桃 5  (水蜜桃・白桃)  200句

病巣のしきりに桃を欲しけり   長谷部朝子   暖流

作品
作者
掲載誌
掲載年月
小さき兄に指吸ひ胼胝や桃ゼリー
鈴木照子
200909
バラードの風に完熟夜の桃
森永洋子
200909
熟したる桃の産毛のやさしかり
ことり
六花
200909
白桃に刃を入れて子をときめかす
遠藤真砂明
200909
たなごころとは白桃を愛づる位置
辻直美
200909
夫とゐて母亡き桃を吸うてをり
池田光子
風土
200910
丸齧りしたき白桃玉蜀黍
植田利一
春燈
200910
仏壇の早桃のかをり厨まで
宮崎知恵美
万象
200910
亡き妻の遺影に供ふ桃二つ
藏本博美
ぐろっけ
200910
捥ぎたての桃に頬よす床の友
島純子
ぐろっけ
200910
桃の香の箱よりあふれ届きたり
秋千晴
200910
桃の実に生まれてももになれぬ実よ
吉村はづき
炎環
200911
桃の香や世界の時間みな違ふ
中嶋憲武
炎環
200911
幾山を越え来て求む甲斐の桃
吉田きみえ
末黒野
200911
文机に淡き香りや夜の桃
寺田すず江
200911
爪立てて疵なき桃をしたたらす
東良子
遠嶺
200911
かたちよき桃をいびつに描きにけり
三上程子
春燈
200911
白桃むく青春の香をしたたらし
上原重一
200911
桃の実やまこと大和は美し国
山田春生
万象
200911
白桃の内側に色ためてをり
菅谷たけし
200911
桃すする山にガス湧く盆地かな
及川木栄子
200911
大桃に鶏冠のいろのひとところ
深澤鱶
火星
200911
仄ひかる白桃庵主さまは留守
山田美恵子
火星
200911
水蜜桃己が重みに疵つきぬ
樋口英子
200912
捥ぎたてと信州の桃もらひけり
上林富子
やぶれ傘
200912
兀々とぬくぬくと桃の実食む
小形さとる
201001
ヴィーナスの誕生うす紙ぬぎし桃
近藤喜子
201001
水に浮く白桃産毛ひからせて
國保八江
やぶれ傘
201002
前の世はをとこでありし桃を喰ふ
鍵和田子
201004
白桃の垂れし花に蝶のをり
岡田麻枝
酸漿
201006
信玄公祭を明日に桃受粉
海上俊臣
酸漿
201007
曇り空桃のスープを堪能し
鷲見たえ子
201009
つくづくと夫亡き十余夜の桃
徳田千鶴子
馬醉木
201009
イントロは始まつてをり桃の夜
近藤公子
201009
まぎれなく指の跡より桃傷む
布川直幸
201009
冷やし桃友に会ふのも久しぶり
筒井八重子
六花
201009
やんはりの香を放ちをり夜の桃
和田郁子
201011
桃剥くやその肌ざわり少女めき
塩路五郎
201011
今朝届く桃の手ざはり故郷の香
池田加寿子
201011
白桃の水に打たれて光りをり
小林リン
春燈
201011
桃を食ぶ証の匂ひ懇ろに
戸田澄子
末黒野
201011
白桃の核吐き出して反論す
泉田秋硯
201011
桃貰ふ生毛の光る少女より
山中宏子
201011
病む人の頬に移さむ桃の紅
宮入河童
201011
白桃に海の匂ひも水音も
雨村敏子
201011
白桃やみづうみに水満つるとき
橋本順子
201011
桃すするどこか小暗き思ひかな
柴田佐知子
201011
桃の実や向かふの正面灯の暗し
井上信子
201011
やはらかい時間のなかで桃を剥く
柴田朱美
京鹿子
201011
黄桃の甘さ分かつや亡き夫と
杉本綾
201012
桃啜る漢無防備なる背中
中田禎子
201012
白桃の無垢の手ざはり供へけり
小澤利子
201101
白桃を剥いて優しき掌となりぬ
吉村摂護
201101
白桃を剥けばしづくや澄雄逝く
鶴巻誉白
ろんど
201101
白桃の絵のひび割れてゐたりけり
市川千晶
風土
201107
声帯の若くならむと桃を剥く
甲州千草
201108
白桃をすすり構への無くなりぬ
山崎靖子
201109
原発怖し爪の瑕より桃傷む
布川直幸
201109
桃の実にある赤みやら産毛やら
きくちきみえ
やぶれ傘
201109
白桃の珠玉の滴り丸囓り
木村茂登子
あを
201109
白桃を剥いて全し誕生日
生田恵美子
風土
201110
白桃や一気に剥きてすつぽんぽん
中島玉五郎
201110
桃の香の仏間に残り送り盆
石田朝子
末黒野
201110
水蜜桃すすり細胞若がへる
宮内とし子
201110
桃を食ぶ甲斐を丸ごといただきぬ
清水佑実子
201110
桃剥きし母の指跡桃にあり
松井洋子
ぐろっけ
201110
臨月の友堂々と桃を食む
石川かおり
201111
豊饒の刻のしたたり白桃に
渡邉千枝子
馬醉木
201111
白桃のはだヘナイフを拒みたり
大坪景章
万象
201111
合掌し剥く白桃のやさしさよ
大坪景章
万象
201111
福島の桃のごとくに孫の尻
荻龍雲
201111
駄句六句まあまあ三句桃一つ
菊池和子
京鹿子
201111
かぶりつく桃幸せの汁溢る
今井岩夫
ろんど
201111
白桃の刃に水の馳せにけり
藤生不二男
六花
201111
掌にとりし桃の産毛や嬰の頬
藤見佳楠子
201112
胸に棲む人に白桃むきにけり
久米憲子
春燈
201112
泣きにゆく母なく桃の水はじく
直江裕子
京鹿子
201112
どの指もやさしくなりて桃を剥く
能美昌二郎
201112
白桃や戦生きぬき来しふたり
佐藤美紀
ろんど
201112
白桃の籠さげて乗る始発かな
石脇みはる
201112
触るなよ白桃は息ひそめをり
竹内悦子
201112
渡されし桃の実握り潰しけり
ことり
六花
201112
桃剥くや流しに汁の落つる音
ことり
六花
201112
一見は打ち身の多き桃なりき
志方章子
六花
201112
死は条理生は不条理桃剥けば
定梶じょう
あを
201112
白筆と硯の脇の夜の桃
近藤きくえ
201201
白桃や柔の果肉に剛の種
小林朱夏
201204
今生れし如き白桃届きたり
須賀充子
パミール越え
201206
白桃をひと切れ食みて母逝けり
須賀充子
パミール越え
201206
白桃を食めば聞こゆる母の声
須賀充子
パミール越え
201206
昨日桃今日はメロンと贅沢な 大橋敦子 雨月 201208
一点の瑕疵なき桃に刃を当てる 史あかり ぐろっけ 201209
今生の幸せに食ぶ白桃よ 大橋敦子 雨月 201209
紺青の空仰ぎつつ食ぶ桃 大橋敦子 雨月 201209
口にして口中まろばせゐたる桃 大橋敦子 雨月 201209
最上の桃と賜ばりて勿体なし 大橋敦子 雨月 201209
桃啜る少女産毛を輝かせ 塩路隆子 201209
しかうしておのが重さに桃傷む 服部早苗 201210
桃実る名をちよひめと申したる 青山正生 201210
愛でをれば傷つきやすき水蜜桃 村上倫子 201210
桃を剥く桃のかたちに逆らはず 林昭太郎 あまねく 201210
桃食べて二歳児に殖ゆ好き嫌ひ 湯橋喜美 201210
手に包む水密桃を慈しみ 中井登喜子 201210
前庭に桃たわわなる空家かな 松下八重美 201211
ひよめきや白桃の皮そろそろ剥く 大島翠木 201211
白桃にいつを昔と母の味 川井秀夫 ろんど 201211
起きぬけに桃吸うてゐる生身魂 城孝子 火星 201211
白桃売りの声いつしかに遠ざかる 浜口高子 火星 201211
しづかなる鬱白桃に漂ひぬ 大島翠木 201211
赤ん坊に湯浴さすごと桃洗ふ 亀卦川菊枝 末黒野 201211
白桃のゆたかな重み敗戦忌 米山のり子 馬醉木 201211
宝物のごと仏壇に桃を置く 山内碧 201212
夜の桃ほのかな老いの匂ひする 直江裕子 京鹿子 201212
胃瘻といふ命の支へ桃香る 田代貞枝 201301
桃割れに簪の綺羅一の午 布川直幸 201301
少し泣く月桃の実の赤きゆゑ 前田貴美子 万象 201301
家中が桃のかをりに染まりけり 石井一石 京鹿子 201301
刃を入るるより滴りとなりし桃 山田佳乃 ホトトギス 201302
海中に夜の降り来て桃の皮 水野恒彦 夢寐 201306
雲南の桃の大きが国宴に 江見悦子 朴の青空 201307
念仏の染みたる桃を剥きにけり 山尾玉藻 火星 201309
甘さうな水蜜桃といふ言葉 天谷翔子 201310
蛇口より桃のかたちに水すべる 織田高暢 201310
抱かれに来し子の水蜜桃の息 山田美恵子 火星 201310
桃喰むや今そのことの他は無し 高村令子 風土 201310
大安の日や白桃の掌に重し 有本惠美子 ろんど 201311
白桃や自註加ふる要のなし 田中貞雄 ろんど 201311
桃すする桃の様なる幼の手 三浦澄江 ぐろっけ 201311
ははそばのははの昔を桃啜る 荒木甫 201311
大神も悪魔も好む桃を食ぶ 有松洋子 201311
桃うつとりしてゐて袋はがされし 浜口高子 火星 201311
廃校に桃の一本袋掛 小川明美 万象 201311
科つくる男ありけり水蜜桃 亀井紀子 201312
両の手にあふるる重さ水蜜桃 樺山翠 雨月 201312
弁解はすまじ白桃啜りけり 田嶋洋子 春燈 201312
帯解けば大蛇のごとし夜の桃 亀井紀子 201401
船酔いに似たり水蜜桃を抱き 渋川京子 201401
捻つて捻つてヨーガのポーズ桃ゼリー 辻響子 201409
忽ちに華やぐ燈火桃置けば 定梶じょう あを 201409
箱の桃赤子包むがごとくなり 小林久子 201410
白桃や遥かなる山見て飽かず 内海良太 万象 201410
白桃に乳房の丸味ひとを恋ふ 上原重一 201410
到来の桃一つづつ確かむる 今井春生 201410
桃食べてほとほと濡らす老いの指 村上倫子 201410
桃の香をほのかに詰めて袋掛 住田千代子 六花 201410
ひとときの二人に匂ふ巨き桃 和田政子 201411
白桃を一つ取り出す怖さあり 齊藤實 201411
独り夜の重さのがれて桃をむく 田代貞枝 201411
白桃の届きし夜の波羅蜜多 竹内悦子 201411
白桃のひかりを吸ひし重さかな 有松洋子 201411
白桃を齢不明の人と食ぶ 佐々木紗知 京鹿子 201411
思はざる重さありけり水蜜桃 加藤季代 万象 201411
マニキュアの指先を立て桃を剥く 塩見英子 雨月 201411
桃の生ぶ毛うつらうつらと伊達郡 堀内一郎 堀内一郎集 201412
白桃を水の重さと思ひけり 天谷翔子 201412
佛壇に増えゆく写真桃匂ふ 酒井みち子 201412
白桃をひとりすすりて虚心なる 折橋綾子 201412
白桃を水の重さと思ひけり 天谷翔子 201412
水蜜桃嬰の湯浴みのごと洗ふ 山口ひろよ 201412
白桃をすする唇濡れしまま 藤生不二男 六花 201412
桃の芯充血八月十五日 堀内一郎 堀内一郎集 201412
白桃に刃を入れ夜をしたたらす 樋口英子 201501
桃の香や母へと時を押し戻す 近藤喜子 201501
桃の実は意識の流れさかのぼる 高橋龍 201505
仏壇のあかりのやうに桃ひとつ 天谷翔子 201505
うす紙をはがすが如く桃をむく 久保東海司 201509
山桃や誰にも言はず身籠りぬ 伊藤希眸 京鹿子 201510
夜の卑弥呼桃のしづくを唇に受け 有松洋子 201511
わが一語白桃のごと実れかし 有松洋子 201511
桃の汁指に携帯着信す 松本三千夫 末黒野 201511
桃の実や被り吸い付き嘗め回す 溝渕弘志 六花 201511
雲うすく広がつてくる桃捥ぐ 柴田佐知子 201511
桃をむく考へ事は端に置き 田代貞枝 201511
白桃の香りで覚むる午睡かな 犬丸勝子 201511
白桃にうす紅の傷一つ 安居正浩 201511
白桃もひとの輪廻に加へたき 宮崎洋 春燈 201512
白桃やうわべの傷に見えぬ恋 鈴鹿呂仁 京鹿子 201512
桃畑ダムの水位の充ちてゐる 中島悠美子 京鹿子 201512
白桃やそのまま夜を深うせり 水野恒彦 201512
初産の母よ白桃召し上がれ 雨村敏子 201512
身の火照り桃に伝はつてはならぬ 近藤喜子 201512
桃瓦鍾埴瓦や鰯雲 竹中一花 201512
白桃のきれいにむけて綾子の忌 山田春生 万象 201512
枝付きの北限の桃貰ひけり 小松敏郎 万象 201512
白桃をすすり父祖の地近うせり 菅野日出子 末黒野 201512
感傷という薄き皮剥けば桃 種田果歩 201512
白桃のつかみどころのなき不安 菊池和子 京鹿子 201601
桃熟るる黒光りして箱階段 本郷公子 京鹿子 201602
白桃を手で剥いてをり押し黙る 松田泰子 末黒野 201602
桃を剥く手を見られいて友の家 池田澄子 201602
老人の頭の中で桃傷む 岡田一夫 201602
いまのところ平時白桃剥いたりして 池田澄子 船団 201602
桃太る袋のなかの明るさよ 伊藤通明 201603
夕月や脈うつ桃をてのひらに 伊藤通明 201603
桃喰うてしばらく遊ぶ思ひかな 伊藤通明 201603
桃ふたつ浮かべて水がやはらかい 直江裕子 京鹿子 201603
白桃を妻は背中ですすりけり 山田六甲 六花 201608
天馬いまわ太虚に游び桃冷す 水野恒彦 201609
白桃をすすり生命線ぬらす 吉田順子 201610
静けさを絵筆に置くや桃ふたつ 高野春子 京鹿子 201610
白桃を置けりたゆたふ刻のなか 伊藤白潮 201610
桃 →6      

 

2021年8月20日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。