藷 1      206句

藷たべてゐる子に何が好きかと問ふ   京極杞陽

作品
作者
掲載誌
掲載年月
豚追つて甘藷畑行く農夫痩せ 松崎鉄之介 199811
新藷の紅にひかれて戻りけり 井口初江 酸漿 199911
運動場耕せし日も藷の秋 山田夏子 雨月 199911
流鏑馬の逸れ矢のとべり甘藷畑 遠藤アサ子 春耕 199912
蛸が藷掘るしはしはと闇ん中 岡井省二 200002
鍬あとのありし甘藷の太りけり 谷口道子 火星 200002
掘りたての藷をもらへり洗ひ干す 永見博子 酸漿 200011
掘り起す藷に器量のありにけり 山本耀子 火星 200012
藷掘るやその蔓食べしこと話題 稲岡長 ホトトギス 200101
甘藷掘の子等ぽこぽこと穴残す 中島徳子 酸漿 200101
大らかな腰のかまへや藷を掘る 石森富子 遠嶺 200102
靄上げて日の出にけむる藷の畑 倭文ヒサ子 酸漿 200102
顔なじみ減りゆく里や藷を掘る 鵜飼紫生 雨月 200103
走り藷故國に捨てて來し貌よ 中原道夫 銀化 200110
甘藷掘りを諦め帰る親子かな 浅井千鶴子 いろり 200111
ながらへて走り藷など召さるべし 小形さとる 200111
前山の靄の晴れきし藷畑 溝口八重子 雲の峰 200112
再建の遠のくばかり藷ふとる 浜麻衣子 六花 200112
おほかたは掘られて島の甘藷畑 庄中健吉 200202
荒畑の甘藷掘り家族総出にて 足利ロ子 ぐろっけ 200202
城址とはいへど一帯甘藷畑 田中としを 雨月 200203
本陣の裏に干さるる新甘藷 中川晴美 雲の峰 200209
いとほしむ紅鮮らけき走り藷 青垣和子 雨月 200211
あちこちにかすり傷ある走り藷 木内美保子 六花 200212
藷掘るに女生徒軍手脱ぎ捨てぬ 笹原ひろむ 200301
しのび笑ふ藷盗人は里わらべ 滝川あい子 雨月 200302
新藷や鳴門金時鮮紅に 落合由季女 雨月 200312
歓声の市民農園甘藷の秋 岡淑子 雨月 200312
残暑中届く故郷のさぐり藷 近藤豊子 雨月 200312
一つづゝ藷を包みし古新聞 星加克己 ぐろっけ 200312
一畝の藷掘りて父出勤す 出口一点 百鳥 200401
蔓切りは縁切りに似て甘藷掘り 梶知余子 200401
初藷のころげ出でたる日照雨 山尾玉藻 火星 200410
走り藷戦の頃を母に聞く 窪田粧子 馬醉木 200411
新藷剥く記憶のヴェール剥ぐやうに 林翔 200411
わづかなる甘藷畑の猪囲 関戸国子 酸漿 200411
背負籠に代用食の甘藷かな 増田祐三 帆船 200412
園児等のバス太りだす藷掘り日 坂口美代子 河鹿 200501
外海の白き波音甘藷掘る 中元英雄 河鹿 200502
甘藷蔓のむらさき返す耶蘇の裔 中尾杏子 200502
小包の隙間につめしさつま藷 斉藤裕子 あを 200503
店先に金時の名の走り藷 佐藤淑子 雨月 200510
新藷の赤を大事に洗ひけり 遠野萌 200511
くるくると機械廻りて甘藷掘る 近藤豊子 雨月 200511
はしり甘藷うすむらさきの湯気の中 竹内弘子 あを 200511
ふるさとに甘藷掘り友にはたと逢ひ 近藤豊子 雨月 200512
甘藷畑の兄に手を振り戻りけり 近藤豊子 雨月 200512
細くても芋は芋味走り藷 中島英子 八千草 200512
甘藷掘り一家で囲む昼餉かな 高原純徳 河鹿 200601
あした掘る甘藷軍手は束で買ふ 鎌田政利 京鹿子 200601
ふかし藷その名鳴門の金時よ 大坪景章 万象 200601
さぐり掘る紅小町てふ藷の肌 織田みさゑ 万象 200601
盗人となりて屑藷貰ひけり 菊池由惠 酸漿 200601
藷掘りの痩せ鍬弾く火山礫 高原純徳 河鹿 200602
藷なれど粋な名前の紅あづま 真木早苗 八千草 200603
鵙去るや藷掘のゐて音もなし 瀧春一 常念 200606
藷負うて虎口のがれし如く云ふ 瀧春一 瓦礫 200606
自から甘藷作らねどその淡き色 八田木枯 晩紅 200609
萎えし目に活を入れたる走り藷 篠原幸子 春燈 200611
父似ともいや母似とも藷が好き 塩路隆子 200612
甘藷掘ひとひらの雲ふくれくる 藤井寿江子 馬醉木 200612
日曜市藷一本を焼く烟 戸田和子 200612
甘藷掘る蹠に仄か土の声 犬塚芳子 200612
根性の藷掘る姥に土固し 今井妙子 雨月 200612
裾高く聖尼もまじる甘藷掘 一瀬昭子 馬醉木 200701
藷掘りに出払つてゐる幼稚園 西出真一郎 200701
小春日の金時藷のゑくぼかな 森ひろ 馬醉木 200703
一夜にて猪の餌となる甘藷畑 関戸国子 酸漿 200705
高杯にひよろりとのつて走り藷 佐々木新 春燈 200711
潮騒に声消されつつ甘藷掘る 近藤豊子 雨月 200712
手秤で競ひ合ひ藷掘りゐたる 水谷ひさ江 六花 200712
道端に山羊を鳴かせて甘藷掘る 綱川恵子 万象 200802
藷洗ふふくろふがゐて象がゐて 冨松寛子 200802
句の材の甘藷に鍬の傷白し 朝妻力 雲の峰 200811
もういいかい試しに甘藷掘起す 田中敬 200812
藷蔓の伸びる力や行く歩道 西出俊子 酸漿 200812
藷掘りて我家の自給率上がる 宮川秀穂 200901
藷掘り会子の手のどれもほめらるる 一ノ木文子 炎環 200901
甘藷畑野ねずみ走る良夜かな 吉田カイ 万象 200901
子らの来て隙間だらけの甘藷干 増田整歩 遠嶺 200902
国曳きのやうに甘藷蔓引つ張れり 高橋ひろ 万象 200902
立ててある俵へ甘藷を投げてをり 八田木枯 晩紅 200908
野鼠に藷を遺られし俄か農 小澤菜美 200912
尼寺の庫裏の上げ板藷を秘む 定梶じょう あを 200912
蓮と藷の畑ばかりや鳴門みち 坂上香菜 201009
藷畑に島の青田の尽きにけり 廣瀬雅男 やぶれ傘 201009
藷を掘る作業楽しも農学部 山下青坡 201010
紅うつくしく新藷の供へらる 辻直美 201010
藷掘って輪中の土をこぼしけり 水谷靖 雨月 201011
衝動買ひいろ美しき新藷を 田原陽子 201012
畝の罅に覗く朱色や走り藷 寺岡ひろし 雨月 201012
境なる明神さまの甘藷掘る 小林洋子 万象 201104
火を囲み甘藷いもを焼きをる午後三時 白石正躬 やぶれ傘 201106
大家族たりし日のありふかし藷 鈴木セツ 201110
新藷の紅美しく売られけり 生田高子 春燈 201110
松山のマドンナ弁当藷煮入り 山口キミコ 201112
少少の勝ち気の生まれ蒸し藷 井上信子 201112
人の死のたびに藷蒸す隠れ村 荒井千佐代 201112
校門の前に藷掘りバス停まる 大西八洲雄 万象 201201
はふはふと口尖らせりふかし藷 佐渡谷秀一 春燈 201201
城下にはあまた弾痕甘藷掘る 三橋早苗 ぐろっけ 201202
古紙よりの甘藷土の香零しけり 安藤久美子 やぶれ傘 201202
甘藷畑の二畝子等に開放す 久世孝雄 やぶれ傘 201202
口汚す藷粥好きを吾が継ぎし 山本耀子 火星 201203
甘藷喰ふ未だにドンキホーテ型 菅野雅生 万華鏡 201206
走り藷掘りたる土のはや乾く 島谷征良 風土 201211
甘藷蔓返せばのぞく芋の色 高柳ゆき子 201211
るゐるゐと藷るゐるゐと人の列 中山皓雪 201212
藷蔓の刈られし嵩に島の雨 蘭定かず子 火星 201212
藷焼いて女二人の昼餉なり 波田美智子 火星 201212
一角は芋薯藷の即売所 木村茂登子 あを 201212
浄瑠璃のこゑ風に乗り甘藷畑 福島せいぎ 万象 201301
年寄に猫のぎやうさん藷の島 深澤鱶 火星 201301
甘藷粥や髭根残るも越後ぶり 深澤鱶 火星 201301
女の子小さめ選ぶふかし藷 古井公代 ぐろっけ 201301
あざやかや紫色の藷おこは 明石文子 ぐろっけ 201301
幼子は素手でそうつと藷を掘る 三橋早苗 ぐろっけ 201302
藷雑炊戦時の母のあの姿 能勢栄子 201303
焚火いま藷の匂ひに変りけり 安原葉 ホトトギス 201305
短日や飼葉に混ぜる藷の蔓 亀田やす子 ははのこゑ 201306
甘藷掘り連なる蔓を引きずれり 亀田やす子 ははのこゑ 201306
琉球藷もう掘るころか晴三日 山田六甲 六花 201310
いも蔓を引けば甘藷の大家族 国包澄子 201312
藷蔓を炊きて夕食戦中派 能勢栄子 201312
ミゼラブル贅沢に慣れ藷を食ふ 四條進 201312
隠居かと訊ぬる農夫藷を掘る 阪本哲弘 201312
舞終へて焼藷をひろぐ巫女溜 佐藤三男 万象 201312
藷床にずんどうの體ありにけり 瀬川公馨 201312
浄瑠璃や藷の総掘りはじまりぬ 福島せいぎ 万象 201312
鍬と畑思うて甘藷を食べにけり 四條進 201312
一畝ごと名札差しおく甘藷(いも)畑 松木清川 ぐろっけ 201401
人柄を思はす大き藷もらふ 山本孝夫 201401
戦世に繋がる母の藷の粥 川村清子 馬醉木 201401
神留守の畝に罅入る藷畑 山本耀子 火星 201402
よく売れて駅舎明るし焼藷屋 瀬戸峰子 春燈 201403
焼藷屋橋の上にて火を継げり 宇都宮敦子 201404
空つ下手の焼藷の番してゐたり 瀬川公馨 201404
剥き残る新藷にある皮の色 谷岡尚美 201409
かりそめの能登の塩振るふかし藷 山本耀子 火星 201411
甘藷の出来ほめて祭の寄付を乞ふ 城台洋子 馬醉木 201412
お互ひの藷と南瓜を交換す 久世孝雄 やぶれ傘 201412
鋤くやうに電車の走る藷畑 足立良雄 201412
焼べ足して足して焼藷出来上る 稲畑汀子 ホトトギス 201501
焼藷に尽きる火遊び松の内 稲畑汀子 ホトトギス 201501
甘藷嫌ひ七十年でやや薄れ ク大口堂遊 春燈 201501
藷を掘る土あたたかく匂ひけり 田中臥石 末黒野 201501
戦中派昭和偲ぶにふかし藷 片山喜久子 雨月 201501
焼藷を抱き病みがちの子を訪へり 城台洋子 馬醉木 201502
ふかし甘藷の匂ひの満つる小路かな 山崎稔子 末黒野 201502
園児らの十指忙しく藷を掘る 堀田順子 馬醉木 201502
知恵の輪を外す焼藷冷めぬうち 安藤久美子 やぶれ傘 201503
店先に焼藷匂ふ八百屋かな 丑久保勲 やぶれ傘 201503
豆腐屋の喇叭のあとを焼藷屋 村田美代子 馬醉木 201503
天領の菓子屋の活気藷の旬 田中一美 ろんど 201503
焼藷や遠き昭和の面影も 笹井康夫 201503
ふかし甘藷写真の父の目の行方 梨地ことこ 船団 201505
新藷を供物となせり護摩修行 福島せいぎ 万象 201510
焼藷を闇取引のやうに買ふ 原田達夫 箱火鉢 201511
甘藷掘る授業もありて小学校 武政礼子 雨月 201512
昆陽の置き土産なり甘藷畑 高田好子 京鹿子 201601
まつすぐに歩いてゆけば藷畑 根橋宏次 やぶれ傘 201601
菜箸の穴の空きたる蒸し藷 泉本浩子 馬醉木 201602
この列を掘れと命じて甘藷掘り 久保東海司 201602
藷粥の甘さに杯を重ねけり 白石正躬 やぶれ傘 201604
藷の葉育つ数へ日の流し台 原田達夫 201604
貸し農園ぴんと立ちたる藷の苗 須賀敏子 あを 201607
今日こそは草を引かねば藷畑 久世孝雄 やぶれ傘 201610
甘藷掘る園児の大き軍手かな 黒滝志麻子 末黒野 201612
焼藷の出来不出来など言ふまじく 稲畑汀子 ホトトギス 201701
焼藷を食べ終へし顔揃ひたる 稲畑汀子 ホトトギス 201701
甘藷を焼く園児に煙あまくなる 西村梛子 馬醉木 201701
大いなる色よき甘藷患家より 鈴木良戈 201701
石焼藷売りに来る爺待ち遠し 秋川泉 あを 201701
スーパーの庭前石焼藷の旗 佐藤山人 201702
ふかし藷考妣の近き夜なりけり 岡野里子 末黒野 201702
先づ蔓をあまねく伐りて藷を掘る 久世孝雄 やぶれ傘 201702
半分にすや焼藷の黄金色 山田夏子 雨月 201703
焼藷や昭和の匂ひ両の手に 樺山翠 雨月 201703
焼藷を分けあひ市の隅にゐる 宇都宮敦子 201703
炉灰より藷抜き出してくれにけり 中川句寿夫 ここのもん 201705
藷の芽のまだ出ぬところどころかな 中川句寿夫 ここのもん 201705
土間に甘藷乾く有線電話借る 石川桂郎 風土 201706
薩摩藷ほおばり世界地図拡げ 森有子 201712
藷の蔓匍匐前進怠らず 相良牧人 201712
たまさかに大物が子に甘藷掘り 秋山信行 やぶれ傘 201712
この頃の焼藷とんと焦げをらぬ 浅井青二 雨月 201803
安納なる焼藷供しホテルカフェ 浅井青二 雨月 201803
故郷の砂さらさらと藷届く 河原敬子 201804
倖せはホックリさつま藷の味 大日向幸江 あを 201810
甘藷届く形許りの地主とて 壺井久子 馬醉木 201811
藷掘りの園児はすでにうでまくり 山田健太 風土 201811
殉職の制服の額蒸し藷 野中亮介 馬醉木 201812
恙妻甘藷を蒸してゐたりけり 田中臥石 末黒野 201812
仏壇のほのぼの曇るふかし藷 太田慶子 春燈 201812
焼藷の配られて会はじまりし 稲畑汀子 ホトトギス 201901
焼藷をほほばる息の荒々し 岡田正義 雨月 201903
わが力瘤より大き藷を掘る 中島秀夫 王水 201909
藷→2      

2021年10月13日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。