猪.ゐのしし 1 (他季を含む)     224句

猪の寝に行く方や明けの月     去来

作品
作者
掲載誌
掲載年月
会ひし猪と一瞬角力の仕切りめく
磯崎兼久
199811
会ひし猪転がるごとく逃げゆけり
磯崎兼久
199811
青空へ大きな猪を吊りにけり
大島雄作
199901
ジャックナイフ突きつけ猪走つてくる
奥田筆子
京鹿子
199901
暁闇を猪(しし)やおおかみが通る
金子兜太
海程
199902
ひそと百戸猪棲む山を背戸に負ひ
松村紅花
ホトトギス
199904
昔信長命猪猿を恐れ住む
松村紅花
ホトトギス
199904
寒くて醒めて猪の足音覚えている
金子兜太
海程
199910
芋の露はや猪いでし畑と言ふ
阿部ひろし
酸漿
199911
山毛欅の幹からだ擦りて猪は親子
森下草城子
海程
199911
百キロの猪を仕留むに怪我人出る
渡辺美知子
199911
猪の返り血あびて父戻る
渡辺美知子
199911
猪罠を掛ける許可持つ父八十路
渡辺美知子
199911
裏山に猪飼ふ坊の太柱
波多洋子
銀化
200001
今朝も猪来しとぬた場の土あたらし
松崎鉄之介
200002
解禁日医院休診猪狩りに
永野秀峰
ぐろっけ
200002
猪撃の銃身みがく影大き
山本雅子
馬醉木
200004
車停め猪の親子をやりすごす
岡田万壽美
俳句通信
200004
夜の山猪の真上の崖氷柱
金子兜太
海程
200005
猪に遠く火を焚く村の衆
金子兜太
海程
200005
牙長き猪の頭や狩の宿
吉村玲子
円虹
200006
街中が洋燈の森猪も来る
前川弘明
海程
200006
天の瑠璃ふかく猪割かれをり
阿部寒林
200010
猪出づる噂瑞穂の神郡
岩崎きゑ子
馬醉木
200011
猪の棲む山わが町の一部分
稲畑汀子
ホトトギス
200011
猪の注意山路となるところ
稲畑汀子
ホトトギス
200011
猪撃の耳を大きく老いゐたり
山尾玉藻
火星
200011
猪罠の鉄柵の銹なまぐさし
大橋敦子
雨月
200011
千枚田猪除けの網一箇所に
久保田由布
ぐろっけ
200011
老農の猪の足跡を指し嘆ず
内山芳子
雨月
200012
猪の皮裏返したる主かな
伊藤多恵子
火星
200102
農の血の目覚むる思ひ猪食うて
金森教子
雨月
200102
猪撃ちの土間に百貫竿秤
森脇恵香
俳句通信
200102
猪食うて温泉に四肢のばす思ひきり
竹内喜代子
雨月
200103
木綿四手や子連れ猪ねまりをる
延広禎一
200103
猪喰ひし息吐いてゐるまくれなゐ
深澤鱶
火星
200103
猪が寺頒の藪に出没す
永野秀峰
ぐろっけ
200103
猪肉の咲く大皿や余呉の宿
永井丈夫
200104
猪喰つて荒星に吐く息太し
宮川杵名男
春耕
200104
料理法指示して猪肉贈らるる
永野秀峰
ぐろっけ
200104
猪撃の脱ぎ捨てられし雨合羽
平田安生
風土
200105
猪の眼を青と思いし深眠り
金子兜太
海程
200105
大猪の耳を祀りて老猟夫
武政礼子
雨月
200106
猪食うて丑三つどきの灯を余す
村田冨美子
京鹿子
200107
猪食うて闇いづかたもおろかかな
岡井省二
200108
猪穴の一夜に増えし油照
長田秋男
酸漿
200109
瓜坊殖えて猪害灘神戸
浮田胤子
ぐろっけ
200110
猪の出没に馴れ芦屋川
稲畑汀子
ホトトギス
200111
芦屋にも猪下りて来る山路あり
稲畑汀子
ホトトギス
200111
猪の荒し畑秋耕の手間はぶく
山口秀子
酸漿
200111
雨後の人参畑に猪の道
高尾豊子
火星
200201
手負猪ダムに転がり落ちにけり
高見岳子
雨月
200201
猪罠のしつらへありし落葉嵩
鈴鹿野風呂
京鹿子
200202
猪の肉噛みしみじみと猟夫の忌
渡邊牢晴
雨月
200202
包み紙荒く猪肉届きけり
唐沢静男
春耕
200202
猪狩の時だけ会へる女かな
堀義志郎
火星
200203
腹巻に母の戒名猪を追ふ
服部菰舟
雨月
200203
猪撃ちの妻と謗られ頬被
服部菰舟
雨月
200203
猪の血の残りし雪を埋めけり
石鍋みさ代
春耕
200203
勢子衆の猪臭くなり戻りくる
下平しづ子
雨月
200206
猪食うて鏡の向きを変へにけり
嵯峨根鈴子
火星
200207
園の猪雲の流れに山を恋ひ
鈴鹿仁
京鹿子
200211
罠の猪暴れワイヤーぶち切れり
渡辺美知子
200212
猪撃たる里山の風遠鳴りす
豊田都峰
京鹿子
200212
まだ息のある如猪の吊られゐる
堀一郎
雲の峰
200212
猪罠も庖瘡神も野に荒びぬ
山田弘子
円虹
200301
臀より猪塩出づる天鈿女かな
栗栖恵通子
200301
手負猪ゐる山中を怖れゆく
下平しづ子
雨月
200302
修羅の目となりて猪撃つ構へ
森脇恵香
雲の峰
200303
猪食うてビルマ戦線語る友
駒井でる太
200304
猛進の猪のごと地吹雪す
八條凛子
銀化
200304
猪を追ふ勢子の一人に加りぬ
須佐薫子
帆船
200310
猪現るとぶつきらぼうに言うて過ぐ
戸栗末廣
火星
200312
堂々と猪が横切る遊歩道
中谷喜美子
六花
200312
猪歳の女に与ふ猪の肉
苑実耶
200312
猪食うて雪がふりこむ紙屋川
岡井省二
省二全句集
200312
回れ右猪の意地芸一度のみ
禰寝瓶史
京鹿子
200401
猪出でて白紙のままの農日記
三間菜々絵
遠嶺
200402
猪狩を駆除と言ひたる島ぐもり
戸田和子
200402
猪狩のひとりが里に戻りゆく
戸田和子
200402
子連れ猪古刹の径を下りて来る
河本勇
築港
200402
邸坂猪うろたへるクラクション
品川鈴子
ぐろっけ
200402
猪の蹄のこして罠ぬける
河本勇
築港
200404
鉢合せして驚かぬ子連猪
長田秋男
酸漿
200411
猿猪に次ぎて熊出で冬に入る
長田秋男
酸漿
200411
猪かがり焚く遠巻きに猪ゐるか
今瀬剛一
対岸
200411
猪食ひし後の他言の許されず
伊藤白潮
200411
罠の猪大地揺さぶる断末魔
大木茂
万象
200412
磴粗し猪出るといふ天神社
辻井桂子
春耕
200412
猪罠のさう遠くない日向かな
山尾玉藻
火星
200501
撃ちし猪池に沈めて冷しあり
赤松丹山
雨月
200501
「猪注意」の看板大学構内に
村井久美子
200502
猪罠やまつすぐ走る山の水
戸栗末廣
火星
200502
猪の肝食べ沢鳴りを近くする
江崎成則
六花
200504
手負ひ猪恐ろし岩を登りつめ
長村雄作
栴檀
200505
犬が守る戸板に張らる猪の皮
宮原利代
ぐろっけ
200505
望の夜に猪二十まり捕へしと
大坪景章
万象
200212
猪道に猪罠のあるこの世かな
高橋将夫
200510
猪寝かせありたる地に雪降り来
山尾玉藻
火星
200601
猪の鼻向けて聞く秋の風
三関浩舟
栴檀
200601
猪罠に残る片脚乾びけり
大木茂
万象
200601
有線の喊声猪を追ひ詰むる
阪本哲弘
200602
吊したる猪のふぐりのたくましき
赤松郁代
万象
200602
奥熊野戸袋に貼る猪の皮
赤松郁代
万象
200602
たかんなを古道に散らし猪食めり
小林洋子
万象
200603
猪宿の玻璃に口紅引きにけり
松井倫子
火星
200603
猪の膠の如き血糊なる
森田博
200603
野遊びの猪の足跡そこここに
渡辺清子
200605
曼珠沙華撒きちらしある猪の里
山尾玉藻
火星
200611
山の湯に猪の親子の来るといふ
藤井佐和子
200612
鬼の山猪出没の札を立て
永井雪狼
200701
面食といはれてをりぬ猪の前
折橋綾子
200701
六甲の猪すれ違ふ宮参り
唐鎌光太郎
ぐろっけ
200701
猪肉といひて闇汁すすめらる
水谷ひさ江
六花
200701
猪が夜毎耕す捨畑
長田秋男
酸漿
200701
猪を撃ち猪にいのちをとられしと
服部早苗
200701
猪撃ちて四脚吊りの天秤棒
広瀬千鶴
万象
200702
猪狩の大和のふうを好みたる
瀬川公馨
200702
見晴かす猪の掘りたる穴の数
城戸愛子
酸漿
200702
熊も猪も神楽太鼓を聴いてゐる
泉田秋硯
200703
休田の死角に猪のぬた場かな
黒田咲子
200703
尾を立てて川渡る猪に初日射す
中山フジ江
200703
涸れ川を伝ひて来たり猪親子
大橋雅子
万象
200705
猪吊す在原に業平の墓
岩木茂
風土
200705
一夜にて猪の餌となる甘藷畑
関戸国子
酸漿
200705
月に影連ね猪狩発ちゆけり
薮脇晴美
馬醉木
200706
手負ひ猪遁れ去りたる修験道
薮脇晴美
馬醉木
200706
子連れ猪やりすごしたる老猟夫
薮脇晴美
馬醉木
200706
猪撃ちし無線の声の裏返る
薮脇晴美
馬醉木
200706
鬨を上ぐ大猪の脚しかと結ひ
薮脇晴美
馬醉木
200706
猪舁きて残照の岨下りゆく
薮脇晴美
馬醉木
200706
吊る猪の眥月に濡れゐたり
薮脇晴美
馬醉木
200706
猪捌く月射す土間に影を曳き
薮脇晴美
馬醉木
200706
炭に似て笊に乾びし猪の肝
薮脇晴美
馬醉木
200706
後苑の猪の荒れやう見たくなし
浅井青陽子
ホトトギス
200707
猪のわるさをかやうしかじかと
佐藤山人
200711
村捨つる猪に泣かされきたる日々
柴田良二
雨月
200801
トンネル抜け猪の皮干す詠みづらし
丸山佳子
京鹿子
200802
村人の捨てし田猪のねまり跡
吉田俊子
万象
200803
山の芋掘るや猪来ぬうちに
内海良太
万象
200803
由々しきは猪に自然薯盗まれし
佐藤山人
200803
猪撃ちの一列となり杣の造
廣畑忠明
火星
200803
朝月夜猪罠の錆落す
吉村摂護
200803
猪のぬた場うつすら凍つる朝
伊藤いな栄
酸漿
200803
猪追ひし昂り夜も消えぬ犬
木村享史
ホトトギス
200804
四季吊られ猪は冬毛の温きかな
鈴木榮子
春燈
200804
山中の奥に追はるる手負猪
下平しづ子
雨月
200804
猪食べに男らが行くハイウエー
坪内稔典
稔典句集U
200804
猪のここに幸あり喰みしあと
丸山佳子
京鹿子
200806
猪垣の外に人住み猪も棲み
村松紅花
ホトトギス
200808
猪の山仏頭なども飛んで来よ
伊藤白潮
200811
猪肉の支那竹のごと余りたる
ことり
六花
200811
きしきしと猪肉噛んでをりにけり
ことり
六花
200811
大猪の温かさかな兜太の掌
田村葉
炎環
200812
猪來し痕円墳多き谷の口
松崎鉄之介
200812
連れ立ちて猪の子二頭山出づる
唐鎌光太郎
ぐろっけ
200901
堂裏に猪出るといふ南禅寺
熊岡俊子
雨月
200901
白猪の神棲む山のぬた場かな
中田禎子
白猪
200901
猪食うて走り出したる胃の腑かな
塩路隆子
200902
伊吹嶺の笠雲佛ふ白猪よ
延広禎一
200902
白猪の聲して神居古潭かな
雨村敏子
200902
白猪や深空明るき神の山
竹中一花
200902
野猪の親子飛び出すゴルフ場
佐藤健伍
200902
猪の肉の塊午後の椅子
大畠響
炎環
200902
疣猪の眷族よぎる車停め
品川鈴子
龍宮の客
200904
一撃に猪を屠りし宴なり
泉田秋硯
200905
雪山の暮れ際蒼し猪食ふか
土井三乙
風土
200905
竹槍で仕留めたといふ猪の肉
小林玲子
ぐろっけ
200905
猪の皮晒す小流泡立てる
小林玲子
ぐろっけ
200905
火を囲み猪の肉売る峠口
小林玲子
ぐろっけ
200905
猪を撃つ銃の音春隣
白石正躬
やぶれ傘
200905
猪来しを語りつつ干す唐辛子
上原重一
200911
天高し猪と共存部落なり
酒本八重
200912
猪道や雲の上なる口を仰ぎ
大竹淑子
風土
200912
障子干しある猪の山の裾
山尾玉藻
火星
200912
大方は猪に掘られし芋を掘る
伊藤克子
酸漿
200912
猪と目を合さぬやうにしてをりぬ
山田六甲
六花
200912
前略十年猪の皮干す宇治田原
丸山佳子
京鹿子
201001
甲斐を行く猪撃つ音を間遠にし
森岡正作
200101
呼吸合はせ相棒どうし猪担ぐ
佐藤山人
201001
吊るされし猪の毛並のおそろしき
太田實
ぐろっけ
201001
分銅の台秤あり猪一頭
塩路隆子
201002
猪追ひの警笛夜の小海線
渡辺輝子
201002
摩耶山のバス停脇に猪ぬた場
塩出眞一
ぐろっけ
201002
猪喰らひ底なき眠り寝かし置く
泉田秋硯
201003
猪滑り下りたる跡のしるき崖
柴田良二
雨月
201003
知事認可証貼り大猪檻どかと
柴田良二
雨月
201003
猪狩のこゑ川の辺へ下りゆけり
蘭定かず子
火星
201003
畝合ひに猪の親子の足の跡
川口崇子
万象
201006
猪のぬた場凸凹霜の花
坂口夫佐子
火星
201006
振り向けば猪蹤いてくるのどけさよ
岩垣子鹿
ホトトギス
201007
猪に掘り返されし雄岳道
福田雅子
万象
201010
ぬばたまの夜跋扈する千の猪
福田雅子
万象
201010
ゐのししの大群に会ふ熱帯夜
長田秋男
酸漿
201010
昼も夜も花火を鳴らし猪を追ふ
城戸愛子
酸漿
201010
猪の稲に喰ひつく山の国
滝沢伊代次
万象
201011
猪の短き脚の縛らるる
柴田佐知子
201011
猪垣に大地のうねり従ひぬ
柴田志津子
201012
猪の子のころころよぎる遍路みち
柴田志津子
201012
猪除けの燻べに藪のぞめきだす
南うみを
風土
201012
括らるる猪に夕日のいつまでも
浜口高子
火星
201012
猪も鹿も出没せしと坊が妻
山本漾子
雨月
201012
猪鹿の足跡のこる畑起す
川端郷思
雨月
201012
猪の尻に仔を連れ餌を探す
ことり
六花
201012
萱を刈る猪の塒を壊しつつ
長田秋男
酸漿
201012
猪罠を仕掛けて戻る禰宜の妻
和田照海
京鹿子
201101
僧の持つ灯火頼りに猪の道
角谷美恵子
ぐろっけ
201101
荒けなき猪の跡あり離宮道
手島靖一
馬醉木
201102
父の釘ぬいて猪垣つくろひし
和田照海
京鹿子
201102
猪喰うていちばん先に眠りけり
丸山照子
火星
201102
ぬかるみの猪止めの扉を押しにけり
浜口高子
火星
201102
猪の小屋の前より登山道
須賀敏子
あを
201102
山芋を猪食い荒す夜な夜なに
沖則文
ぐろっけ
201102
猪垣の通電確かめ山下る
沖則文
ぐろっけ
201102
店頭に猪吊り秩父祭くる
山田春牛
万象
201103
害獣になされ彷徨ふ母子猪
山口博通
ぐろっけ
201103
幾度も猪が掘りたり霜畑
長田秋男
酸漿
201103
小猿背に駈ける猪奥丹波
塩路五郎
201104
柿畑を荒した猪の肉貰ふ
高倉恵美子
201104
猪は檻に全き魂抜かれ
矢野百合子
201104
猪罠をかけて後を振り向かず
長節子
201104
起ち上がる猪また倒る仕掛罠
長節子
201104
したたかに猪のあばれし仕掛罠
長節子
201104
折れし足肉を突き出る罠の猪
長節子
201104
猪罠の網ひとところ破れたる
長節子
201104
どうにでもせよと倒れしままの猪
長節子
201104
航ひ解く猪首の肩や風光る
新谷フクヱ
末黒野
201105
猪の気付かぬ先の初蕨
宮脇百合子
201108
猪罠を今日仕掛けよと触れ回る
鈴木千恵子
万象
201109
ゐのししと枯草いきれ共にせり 林朋子 船団 199903
ゐのししの暴れたる墓洗ひけり 中村雅樹 百鳥 200111
ゐのししの棲む六甲の裾に住む 稲畑汀子 ホトトギス 200511
ゐのししのゐの字のかたちしてゐたり 戸栗末廣 火星 200604
ゐのししや三日坊主の初日記 芝尚子 あを 200704
ゐのししのうしろは淋し十二月 木村茂登子 あを 200802
猪 →2      

 

2021年10月4日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。