寒 鯉 1     200句

寒鯉に余分な飯粒透きはじむ    五十嵐研三

寒鯉 寒の鯉 冬の鯉

作品
作者
掲載誌
掲載年月
寒鯉とわれ遂にわれより動く 能村研三 鷹の木 199705
寒鯉の背を迅き水来ては逝く 藤田宏 199803
なに起こりしや寒鯉のもつれあひ 鷹羽狩行 199902
寒鯉の大振さげて産見舞 石鍋みさ代 春耕 199904
山の村寒鯉重なりつつ澄みて 横地かをる 海程 199904
くろがねの寒鯉ギーと向をかへ 神蔵器 風土 200001
寒鯉の餌を漁りたる動きかな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200001
寒鯉の錦も色を沈めたる 稲畑廣太郎 ホトトギス 200001
寒鯉や水面ゆるりと動かして 稲畑廣太郎 ホトトギス 200001
貼りついてゐし寒鯉の水底に 稲畑廣太郎 ホトトギス 200001
寒鯉の群れてひしめく水暗し 阿部ひろし 酸漿 200002
新聞にくるまり佐久の寒鯉来 松木実 200002
寒鯉に御神酒含ませ庄川へ 春田淳子 雲の峰 200003
寒鯉の身じろぎに揺れ野川の日 村上光子 馬醉木 200003
寒鯉の動かず新聞休刊日 直井たつろ 風土 200003
寒鯉の馬穴で届く駐在所 藤武由美子 春耕 200003
寒鯉のうごくも水の動かざり 山下昇士 200003
夢見しか寒鯉の上ぐ土煙 神蔵器 風土 200003
寒鯉の緋の一点や心字池 武田禅次 春耕 200004
寒鯉の没り日を呑めるほどの口 金丸鐵蕉 200004
寒鯉に蓋の如くにある水面 粟津松彩子 ホトトギス 200005
寒鯉の塊りをれり微動もせず 永野秀峰 ぐろっけ 200005
寒鯉のはねて深まる静寂かな 稲岡長 ホトトギス 200005
寒鯉の動かぬ水の底暗し 進青亀 円虹 200006
くわうくわうと寒鯉の髭鴨の恋 神蔵器 風土 200101
藁苞に包む寒鯉田舎より 寺田きよし 酸漿 200103
寒鯉の臓腑なかなか死にませぬ 泉田秋硯 200104
寒鯉や空に水音緊りをり 環順子 遠嶺 200104
寒鯉のかたまり解けゐる夜ぞ 深澤鱶 火星 200105
寒鯉や形のごとく影の添ひ 鷹羽狩行 十三星 200105
寒鯉やなまりのやうな池の水 重名逃魚 200105
寒鯉に手足忘れて戻りけり 山田六甲 六花 200202
寒鯉の数を見せたる日和かな 鷹羽狩行 200202
寒鯉や箭のごとくに緋の一尾 鷹羽狩行 200202
寒鯉の烟る邃さに在る一語 松本康司 銀化 200203
寒鯉として料亭に囲はるる 小西石蕗 円虹 200204
寒鯉に餌やる男の腕まくり 柿沼盟子 風土 200204
寒鯉の重なりあひて静もれる 武政礼子 雨月 200204
寒鯉の覗かれてゐる動きかな 松永晃芳 百鳥 200204
寒鯉も2002年の息づかひ 丸山佳子 京鹿子 200204
寒鯉の口をとび出す木の葉屑 鳴海清美 六花 200205

 佐藤鬼房氏を悼み

寒鯉の沈む深さの常に似ず

鷹羽狩行 200205
寒鯉の髭に逆らふ流れかな 三栖隆介 200205
寒鯉に徹して微動だもあらず 奥澤和子 200206
寒鯉の流れに自我を放ちけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200206
寒鯉に適ひて水の底平ら 山仲英子 200301
寒鯉のなまめく腹を見てしまふ 南うみを 風土 200302
寒鯉の一塊となる日向かな 斉藤小夜 風土 200303
寒鯉の背なに金時模様かな 山田六甲 六花 200303
寒鯉の緋を幻と見て立てり 後藤志づ あを 200303
寒鯉の腹寄せ合うて動かざる 栗田稚津子 雨月 200303
寒鯉は見えず気配の水動く 大庭三千枝 200303
寒鯉や水の底まで日の射して 水井千鶴子 風土 200303
かたまりてゐて寒鯉の合触れず 山田弘子 円虹 200304
逆縁の喪に寒鯉の浮き上る 笠間圭子 京鹿子 200304
人声を知る寒鯉の尾ひれかな 山田弘子 円虹 200304
寒鯉の影引き寄せて動きだす 十河波津 200305
寒鯉の動かざる意志鰭に尾に 杉山瑞恵 雨月 200305
現はれて寒鯉の水匂ひけり 南うみを 風土 200305
鋼なす水面寒鯉不動にて 杉山瑞恵 雨月 200305
寒鯉の眠れるままに流さるる 芦川まり 八千草 200307
寒鯉となる吐く息を合せゐて 神蔵器 風土 200402
寒鯉を沈めて堰の溢れけり 田中清之 百鳥 200402
偉とするに足る寒鯉の不動心 伊藤白潮 200403
生簀ごと佐久の寒鯉峠越す 竹中龍青 200403
寒鯉の草影に入り動かざる 北瀬照代 築港 200404
寒鯉の俎たたく尾の力 新海りつ子 馬醉木 200404
寒鯉のゆるり向き変ふ神の池 青木政江 酸漿 200404
零歳の死や寒鯉のみぢろがず 瀬戸石葉 200404
寒鯉の泳ぐ水温手で測る 三関浩舟 栴檀 200405
寒鯉の眠りてをりて尾の動き 三関浩舟 栴檀 200405
寒鯉のゆらりと金の泡を吐く 今井千鶴子 ホトトギス 200405
避寒鯉揺りては硬き影ほぐす 禰寝瓶史 京鹿子 200405
寒鯉の錦は泥に紛れざる 稲畑廣太郎 ホトトギス 200501
寒鯉の口より目覚め初めにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200501
寒鯉の尾のつくりたる濁りかな 中村房枝 六花 200502
寒鯉のごつとぶつかり煙るかな 浅田浦蛙 対岸 200502
寒鯉となるべく口を結びけり 平子公一 馬醉木 200503
寒鯉の影のごときが幾匹も 宮津昭彦 200503
寒鯉のみな向き揃へひしめける 鈴木幾子 酸漿 200503
寒鯉の囲はれてゐる池の隅 原茂美 雲の峰 200504
寒鯉の跳ねてそのあと沈黙す 辻本善一 築港 200504
寒鯉の動かず雌伏してゐたる 塩川雄三 築港 200504
水口へ向き寒鯉のあたたまる 神蔵器 風土 200504
寒鯉の動きて重き水のあり 曷川克 遠嶺 200506
寒鯉に水音の入れ替はりつつ 山田六甲 六花 200603
寒鯉の色とやうやく判るまで 山田六甲 六花 200603
寒鯉の動かねば水氷られず 神蔵器 風土 200603
水に倦むこともありけむ寒鯉は 高倉和子 200603
寒鯉の悪相なるが浮いてきし 柴田佐知子 200604
神の池寒鯉しなやかに泳ぐ 井川伸子 対岸 200604
寒鯉の音の向かうにある怠け 宇都宮滴水 京鹿子 200702
寒鯉の重なりて餌に寄り来たる 小林朱夏 200702
寒鯉の鯉のくらやみ息づける 渡辺昭 200703
寒鯉の沈む暗さに緋のひとつ 菊地惠子 酸漿 200703
寒鯉に沈む力の残りをり 百瀬七生子 海光 200705
寒鯉になれぬ吾なり寺めぐり 和島出 遠嶺 200705
寒鯉のひしめいてゐる柱かな 南うみを 風土 200804
寒鯉と妙案一つ浮かびたる 高橋将夫 200804
七賢人の覗く寒鯉揉み合へる 大島翠木 200804
寒鯉のまはりの水の交はらず 柴田佐知子 200804
寒鯉の時をり背鰭見せるのみ 小林朱夏 200804
寒鯉や水面に鴟尾の影揺らぐ 森竹昭夫 遠嶺 200804
膝打つて立つ寒鯉のごとくゐて 渡辺隆 遠嶺 200805
寒鯉や鯤にならむと瞑想す 小泉貴弘 筑波の道 200811
寒鯉の電波のとどかなき処 丹沢亜郎 炎環 200901
寒鯉の背鰭横切る山の音 あさなが捷 200901
寒鯉の彩冴えざえと水を見ざる 瀧春一 深林 200901
寒鯉の頭を蹼の過ぎゆけり 岡本高明 船団 200903
思慮深く生き寒鯉のやうにゐる 小澤克己 遠嶺 200904
寒鯉の家老屋敷が町役場 小阪律子 ぐろっけ 200904
寒鯉の影吊りてゆく水平ら 永田二三子 酸漿 200905
寒鯉の静止に使ふ尾鰭かな 渡部節郎 転舵の渦 200911
刎ねられてなほ寒鯉のしばたたき 諸岡孝子 春燈 201002
寒鯉の動けば水の汚れけり 高倉和子 201003
寒鯉の人恋しさに振る鰭か 小倉陶女 春燈 201003
寒鯉の深く潜めり橋の下 冨田君代 酸漿 201003
泥の中より寒鯉の出てきたる 小林朱夏 201004
現れし寒鯉の緋の斑かな 犬塚芳子 201004
寒鯉の鰭ひとそよぎひと濁り 久保東海司 201004
向き向きにゐて寒鯉の動きなし 中川悦子 酸漿 201004
風起こしたる寒鯉の鰭づかひ 遠藤和彦 遠嶺 201005
寒鯉のまつすぐなるは美しき 笹村政子 六花 201005
寒鯉の水紋ひとつ奥書院 宮木忠夫 201005
寒鯉や投師なげしは笊屋善次郎 近藤幸三郎 風土 201102
池底に押競寒鯉隙間なく 木曽鈴子 ぐろっけ 201102
安心の底に埋もれて寒鯉は 柴田佐知子 201103
寒鯉の池動かして現るる 柴田佐知子 201103
寒鯉の向きを変へたる池の波 門伝史会 風土 201104
寒鯉の僅かに鰭の動きけり 橋本之宏 風土 201104
寒鯉の影透きとほる弥陀の池 吉沢陽子 201104
寒鯉のしづかなれども力満つ 花田心作 201104
寒鯉の潜水艦めく水しずか 金田けいし ろんど 201105
寒鯉の胸鰭うごく生きている 古川忠利 ろんど 201105
寒鯉や水かげろふを顔に受け 大島英昭 やぶれ傘 201105
天領の地や寒鯉のよく太り 安武晨子 201106
寒鯉のごとくにものを考へる 岩岡中正 ホトトギス 201107
城跡の濠の寒鯉うごかざる 吉田啓悟 かさね 201202
寒鯉の水面の光裏返す 岡部名保子 馬醉木 201203
寒鯉をすくひ入れたる紙袋 福本郁子 火星 201203
寒鯉となりて緋色の鮮やかに 高橋将夫 201204
寒鯉や水の重さをゆらしをり 浅川幸代 末黒野 201204
寒鯉や撫づるともなく泥撫でて 笹村政子 六花 201204
寒鯉の見上ぐる橋を過ぎにけり 藤井美晴 やぶれ傘 201204
寒鯉は他人貌して鰭垂るる 佐々木紗知 京鹿子 201205
寒鯉のにごりの中のにごりかな こうのこうき 万華鏡 201206
寒鯉を覗いて見えし己が顔 北崎展江 くりから 201209
寒鯉の鰭を広げて動かざる 永田万年青 六花 201212
減反の田の広広と寒鯉と 高瀬博子 六花 201212
寒鯉の欠伸の気息聞く暇 田中貞雄 ろんど 201301
寒鯉と自ら決めて動かざる 山田六甲 六花 201302
寒鯉の色集まりて動かざる 佐津のぼる 六花 201302
寒鯉のぶつかりて水動きけり 高倉和子 201302
水面揺らさず寒鯉の反転す 野上杳 201302
放生の鯉寒鯉となりゐたり 清水節子 馬醉木 201303
寒鯉を粉々にして風去りぬ 山田六甲 六花 201303
寒鯉の紅さざ波が砕きけり 山田六甲 六花 201303
寒鯉に沈んでゆけるネックレス 山田六甲 六花 201303
寒鯉を見に来てくれてありがとう 山田六甲 六花 201303
寒鯉に身じろぎもせぬ我の影 山田六甲 六花 201303
寒鯉の影を離るることもなし 山田六甲 六花 201303
寒鯉の黙考時としてゆらぐ 笠井敦子 201304
寒鯉の音無く重き泥煙 山本無蓋 201304
寒鯉のひげの先より目醒めけり 太田良一 末黒野 201305
寒鯉の白さきだちて朱が追へる 水原秋櫻子 馬醉木 201401
寒鯉を抱へ揚げたる翁ぶり 山尾玉藻 火星 201401
底に筋つけて寒鯉動きけり 柴田佐知子 201401
寒鯉も鴉も青く見ゆる日よ 西川織子 馬醉木 201402
寒鯉のつの字跳ねたる金盥 山本耀子 火星 201403
寒鯉の息を覗ける紙ン袋 大山文子 火星 201403
寒鯉が胴の透くまで口開く 矢野百合子 201403
泡ひとつ吐いて寒鯉それつきり 柴田志津子 201404
寒鯉の動かぬまゝに育ちをる 伍島繁 201404
寒鯉や津和野の町に橋いくつ 根岸善行 風土 201404
寒鯉の眠るにあらず跳ねにけり 志方章子 六花 201406
寒鯉の河床の色となりにけり 小林朱夏 201502
寒鯉の上に あぶく ののぼりくる 根橋宏次 やぶれ傘 201503
寒鯉の水ごと凍てしごと沈む 塩田博久 風土 201503
寒鯉の水面に弥陀の衣紋かな 山本久江 201503
寒鯉の日当たる岸辺動かざる 渡辺安酔 201505
寒鯉のパン二切に滾りけり 田中とし江 201506
名水を歪め寒鯉餌を漁る 稲畑廣太郎 ホトトギス 201601
寒鯉に届きて深き灯かな 山田六甲 六花 201603
小鷺来て寺の寒鯉驚かす 荻龍雲 201604
寒鯉の溜め息積もる水の底 原友子 201604
寒鯉や水の濁りの薄らぎて 柿沼盟子 風土 201604
寒鯉の透きし削ぎ身や湖平ら 荒井和昭 201604
しつか向き変へて寒鯉池の底 清水美恵 馬醉木 201605
雪隠の松寒鯉の鮮やかに 長沼佐智 船団 201612
寒鯉のぐらりと揺れし濁りかな 高倉和子 201703
寒鯉を入れてつつぱる麻袋 岸洋子 201704
寒鯉にすさぶ心を置きにけり 山田六甲 六花 201704
寒鯉のたてし濁りの拡がらず 片山喜久子 雨月 201704
寒鯉の百匹潜む神の池 中田禎子 201705
寒鯉のゆらりと水に戻さるる 中川句寿夫 ここのもん 201705
みどり児の影に寒鯉うごきけり 福島せいぎ 万象 201705
寒鯉のまとふ幾重の水衣 松尾龍之介 201705
寒鯉の水の底へとうすれゆき 市村健夫 馬醉木 201803
寒鯉の呟くごとく泡吐きぬ 木村傘休 春燈 201804
寒鯉の息づく気配池の淵 岡田正義 雨月 201804
寒鯉の一つ離るる早さかな 笹村政子 六花 201804
寒鯉の水の色へと消えにけり 山本素竹 ホトトギス 201805
泳ぐともなく寒鯉の現れし 山本素竹 ホトトギス 201805
一切を封じ寒鯉動かざる 高倉和子 201806
寒鯉捌く神水を存分に 宮井知英 201806
寒鯉に動かぬ重さありにけり 角野良生 201807
寒鯉の眼動いたかもしれぬ 谷田明日香 風土 201901
寒鯉の潜みし泥のほの紅し 前田美恵子 201904
寒鯉の心の位置か沈みゐる 近藤喜子 201904
寒鯉の身じろぎもせず髭伸ばす 赤峰ひろし 201905
寒鯉と吾の間(あはひ)の水消えし 山田六甲 六花 202002
水底にゐる寒鯉のいびきかな 森岡正作 202002
寒鯉 →2      

 

2023年1月18日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。