流 燈 1     236句

流燈となりても母の躓けり    中嶋秀子    命かぎり

作 品
作者
掲載誌
掲載年月
流燈や川の暗さは誰も言はず
保坂加津夫
自在抄
199600
流灯にゆつくり添ひて行きにけり
平橋昌子
199810
先達のあるかに流燈連なりて
高木悠悠
199812
丹念に水際掃かれ流灯会
久崎富美子
199901
流燈の真上特急電車過ぐ
村田近子
遠嶺
199905
流灯を置くガンジスの濁り水
鷹羽狩行
199908
魂預け流燈の火の消ゆるまで
保坂加津夫
いろり
199909
滞る流燈たしか我のもの
能村登四郎
199910
あまり素直な流燈の流れざま
能村登四郎
199910
町川へ梯子をおろす流燈会
志水千代子
俳句通信
199910
流灯の一つひとつの物語
松島不二夫
199911
流燈のかの世へ長き水尾引けり
川島真砂夫
199911
流燈のはなれ行くとき送り風
佐藤フクエ
春耕
199911
流燈や居るはずの無き母の声
保坂加津夫
いろり
199911
流灯のたちまち裾の濡れてをり
深澤鱶
火星
199912
流灯のすべてが闇にのまれゆく
堀田恵美子
雨月
199912
風少し出て流灯の傾きて
川口咲子
ホトトギス
200001
手をはなれゆく流灯の行方かな
川口咲子
ホトトギス
200001
流灯会父母なき我に夫やさし
川口咲子
ホトトギス
200001
流燈会果て上げ潮の逆さ波
湯橋 喜美
200001
流燈を水へ置きたる手の残る
田中藤穂
水瓶座
200002
流灯や日本は山河美し国
稲畑汀子
ホトトギス
200008
川行かば水漬く屍や流灯会
稲畑廣太郎
ホトトギス
200008
流燈やとんと馬見ぬ街となる
大平保子
いろり
200009
妻の追ふ流灯の子の行方かな
井上比呂夫
200010
流燈の悟道をゆけるかなしけれ
大橋敦子
雨月
200010
大円の月流燈の果照す
大橋敦子
雨月
200010
水塔婆負ひ流燈の逸りゆく
大橋敦子
雨月
200010
流燈のあとはむらぎも点しつつ
彌榮浩樹
銀化
200010
流燈や歳月といふ汚れしもの
保坂加津夫
いろり
200010
流燈の流れに垂れぬ水子あり
熊谷みどり
いろり
200010
自らの道照らす流灯の明
中川濱子
ぐろっけ
200010
流灯や闇をささへる水広き
斉藤小夜
風土
200011
流灯会果てて仏の風吹けり
宮川みね子
風土
200011
流灯を渡月橋にて送り出す
中村洋子
風土
200011
篝火の火種もらひて流灯会
林裕子
風土
200011
流灯の混みあってゐて争はず
立石萌木
雨月
200011
流燈や婆の燈籠押されゆく
保坂加津夫
いろり
200011
流灯の過ぎたるあとを草流れ
伊藤奈津
200011
流灯を押しやる子らは膝濡らし
笹松浩子
200012
流燈に安心の石入れて押す
木曽岳風子
六花
200109
新仏ゐて流燈の走りぶり
能村研三
200109
当りどこなきストレスよ流燈よ
大平保子
いろり
200109
しんがりに闇ついて行く流灯会
前田達江
200110
川幅に風の溢るる流燈会
小野恵美子
馬醉木
200110
流燈の肩ふれゆくや被爆川
水岡芳子
馬醉木
200111
一湾の絵巻ひろごる流燈会
益本三知子
馬醉木
200111
慕心あれば流燈波に乗りきれず
渡辺俊子
京鹿子
200111
やはらかく手を取られゆく流燈会
児玉素朋
京鹿子
200111
流燈のふとためらへる水明り
柴崎英子
200112
あまりにも小さき流燈抱きしめる
貝森光大
六花
200112
沖に出て水尾に乗りたる流灯群
永野秀峰
ぐろっけ
200112
去る他はなき流燈を波に置く
嶋田一歩
ホトトギス
200201
泣き崩るやうに流灯沈みけり
代田青鳥
風土
200201
立ち上がりつつ流灯を見送りぬ
木暮陶句郎
円虹
200202
流灯の闇に相寄り相離る
宮原みさを
花月亭
200208
流燈につきて白蛾も浦へ出づ
和田祥子
馬醉木
200210
補陀落の潮路ただよふ流燈会
根岸善雄
馬醉木
200210
流燈のすぐビルの灯に紛れけり
宮城白路
風土
200210
流灯の白蛾を連れてゆきにけり
望月周
百鳥
200210
流燈を送りし胸を風が吹く
山田弘子
円虹
200210
遠くなる師の流燈を見つめをり
菅谷たけし
200210
両岸の生者率ゐる流燈よ
水内慶太
銀化
200210
村境より流燈の急ぎ足
泉田秋硯
200211
舵もたぬ流燈ながら従へり
松本静香
帆船
200211
流燈の百の連なるさえ寂し
松本静香
帆船
200211
流灯を棹もてついと送りけり
石渡雁聲
築港
200211
流灯会はじめるによき日和なり
木下野生
200211
流燈の一つを追へり一家族
佐藤佐代子
200211
流燈や別れ間もなき潮の香
佐藤佐代子
200211
逆縁の流灯なれば後を追ふ
三村純也
ホトトギス
200301
流灯の星空へ漕ぎ出して行く
三村純也
ホトトギス
200301
流灯ゆくどこまでも闇引きずつて
石井道則
築港
200301
流燈や川に溶けゆくくづし文字
佐々木悦子
帆船
200301
流灯の闇が流れてをりにけり
稲畑汀子
ホトトギス
200308
川面ゆく流灯に添ふ心かな
稲畑汀子
ホトトギス
200308
流灯や日本海も遠からず
稲畑汀子
ホトトギス
200308
幾仏心に抱きて流灯会
稲畑汀子
ホトトギス
200308
松風に流燈ゆくを促さる
池田草晛
雨月
200310
流燈の急ぐひとつに続きけり
池田草晛
雨月
200310
一湾を占む流燈の六千余
池田草晛
雨月
200310
流燈の照らしあひつつ沖めざす
池田草晛
雨月
200310
逆縁か流燈炎あげて燃ゆ
池田草晛
雨月
200310
流燈を追ふ人のこゑ水の音
竹内弘子
あを
200310
流燈やその幼子の手を放すな
竹内弘子
あを
200310
流灯のくつがへつては水面に灯
鈴木喜久一
帆船
200310
流灯や出征兵も斯く送りき
泉田秋硯
200311
流灯を送る戦を知らぬ子と
柴野静
200311
流灯の力抜けしか傾ぎけり
加藤弘一
築港
200311
沖に寄り流灯の灯の強まれり
福井久生
200311
向き変へて流燈送る橋の上
板橋智恵子
百鳥
200311
流灯に越えねばならぬ堰荒き
阪上多恵子
雨月
200311
流燈を置く一瞬の水の張り
柴崎英子
200312
真の闇流灯ひとつさかのぼる
藤田悦子
対岸
200312
流灯の先頭橋をくぐりけり
藤田悦子
対岸
200312
撃たれたるごと流燈の雨に消ゆ
真塩実
200312
流燈に古希の涙を止めきれず
立石ただし
京鹿子
200409
流灯の越さねばならぬ渦のあり
西山美枝子
酸漿
200410
流燈の星ほどの距離保ちゆく
菊池珠枝
対岸
200410
流灯会ビルの灯映る川辺にて
印牧緑
築港
200410
新仏待ちて流灯遅れけり
林敬子
酸漿
200411
流燈に波のやさしさありにけり
角田悦子
草の花
200411
流燈の小さき点となりて消ゆ
荻江寿友
ホトトギス
200501
流灯の灯は川をねむらせず
吉澤恵美子
春燈
200501
岸壁にひとり酒酌む流灯会
向後良子
八千草
200502
流燈を押す説得をするやうに
伊藤白潮
200508
流灯の後尾はげます渦となる
宇都宮滴水
京鹿子
200509
誘ひ合ふ流灯のあり尚かな
宇都宮滴水
京鹿子
200509
流燈の元安川や黙したる
羽田岳水
馬醉木
200510
ここでもう追へぬ流燈手を振りて
北川英子
200510
流燈やけぶれる海にとけ入りぬ
鎌倉喜久恵
あを
200510
流燈を花と放ちて川暮るる
中村房子
馬酔木
200511
流灯のうしろに渦の生れたる
戸栗末廣
火星
200511
流灯のうなづき頷き遠ざかる
村上葉子
百鳥
200511
亡き兄の名をならべ書く流灯会
桑添礼子
栴檀
200511
見つづけて流燈の燈の滲みけり
福地初江
200511
流燈会戻りの草の香の深し
福地初江
200511
遠くきて流燈白く夜明けたり
福地初江
200511
灯さねば流燈さみし草の川
福地初江
200511
流燈や戦ばなしはもう聞けぬ
北川隆子
200512
星映り流燈を待つ川面かな
三関浩舟
栴檀
200512
流灯のうしろに渦の生まれたる
戸栗末廣
火星
200603
流灯の石に当たりて回りけり
山田六甲
六花
200609
流灯や並びしままにゆるやかに
坂井和子
酸漿
200610
流灯のひしめき来りとどまれり
浅田光代
風土
200611
灯の消えし流灯を追ふまなこかな
浅田光代
風土
200611
母走る子の流燈の流れに沿ひ
堀田清江
雨月
200611
流灯は渦抜け切れず呑まれけり
浜田南風
200612
流灯に託す母への追慕かな
山田智子
200612
流灯の波にさからふ戻り舟
秋場貞枝
春燈
200612
流灯の確と潮路に乗り沖へ
嶋田一歩
ホトトギス
200701
流灯は潮路人には家路あり
嶋田一歩
ホトトギス
200701
流灯会帰路の無口でありにけり
嶋田摩耶子
ホトトギス
200701
流灯のかたまり流れ争はず
立石萌木
雨月
200701
流灯会追憶の風舵をとる
山本正
京鹿子
200701
消えてゐる流燈舟にひろはれぬ
瀧春一
200706
火の帯の流燈の列くねりけり
穐好樹菟男
馬醉木
200710
町と町川でつながり流灯会
渡部志津子
200711
流灯や向かう岸にも人の影
上原和子
200711
流灯の離れずにゆくふたつかな
上原和子
200711
水辺まで亡妻を抱きて流灯会
田村すゝむ
風土
200711
流灯の川埋め尽くす広島忌
中沢三省
風土
200711
流燈の胸もと暮れてゐたりけり
城孝子
火星
200711
流灯の左岸に寄りてみな還る
水野恒彦
200711
流燈会の人は身軽になれぬかな
大島翠木
200711
流灯の闇となるとも見て佇てる
手島伸子
雨月
200711
流燈に自づと遅速ありにけり
黒須洋子
遠嶺
200712
行くと決めし一流燈の動きけり
野崎タミ子
炎環
200810
流燈のゆづり合ひつつ流れゆく
山田天
雨月
200810
流灯の終ひに山のかぶさり来
根橋宏次
やぶれ傘
200810
流燈の終り火刹那燃え立ちぬ
宮田香
200811
見覚えの店のつづきて流燈会
飯田ひでを
200811
後先とふ定めなき世や流灯会
西本輝子
雨月
200811
九頭竜川に手伸べ流灯惜しみたる
手島伸子
雨月
200811
頑として動かぬ流灯ありにけり
荒井和昭
200811
手囲ひをして流灯に灯を入れぬ
白数康弘
火星
200811
波にゆらぎて流灯の灯のたしか
白数康弘
火星
200811
流灯会うしろ女の息づかひ
白数康弘
火星
200811
流燈会黒子のごとく跼みゐて
浜福恵
風土
200811
流灯の乱れ門波の過辺り
和田照海
京鹿子
200812
流灯の追伸として笹小舟
山中志津子
京鹿子
200812
流灯の消え胸中に霊残る 
竹下陶子
ホトトギス
200902
盆の窪叩き背伸びす流灯会
中島玉五郎
200908
佳境てふしづけさ流灯会の岸辺
千田百里
200909
流灯会放しそびれてゐたりけり
田村すゝむ
風土
200910
流灯の一つ明りの消えしまま
木村茂登子
あを
200910
流燈に祖母の名ほのとひろしま忌
高瀬史
馬醉木
200911
流灯の末知の暗さに相寄れり
松井志津子
200911
夢まぼろしのこの世の一ト夜流燈会
丹生をだまき
京鹿子
200911
流灯の灯の筋闇を流れ行く
池部久子
酸漿
200911
本降りとなる流灯のしんがりは
手拝裕任
201008
流灯の風に押されつ岸に沿ふ
冨田君代
酸奬
201010
流灯の群離れしは父母の灯か
宇治重郎
201011
流燈の一つに蹤けば瞬けり
松本幹雄
馬醉木
201011
流灯や百の祈りを百の燭
小山繁子
春燈
201011
流灯のしばし寄り合ひ離れゆく
冨田君代
酸奬
201011
流灯の火の列をなす流かな
田野倉和世
酸奬
201011
流燈の片袖帯にはさみけり
水谷芳子
雨月
201011
流燈の火種流燈より貰ふ
久保東海司
201012
しばらくは並びてゆけり流灯会
田口紅子
201012
流灯や風に遅るる風の音
海老根武夫
201012
だしぬけに嬰の泣きだす流灯会
川端俊雄
火星
201012
流燈会両手遊ばせ戻りけり
笹村政子
初鼓
201105
浮島となり流燈の闇に入る
笹村政子
初鼓
201105
軍歌遠しなほ流灯の祖父遠し 上坂渥子 雨月 201110
流灯の背も寡黙なる父なりし 上坂渥子 雨月 201110
広沢に浮かぶ流燈経を詠む 粟倉昌子 201111
流燈の増えて風筋顕はなり 粟倉昌子 201111
流灯の澱みつ流れ遠ざかる 池田節 春燈 201111
七千の流灯にして静心 尾崎みつ子 雨月 201111
気掛りな流灯一つ火の消えて 尾崎みつ子 雨月 201111
流灯も人の流れもゆるやかに 鳳蛮華 201112
人の世を離れ流灯消えにけり 竹下陶子 ホトトギス 201201
流燈と大川端のビルともる 佐藤喜孝 あを 201112
流燈の一つは天寿全うす 稲畑汀子 ホトトギス 201208
雷雨急流燈胸に抱きて待つ 室伏みどり 雨月 201211
流燈に灯の入りてより犇けり 福島せいぎ 万象 201211
流灯のゆくあはき闇ふかき闇 浅田光代 風土 201211
膝ふかく折り流灯を水に置く 浅田光代 風土 201211
流燈の押し広げゆく海の闇 川村清子 馬醉木 201211
躓くは誰が流燈ぞ燃えて果つ 手島靖一 馬醉木 201211
雨滂沱父母の流灯胸に抱き 手島伸子 雨月 201212
流燈の寄り添ふことも哀れなる 池田倶子 雨月 201212
流灯のあとの夜風となりにけり 大崎紀夫 やぶれ傘 201212
流灯の人の如くにつまづける 竹下陶子 ホトトギス 201302
漁火の今日は消えをり流灯会 斉藤マキ子 末黒野 201304
流灯を放つ山並ももいろに 高松由利子 火星 201311
流灯会河口の浪のやさしかり 渡辺睿子 春燈 201311
流灯の流れにのれぬ未練かな 中野さき江 春燈 201311
彼の岸に待つ人のあり流灯会 田村すゝむ 風土 201311
闇と云ふ水に道あり流灯会 田村すゝむ 風土 201311
櫓も櫂もなき流灯を放ちけり 田村すゝむ 風土 201311
消え去りし流灯追ひて匂ふ闇 藤岡紫水 京鹿子 201311
鉦太鼓の御詠歌流れ流灯会 塩見治郎 雨月 201312
五分前がくちぐせ流灯会 梶浦玲良子 六花 201402
流灯の娘の霊明り遠ざかる 竹下陶子 ホトトギス 201403
流灯の還りゆく闇濃かりけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201408
流灯や一つは未練遺し消ゆ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201408
煌々と流燈百が堰を落つ 久保東海司 201409
流燈を送る歩みとなりゐたり 久保東海司 201410
流灯の横すべりしてほめき消ゆ 豊田都峰 京鹿子 201410
流灯のもつれし二つ妹と弟 深川敏子 春燈 201410
流灯のおのがあかりの水うねり 豊田都峰 京鹿子 201410
流灯のうしろは風の闇ばかり 石橋邦子 春燈 201411
流燈の一つが渦を抜け切れず 池田崇 201411
浮き沈みして流燈の行方かな 武藤嘉子 201411
流灯会水面暮色のはじまれり 三木千代 201411
流灯に此の世の波の加減せず 密門令子 雨月 201411
被爆川万の流燈漂へり 川村欽子 雨月 201411
ご詠歌の大音量の流灯会 福島せいぎ 万象 201412
流灯のひしめき合へり細小川 菅野日出子 末黒野 201501
流灯の娘の霊明り潮に置く 竹下陶子 ホトトギス 201502
手の念珠うかぶ流灯置きにけり 竹下陶子 ホトトギス 201502
原爆の聖霊くだる流灯会 竹下陶子 ホトトギス 201503
流灯→2      

 

2021年8月27日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。