浅 蜊 1    206句

いせのあまのしほひにあさりもとめたる

かひをそまもるみをはすてつつ  葉室光俊

作品
作者
掲載誌
掲載年月
潮もよし帰りは浅蜊掘るつもり 堀江清子 円虹 199807
姑の忌の厨に浅蜊哭きにけり 井田実代子 雨月 199807
夜の雲あさりの模様みなちがう 三宅やよい 船団 199903
蝦姑を売り浅蜊を量り自由市 宮津昭彦 199906
瀬戸内の手掘りと書かる浅蜊かな 金國久子 遠嶺 199907
出刃一本浅蜊の桶に沈みをり 川端和子 遠嶺 199907
夜のしじま饒舌となる浅蜊かな 頓所敏雄 199907
汐を吹く浅蜊に濡るる調理台 谷添睦子 199907
少年の黙す反抗あさり汁 加藤奈那 ぐろっけ 199908
浅蜊籠さげて滴の歩となりぬ 飯塚ゑ子 ヒッポ千番地 200006
潮満つや手に手にもどる浅蜊籠 鰍澤真佐子 春耕 200007
居酒屋にいつもの客や浅蜊汁 香川はじめ 春耕 200008
浅蜊噴く水八方に明易き 池元道雄 馬醉木 200009
浅蜊ほり貝の模様も人の顔 日野公子 ぐろっけ 200011
ことことと煮たる嘆きの浅蜊汁 武藤嘉子 木椅子 200102
諍ひの途中浅蜊の水替へぬ 小林あつ子 火星 200104
相席のなまりやはらか浅蜊めし 北川とも子 ぐろっけ 200105
街道の松の陰より浅蜊売 小山徳夫 遠嶺 200106
両膝つき双手にて父浅蜊掻く 渡辺美知子 200106
浅蜊籠山と積みたる舟遅し 皆川盤水 春耕 200107
手の中に数へる程の浅蜊掘る 足利ロ子 ぐろっけ 200107
潮吹いて浅蜊進退極まれり 伊藤重美 雲の峰 200204
浅蜊舟潟に乱舞のかもめかな 小林啓子 春耕 200204
影のやう道濡れ浅蜊賣はゐず 佐藤喜孝 あを 200204
言訳は口に出すより浅蜊汁 松村美智子 あを 200205
むづかる子浅蜊の闇は活きる闇 森理和 あを 200205
かしやかしやと浅蜊を洗ふ夫は留守 芝尚子 あを 200205
息づかひさざなみとなるあさりかな 吉弘恭子 あを 200205
浅蜊二噸フォークリフトで舟より揚ぐ 渡辺美知子 200206
味覚なき母に作りし浅蜊汁 北島上巳 酸漿 200206
朱の椀にずしりと重き浅蜊汁 萩谷幸子 雨月 200206
浅蜊売こぼせし潮の匂ひけり 鈴木夢亭 春耕 200206
浅蜊取籠引きずりて戻りけり 大塚禎子 春耕 200206
船宿の朝餉の早き浅蜊汁 藤井昌治 200206
浜祭千七百人で浅蜊掘る 渡辺美知子 200207
浅蜊の斑みなまちまちの運不運 渕上千津 200208
春しぐれ連れ深川のあさりめし 外川玲子 風土 200304
浅蜊売り日暮の似合ふ町の角 城石美津子 京鹿子 200304
潮待ちの磯に貼りつく浅蜊船 松原安治 遠嶺 200305
汁椀に浅蜊のあたる音なりき 加藤みき 200305
埋めたての海はるかにす浅蜊飯 樋口英子 200305
大使館前なり浅蜊パスタなり 高田令子 200306
深川の江戸名残てふ浅蜊めし 江木紀子 雨月 200306
浅蜊籠長靴載せて帰りけり 三遊亭金遊 百鳥 200306
浅蜊飯鬢付けの香の通り過ぐ 関薫子 百鳥 200307
母の忌や浅蜊につよき貝柱 本多俊子 200307
わたつみを呑みては吐きて大浅蜊 近藤喜子 200405
いとはとこ浅蜊つぶやく昼厨 土生逸磨 河鹿 200406
喪帰りのあらぬ饒舌浅蜊飯 廣島泰三 200406
酒蒸の浅蜊汁わが誕生日 小林正史 200406
有明の砂をこぼせし浅蜊かな 柿沼盟子 風土 200406
早朝のニユース原稿浅蜊汁 中嶋陽子 風土 200406
真砂女句碑小さきが良かり浅蜊汁 林裕子 風土 200406
浅蜊むく古老の昔語りかな 鈴木一明 築港 200407
浅蜊掘る空に溶け込む大干潟 陣野今日子 風土 200407
ずぶぬれは知多半島の浅蜊舟 小林てる子 草の花 200407
拠所無く家族増ゆ浅蜊汁 数長藤代 200408
浅蜊鳴く波のかたちの殻負ひて 長屋璃子 火星 200408
夕暮れの路地に浅蜊を洗ふ音 中和田洋美 万象 200409
ひょっこりと鯉屋杉風浅蜊めし 山元志津香 八千草 200410
秋潮をしぶきて浅蜊舟戻る 大坪景章 万象 200501
アフリカの青年浅蜊洗ふ秋 大坪景章 万象 200501
浅蜊めし古地図の江戸の水ゆたか 服部早苗 200505
豆味噌の渋味懐かし浅蜊汁 門田陽子 200505
砂抜きの浅蜊ごとりと動きけり 廣畑忠明 火星 200505
舵捌く腰を要の浅蜊舟 一民江 馬醉木 200506
浅蜊掘る穴にときどき指洗ひ 田中英子 火星 200506
呟きの一語や夜の浅蜊鳴く 中谷葉留 風土 200506
朝市のくらがりへ置く浅蜊籠 高橋さえ子 200506
浅蜊炊く老舗三軒佃島 奥田弦鬼 風土 200507
浅蜊掻き縄文びとの話など 宮島宏子 200507
雑音の入るラジオや浅蜊汁 与川やよい 遠嶺 200508
朝市の浅蜊何やら呟けり 菅野末野 風土 200511
汐の香を立てて焼かるる串浅蜊 土屋酔月 火星 200604
浅蜊籠桟橋の端濡らしけり 大串章 百鳥 200604
人工海岸浅蜊の旬となりにけり 入澤正 春燈 200605
絵手紙のモデルの浅蜊汐飛ばす 村上和子 ぐろっけ 200605
甲斐の無き会議の後の浅蜊飯 濱上こういち 200606
あさり飯むかしながらの舟溜り 渡邊泰子 春燈 200607
浅蜊汁口ひらく間の潔さ 竹内文子 遠嶺 200607
浅蜊置く辺りに汐の乾きをり 秋千晴 200611
吐く砂も白し浅蜊をうちすすぎ 前川明子 200701
寒浅蜊蒸籠の飯に香立つ 大房帝子 酸漿 200703
夕厨浅蜊いまはの息を吐き 横田初美 春燈 200705
浅蜊掘るこころ砂紋にはじまれり 百瀬七生子 海光 200705
ぬかるみの路地に捨てしよ浅蜊殻 大川冨美子 ぐろっけ 200705
灯を消せば桶の浅蜊の鳴きにけり 森ひろ 馬醉木 200706
ぐいと押し婆の見送る浅蜊舟 田中幹也 万象 200706
浅蜊汁離ればなれの夫婦かな 保田英太郎 風土 200706
浅蜊籠傾かせたる次の波 飯塚ゑ子 火星 200706
浅蜊汁身の無き殻を摘みけり 横山迪子 六花 200706
うやうやしむず挽椀に浅蜊汁 安永圭子 風土 200707
手作りの麦味噌ほっこり浅蜊汁 中野英歩 八千草 200709
花の色秘めて浅蜊の売られけり 島谷征良 風土 200803
浅蜊飯東男として果てん 稲畑廣太郎 ホトトギス 200804
暗がりの浅蜊の恨み声を聞く 藤井佐和子 200805
法事また阿鼻叫喚の浅蜊塚 塚本みのる 春燈 200805
大浅蜊殻のもやうは伽羅百済 遠藤実 あを 200805
虹の根は浅蜊の住まふあのあたり 遠藤実 あを 200805
浅蜊飯妻の味から嫁の味 遠藤実 あを 200805
朝市の浅蜊の値札金釘流 遠藤実 あを 200805
水飛ばす浅蜊に出自問ひにけり 上原朝子 200806
買はむとてただす浅蜊の氏素姓 神山志堂 春燈 200806
両の手に受くる浅蜊の死んだ振り 藤井佐和子 200806
しばらくは湖の色なる浅蜊舟 木内憲子 200806
驚けと畳の上に浅蜊撒く 泉田秋硯 200807
浅蜊飯間口二間の藍のれん 斎藤弘行 遠嶺 200807
網焼は今朝到来の大浅蜊 青木政江 酸漿 200807
隣家より浅蜊の届く夕餉前 坂本知子 酸漿 200807
上げ潮の思はぬ速さ浅蜊籠 野畑小百合 200809
浅蜊とは丑三つ時に語り出す 稲畑廣太郎 ホトトギス 200904
房総の風を纏ひて浅蜊掘る 稲畑廣太郎 ホトトギス 200904
浅蜊掘る江戸前といふ技のあり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200904
橋立は神の通ひ路浅蜊舟 岩木茂 風土 200906
酒蒸しの浅蜊の残す貝柱 四條進 200906
ややりあて浅蜊水噴く夜の厨 吉沢陽子 200907
縄文の静けさにあり夜の浅蜊 近藤喜子 200907
酒蒸しの浅蜊に噎ぶ一考忌 土居美智子 ろんど 200907
事ここに至りて浅蜊蓋を閉ず 久保東海司 200908
子の声の消えし厨に浅蜊泣く 川島澄子 酸漿 200908
艫綱を解けば一人や浅蜊舟 渡部節郎 転舵の渦 200911
陶碗のスープ太湖の大浅蜊 江見悦子 万象 201004
幼子のバケツに浅蜊舌を出す 内田郁代 万象 201006
弁財天祀る小島や浅蜊船 古川千鶴 201006
浅蜊煮や揖斐の河口の店先に 長崎桂子 あを 201006
今晩の浅蜊の文様さつぱり系 きくちきみえ やぶれ傘 201007
灯りし錦市場や浅蜊鳴く 坂口夫佐子 火星 201007
水張れば桶の浅蜊の鳴きにけり 江木紀子 雨月 201007
深川や蕉翁偲ぶ浅蜊めし 次井義泰 201008
浅蜊汁いまはの言葉あらざりき 森さち子 201008
目秤で量る麦味噌浅蜊汁 天野美登里 やぶれ傘 201008
潮吹くを指で確め浅蜊買う 大西ユリ子 ぐろっけ 201010
兄の句碑浅蜊を掘りし浜の辺に 品川鈴子 ぐろっけ 201102
呟いて浅蜊は夜を司る 稲畑廣太郎 ホトトギス 201104
気が付けば沖に残され浅蜊掻く 中島玉五郎 201105
まだ育つ余地ある浅蜊啜りけり 久染康子 201105

 東北関東大震災

砂泥吼ゆ浅蜊の漁場埋めし街

安藤しおん 201105
夜の浅蜊あくびのやうな息をして 相良牧人 201106
圧力鍋蒸らす間浅蜊音こぼし 角谷美恵子 ぐろっけ 201106
浅蜊めし父母亡き家の梁軋む 荒井千佐代 201107
不動尊参るついでの浅蜊飯 小池一司 やぶれ傘 201107
江戸の雨ひとり操る浅蜊船 松本周二 かさね 201205
歳時記の師の句や今朝の浅蜊汁 佐々木秀子 201205
浅蜊どちどこに消えしか郷の島 岡田満喜子 ぐろっけ 201206
身を反らせ漁るおぼろの浅蜊舟 浜口高子 火星 201206
君が代にひとつ開かぬ浅蜊汁 野口喜久子 ぐろっけ 201207
浅蜊掘り渦潮くづれの潮さし来 稲山忠利 ぐろっけ 201208
五臓六腑酔ひを醒ませよ浅蜊汁 仲田眞輔 ぐろっけ 201208
窓越しに雀の声を浅蜊汁 天野美登里 やぶれ傘 201209
浅蜊汁分の浅蜊を採つて足る 田中貞雄 ろんど 201209
波に腰打たれ鋤簾の浅蜊取 石黒興平 末黒野 201304
小品の墨絵に似たる浅蜊粒 遠山みち子 201305
浅蜊取り潮満ちてくる帰らうか 大日向幸江 あを 201308
海を恋ひ浅蜊呟く厨かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201404
一握の砂より出でし浅蜊かな 山田六甲 六花 201404
流木の浜を出でゆく浅蜊船 浜福恵 風土 201405
ネットより汐吹きてゐる浅蜊かな 瀬島洒望 やぶれ傘 201405
誕生日浅蜊口開くパエーリャ 小林愛子 万象 201406
浅蜊飯お清ましあれば足るるなり 田中貞雄 ろんど 201406
鬼浅蜊堤げて浜つ子の友来たり 安井和恵 201406
灯を消して桶の浅蜊の世界かな 原田しずえ 万象 201406
江戸めぐりの地図の折り皺浅蜊飯 宮田香 201406
ムール貝浅蜊に代へてパエーリア 粟倉昌子 201406
口開かぬ椀の一粒浅蜊汁 小林のり人 春燈 201407
口あけぬものの寂しさ浅蜊汁 熊川暁子 201407
浅蜊汁天草の砂とぞ思ふ 平野みち代 201407
浅蜊掘る灘の浮島より低く 和田照海 京鹿子 201407
水を吐く浅蜊にもある二枚舌 村田岳洋 ろんど 201407
夜の浅蜊やまとことばの泡ひとつ 服部早苗 201407
水門は玄関口や浅蜊舟 渡部節郎 201504
塩水の 気泡 あぶく はきたる浅蜊かな 今井充子 201505
いつよりか離ればなれに浅蜊掘る 大石よし子 雨月 201507
深川の旅情を深む浅蜊めし 片山喜久子 雨月 201507
少々の砂はそのまま浅蜊汁 高橋均 やぶれ傘 201508
舌を出す浅蜊のちよんと叩かるる 山内碧 201510
今晩の浅蜊の模様さつぱり系 きくちえみこ 港の鴉 201510
二人して出てこぬ書名浅蜊汁 田村園子 201605
砂吐いて浅蜊は海の記憶消す 峰崎成規 201606
明日のこと思はぬでなし浅蜊汁 木村傘休 春燈 201606
川風や浅蜊めし屋の紺のれん 鶴岡紀代 春燈 201606
砂出しを急きて叶はぬ殼浅蜊 中谷未知 末黒野 201606
浅蜊舟小さきは海に返しやる 岡村彩里 雨月 201606
朝市の鳴いて買はるる浅蜊かな 栗原公子 201607
浅蜊めし米屋畳屋向かひあふ 高橋道子 201608
浅蜊売る姉さ被りの媼かな 柴田歌子 201608
浅蜊買ふつぶやくやうに潮を吐く 水谷文謝子 雨月 201608
魂を吐き出し浅蜊煮られけり 前田美恵子 201608
事ここに至りて浅蜊蓋ひらく 久保東海司 201609
深き夜の交信盛ん浅蜊噴く 甲州千草 201704
波の音させて浅蜊を洗ひけり 内海良太 万象 201705
淡く置く富士の遠嶺に浅蜊掘る 松本鷹根 京鹿子 201706
海中(わたなか)に溺れてゐたり大浅蜊 寺田すず江 201706
孫たちの所在確め浅蜊掻く 片山喜久子 雨月 201707
島人に浅蜊掻く浜失せにけり 片山喜久子 雨月 201707
浅蜊蒸すてんでばらばら口開く 田村園子 201707
汐吹いて浅蜊ことりと夜の厨 駒形祐右子 万象 201707
酒蒸しの浅蜊は酒に飲まれけり 宮田千恵子 万象 201708
浅蜊飯写真の人と向き合うて 窪みち子 201708
夜鳴きせる浅蜊の濡らす桶周り 甲州千草 201806
錆釘や厨の闇に浅蜊鳴く 平田きみこ 風土 201807
浅蜊汁更紗で隔つ半個室 中嶋陽子 風土 201807
転舵して円き水脈描く浅蜊舟 中西恒弘 201807
寝足りたる海辺の宿の浅蜊汁 安藤久美子 やぶれ傘 201807
手応へのそこそこにあり浅蜊掻く 山口登 末黒野 201808
海を見て宿の朝餉の浅蜊汁 大山夏子 201902
浅蜊 →2      

 

2021年2月25日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。