煮 凝 1    100句

煮凝や親の代よりふしあはせ   森川暁水   黴

作品
作者
掲載誌
掲載年月
煮凝の舌のあしらふ鱗かな 庄野千寿 銀化 199902
中年のただならぬ身や煮凝れる 藤村真理 199903
仄聞は財ともならず煮凝れり 大場佳子 銀化 199903
煮凝や奥の座敷に祖父病めり 太田誠 春耕 199903
煮凝や裏返しなる愛と憎 今西昭道 風土 199904
煮凝をゆらし大魚の夢さます 金國久子 青葉潮 199907
煮凝に目玉の抜けし虎魚かな 辻享子 ヒッポ千番地 199908
煮凝や時に経読む教師なり 六車幸江 海程 199912
熱々の御飯煮凝溶け初むる 稲畑廣太郎 廣太郎句集 199912
煮凝りはとんと忘れて仕舞ひけり 熊谷みどり いろり 200001
わが娘はや煮凝りは知らぬなり 熊谷みどり いろり 200001
煮凝の魚の目にある白き海 鈴鹿仁 京鹿子 200001
煮凝は夜の潮鳴りと共にあり 吉井幸子 200002
煮凝や燈台ともり闇生る 皆川盤水 春耕 200002
晩年は煮凝り泳ぐ二本足 山田六甲 六花 200003
煮凝や長屋住居に在す母 佐々木孝子 200003
煮凝に透きて呉須絵の山河かな 山田弘子 円虹 200004
煮凝やぷるんと星座盛り上る 白澤良子 200004
煮凝や漁師町なる我が生家 中川悦子 酸漿 200004
煮凝やはろかなものに子守唄 岡本眸 200004
煮凝や片側の鰭天に向き 竹内悦子 200005
煮凝りのごと赤煉瓦館の昼 東莎逍 船団 200008
煮凝や山伏宿の煤け梁 皆川盤水 春耕 200010
煮凝やきのふの約はご破算に 和田照海 京鹿子 200101
煮凝やちちははの世が透けてゐる 山田弘子 円虹 200104
煮凝りや舌で押し出す鱗の目 重名逃魚 200105
煮凝ぷるん父の箸動きけり 中島陽華 200105
煮凝の何にもしないという闘争 九堂夜想 海程 200106
煮凝りやゆっくり増える海の嵩 寺田良治 船団 200107
そう云えば煮凝あると独り言 平井奇散人 船団 200112
煮凝を箸に掬ひてゐるつもり 稲畑汀子 ホトトギス 200201
煮凝の絵皿にほどけはじめけり 稲畑汀子 ホトトギス 200201
煮凝や気弱なるとき父偲び 久保田雪枝 雨月 200201
煮凝に加賀の燈崩す噫(あ)といひぬ 中原道夫 銀化 200201
怪し気なものも煮凝るまでのこと 山野みどり 銀化 200201
煮凝やずんずん闇が降りて来る 矢野千佳子 京鹿子 200202
煮凝りに晩酌一本増やしけり 小橋安子 いろり 200203
煮凝の骨身を分つ絆濃き 松田欽吾 雨月 200203
煮凝りのほどけてゐたる波の音 嵯峨根鈴子 火星 200204
煮凝のカスベの軟骨楽しみに 尾崎マチ子 200204
煮凝ややさしくしたき父はなき 水口楠子 百鳥 200204
煮こごりや孫の返信待つ朝 喜多初枝 雨月 200204
煮凝に閉ぢ込められし悪寒なる 華明日香 銀化 200204
煮凝りや亡き父起きしけはひする 仲村青彦 200206
箱根湯本三枚橋にて煮凝れり 宮原みさを 花月亭 200208
煮凝やこれより先は見て盗め 中村房枝 六花 200301
煮凝のどこから箸をつけやうか 栢森定男 あを 200301
煮凝や何か心に湧いてきて 高橋将夫 200302
煮凝りの箸先逃げし万媚かな 宇田喜美栄 200302
煮凝の出番はなくてピザ届く 宇垣みきえ 200302
不満児の煮凝る如く泣き止みぬ 禰寝瓶史 京鹿子 200302
恋人や煮凝舌の上にあり 中島陽華 200303
煮凝りやつまみて眺む鯛のたい 北村香朗 京鹿子 200306
他所者の母は根であり煮凝であり 河西志帆 京鹿子 200306
煮凝のゼラチン描く万華鏡 中島英子 八千草 200307
煮凝と姉に教わる十二才 中島英子 八千草 200307
煮凝やどんぶり勘定の厨事 森一枝 八千草 200307
煮凝を操りつられ塗りの箸 森一枝 八千草 200307
その後のとこの世煮凝る腸と筋 田村みどり 京鹿子 200307
牛肉のうす切りのまま煮凝れる 本山卓日子 京鹿子 200309
煮凝や釣りしままなるめばるの眼 松田欽吾 雨月 200402
煮凝の玻璃の器に沈みゐし 赤座典子 あを 200402
火を入れて煮凝ゆるやかに動く 岡崎桂子 対岸 200403
煮凝や日々好日を楽しめり 赤羽正行 遠嶺 200404
煮凝や卓袱台にある脚四本 深澤鱶 火星 200404
煮凝を好みし夫でありしかな 芝尚子 あを 200404
煮凝やをとこ心を裏返す 富沢敏子 200404
煮凝りの中より入れ歯出できたる 三輪閑蛙 対岸 200404
煮凝や酒の旨さを独り言 宮みさお 百鳥 200404
煮凝りに禁固一夜の鱗かな 泉田秋硯 200405
煮凝を弱火にかけて夫起す 大空純子 ぐろっけ 200405
なまなかに人をゆるさず煮凝れり 沼田巴字 京鹿子 200406
煮凝のかさごは武者の姿せる 内藤ゑつ ゑつ 200411
なかなかに人をゆるさず煮凝れり 沼田巴字 京鹿子 200501
煮凝に酒の蘊蓄始まれり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200502
煮凝や余震なかなか収まらず 大山文子 火星 200502
鱗まで透きとほるほど煮凝りぬ 矢崎昌 200502
煮凝や三人揃ふ兎年 石山惠子 遠嶺 200502
煮凝りとなりて目鯛の朝餉かな 菊池由惠 酸漿 200503
煮凝のぷるんと箸を滑りけり 佐川あけみ 対岸 200503
煮凝りは夫の好物天下泰平 熊谷ゆり 帆船 200503
煮凝を小匙で掬ひ友病めり 甲田雅子 200503
煮凝や久びさに寄る赤提灯 佐々木薫 帆船 200504
海外へ発つ子煮凝所望せり 山本漾子 雨月 200504
煮こごりの箸逃げ弱気誘はるる 乗光雅子 雨月 200505
兄にありけり煮凝と三国志 山尾玉藻 火星 200601
金目鯛の煮凝贅に誕生日 伊藤京子 200602
母とゐて同じ話と煮こごりと 河崎尚子 火星 200602
煮凝や鯛の目玉の銀色に 宇佐美ゆき 酸漿 200602
煮凝の六面体の中に宙 延広禎一 200604
煮こごりや帰りの遅き夫を待ち 熊谷尚 200605
煮凝や亡父がまたも夢に出て 赤木真理 ぐろっけ 200605
煮凝りの目玉離れてありにけり 武田和代 百鳥 200605
煮凝の箸の先にて踊りけり 清水和子 酸漿 200605
煮凝の舌に崩るる香りかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200612
煮凝や凡婦のままに五十年 岡田和子 馬醉木 200703
心中の煮凝とけてゆきにけり 高橋将夫 200703
煮凝や母に訊きたきこと今に 落合絹代 雨月 200705
煮凝の魚らここから旅立たん 北川美美 200705
煮こごり買ふ土地の一角買ふ如く 金井充 百日紅 200711
煮凝のぷるぷるをまづ頂きぬ 鈴木榮子 春燈 200801
蘊蓄を短く述べて煮凝ぞ 山崎祐子 万象 200803
煮凝や月面からの水の星 玉川悠 遠嶺 200803
煮凝りや夜道をずつと抜けて来て 青山丈 200803
朝餉にて夫と煮凝り分ち合ふ 中川悦子 酸漿 200804
煮凝は母の味へとかはりをり 荒幡美津恵 遠嶺 200804
煮凝りをひと掬ひして朝の飯 久世孝雄 やぶれ傘 200805
煮こごりに魚の粗買ふ日暮かな 山田六甲 六花 200812
煮凝は一口がよい父の言 安部里子 あを 200901
煮凝や鰈全きうらおもて 水原秋櫻子 馬醉木 200902
煮凝りを食ふ忘れもの取りに来し 丹沢亜郎 炎環 200902
越前の厨もろとも煮凝れる 戸田春月 火星 200903
煮凝や到来物の魚の目 芝宮須磨子 あを 200903
煮凝の濃き琥珀色母遠し 西面和子 200904
煮凝やダム湖の底に自我の木々 大島翠木 200904
煮凝に魚の夢の溶けてゐる 安居正浩 200904
煮凝の出来て新居に惚れなほす 磯崎清 200905
煮凝の崩れそめたる白磁かな 黒川俊郎 200908
煮凝りや畳に響く日本海 岩木茂 風土 201001
煮凝や頑張らなくともよき齢 割田容子 春燈 201002
煮凝や父への思巡らせつ 設楽唱子 酸奬 201002
箸すべる煮凝に透き幼き日 北岸邸子 春燈 201003
留守たのむ夫に煮凝鱏ひらめ 佐藤美紀 ろんど 201004
煮凝は残りの福の昼餉かな 棗怜子 春燈 201004
煮凝や夫と二人の夕灯 川崎雅子 春燈 201004
煮凝りや会津塗り箸光り合ふ 及川照子 末黒野 201004
煮凝や頑固もいまは好好爺 倉橋あつ子 京鹿子 201005
煮凝を食べて悪女になりすます 佐々木紗知 京鹿子 201005
煮凝や鰭をしゃぶる癖のあり 葉山彰 ろんど 201005
煮凝のかなたに山脈つづきげり 梶浦玲良子 六花 201005
煮凝のへろへろ震ひゐる時間 岩垣子鹿 ホトトギス 201006
煮凝やはみ出してゐる憤り 楠原幹子 201102
煮凝や傘寿といふを一つ越え 高木千鶴子 酸漿 201102
煮凝の魚の眼にあるきのふかな 熊川曉子 201103
女より女よく知り煮凝れり 松田都青 京鹿子 201103
煮凝や月のあかりの台所 田中文治 火星 201103
煮凝や今宵ひとりの餉を早く 竹内悦子 201104
煮凝をつつくやどうにもならぬこと 近藤公子 201104
煮凝りのやうな海凪日本海 岸田爾子 201104
煮凝の危ふき揺れの納まりぬ 小林朱夏 201104
煮凝や微動だにせぬこころざし 鴨下昭 201104
煮凝りの中は灼熱かもしれぬ 松田都青 京鹿子 201104
煮凝と地酒を提げて熊野より 山本漾子 雨月 201104
間八の煮凝美味で淡白で 山本漾子 雨月 201104
煮凝りの山河の如き鯛の骨 森岡正作 201104
煮凝や昔の祖母はよく叱り 岩永充三 201104
煮凝の鯛重たげな瞼かな 阪本哲弘 201105
煮凝の燭に動きし目玉かな 塩路五郎 201202
煮凝やとんがつて来し波の音 荒井千佐代 201202
煮凝と骨湯が好きで疎まるる 田中貞雄 ろんど 201203
煮凝りの腮のあたりの呼気吸気 雨村敏子 201203
煮凝の鰈を好む母なりし 紅谷芙美江 万象 201203
煮凝に目玉なきこと恐れけり 定梶じょう あを 201203
煮凝りの鍋の丸味をくづしけり 根橋宏次 やぶれ傘 201203
煮凝に病後の五感目覚めける 鈴木照子 201204
煮凝の半透明の世界かな 宮田香 201204
煮凝りや明日へと絆深めける 池田光子 201204
煮凝の朝餉まぶしき琥珀色 近藤ともひろ ろんど 201204
煮凝りに過去閉ち込めて見たものの 園部早智子 ろんど 201204
煮凝に一夜の闇の詰まりをり 柴田佐知子 201205
煮凝や父のゐさうな縁の椅子 有本惠美子 ろんど 201205
兜煮の煮凝りゆるる余寒かな 豊美佐子 万象 201206
煮凝りの中で語るは悔ならん 松田都青 京鹿子 201206
煮こごりや婚六十年の縁あり 酒井秀郎 返り花 201211
夫覚ますごとく煮凝揺らしけり 山尾玉藻 火星 201212
烏骨鶏の煮凝といふ琥珀色 中根美保 風土 201301
煮凝のはじから溶ける介護論 関根揺華 201302
煮凝りになりて喜ぶ女房どの 橋本修平 かさね 201302
煮凝りや暁雲溶けるひとところ 栗栖恵通子 201302
煮凝や兄弟寄れば母のごと 吉田葎 201302
煮凝の溶けて呪縛を解かれけり 森下康子 201303
煮凝の中に眠れる源五郎鮒げんごろう 小川滋 やぶれ傘 201303
煮凝りを好みしははの忌の近し 鈴鹿百合子 猫贔屓 201305
干し魚の煮凝り透ける小正月 田中一美 ろんど 201305
煮凝やテレビが天変地異言へる 山田美恵子 火星 201402
煮凝りやお国ことばも煮凝りて 千田敬 201402
煮凝を喜びし母遥かなる 鈴木良戈 201402
煮凝や杜の教への出刃の研ぎ 成田美代 201402
天窓の明かりが鍋の煮凝りに 安藤久美子 やぶれ傘 201403
煮こごりの揺れる固さでありにけり きくちきみえ やぶれ傘 201403
煮凝や温度差のある夫と妻 村田岳洋 ろんど 201403
煮凝や使ひ古しの夫婦箸 足立良雄 201403
煮凝や恋かも知れぬもの如何に 石田きよし 201403
煮凝に翻弄さるる箸の先 北岸邸子 春燈 201404
煮凝りやダリの時計の崩れつつ 中村洋子 風土 201404
煮凝りや箸にかからぬひとり言 熊川暁子 201404
煮凝りに注文多き兄なりし 土屋実郎 末黒野 201405
煮凝に染まりゆく炊きたての飯 稲畑廣太郎 ホトトギス 201501
煮凝や三十年を連れ添うて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201501
煮凝を前にけんくわの収まりぬ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201501
煮凝りやをりふしに恋ふ母の味 神戸京子 ろんど 201502
煮凝やこまごまとある母の文 吉田葎 201503
煮凝や大阪弁の丙午 鈴木みのり 201503
煮凝のきらんぷるんと朝ごはん おーたえつこ 201503
煮凝や夜の底なる鮒の黙 西郷慶子 201503
煮凝や過去も未来も茫々と 森岡正作 201503
煮凝りは母の背より学び造る 東秋茄子 京鹿子 201504
煮凝や直言にあるほろ苦さ 吉田政江 201504
煮凝や一人暮しの長き母 小林朱夏 201504
煮凝 →2      

 

2021年2月1日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。