紙 漉 1    221句 

紙漉のこの婆死ねば一人減る   大野林火

作品
作者
掲載誌
掲載年月
代々の手風呂かたへに紙漉けり 辻のぶ子 俳句通信 199904
綸旨紙漉きたる川の芹青む 星佳子 199907
紙漉や水を平らにあやしつつ 嶋田麻紀 史前の花 199908
山よりの水音を入れ紙を漉く 吉村玲子 船団 199909
青貝の模様浮き立つ紙を漉く 吉村玲子 船団 199909
柱みな影を確かに紙漉き場 今瀬剛一 200002
雲海のごときの漉かれ紙となる 大橋櫻坡子 雨月 200002
ぎしぎしと家を揺らして紙を漉く 今瀬剛一 200003
紙漉ける里の夕暮早かりし 和田崎増美 雨月 200003
晒し紙漉く一切の暖を截ち 大平青龍子 ぐろっけ 200004
料峭や子等の目光り紙を漉く 梅田秀子 酸漿 200006
漉紙の音たて乾く犬ふぐり 中村風信子 馬醉木 200007
水あやす如く揺らして紙漉きぬ 津田このみ 船団 200008
辛夷咲く紙漉くように日を重ね 富沢秀雄 船団 200010
一村の紙漉女なる山羊座かな 芳野ヒロユキ 船団 200011
峡の戸をつながる寛紙を漉く 中川節子 春耕 200101
紙漉や水の暮れゆく音のあり 村上瑪論 銀化 200102
山の日に紙漉の粗衣うつくしく 田中藤穂 あを 200102
紙漉場絹めく和紙を積重ね 田中藤穂 あを 200102
紙を漉く小屋に夜昼木の実降る 田中藤穂 あを 200102
乳色の水すくひては紙を漉く 田中藤穂 あを 200102
灯りても水揺らす音紙漉場 田中藤穂 あを 200102
紙漉の灯してうたふ唄のなく 田中藤穂 あを 200102
紙漉女日差しのぬくみ翻す 倉田岩魚男 200103
この郷に老いてたつきの紙を漉く 倉田岩魚男 200103
紙漉の変遷を聞く土間あかり 武井清子 200103
後継ぎのきまり紙漉村の春 片山喜久子 雨月 200104
桂離宮所望の紙とひたに漉く 片山喜久子 雨月 200104
紙を漉く紙漉く母の遺影下に 片山喜久子 雨月 200104
新旧の舟使ひわけ紙を漉く 今西ひろえ 200105
紙漉きの膝をいたはる膝蒲団 今西ひろえ 200105
跡継ぎのことにもふれて紙漉夫 今西ひろえ 200105
漉きあぐる紙の重さや春灯 山本稚子 馬酔木 200106
悔悟とは紙漉くやうに愛されて 田中亜美 海程 200107
紙漉き女ゆさゆさ水をたたむごと 酒井ひろ子 200202
紙漉きて槐洞に入る笑尉 延広禎一 200202
もの問へば言葉少なに紙漉女 阿部たみ 酸漿 200202
裸火の下に影置く紙漉女 朝倉喜代子 春耕 200202
雪月夜峡に紙漉く灯がのこる 高島鶏子 馬醉木 200204
うすらひに樹影閉ぢこめ紙漉場 高橋たか子 馬醉木 200204
漉く紙に散らして紅葉真赤なる 長沼三津夫 200204
紙漉の窓にゆふべの雪明り 長沼三津夫 200204
紙漉の村とや瀬音鳴るばかり 長沼三津夫 200204
紙漉小屋廃れし水場蕗の薹 宮川杵名男 春耕 200205
水を揺り和紙漉く手技極めをり 佐々木栄 ぐろっけ 200205
紙漉きの腕に弾みのついてきし 栗城静子 200205
細き身のいづこに力紙漉女 渡井佳代子 200207
紙を漉く指透けるほど水に馴れ 朝妻力 雲の峰 200212
天窓に鈍きひかりや紙を漉く 武井清子 銀化 200302
大釜をひとつ残して紙漉女 関口幹雄 遠嶺 200303
紙漉くやおかめひよつとこ額の中 谷村幸子 200303
井戸二つ持ちて名塩の紙漉場 岡田万壽美 雲の峰 200303
悴むを手風呂になだめ紙漉女 長沼冨久子 馬醉木 200303
紙漉ける人間国宝手の大き 阪上多惠子 雨月 200304
真四角に水を嵌め込み紙を漉く 阪上多惠子 雨月 200304
東大寺の御符となるてふ紙を漉く 阪上多惠子 雨月 200304
紙漉のひぐれの音のまだ濡れて 豊田都峰 京鹿子 200304
紙漉場夜もひそひそと水の音 大崎喜美子 200304
紙漉きの村の入口三椏咲く 布施まさ子 風土 200305
いくたびも水引き寄せて紙を漉く 内藤玲二 200308
因州人梨を作りて和紙を漉き 大畠政子 雨月 200312
山蔭となる百日を紙漉けり 岩木茂 風土 200402
漉きあがる紙の嵩なす雪明り 岩木茂 風土 200402
紙漉きの話に囲炉裏火の熾る 岩木茂 風土 200402
濃く薄く山並幾重紙を漉く 鈴掛穂 200402
紙漉きの腕を買はれて嫁ぎけり 江原輝陽子 帆船 200403
子のやうに水をあやして紙漉女 梅村よし子 200404
紙漉の国栖の石積ふきのたう 北村和子 草の花 200405
紙漉の国栖に春来る水の音 北村和子 草の花 200405
雪解や紙漉く軒に刷毛干され 北村和子 草の花 200405
紙漉けり漉簀と己が身を撓め 石川慧 200405
熟練の紙漉衣服濡らさざり 石川慧 200405
紙漉の一服の笑み自負見する 石川慧 200405
門川は今も豊けし紙を漉く 岡山裕美 雲の峰 200405
耕してありし紙漉き小屋の裏 山尾玉藻 火星 200405
花桃をバケツに紙を漉きゐたり 山尾玉藻 火星 200405
紙漉の春のあはひを漉いてをり 深澤鱶 火星 200405
手の窪のもも色なりし紙漉夫 飯塚ゑ子 火星 200405
泥紙を漉く春の灯をともしけり 山田美恵子 火星 200405
五つ六つ蕗の薹ある紙漉場 山田美恵子 火星 200405
漉き紙の重し板這ふ冬の蜘蛛 鈴木和香 栴檀 200405
落葉松の雪の蒼さよ紙を漉く 岸のふ 馬醉木 200405
紙漉や匁単位の秤置き 村重香霞 200406
春漉きの紙の純白雲の如 永田二三子 酸漿 200406
統一のゲルマン紙幣紙を漉く 林日圓 京鹿子 200502
ゆすりたる水の重さや紙を漉く 長岡新一 200503
口髭の無口の親父紙漉けり 藤平タネ子 200504
風のごと手風呂使ひて紙漉けり 藤平タネ子 200504
紙を漉く大きな窓の明るくて 中杉隆世 ホトトギス 200504
紙漉の小屋へ十歩の深雪掻く 鈴木漱玉 馬醉木 200505
推して敲いて漉紙の一枚目 藤田輝枝 対岸 200505
雪の窓眩しと紙を漉きにけり 藤田輝枝 対岸 200505
川灯台その奥の村紙を漉く 本多佑子 200505
漉舟へ体傾げて紙漉けり 本多佑子 200505
紙漉の仕上げ木の芽の匂ひせり 酒本八重 里着 200506
春光を重ねて紙の漉かれけり 七種年男 200507
紙漉きの里てふ幟夕河鹿 南恵子 万象 200508
紙漉き女一光体として灯る 安田優子 京鹿子 200601
紙漉場床に真水の流れけり 石川敬子 対岸 200602
老鶯や昼しんかんと紙漉村 鷹羽狩行 200607
葉桜の日の斑を和紙に漉きたしや 鷹羽狩行 200607
紙漉くはこころ漉くこと松の芯 鷹羽狩行 200607
風鈴を吊り紙漉の一と区切り 大西八洲雄 万象 200609
紙漉の家に長居し蟻払ふ 大西八洲雄 万象 200609
紙漉を守る一戸や水の秋 浜福恵 風土 200611
栗落つるかたへ漉き紙乾きゐて 山内なつみ 万象 200701
初体験水の重さの紙を漉く 井口淳子 200703
物言はぬ紙漉楽しからざるや 泉田秋硯 200705
昼も灯を点し越前和紙を漉く 木暮剛平 万象 200706
紙漉の土間を出入りの夏燕 大西八洲雄 万象 200708
色紙をあられ散らしに紙を漉く 森田節子 風土 200801
水音や紙漉村に雪の来る 白数康弘 火星 200802
しんしんと薬缶の滾るる紙漉場 白数康弘 火星 200802
耐ゆるとは無言なること紙を漉く 白数康弘 火星 200802
暮れがたの煮物の匂ひ紙漉場 白数康弘 火星 200802
紙漉きの村を灯して婚一つ 代田青鳥 風土 200803
朱のたすき蝶結びせり紙漉女 加藤峰子 200803
襁褓干す紙漉場とも家居とも 服部早苗 200804
時雨つつ紙漉く里の静かなり 渡邉紅華 酸漿 200804
紅梅や水をなだめて紙を漉く 柴田朱美 京鹿子 200805
子どもらが紙を漉きをり春休 小林優子 酸漿 200806
若州の竹の紙漉くそぞろ寒 田中佐知子 風土 200812
漉く紙の野の色貰ひ乾きけり 藤野力 馬醉木 200902
天窓に木の葉のうごく紙漉場 根橋宏次 やぶれ傘 200902
一燈の色重ねゆく紙漉女 近藤暁代 馬醉木 200903
紙漉の水音洩るる連子窓 外川玲子 風土 200903
歳月を負ふ太梁の紙漉場 桑田忠男 遠嶺 200905
春浅き紙漉村の川の音 高垣和恵 雨月 200905
紙を漉く土間に愛犬つながれて 坂口三保子 ぐろっけ 201002
紙漉くははぐくむににて紙漉女 渡辺美晴 201003
年寄りも乙女の瞳紙を漉く 石岡祐子 201003
初漉きの紙に山の日集めけり 阿部月山子 万象 201003
紙漉女とろりと水をめくりけり 久保久子 春燈 201003
美しき紙漉女の手荒れゐたり 小平恒子 酸漿 201003
紙漉きの音かすかなるお中日 山尾玉藻 火星 201004
渓流の奥に村あり紙を漉く 田中佐知子 風土 201004
春を待つこころを紙に漉き込んで 田中佐知子 風土 201004
学童の漉く高野紙ハガキ大 鈴木浩子 ぐろっけ 201004
漉紙の乾き切つたる白冴ゆる 永田二三子 酸漿 201005
暖かや日を漉き込めて和紙処 安武晨子 201008
和紙を漉く由来伝へて秋袷 能勢栄子 201012
紙漉きの町水音の涼しさよ 松田明子 201012
紙漉の講師の若しいそいそと 土屋青夢 ぐろっけ 201102
外の風の叩ける音や紙を漉く 大橋伊佐子 末黒野 201104
あたたかや本のとびらの手漉和紙 菅原末野 風土 201105
前窓の雪明りにて紙を漉く 泉田秋硯 201105
哀調の紙漉唄や奥吉野 田下宮子 201105
紅梅や紙漉小屋に人の影 大山文子 火星 201105
旅心もみぢに籠めて紙漉けり 中條睦子 万象 201110
紙漉けりしづかに水の音重ね 中條睦子 万象 201110
啄木鳥や水浄ければ紙を漉き 野中亮介 馬醉木 201112
灯ともして紙漉く貌となりにけり 山尾玉藻 火星 201201
紙漉きのひと日の嵩や腰力 藤原照子 201203
寒水を漉き重ねたる紙の嵩 塩路隆子 201204
冴え返る紙漉く人の赤き指 川井素山 かさね 201205
紙漉くを覗くはうしろめたきかな 服部早曲 201205
黄蘗色は祈りの色よ紙漉ける 延広禎一 201205
紙漉の水一枚を重ねつつ 須藤美智子 風土 201205
春惜しみけりみちのくの手漉和紙 高田令子 201207
紙漉くや峡の日差を呼び戻し 藤井君江 馬醉木 201212
焚火して紙漉く里の客迎ふ 笹村政子 六花 201212
両膝に水の重みの紙漉女 笹村政子 六花 201212
紙漉の一戸一戸に冬菜畑 大西八洲雄 万象 201301
紙漉や負はれたる子の足踊り 山田六甲 六花 201302
紙漉の窓に散弾銃の音 山田六甲 六花 201302
大寒の水笑ふほど紙を漉く 山田六甲 六花 201302
紙漉の手より日差しの逃げにけり 山田六甲 六花 201302
紙漉の手風呂の湯気も弱まりぬ 山田六甲 六花 201303
紙漉きの器用不器用一枚目 山本孝子 ろんど 201303
蓮糸を漉き込む和紙や涼新た 豊田高子 万象 201311
紙を漉く裏山で雲生まれつぐ 佐藤喜孝 あを 201402
私の代迄とぽつつかり紙漉女 甕秀麿 201403
紙漉や終生渓の音の中 田中佐知子 風土 201404
一水に魂込めて紙を漉く 室伏みどり 雨月 201405
三千の水を掬ひて紙漉女 和田照海 京鹿子 201405
鶯や漉き重ねたる越前紙 塩路隆子 201407
紙漉きの音冴え冴えと魂迎 浜口高子 火星 201411
一掬が国宝の技紙を漉く 中村ふく子 201501
紫蘇の実を扱いてくるる紙漉女 原田しずえ 万象 201501
千年の和紙生む技や紙を漉く 江島照美 201502
山水と雁皮なだめて紙を漉く 田伏博子 ろんど 201502
波起こし波引き寄せて紙を漉く 中林晴雄 201503
健やかに生きよ生きよと紙を漉く 熊谷ふみを ろんど 201503
ひたひたと鶴にもならず紙を漉く 今瀬一博 201503
紙漉や楮の絡む音乾ぶ 秋場貞枝 春燈 201503
ユネスコの吉報に湧き紙を漉く 丹羽武正 京鹿子 201504
紙漉いてろうそくゆらり長き夜 吉宇田麻衣 201504
紙漉くや梨園に昏き翳よぎる 岸上道也 京鹿子 201506
あぶる手を離して紙を漉きにけり 大崎紀夫 虻の昼 201510
陽はとうにかたむき夏の紙漉女 天野美登里 やぶれ傘 201510
紙を漉く伊勢商ひの江戸棚に 能村研三 201512
紙漉女いくたび水の機嫌とる 佐々木よし子 201603
水を漉き山気を漉きて紙を漉く 蒲田雅子 雨月 201603
紙漉きの村の真中を川流れ 蒲田雅子 雨月 201603
名人は目立たぬ人よ紙を漉く 江島照美 201603
村里に紙漉く音や時忘れ 高橋正江 末黒野 201603
灯点りて紙漉の足棒となる 南光翠峰 馬醉木 201605
一枚になす一掬ひ紙漉女 石黒興平 末黒野 201606
紙漉くや簾桁の波の踊り立ち 小林陽子 201701
紙漉きの漣あやす如きかな 大石恵子 201704
紙漉 →2      

 

2021年12月10日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。