ 村松紅花 ホトトギス 199903
交響曲楽士も咳をこらへゐし 鷹羽狩行 199903
合掌の窈冥に咳こぼしけり 水内慶太 銀化 199903
夜警いまひとりぼつちの咳やまず 盛良孝 199904
咳こんでゐてマンホール踏みゆけり 岡本眸 199904
獅子舞が面のうちより咳洩らす 皆川盤水 高幡 199905
銀行の咳やねんごろ革の椅子 廣嶋美惠子 船団 199906
咳き咳きて吐きたる真夜の痰一つ 藤松遊子 ホトトギス 199907
身を搾り身を搾り咳く外はなし 藤松遊子 ホトトギス 199907
悶々の咳に目覚めり鳧の鳴く 瀧新珠 京鹿子 199907
布ずれてゆく咳殺すうちに 若森京子 船団 199907
夏風邪の咳胸にまでこたへたり 保坂加津夫 いろり 199909
咳けば翔つ弱きものらの誘ひ連れ 丸山海道 海道全句集 199910
つられ咳して気まづさの車中かな 能村登四郎 芒種 199911
寮に独り咳込むこともはばからず 大橋晄 雨月 200001
夏風邪か気になる咳をこぼしつゝ 松尾緑富 ホトトギス 200001
兼題の咳が座つてをりにけり 稲畑汀子 ホトトギス 200001
柿くけこ咳の止まらぬ午前二時 尾上有紀子 わがまま 200002
柿(かき)くけこ咳の止まらぬ午前二時 尾上有紀子 わがまま 200002
掛合ひに咳をこぼしぬ天狗面 吉見文子 200003
咳こらふ鳥獣戯画の筆の先 神蔵器 風土 200003
喪帰りのB寝台にうすき咳 青木直子 200003
咳こんで汝の名忘るるしまらくは 中原道夫 銀化 200003
見てゐたる景に人生れ咳けり 岡本眸 200003
咳々々胸が破裂してしまふ 三橋早苗 ぐろっけ 200004
咳こみしとき電柱の立ちてあり 武井美代子 風土 200004
咳きて言ひ遺したきことありと 今井千鶴子 ホトトギス 200004
少年の何誦んずる咳をして 竹部千代 200005
さびしさを咳にまぎらすけもの径 屋代孤月 遠嶺 200005
咳ぶけば啖々として春の痰 相澤和郎 海程 200005
車椅子同時入院妻と咳き 平田直樹 海程 200006
峡の家咳ひとつ眠りにつく 前田保子 海程 200006
ブナ・コナラ峠に人の咳よ屁よ 林唯夫 海程 200009
静かなる咳肩越しにゴッホ展 阿部寒林 200010
証言か咳きなのかはこべ咲く 中林明美 ヒッポ千番地 200010
子規の咳玻璃戸に残る薄暑かな 佐々木峻 船団 200101
咳続く母の心配増えて来し 森裕子 円虹 200102
咳洩らす誰拝謁の前のしづけさ 植村よし子 雨月 200102
奥へ奥へ広がる広間咳出づる 安井和子 200102
咳の子の口答へする元気あり 森裕子 円虹 200102
朝市を広げだしたり咳一つ 浜口高子 火星 200102
咳込みて乳房左右の少し寄る 大場佳子 銀化 200102
芭蕉庵覗き見もして咳こぼす 後藤志づ あを 200102
空咳をして始まりぬ成木責め 飯塚ゑ子 火星 200103
緞帳の下りし向うで咳きぬ 浜口高子 火星 200103
咳激し裏返しとなる大地かな 成定紋子 船団 200103
肺癌の手術不能と聞くに咳 松崎鉄之介 200104
咳うけし拳をポケットにしまふ 岡本眸 200104
辛口の寸評のあと咳込めり 林敏明 200104
謦咳に接したれども風邪もらふ 佐藤真次 200105
咳きてより告白となりにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200105
ブラウン管より思ひきり咳が出て 橋場千舟 船団 200106
流星に咳く寢の刻の貧しかり 渡邉友七 あを 200107
咳払ひしてより法話風薫る 多田鬼堂 200108
わが咳の数ほどに増え寒の星 能村登四郎 羽化 200110
ゆうすげに咳込むように笑う人 金子兜太 海程 200110
こころさぶしむ梅雨の空咳ひとつして 能村登四郎 羽化 200110
咳込んでゆるりと着せる紙人形 倉本マキ 船団 200111
原節子暗室出れば咳一つ 時枝武 船団 200111
診察のわが名呼ばれて咳一つ 川村紫陽 200201
予期せざる咳に響きける手術口 北村香朗 京鹿子 200201
咳こぼす十二光仏闇晴れて 神蔵器 風土 200201
咳きのすぐ風音にまぎれけり 岡本眸 200202
咳き込みて人類(ヒト)に尻尾のありしこと 小野島淳 200202
咳ひとつ連綿の文字損なはず 大沼眞 200202
神在らば吾に来ませよ咳地獄 野中啓子 200203
咳き込めば咳の谺に嫁の声 相澤健造 いろり 200203
人混の中聞き馴れし咳聞こゆ 橋本美奈子 雲の峰 200204
雨の日の暗さ互みに夫婦の咳 渡邉友七 あを 200204
口許の拳に咳を封じ込め 阪野徹 200204
検温の夜勤看護婦咳漏らす 久保田由布 ぐろっけ 200204
咳の子の眠りて銀河鉄道へ 川口襄 遠嶺 200204
咳込んで汗ばめる夜を子を恋へり 勝又寿ゞ子 200205
咳こみて席立つ女の香りけり 小林玲子 ぐろっけ 200205
咳く牛をいたはり呑ます薬水 田中俊尾 馬醉木 200205
咳一つ三つ四つ五つ夜の厨 宮原みさを 花月亭 200208
梅雨寒の咳こぼす是は父の咳 千代田葛彦 馬醉木 200208
冷房のしじまに響く咳払ひ 林翔 200210
咳止めの飴飲み込まぬやうに咳く 高崎武義 200212
咳一つ虫ゐる闇へ落しけり 伊藤多恵子 火星 200212
会場の咳にのど飴集りぬ 稲畑汀子 ホトトギス 200212
咳こぼす人にさそはれたる咳も 稲畑汀子 ホトトギス 200212
咳以外下田の海に置いて去る 稲畑廣太郎 ホトトギス 200301
咳止飴買ひて小町を通り過ぐ 平田紀美子 風土 200302
冬うらら鸚鵡のしたる咳ばらひ 谷口千枝子 200302
咳発作最善策がこなごなに 木戸渥子 京鹿子 200302
咳の子の叱られて居り夜の塾 滝本香世 百鳥 200302
咳払ひは風邪とも夫の依枯地とも 成宮紀代子 200302
まつ先に咳をこぼして御上人 関根洋子 風土 200302
咳一つして林中の風通す 鈴鹿仁 京鹿子 200302
英語劇の一語につまり咳ひとつ 山本康夫 200303
ソ連製のライヴ録音咳まじる 岡谷栄子 200303
咳止めと鰭酒いづれすすむべき 後藤比奈夫 ホトトギス 200304
咳少し治まるまでを待つ廊下 黒川悦子 円虹 200304
初祈祷導師咳込む長き経 市橋幸代 築港 200304
仮病めくこれみよがしの咳をして 鎮田紅絲 200304
君が咳角曲り来る夜更けかな 長山あや 円虹 200304
応挙寺咳けるさへはばかられ 佐藤淑子 雨月 200305
「それから」と漱石先生咳払い 武井玲子 八千草 200305
白魚の咳き込んでゐる三杯酢 菊谷潔 六花 200305
咳一つ二つ議論の紛糾す 木村みかん 200305
花の雨昼ひとり臥し咳地獄 渡邉友七 あを 200305
しゃかりきに咳を我慢のかくれんぼ 物江晴子 八千草 200305
咳しきりおびんづる様撫でながら 原田喜久子 八千草 200306
男咳くネオン横丁は醒めてゐる 山元志津香 八千草 200306
花冷や幾日咳にこもりゐる 稲次登美子 雨月 200307
涅槃図を抜け出て咳をこぼしたる 十河波津 200307
MOA館天上目ざし咳込みぬ 向後良子 八千草 200308
労咳に起居せし屋敷半夏咲く 谷榮子 雨月 200308
隣席は耳鼻科の医師咳込める 稲畑汀子 ホトトギス 200312
咳止みぬ誰かを帰したるごとく 岡本眸 200401
しづかなる画廊に一つ咳こぼす 森木久美 雲の峰 200402
咳一つガイドがこぼす二月堂 若本彰子 酸漿 200402
咳き込んでゐる間に教祖消えしかな 竹内弘子 あを 200403
空咳が本咳となる身を曲げて 塩川雄三 築港 200404
小面の内に闇あり咳こぼす 福嶋千代子 200404
咳いてみる姿見鏡(すがたみ)のわたくしに 伊藤希眸 京鹿子 200404
初芝居ためらひがちに咳こぼす 橘沙希 月の雫 200404
咳をしても一人 尾崎放哉 河鹿 200406
朧夜を背丸めひたすら咳きをり 山田をがたま 京鹿子 200408
とどまざるものに想念夏の咳 小澤克己 遠嶺 200411
十三夜咳ばらひして父のゐる 山尾玉藻 火星 200412
朱線引く一措辞に咳こぼしけり 松橋利雄 春燈 200501
なまはげの去りぎは咳をこぼしけり 藤原照子 200501
咳き込めりどうでもなれと思うほど 小林朱夏 200502
咳止まず優先席は疎外席 伊藤白潮 200502
大佛を巡りゆく咳きこえけり 大西八洲雄 万象 200502
咳きこんで仏の前を離れけり 鈴木あき子 築港 200502
咳の部屋ねむれぬ孫よ我も又 長谷川としゑ ぐろっけ 200502
ひとり夜の咳こぼしゐる厨かな 太田佳代子 春燈 200503
われとわが言に躓き咳けり 木内憲子 200504
酸素マスクはづせば去啖咳を切り 丸山冬鳳 京鹿子 200504
咳こぼすひとつふたつと人の名も 服部早苗 200504
火の玉といひたる茅舎咳つづく 大橋敦子 雨月 200504
出番待ち咳治(おさ)まらぬサンバ姫 品川鈴子 ぐろっけ 200504
咳込めば黒々と樫欅かな 杉浦典子 火星 200504
咳ひとつ無き百僧の徹夜経 永井孔雀 200505
百僧の咳一つなし常楽会 古田考鵬 雨月 200505
授業中咳き込む声の途切れなく 岸直人 築港 200505
咳きてライオンの檻のぞきをり 景山まり子 百鳥 200505
雪に香のあり咳をして咳をして 柳生千枝子 火星 200505
鶯に居坐りし咳宥めけり 赤座典子 あを 200506
咳ひとつ手術の傷を直撃す 戸藤井啓子 ホトトギス 200506
冬木の芽父は家ぬちに咳ける 瀧春一 菜園 200509
眠りたる嬰預かりて咳こらゆ 坂元フミ子 河鹿 200512
咳の声耳覚えあり大ホール 鈴木榮子 春燈 200601
仏足跡踏む列に従き咳ぶけり 小林正史 200602
咳こむやマリオネットの魔久たふる 菅沢陽子 春潮 200602
小児科のカーテン越しに咳ひびく 田口俊子 200602
咳ひとつ闇に吸はれし除夜詣 三好千衣子 200603
咳や闇にうごきし風の道 吉弘恭子 あを 200603
いぶりがつこどこから父の咳ばらひ 今瀬剛一 対岸 200603
夜の臥床波打てるまで咳こぼす 溝内健乃 雨月 200603
余寒なほ飴になだめて咳こらふ 大畠政子 雨月 200604
咳一つ残つてゐたる留守電話 寺村年明 春燈 200604
夫とゐてかたみに咳きて夜の浅し 上林孝子 200605
咳込めば人避けて行く小路かな 松永弥三郎 河鹿 200605
椿落つくらき日よりの咳止まず 渡邉友七 あを 200605

父逝きしより十五年となりぬ

父が咳きしごと吾咳きて祷りふかし

八田木枯 晩紅 200606
咳おさふバリトンの声響きゐて 河井富美子 ぐろっけ 200606
卯の花明り咳きは雨になり 湯浅夏以 遠嶺 200610
空咳のしきりや梅雨の月細し 北川孝子 京鹿子 200610
麨を鼻から吹いて咳込みぬ 原稲岡長 ホトトギス 200611
翁咳嫗嚔や真青空 林翔 200612
白地着て辺りを払ふ咳ばらひ 彦根伊波穂 200612
飴を切る音の裏間に咳をする 篠田純子 あを 200701
咳一つ坐禅のしじま破りけり 山内なつみ 万象 200701
朝霧の山より人の咳払ひ 藤井佐和子 200701
咳の目に陶人形の笑みしづか 井原美鳥 200702
咳ひとつして驚かすつもりなし 倉持梨恵 200702
咳入るや涙にくもるシクラメン 臼田亜浪 ぐろっけ 200702
第二楽章始まるまでを咳きぬ 安居正浩 200702
咳くまいと握り拳を口に当て 足利徹 ぐろっけ 200703
落成式神事の合間のつられ咳 足利徹 ぐろっけ 200703
咳こらふ離着陸時のやうにかな 伊藤白潮 200703
咳ひとつ講演マイクに入りけり 中村洋子 風土 200703
咳込むや身の内にある噴火孔 藤原照子 200703
茶屋支度終へたる咳をこぼしけり 伊藤奈津 200704
咳ひとつ落してさかる冬泉 手島靖一 馬醉木 200704
in the end(結局)ふつうの人生咳一つ 臼井昭子 200704
咳けば真夜の灯と水供さるる 木下もと子 200704
百僧の咳一つなき常楽会 古田考鵬 雨月 200705
春の咳怺へて舞台吉野山 鈴木榮子 春燈 200705
大花野咳を忘れし人とゐる 百瀬七生子 海光 200705
追儺火の燻りて鬼も咳けり 築城百々平 馬醉木 200705
謦咳に接する一書梅雨深し 出口賀律子 雨月 200710
夏風邪の咳して咳の止まらざり 鈴木栄子 春燈 200711
本丸に上り切つたる咳一つ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200711
咳き込みつ笑ふ一人の年酒かな ことり 六花 200801
夢にまで咳とたたかひ目覚めたり 長崎桂子 あを 200801
咳込んで今果てるかと思ひたり 長崎桂子 あを 200801
下校子の咳込んでゐてみな元気 野路斉子 200802
咳く我に大根が効くと電話の師 落合由季女 雨月 200802
咳といふ黙秘の術のありにけり 七種年男 200803
図書館の誰か咳するまた誰か 志立佐知子 200803
水軍の入りたる洞や咳こぼす 山崎靖子 200803
倦む絵本咳く渦の待合室 伊藤希眸 京鹿子 200803
咳き込めり喉に交通整理なし 鈴木榮子 春燈 200803
咳き込んで目の奥あつくなりにけり 島谷征良 風土 200804
咳一つこぼして拝む風邪よけ尊 岡田章子 ぐろっけ 200804
托鉢の笠の内より咳零す 東良子 首座星 200804
舐めてすぐ噛る咳止め飴の音 木下もと子 200805
花冷えや今朝の挨拶咳ひとつ 須賀敏子 あを 200806
咳ひとつ点滴壜を揺らしけり 青山悠 200808
投函す咳鎮まりし顔上げて 岡本眸 200810
文月と咳いてみてふと淋し 稲岡長 ホトトギス 200812
咳怺ふミイラの鼓膜震ふかと 品川鈴子 ぐろっけ 200812
咳払ひ拳に落とし四方拝 布川直幸 200901
咳き咳きて身内どこかの螺子外る 久保田由布 ぐろっけ 200901
寒夜咳く世に在りし父の如く咳く 瀧春一 深林 200901
咳のあとしばらく声を低くして 後藤とみ子 ぐろっけ 200902
イージス鑑見てより咳の俄かなる 松本圭司 200902
咳つづく命吹き消すごとつづく 布川直幸 200902
咳の夜も兄となる子は母恋はず 鈴木照子 200902
咳きこんで火柱となり天に着く 田尻勝子 六花 200903
咳をしても他言は無用遺産の寺 丸山佳子 京鹿子 200903
春の風邪夫から移る咳の数 松本蓉子 六花 200904
無言館怺へきれざる小さき咳 長谷英夫 馬醉木 200904
咳のいつしか母のそれに似て 河本由紀子 春燈 200904
堪へたる咳の響きて美術館 山田万里子 200904
緒方拳科白にはなき咳重ね 吉田耕人 ぐろっけ 200905
咳といふ己が存在厠かな 内山照久 200905
肺炎の咳咽び出づ花の冷 澤田緑生 馬酔木 200905
咳のこだましてゐる蘭の温室 中田みなみ 200906
から咳の夫は隣室梅雨湿り 今野明子 末黒野 200910
夏の咳喝の刹那を怺へをり 金子つとむ ろんど 200911
不覚にも猫が咳する白露の夜 鈴鹿仁 京鹿子 200911
咳こぼす列しんがりの副級長 村田冨美子 京鹿子 201001
身の奥の奥より湧いて母似の咳 竹内弘子 あを 201001
肺嚢をうらがへしたるごとく咳く 竹内弘子 あを 201003
咳きこみて魂抜くる思ひかな 谷村祐治 雨月 201003
咳ころし相合傘となりゆけり 布川直幸 201003
咳止めの効かぬ夜なり白湯甘し 鬼頭佳子 201003
咳こんでをりぬ写真の夫の前 柳生千枝子 火星 201004
咳き込むと狭くなりたる己が部屋 小林朱夏 201004
ベネチアングラスの店に咳けり 安藤久美子 やぶれ傘 201004
咳いて咳いて闇に覚めゐる夜を重ね 丹生をだまき 京鹿子 201005
咳一つして背後より抜かしをり 能村研三 201012
火の咳を夜雲たかぶる辺へ放つ 伊藤白潮 201101
労咳てふ言葉ありけり男郎花 大川ゆかり 201101
古本は匂へり子規は咳けり 荒木甫 201102
三つ目の咳は空咳吉良屋敷 森岡正作 201102
咳・寝息ねごと老いたる能の客 田中佳子 ぐろっけ 201102
作麼生そもさんを僧に語らば咳一つ 天野みゆき 風土 201103
咳きてかはす噂のふたつ三つ コ田千鶴子 馬醉木 201103
咳き込みて人を離るる忍冬忌 内藤静 風土 201103
咳込むも佳人は仕種美しく 野中啓子 201103
一幕の下りて咳声広がりぬ 能美昌二郎 201104
納屋に咳ありしが居間に移りけり 井上浩一郎 ホトトギス 201105
咳きて関取ひとり武蔵野線 荒木甫 201105
咳しげき背をさすりをるごつつき手 宮崎きみ枝 201105
咳といふ言葉にならぬ言葉かな 長山あや ホトトギス 201105
咳の人いづこかにをり映画館 坂本知子 酸漿 201105
有る限りの命燃やせよ咳の母 竹内悦子 ちちろ虫 201108
咳ひとつこぼして闇を深めけり コ田千鶴子 花の翼 201111
家族より離れてひとり咳けり 布川直幸 201112
粉薬に噎せて咳くなり冬隣 小林清之介 風土 201112
咳き込んで次の言葉を失へり 稲畑汀子 ホトトギス 201112
咳くときの母をすこしく疎んずる 竹内弘子 あを 201112
その次の咳をまたせて咳ける 布川直幸 201112
静かさを恨む夜中の咳地獄 布川直幸 201112
後ろから前から咳の旅路かな 稲畑汀子 ホトトギス 201112
老僧の読経つまづく咳ひとつ 那須淳男 馬醉木 201201
空咳をして二杯目の玉子酒 小池清司 かさね 201201
空咳に目覚めし夜の重き闇 鈴木良戈 201202
山門を出てゆく咳のひとつあり 野口喜久子 ぐろっけ 201202
母の忌や咳も母似といはれける 奥山テル子 万象 201202
咳払ひに安堵の夜なべふたり住み 塩路隆子 201202
空咳の父似となりし師走かな 松岡水学 ぐろっけ 201203
鮟鱇の吊し切りされ咳もなし 肥田俊昭 末黒野 201203
トロッコの四万十めぐり咳激し 古井公代 ぐろっけ 201203
長けし子の咳が気になる隣部屋 武山貞子 ぐろっけ 201203
母の咳つづく客問や夜の底 浅木ノヱ 春燈 201204
咳き込めば三毛も咳く仕草せり 平田恵美子 ぐろっけ 201204
咳ひとつ拳に人れて決断す 野口喜久子 ぐろっけ 201204
看取る身に咳一つとて侮れず 赤川誓城 ホトトギス 201205
空咳をしていらへなき文学館 品川鈴子 ぐろっけ 201205
言霊とならざる咳をこぼしけり 本多俊子 201205
咳く夫も我も齢も古りにけり 國保八江 やぶれ傘 201206
咳の砂と化したる蜆桶 松本文一郎 六花 201212
咳込めばこの世の果てと思ひけり 大木清美子 201301
ごほごほと咳の始まる神無月 松村光典 やぶれ傘 201302
咳に背がくしやみに腹がこたふるよ 細野恵久 ぐろっけ 201302
咳込んで何か言はんとせし母よ 竹内弘子 あを 201302
芝居小屋咳することもはばかられ 細川知子 ぐろっけ 201303
咳の児の背中撫でやる夜更けかな 粟倉昌子 201303
おほいなる寒の和尚の咳払ひ 鳳蛮華 201304
獅子頭小さき咳をこぼしけり 前田忍 火星 201304
咳こぼしをり理科室の人体図 原友子 201304
朝寒や路行く人の咳多し 後藤克彦 かさね 201312
思はずも心底見するごとき咳 竹内弘子 あを 201402
咳く吾を吾のいたはる実南天 山本耀子 火星 201402
亡き兄の碁盤囲みし折の咳 石田きよし 201403
我ながら驚くばかり咳響く 三輪慶子 ぐろっけ 201403
つれあひに長引く咳をうとまるる だいじみどり 201403
君の咳天上天下に燃え盛る 田尻勝子 六花 201403
をさな子の「雪やこんこん」咳こんこん 松田和子 201403
咳をして花瓶の花をゆらしけり 池田光子 201404
眼の合うて若き脇僧咳きぬ 西村節子 火星 201404
天狼や太平洋に咳ひとつ 本多俊子 光のうつは 201404
咳一つにも注目の新主宰 千原叡子 ホトトギス 201405
咳小さく添へて読経の終はりけり 上野進 春燈 201406
咳をしてより挨拶の長過ぎる 稲畑廣太郎句帳 ホトトギス 201412
指揮棒の上がりしはぶき一つなし 内藤静 風土 201502
咳をして鷺の抜き足犯しけり 松本鷹根 京鹿子 201502
咳こぼす武蔵一国札所口 間島あきら 風土 201503
咳までは隠しきれずにかくれんぼ 城台洋子 馬醉木 201503
半眼の佛有情や咳こぼす 佐藤凉宇子 ろんど 201503
バスの中咳きて視線を一身に 塩田博久 風土 201503
前を行く人の後ろに咳きぬ 佐野つたえ 風土 201503
靴音と咳ひびく投票所 漆山浩一 末黒野 201503
咳きの一つ大きく門に入る 森岡正作 201503
咳の夫身振り忙しく指図して 山口ひろよ 201504
咳の子をさする母の手魔法の手 仲里奈央 201504
咳止まる診察室に入りてより 高木嘉久 201504
二つ三つ空咳山椒の花散れり 小林愛子 万象 201507
次の一語待つてをりしが咳一つ 河原昭子 万象 201508
かいつぶりどこかで咳をしていたり 火箱ひろ 船団 201508
      咳 →2

 

2020年12月21日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。