枯 野 6     219句

枯野はも縁の下までつゞきをり    久保田万太郎

作品
作者
掲載誌
掲載年月
寂寥とバナナの皮のあり枯野 辻美奈子 201101
病院の廊下の奥の大枯野 森茉明 京鹿子 201101
夫婦杉ひとつとなるる枯野道 守屋井蛙 酸漿 201101
枯野から一目散に猫かへる 佐藤喜孝 あを 201101
遷都祭終はれば枯野広がれり 笠井清佑 201102
余生とやされど枯野に未知の空 渡邊千枝子 馬醉木 201102
枯野来て手拭染めし黄金の温泉 鈴木石花 風土 201102
枯野きて昨日のことは忘じけり 遠山みち子 201102
枯野中いま目つむれば消えさうな 千田敬 201102
一色はどこか明るし大枯野 望月晴美 201102
枯野なほ枯れきれぬ色抱きけり 大橋伊佐子 末黒野 201102
ラジコンの音と機影や枯野原 丑久保勲 やぶれ傘 201102
負ひし子の眠りて重き枯野道 年森恭子 ぐろっけ 201102
枯野行く黒衣姿の山頭火 塩路隆子 201103
放たれて犬は枯野の風になり 中本吉信 201103
夕日差す枯野にわれの影長き 桂敦子 201103
鉄塔の影の全き枯野かな 乙坂きみ子 末黒野 201103
如意棒をひと振りしたき大枯野 近藤きくえ 201103
枯野ゆく我も光の一粒子 近藤喜子 201103
銃眼の視野ことごとく枯野かな 久保東海司 201103
枯野には地球のまはる響きあり 柳川晋 201103
枯野来てうべなふ念怒仏なるを 豊田都峰 京鹿子 201103
枯野来てゆたかな潮の音に逢へり 柳生千枝子 火星 201103
水の上を風さかのぼる枯野かな 戸栗末廣 火星 201103
タクシーを帰して枯野人となる 蘭定かず子 火星 201103
古墳群裾の枯野へ口開く 溝内健乃 雨月 201103
煌めくは星のみ阿蘇の大枯野 栗山恵子 雨月 201103
朱雀門置き蕭条たる枯野 木野裕美 ぐろっけ 201103
その果に海を見渡す枯野かな 山田春好 201104
ひと刷毛や枯野の奥の茜雲 山口裕子 万象 201104
大枯野に踏切りあるや遠き鐘 泉田秋硯 201105
旅人に混む一両車枯野行く 菊池由惠 酸漿 201105
枯野に日あまねき時を愉しめり 成瀬櫻桃子 成瀬櫻桃子俳句選集 201105
枯野ゆくまづしきものの服黒し 成瀬櫻桃子 成瀬櫻桃子俳句選集 201105
父と子と犬の駈け行く枯野原 有賀昌子 やぶれ傘 201106
大枯野君は耳から透きとおる 火箱游歩 船団 201107
かりがねの影落しゆく枯野かな 鈴木千恵子 万象 201109
落ちてくる少女を拾ふ枯野かな 星野早苗 船団 201110
モノレールの影きて止まる枯野かな 山尾玉藻 火星 201112
子もなさず枯野に小さき碑を立てて 品川鈴子 ぐろっけ 201112
いづれゆく道にしあれど枯野行く 呂秀文 春燈 201201
閉山の枯野に長き線路あと 川井素山 かさね 201201
日は入りて墨の色増す枯野かな 米田文彦 かさね 201201
見晴るかす枯野横切る月明かり 丸山酔宵子 かさね 201201
吾一人枯野さまよふ夢の中 吉田博行 かさね 201201
煌々と月のめぐれる枯野かな 長島清志 かさね 201201
会ひに行く日課に枯野道となり 安永圭子 風土 201201
枯野来て学生寮に灯のともる 辻直美 201201
冬枯野大極殿が夕日浴び 笠井清佑 201202
亡びたるものら声あげ大枯野 水野恒彦 201202
とりけもの守る枯野の石佛 石脇みはる 201202
地震なゐ跡の枯野に埋む冊子かな 西村純太 201202
下山道バス停までの枯野人 辻紅葉 かさね 201202
樹には樹の志がある枯野星 鴨下昭 201202
枯野行く晩節風を友として 碇天牛 雨月 201202
枯野着一両電車からつぽに 渡邉美保 火星 201202
枯野行く気魄漲る一輌車 松岡和子 201203
枯野道すこしおくれて私ゐて 武藤嘉子 201203
鴉鳴く身の置き処なき枯野 黒澤登美枝 201203
湯気連れてゆく引売りの枯野人 浜口高子 火星 201203
手鏡の枯野に紅を引くをんな 熊川暁子 201203
草千里とは一枚の大枯野 柴田良二 雨月 201203
大枯野海の真中にゐる思ひ 高倉和子 夜のプール 201203
測量の杭を打ち込む枯野かな 岩下芳子 201204
稽古笛枯野にひびく夕べかな 小林美登里 かさね 201204
樹に凭ればわれも枯野のものとなる 松本三千夫 末黒野 201204
一番星枯野奥行き失ひて 松本三千夫 末黒野 201204
枯野行く他人には見せぬ貌のまま 高野春子 京鹿子 201204
枯野ゆくとき夜盗めく二三人 岩岡中正 ホトトギス 201205
ベルツ水具しひようひようと大枯野 中島陽華 201205
猫好きと枯野の猫に見破らる 青木朋子 201206
いづくへと枯野の上の根なし雲 増田甚平 ろんど 201206
長子たり雨の枯野に独語湧く 田中貞雄 万華鏡 201206
終着駅そこより枯野続きをり 北崎展江 くりから 201209
紫を点じ枯野となりゆけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201211
サーカスが終わり枯野が見えている 木村和也 船団 201212
枯野への一里塚なり花芒 長島清山 かさね 201212
枯野きて切なきまでに愛さるゝ 丸山佳子 京鹿子 201212
いつから此処に居たんだっけか夕枯野 池田澄子 201212
康成の万葉歌碑や枯野道 笠井清佑 201301
枯野とて滅多に踏まじ仏在す 天野みゆき 風土 201301
生きざまは三面六臂枯野人 天野みゆき 風土 201301
ジョギングの見え隠れする枯野かな 笠井清佑 201302
風鳴りの中に海鳴り大枯野 林昭太郎 201302
海坂のあるや枯野の向かうにも 菊川俊朗 201302
大枯野の辺や青きさしもぐさ 浜福惠 風土 201302
岩船寺枯野伝ひに浄瑠璃寺 山田暢子 風土 201302
天敵の目も衰へて枯野原 丸井巴水 京鹿子 201302
風神の居心地の良き大枯野 竹田ひろ子 ろんど 201302
角を振り歩む赤牛大枯野 門間としゑ 末黒野 201302
鉄塔の唸りかすかに枯野原 三枝邦光 ぐろっけ 201302
あれもこれも生きたる証大枯野 石脇みはる 201302
今のわれ枯野漂ふひとりかな 犬塚李里子 201302
湯気たてて枯野の馬となりゐたり 浜口高子 火星 201303
枯野めぐれる全長の翼かな 蘭定かず子 火星 201303
曲屋の残る枯野や南部唄 川井素山 かさね 201303
枯野とはふつと既視感つのるかな 細川洋子 201303
枯野去る枯野にこころ預けては 松本三千夫 末黒野 201303
枯野ゆくSL列車に指定席 山田暢子 風土 201303
枯野行く三塔めぐり斑鳩に 門伝史会 風土 201303
町一つ枯野となれり津波あと 山路紀子 風土 201303
ダンプカーばかり行き交ふ大枯野 山路紀子 風土 201303
本筋の見えてきたりし大枯野 高橋将夫 201303
嶺々はるか阿騎の枯野に日の満ちて 溝内健乃 雨月 201303
枯野来て畏怖もて仰ぐ五大尊 尾崎みつ子 雨月 201303
遠ざかる人枯野へと紛れ行き 宮本俊子 雨月 201303
紙ぶくろ枯野横切るほかは無し 福永尚子 ろんど 201303
夫の背を楯に枯野の向ひ風 神戸京子 ろんど 201303
しばらくは枯野の駅に停まりゐる 大崎紀夫 やぶれ傘 201303
ポケットの中の拳骨枯野行く 片桐てい女 春燈 201304
枯野仏念珠は赤き実となせり 和田絢子 春燈 201304
大枯野水の中まで及びをり 門伝史会 風土 201304
石舞台古墳枯野を統べゐたり 大崎ナツミ 雨月 201304
身を隠す遊びのつづき大枯野 直江裕子 京鹿子 201304
身に浴びぬ枯野の匂ひ日のにほひ 松本三千夫 末黒野 201304
枯野道川に沿ひてはまた離れ 松本三千夫 末黒野 201304
貨車短か前も後も枯野にて 松田泰子 末黒野 201304
枯野原日矢の差したるひとところ 鶴見董子 末黒野 201304
ひとり来て枯野の色に紛れけり 松田明子 201304
ふんはりと枯野に降りぬ熱気球 中島ひろし 末黒野 201305
電柱の一本立てり枯野原 水野恒彦 201304
降り止んでぐるり枯野と青菜畑 石脇みはる 201304
荒涼の枯野輝やく落日かな 柴田靖子 201304
大いなる団地の端の枯野駅 瀧春一 花石榴 201312
息荒く枯野を走る秋田犬 大日向幸江 あを 201401
枯るものの光をあつめ枯野句碑 望月晴美 201401
枯野ゆく汽笛にゆらぐ旅心 木村茂登子 あを 201401
枯野より来てぴかぴかの蛇口かな 大橋俊彦 201401
登四郎の枯野を探す旅に出む 千田百里 201401
けものめく雲の影ゆく枯野山 甲州千草 201402
ふはふはと帽子ころがる枯野かな 山田春生 万象 201402
B4の芯のスケッチ大枯野 柴田久子 風土 201402
涙もてあまし枯野をどこまでも 菅野蒔子 末黒野 201402
茫洋の海に尽きたる枯野道 碇天牛 雨月 201402
犬を見て犬に見られて枯野行く 岩木真澄 ぐろっけ 201402
枯野ゆく枯れすすみゐる己が魂 荒井千佐代 201402
枯野中戻るかたちの深轍 甕秀麿 201402
一脚の木椅子枯野のバスのり場 師岡洋子 ぐろっけ 201403
一歩づつ欲捨てて行く大枯野 熊川暁子 201403
野路菊のひと群残る枯野かな 田中佐知子 風土 201403
あの日より千日目なり大枯野 村上禮三 201403
神々の歓びに似る大枯野 有本南陵 ろんど 201403
声あげて風と遊びし枯野原 羽賀恭子 201403
カルデラの阿蘇の枯野や馬放つ 豊谷青峰 春燈 201403
大勢より一人行きたし枯野道 佐藤喜仙 かさね 201403
枯野にはまばゆき時のありにけり 岡本敬子 万象 201403
枯野原ここらあたりを住まひとす 高木晶子 京鹿子 201403
枯野原落暉に音のありにけり 水野恒彦 201403
枯野星地球の呼吸の荒くなる 犬塚李里子 201403
枯野中忽と休み田ありにけり 田中佐知子 風土 201403
枯野中礁のごとく礎石あり 田中佐知子 風土 201403
枯野道後部座席の女たち たかはしすなお 201403
行く人の一点となる枯野かな 山村幸苑 馬醉木 201403
枯野中礎石へ道の拓かれて 田中佐知子 風土 201403
枯野にも泡のごとなる命在り 古俣万里 ろんど 201403
大枯野後ろにまはし男体山 仙田孝子 風土 201403
石祠の幣の千切れて枯野道 松本三千夫 末黒野 201403
真つ直ぐに友の声来る枯野かな 曽根京子 春燈 201403
燃ゆるまま沈む金星大枯野 植村一雄 201403
ゆつくりとバスを降りれば大枯野 山内碧 201404
夕富士や枯野枯山裾に置き 安斎久英 末黒野 201404
終焉は胎動なるや大枯野 古川夏子 201404
枯野ゆく他の道なきと思ひこみ 佐藤喜仙 かさね 201404
枯野行く肩巾広き修行僧 宮井知英 201404
がうがうと風の争ふ枯野原 羽賀恭子 201404
終焉は胎動なるや大枯野 古川夏子 201404
道を聞く人とてをらず枯野径 河野美奇 ホトトギス 201405
吊橋の繋ぐ枯野と枯木立 杉山瑞恵 雨月 201405
晴れわたる日とて風棲む枯野かな 安原葉 ホトトギス 201406
その中に三色残る枯野かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201411
歴史とは枯野の果にありにけり 稲畑汀子 ホトトギス 201411
華やぎの彩り脱ぎし枯野かな 稲畑汀子 ホトトギス 201411
一本の繩滅びざる枯野の日 堀内一郎 堀内一郎集 201412
ラジオ枯野に少年渇くまいとする 堀内一郎 堀内一郎集 201412
咳をして枯野の広さ知る男 堀内一郎 堀内一郎集 201412
枯野の母と逢ふ煙草一本の時間 堀内一郎 堀内一郎集 201412
遠枯野妙に明るき小雨かな 中田みなみ 201501
若返るため吹かれ行く枯野かな 森岡正作 201501
枯野はるか心の枯野なほはるか 樋口英子 201501
枯野来てつひに過去てふもの無くす 土屋草子 ろんど 201501
枯野道栄華を語るむかし井戸 伊藤和子 201502
眼前の枯野たしかに来し覚え コ田千鶴子 馬醉木 201502
没り日どき枯野に道の見えてきし 山本耀子 火星 201502
枯野原尽き轟音の滑走路 蘭定かず子 火星 201502
橋脚のまま十余年枯野原 宮地静雄 末黒野 201502
枯野駅上りを待ちて下り発つ 小林共代 風土 201502
生くるとは先達のなき枯野行く 森岡正作 201502
枯野原前に人なしうしろにも 犬塚李里子 201502
枯野原夢の続きのありにけり 寺田すず江 201502
大枯野この身ひとつの置き処 久保久子 春燈 201502
甲斐連山眺む枯野の端にゐて 齊藤哲子 201502
クレヨンの三色あれば足る枯野 石谷淳子 雨月 201503
行くほどに明るくなりし枯野かな 柴田佐知子 201503
我が影をやはらかく曳き枯野原 成田美代 201503
大枯野乳呑児のこゑ聞いてをり 中島陽華 201503
遠くまで金色を敷く枯野原 近藤喜子 201503
勝ち馬をなだめ枯野を一周す 久保東海司 201503
北限の鉄路消えゆく大枯野 田勝子 万象 201503
夕照に燃えあがりたる枯野かな 峰幸子 末黒野 201503
枯野来て枯野を帰る種付け師 森岡正作 201503
衾路を引き返し行く大枯野 古川しげ子 雨月 201503
母逝きて心枯野を行くごとし 佐藤貞子 雨月 201503
彗星のよぎり夜明けの枯野かな 橋本くに彦 ホトトギス 201504
大枯野高倉健が佇てばよし 小泉欣也 ろんど 201504
黒羽や翁の道の枯野人 福田周草 風土 201504
枯野ゆく吾胸中のみえるまで 吉田順子 201504
羅生門のむかう枯野となりにけり 橋本順子 201504
かさこそと日の香かさこそ大枯野 橋本くに彦 ホトトギス 201504
枯野来て子の見つけたる二番星 藤井彰二 馬醉木 201504
天保の飢饉の墓標枯野中 久世孝雄 やぶれ傘 201504
地下鉄はとわに枯野をかけめぐる 津波古江津 船団 201505
旅人の磁針狂はす大枯野 平居澪子 六花 201505
枯野原雨ひと粒のやはらかし 中島悠美子 京鹿子 201505
火を放つ瞬のときめき枯野焼く 杉本光祥 201506
枯野ゆくわがこころには蒼き沼 木下夕爾 春燈 201508
いつ尽きし町ぞ枯野にふりかへり 木下夕爾 春燈 201508
ハンカチの持ち主を問ふ枯野かな 八木健 八木健俳句集 201509
しばらくは枯野の駅に停まりゐる 大崎紀夫 虻の昼 201510
声出せば火のつきさうな大枯野 ほんだゆき 馬醉木 201510
      枯野 →7

 

2020年12月16日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。