蚊帳/蚊屋 1     100句

つりそめて水草の香の蚊帳かな    飯田蛇笏

作品
作者
掲載誌
掲載年月
青蚊帳に少年のごと目覚めけり
古屋元
199809
遊廓のあとの旅篭や蚊帳を吊る
塚本務人
京鹿子
199811
レースの蚊帳にヘッドメイクの蘭撒かれ
安井和子
199906
蚊帳の中たちまち家族濁るなり
岡崎るり子
銀化
199908
母衣蚊帳の記憶も雨の松の木も
梅田津
銀化
199909
曲屋に青蚊帳吊りて教師なり
岸のふ
馬醉木
199910
わが宿の蚊帳吊りし釘残りゐる
能村登四郎
200005
夢ざはり悪しごはごはの蚊帳にゐし
中原道夫
銀化
200007
蚊帳たたむ術を話題に寝落ちけり
塩路隆子
精鋭選集
200008
蚊帳ぬちに火を曳く螢見しは何時
林翔
200009
展げ得ぬ四肢蚊帳中に母といふ
中原道夫
銀化
200009
目覚めたる刻はいつでも蚊帳の外
大場佳子
銀化
200010
青蚊帳に思春期があり山の音
内田利之
海程
200012
蚊帳吊って体験旅行児鎮めけり
泉田秋硯
月に逢ふ
200103
猫の子がほたえ回るや蚊帳の中
平井奇散人
船団
200106
青蚊帳のぢぢばば疾うにをらぬひと
行方克巳
知音
200108
佛壇の扉があひてゐる蚊帳の外
佐藤喜孝
あを
200109
青蚊帳を一本道の出でゆきし
佐藤喜孝
あを
200109
蚊帳の中息づくものの気配かな
石川千津子
銀化
200110
青蚊帳に天地の生れ父と母
芝尚子
あを
200110
あるときは蚊帳ふくらみて帆となれり
後藤志づ
あを
200110
早々と蚊帳の吊られし妻の実家
篠田純子
あを
200110
わが宿の蚊帳吊りし釘残りゐる
能村登四郎
羽化
200110
櫃の底嫁入り蚊帳も眠りおり
佐々木スガ子
ぐろっけ
200111
サバンナのロッジ蚊帳吊り聖書置き
江木紀子
雨月
200205
蚊帳吊つて開け放ちたる夜も遠し
稲畑汀子
ホトトギス
200206
峡宿の蚊帳ももてなしなりしかな
稲畑汀子
ホトトギス
200206
蚊帳吊るを手伝ふ背丈足らぬ子よ
稲畑汀子
ホトトギス
200206
子育の今は遥かとなりし蚊帳
稲畑汀子
ホトトギス
200206
蚊帳の裾三角四角出入口
稲畑汀子
ホトトギス
200206
蚊帳吊つて弐萬海哩の入口に
村上瑪論
銀化
200208
今は無き生家の夢の青き蚊帳
田中藤穂
あを
200208
この日和蚊帳の別れを早めしと
稲畑廣太郎
ホトトギス
200209
蚊帳吊つて波音暗くなるばかり
篠原俊博
銀化
200210
今生に繋ぎ止めたる蚊帳の環
志麻茜
銀化
200210
朝すでに藻屑となりし母衣蚊帳よ
八田木枯
晩紅
200308
蚊帳の環ふれあふ伊勢の澳辺かな
八田木枯
晩紅
200308
端切れ屋に蚊帳のはぎれも八月尽
阿波谷和子
雲の峰
200310
蚊帳のなか時空にひづみありにけり
高橋将夫
200408
あやす子の顔うすみどり蚊帳の中
須賀敏子
あを
200408
蚊帳の海酸素ボンベの切れてけり
山田六甲
六花
200409
戰死して蚊帳のまはりをうろつきぬ
八田木枯
夜さり
200409
蚊帳の中まで亞米利加が燒いてゆきし
八田木枯
夜さり
200409
白蚊帳にきのふの我が死んでをり
八田木枯
夜さり
200409
蚊帳の環かち合ふ伊勢の澳邊かな
八田木枯
夜さり
200409
蚊帳知らぬ娘も母となり外国へ
永田歌子
遠嶺
200410
蚊帳吊らず簾は巻かず心太
高橋将夫
星の渦
200507
蚊帳の中ふとんに泳ぐ子供かな
山田六甲
六花
200508
母衣蚊帳に母子の寝息風渡る
田中藤穂
あを
200510
子が夢を語るや蚊帳の内と外
佐山苑子
遠嶺
200511
日本海の波音枕に蚊帳の宿
佐藤三男
万象
200601
西川の蚊帳も近江の産なりけり
鈴木榮子
春燈
200608
蚊帳のなか昭和の靄ひゐたりけり
田辺博充
200609
母衣蚊帳に育てし子の子遊びをり
長谷川たか子
酸漿
200609
蚊帳吊りの留め具の残る母屋かな
佐藤哲
万象
200610
蚊帳を吊る金具の残る旧家かな
梅原幸子
遠嶺
200610
父と子の将棋対決蚊帳の中
辰巳比呂史
200704
畳まれしまま青蚊帳も歳月も
秋葉雅治
200708
青蚊帳の四角のなかに幼き日
黒澤登美枝
200709
「一二の三!」蚊帳をくぐりし兄妹
河本由紀子
春燈
200710
青蚊帳や残り灯だけを恃みとす
宇都宮滴水
京鹿子
200710
蚊帳吊るや眠くなるまで子が騒ぐ
苑実耶
200711
蚊帳たゝむ自信の腕は祖仕込み
松本アイ
ぐろっけ
200712
寝台に蚊帳の吊らるるジンバブエ
山本愛
200805
幌蚊帳に寝就く赤子の足揃へ
中村輝子
酸漿
200808
蚊帳の裾振つてくぐりぬ遊女木偶
長谷川翠
馬醉木
200810
麻蚊帳に昭和の闇は夜も青き
水野恒彦
200810
蚊帳吊りしフックの残る母の部屋
宮崎知恵美
万象
200810
蚊帳の中鉄腕アトムと寝てゐたり
齊藤實
200810
蚊帳畳むどこか何かをとり違へ
伊藤白潮
200810
深海魚となりて沈めり蚊帳の中
小林朱夏
200811
ナイロビに蚊帳を贈ると僧の発つ
土屋青夢
ぐろっけ
200812
青蚊帳を仕舞ひっきりの天袋
田中藤穂
あを
200909
青蚊帳を「燃えるゴミ」とし捨てにけり
竹内弘子
あを
200909
白蚊帳に替りし夜の裾に遊ぶ
鈴木榮子
春燈
200910
わが庵など何処に蚊帳のありけるか
大橋敦子
雨月
200910
任されて蚊帳をたたむに専念す
齋藤厚子
200910
思ひ出し笑ひ昨日の蚊帳のこと
飯島風花
200910
あの釘は蚊帳釣りしなり仮寓して
定梶じょう
あを
200911
飯台をたたんで蚊帳を吊る子かな
吉弘恭子
あを
201001
麻蚊帳に昭和の闇は青かりき 水野恒彦 201008
足もとに死神すわる蚊屋の中 さのれいこ 春燈 201010
蚊帳吊って源氏の君を待つ気分 山本孝子 ろんど 201010
蚊帳の中児ら戯れて眠気失す 山口キミコ 201011
母衣蚊帳の吾子健やかな寝息たて 中田寿子 ぐろっけ 201109
背のびせし蚊帳に片脚はみ出しぬ 山田六甲 六花 201109
頭を入れてすぐに胴入る蚊帳かな 吉田葎 201110
蚊帳のなか話はむかしその昔 長憲一 201112
頭を入れてすぐ胴入るる蚊帳かな 吉田葎 201205
蚊帳吊りて読みたきものに父の古書 塩路隆子 201209
母衣蚊帳や叶ひし夢のそこはかと 岸本幸 ろんど 201209
長持の奥に見つけし麻の蚊帳 笠井清佑 201210
節電をうたふ事々枕蚊帳 小西和子 201210
ひとりづつ逝きてひとりに蚊帳吊手 あさなが捷 201210
秋の蚊帳唱歌かすかに小諸宿 山内節子 201211
蚊帳くぐる度に叱りし母遠し 酒井秀郎 返り花 201211
青蚊帳へ猫の連れ来る星の影 小田嶋正敏 末黒野 201310
蛍もはらからとなり蚊帳のなか 増田甚平 ろんど 201311
蚊帳 →2      

 

2023年7月21日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

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