蟋 蟀 3(ちちろ)        100句

酔うてこほろぎと寝てゐたよ    種田山頭火

作品
作者
掲載誌
掲載年月
膝折れば浮腫かすかに夜のちちろ
岡本眸
200610
長編を伏せてちちろに耳を貸す
宮入河童
200611
音合せの如き細音の朝ちちろ
奥村鷹尾
京鹿子
200611
降る前の山ちかづき来ちちろ虫
丸山照子
火星
200611
寝支度に寄り添ふごとくちちろ鳴く
村越化石
200611
徹宵の友やちちろと鉦叩
水原春郎
馬醉木
200611
震災の更地手つかずちちろ鳴く
博多永楽
雨月
200611
種蒔畑遠くでちちろの鳴くは良し
島崎勇作
酸漿
200611
仕舞風呂はやちちろ虫すだきをり
渡辺寿美子
酸漿
200611
積まれたる蛸壷みんなちちろ飼ふ
泉田秋硯
200612
灯を消してこほろぎと夜を共にせむ
駒井のぶ
200612
まどろみの中へ聞ゆる昼ちちろ
岡本敬子
万象
200612
悼む文書けば鳴き出す夜のちちろ
藤岡紫水
京鹿子
200612
蟋蟀のふと止む闇の北枕
丸井巴水
京鹿子
200612
独り住む靴に蟋蟀入らしめて
鈴木榮子
春燈
200612
蟋蟀の入り込みたる脳裡かな
高橋将夫
200612
蟋蟀のころころ闇を丸くせり
犬塚芳子
200612
蟋蟀の鳴くや夜空の高くあり
岩月優美子
200612
からつぽの島の兵舎やちちろ鳴く
小阪喜美子
遠嶺
200612
碑の低き分校跡にちちろ鳴く
今井忍
ぐろっけ
200612
決め難き終の栖やちちろ鳴く
山本浪子
風土
200612
寝そびれし夜半に鳴く音やちちろ虫
井上幸子
酸漿
200612
画かれてこほろぎの四肢たしかなり
木村茂登子
あを
200612
平凡に生くる齢やちちろ鳴く
道給一恵
遠嶺
200701
蟋蟀のひそみて土間の俵機
今越みち子
万象
200701
師在さぬ千里丘陵ちちろ鳴く
加藤北天
雨月
200701
かたりべの稗田阿礼もちちろかな
山中志津子
京鹿子
200701
痰を取る看取りの妻やちちろ鳴く
今井忍
ぐろっけ
200701
こほろぎや家へ百歩の上り坂
関戸国子
酸漿
200701
われになきこの蟋蟀の一途な眼
市場基巳
200702
子規庵の冬のこほろぎ鳴いてみよ
岩淵彰
遠嶺
200702
捨てきれぬものを焚きをりちちろ鳴く
内山けい子
200702
こほろぎの声に囲まれ暮るる畑
関戸国子
酸漿
200705
今生のいまを忘れてちちろ聴く
佐藤國夫
馬醉木
200706
こほろぎの減りゆく聲の冴えにけり
瀧春一
200706
拗ねたよに昼のちちろの声やまず
遠藤実
あを
200709
蟋蟀や諭すつもりはなけれども
小林朱夏
200711
昏れ際の通り雨すぎ初ちちろ
府川みよ子
200711
蟋蟀売る回族の籠毬めけり
手嶋小夜子
200711
籠の虫庭のちちろと鳴き合へり
中江恵子
200711
研ぎ澄ます大脳皮質初ちちろ
天野きく江
200711
ちちろ鳴く赤膚焼の窯の闇
近藤きくえ
200711
熟すまで言葉寝かせてちちろの夜
北川英子
200711
ちちろの夜つくづく夫の無精髭
千田百里
200711
愛に渇きこほろぎひとつ土間に鳴く
渡邉友七
あを
200711
草一本なき厨裏ちちろ鳴く
五十嵐光郎
200712
こほろぎの一声のこるあしたかな
四條進
200712
ちちろ鳴く庭に落とせり独り言
中村悦子
200712
しみじみと蟋蟀を聴く湯船かな
平照子
酸漿
200712
留守らしき楽器工房ちちろ鳴く
菊池由惠
酸漿
200712
暗闇の足許ちちろ跳び立てり
池崎るり子
六花
200712
蟋蟀の声に聴きゐる夕べかな
筒井八重子
六花
200712
雨つぶは光の粒や朝ちちろ
若槻妙子
200712
よきこゑのこほろぎのこと文結ぶ
亀ヶ谷照子
遠嶺
200801
うちそとを結ぶ夜なりちちろ虫
浜田はるみ
遠嶺
200801
庭闇のちちろの声に眠りけり
木野本加寿江
火星
200801
蟋蟀に呼び止められて独り旅
森津三郎
京鹿子
200801
唐門は勝者の悔悟ちちろ虫
丸井巴水
京鹿子
200801
昼ちちろ戸籍いちまい消しにゆく
村田冨美子
京鹿子
200801
晩学の鉛筆削る夜のちちろ
山田正子
200801
ちちろ鳴く灯ともし頃といふ刻の
野路斉子
200801
うかららのけふ川の字に夜のちちろ
飯塚ゑ子
火星
200802
湯加減はいかがですかとちちろ虫
府川房江
母の空
200808
こほろぎの卓に小さき影を置く
阿部文子
酸漿
200810
寝に帰る人をねぎらふちちろ虫
村越化石
200810
建て替へし家にふたたびちちろ虫
竹内悦子
200811
生き抜けし夏ぞも今宵初ちちろ
木村風師
馬醉木
200811
ちちろ鳴く家の内外定かならず
大橋晄
雨月
200811
蟋蟀に鼾混じつてゐたりけり
宇佐見正
200811
微睡の中へそろりと初ちちろ
宮島宏子
200811
気心の知れゐて黙すちちろ虫
清水節子
馬醉木
200812
調理場にこほろぎの棲む定休日
宇佐見正
200812
四日鳴くちちろ風呂の湯荒づかふ
宇都宮敦子
200812
仰天のニュース続く世ちちろ鳴き
能勢栄子
200812
ちちろ虫七味切らしてしまひけり
添田勝夫
炎環
200812
ちちろ住む闇にやすらぎ眠りけり
柴田靖子
200812
父記す母の終焉ちちろ鳴く
岸本久栄
雨月
200812
遣り残すことまだ多しちちろ鳴く
米原秋城
雨月
200812
非常階段下りてちちろのちぎり鳴き
稲葉ちよこ
風土
200812
蟋蟀の息切れしている露地の奥
藏本博美
ぐろっけ
200812
ちちろ鳴く駅のホームの喫煙所
戸栗末廣
火星
200812
こほろぎの鳴きとほしけり夜の底
岡和絵
火星
200812
茶銘聞くころあひ不意にちちろ虫
木村美猫
ぐろっけ
200901
蟋蟀のソロ演奏に聴き入りぬ
藏本博美
ぐろっけ
200901
野点筵茶筅振る音か蟋蟀か
荻野千枝
京鹿子
200901
終点が始発の駅にちちろ鳴く
仲井多美江
京鹿子
200901
草むらの上に積み砂利ちちろ鳴く
大島英昭
やぶれ傘
200901
雨の夜のくつろぎにゐるちちろかな
白石正躬
やぶれ傘
200901
秩父路の神庭かにわ洞穴ちちろ鳴く
萩原渓人
やぶれ傘
200901
ちちろ虫一升瓶のワイン開け
萩原渓人
やぶれ傘
200901
荒積みの石材が好き昼ちちろ
丸井巴水
京鹿子
200902
フォーマルなぎすと野良着のちちろかな
貝森光洋
六花
200902
こほろぎの夜を読み耽る机あり
三輪満子
ホトトギス
200903
蟋蟀の声に炊事場暮れ初めぬ
藏本博美
ぐろっけ
200903
蟋蟀のひねりを入れて飛びにけり
KOKIA
六花
200903
蟋蟀の声を楽しみ寝につけり
滝沢伊代次
万象
200908
あきらめてよりの月日やちちろ虫
八田木枯
晩紅
200908
蟋蟀を聴いて開店準備かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200909
いつ乗車せしか座席のちちろ虫
杉良介
200909
息長きことを競ひて蟋蟀鳴く
伊藤敬子
200910
蟋蟀→ 4      

 

2021年9月13日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。