鰤 (寒鰤)     199句

本物は世に出たがらず寒の鰤    加藤郁乎

  鰤起し  鰤大根

作品
作者
掲載誌
掲載年月
前書・その他
糶場なほ広げ鰤舟待ちにけり
松本松魚
円虹
199809
八潮路のさはの鰤場や熊野灘
鈴鹿野風呂
京鹿子
199810
鰤を裂く裸電球真上にし
久崎富美子
199901
俎板に己が影置き鰤を裂く
久崎富美子
199901
寒鰤のしぶきを立つる日本海
石井たを子
199903
寒鰤に鋭き出刃の能登の宿
小林俊彦
春耕
199903
鰤糶りてあと大荒れの海と山
久崎冨美子
199904
寒鰤の氷咥へて糶られけり
広渡敬雄
『遠賀川』
199909
送られし寒鰤厚し苞の中
能村登四郎
200001
ふたつ身に鰤捌かれし水しぶき
坂本俊子
200002
七尾線すこし眠りて鰤の海
坂本俊子
200002
寒鰤や大佐渡小佐渡雲の層
皆川盤水
春耕
200003
寒鰤の届くと出刃を研ぎにけり
西村純一
雲の峰
200003
鰤の修羅嘘の如くに光る海
辻口静夫
ホトトギス
200008
鰤さばく出刃手になじむ朝市女
前川みどり
春耕
200102
横たはる鰤が地上に血を流す
栢森定男
あを
200102
鰤の尾がはみ出す自転車の荷台
栗山みどり
200103
寒鰤の競る声終り夕霰
皆川盤水
春耕
200103
鬼神太鼓鰤まつ浦にとどろけり
益本三知子
馬醉木
200104
鰤寄する能登の雷鳴先達に
益本三知子
馬醉木
200104
一本の黄の線引いて鰤速し
中嶋陽太
ホトトギス
200104
陸の鰤どころとしての尾鷲かな
粟津松彩子
ホトトギス
200104
寒鰤や能登には能登の海の色
細川吽水
ホトトギス
200104
まだ動く鰤を跨いで糶りすすむ
細川吽水
ホトトギス
200104
寒鰤を焼いて炎に脂焼く
細川吽水
ホトトギス
200104
豊漁の鰤糶る足の踏み場なく
小川公巴
ホトトギス
200104
生臭き活気に鰤の糶られをり
小川公巴
ホトトギス
200104
鰤を糶る熱気に符牒解せぬまゝ
小川公巴
ホトトギス
200104
鰤市の鏡割り知事仕る
石田砧女
200104
鰤市沸く巾着切りが出る程に
石田砧女
200104
鰤市の奇声の女房まくしたて
石田砧女
200104
臍繰りの化けたる鰤の提げ重る
石田砧女
200104
俎板に青く光りて鰤の顔
河合笑子
あを
200104
散骨もよし鰤およぐ海ならば
坂本俊子
200201
鰤割くに山刃の背叩く年の市
小林昌子
200202
荒波をもどりし漢鰤提げて
邑橋淑子
遠嶺
200203
鰤網に立山連峰翼張る
託正夫
200204
炭あかあか鰤惜しみなく脂垂れ
大島寛治
雨月
200204
鰤厚く切り熱く焼き夕餉にと
川口咲子
ホトトギス
200205
寒裡ぶりの煮付の鰤の照り
須佐薫子
帆船
200301
飛び乗らむには鰤船の揺れ激し
長沼三津夫
200302
鰤網のいま追ひ込みの掛声に
長沼三津夫
200302
鰤網の飛沫のすでに生臭し
長沼三津夫
200302
鰤網の絞られ修羅の雑魚ばかり
長沼三津夫
200302
鰤網の灯色を鴎舞ひに舞ひ
長沼三津夫
200302
鰤網の薙ぎたるブイを正しけり
長沼三津夫
200302
鰤網を零れし雑魚に鴎はや
栗虫信子
200302
海鳴や鰤の街なる家構
徳永美智子
200302
鰤船に鴎の忽と獣めく
徳永美智子
200302
鰤を焼く妻の手順をそのままに
井上輝男
築港
200303
寒鰤に糶声湧けり佐田岬
麻生當子
200303
能登も外れ地べたで女鰤を割く
託正夫
200303
鰤雑煮九州男子二言なき
奥名正子
帆船
200303
人波へ俎叩き鰤を売る
村田さだ子
酸漿
200303
初糶の声わたり合ふ鰤の市
安達実生子
馬醉木
200304
あをあをと寒鰤の背のゆたかなる
谷口佳世子
200304
ひゆるひゆると夜を突くごとし鰤の海
浜福恵
風土
200304
到来の寒鰤動くかに見えて
榎本孤星
築港
200304
沸きに沸く祝儀相場の寒の鰤
鵜飼紫生
雨月
200304
寒鰤を追ひつめてきし水しぶき
藤井昌治
200304
鰤割つておほきな夜となりにけり
天野きく江
200305
贅少し夕は對馬の寒鰤を
北村香朗
京鹿子
200306
寒鰤を照り焼らしく厨ごと
北村香朗
京鹿子
200306
寒鰤のまづ頬肉を食らひけり
淵脇護
河鹿
200402
寒鰤を丸太のやうに運びけり
久保知音
対岸
200402
遠き世のうからのこゑや鰤を焼く
浜福恵
風土
200403
杯上げて能登の寒鰤もて祝がむ
辻口静夫
ホトトギス
200404
寒鰤の箱はみ出せる威勢かな
吉田裕志
200404
絶壁にとよもす波や寒の鰤
九万田一海
河鹿
200404
寒鰤に塩打つ高さありにけり
岡和絵
火星
200404
寒鰤や湾に轟く雷一つ
折田京子
風土
200404
寒鰤届く子は北陸を縦断中
佐藤千代子
帆船
200404
飴いろに骨大根と煮たる鰤
道具永吉
対岸
200404
夜明すぐ鰤の大糶男声とぶ
安達実生子
馬醉木
200405
寒鰤や海にもありし獣みち
大曽根育代
遠嶺
200406
寒鰤の句を書く色紙真くれなゐ
野沢しの武
風土
200408
投げ出され大鰤青く反り返る
内藤ゑつ
『ゑつ』
200411
寒鰤を俎板にのせ戸惑へり
川原典子
酸漿
200503
益荒男の眼寒鰤割りにけり
岩月優美子
200503
寒鰤の頭を一撃で落しけり
後藤博司
栴檀
200503
寒鰤の目玉の二つ食らひけり
有島扇水
河鹿
200504
寒鰤や生簀へいそぐ手漕ぎ舟
九万田一海
河鹿
200504
鰤の海暮れて荒ぶや舟屋の灯
石丸恭子
馬醉木
200505
剖かれてなほ息をつぐ寒の鰤
久保東海司
200505
寒鰤や深さは知らぬ定置網
九万田一海
河鹿
200505
初漁の鰤の顔見世魚まつり
安達実生子
馬醉木
200601
寒鰤や指でもの言ふ糶の人
鈴鹿仁
京鹿子
200601
鰤の目に競りの漢のムンク貌
藤岡紫水
京鹿子
200603
落し蓋噴き上げ寒鰤煮あがりぬ
近藤幸三郎
風土
200603
鰤捌くだけの手斧を研ぎにけり
三反田輝夫
河鹿
200604
寒鰤をこんがり年金尊べり
谷口みちる
200604
鰤網を継がんと決めてユーターン
古田美恵
200604
魚拓取る寒鰤紙にあふれるほど
古田美恵
200604
寒鰤のしぶきも蒼し日本海
関まさを
酸漿
200604
寒鰤の手鉤にかけて高値よぶ
宇根綾子
二輪草
200606
たうたうと神事の鰤の尾の跳ねる
戸田和子
200702
糶終へし鰤に値札のなぐり書
遠藤真砂明
200702
朝市や濤音遠く鰤売られ
粂谷京子
200702
鰤食うて夜は海鳴りの越泊り
吉田裕志
200703
寒鰤の刺身醤油を弾きけり
増田菖波
春燈
200703
二軒目の店の寒鰤そぞろ雨
富沢敏子
200703
鰤跳ねてはねて糶台ころげ落つ
石垣幸子
雨月
200703
夫好みの鰤のかま焼く赤外線
安井和子
200704
一日に二百を捌き鰤市果つ
倉永弘子
200704
寒鰤や裏海と呼ぶ日本海
服部菰舟
雨月
200704
大漁の鰤や春霰打ちかぶり
芝山喜久子
馬醉木
200705
立山を背に鰤船のかへり来る
山本明彦
遠嶺
200705
じゃんけんで糶り落しけり寒の鰤
宮川秀穂
200803
鰤来るか伊根の沖波盛上り
芝山喜久子
馬醉木
200803
寒鰤の出自よろしき富山湾
島田山流
春燈
200803
寒鰤のカマをせせくる男かな
瀬川公馨
200803
寒鰤のしぶきの中の男たち
藤井昌治
200803
一湾の波さか立てて鰤起し
若林花枝
200803
鰤獲れて宇出津港の活気かな
若林花枝
200803
初鰤を女ざかりが糶り落す
八田マサ子
馬醉木
200804
寒鰤を捌きて夫の株上がる
宮川秀穂
200804
朝釣の寒鰤並ぶ氷見漁港
石井邦子
酸漿
200804
鰤の背の玉虫色に夜の明けし
上村和子
200805
寒鰤の勢ひ増したる漁船かな
永原彰子
200805
鰤捌く漁師言葉の生一本
七種年男
200902
寒鰤の網ふくらめり能登の海
石原光徳
酸漿
200903
服の上にどてらをつけて鰤旦那
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
いちまいのむしろ吊して鰤番屋
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
雪の上に落ちし篝火鰤供養
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
八鬼颪つのるばかりや鰤供養
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
まつくろな空に雪舞ふ鰤場かな
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
首に吊る大きな財布鰤旦那
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
鰤衆ら尾鷲芸者をひやかしに
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
鰤場もつ岬々や椿咲く
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
女らのむしろ前掛鰤運び
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
八鬼山の雪に手かざし鰤見番
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
鰤あぐや夕日をかへす牟婁の山
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
拱いて銜へ莨や鰤旦那
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
桃頭島(とがしら)の晴れゐて遠し鰤を曳く
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
鰤市の裸電球降るみぞれ
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
鰤旦那娼婦を連れて那智詣
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
桃頭島の動くかと見ゆ鰤の浪
八田木枯
晩紅
200908
  
「鰤百吟」より
洪水のために鰤場も流されしと
八田木枯
晩紅
200908
鰤捌く年に一度の事なれば
川原典子
酸奬
201002
寒鰤の玄海の荒れつれてきし
あさなが捷
201003
病棟で舟を案ずる鰤おこし
鈴木てるみ
ぐろっけ
201003
寒鰤を捌き頭をもてあます
柴田志津子
201004
盤石に立つや瀬をなす鰤の潮
遠藤真砂明
201004
寒鰤は友の好物快気膳
中村月代
末黒野
201005
鰤船の着き戦場と化す漁港
富田範保
201006
寒鰤を捌く腕の黒々と
稲畑廣太郎
ホトトギス
201012
寒鰤の鮨とびきりの口あたり
上原重一
201101
腕まくり到来の鰤捌かんと
田中藤穂
あを
201101
鰤敷綱(ぶりしき)の海へ太古の溶岩なだれ
大竹淑子
風土
201103
丹後・荒井崎
鰤豊漁男声に交じる女声
小林和子
風土
201103
寒鰤の跳ね遅しき豊漁かな
高谷栄一
201104
寒鰤の目に玄海の海路あと
大地真理
201105
嗄がれの声が手慣れの鰤捌き 国包澄子 201201  
寒鰤を斜めに入るる勝手口 秋千晴 201201  
初鰤を捌く格闘技のごとく 田中藤穂 あを 201112  
こきりこの流れてゐたる鰤の宿 伊藤百江 春燈 201203  
初鰤の糶に声飛ぶ熱気飛ぶ 伊藤百江 春燈 201203  
氷見鰤を揚ぐるや雄声の日本海 海野ふさ子 馬醉木 201203  
鰤揚がる波荒れ狂ふ日本海 若島久清 万象 201203  
塩鰤を吊る干物屋の梁太き 若島久清 万象 201203  
一推しの鰤とて器焼締に 本多正子 雨月 201203  
旧元日福惠女史より寒鰤来 小林清之介 風土 201204  
鰤の味噌漬ずしりと重し有難し 小林清之介 風土 201204  
寒鰤美味しかの天国の明史氏よ 小林清之介 風土 201204  
鰤雑煮大降り椀でたまはれり 内海保子 万象選集 201205  
どよめきの中に寒鰤せりはじむ 若島久清 万象選集 201205  
つゝきゐる鰤のあら炊き女正月 佐野和子 万象選集 201205  
活け締めといふ寒鰤の刺し身かな 瀬島洒望 やぶれ傘 201205  
初市の雪に投げ出す鰤一尾 北崎展江 くりから 201209  
寒鰤の大俎に納まらず あさなが捷 201212  
大漁の鰤砲列に糶られけり 杉山はつ江 京鹿子 201301  
鰤網の粗声宙に鱗飛ばす 我門行男 201302  
鰤を煮る光陰の約果せずに 加藤峰子 201302  
膝ぐりの二坪呑屋鰤大根 井上石動 あを 201302  
初鰤に銘は天寿の故郷の酒 碇天牛 雨月 201302  
黒板のメニューは鰤のカルパツチョ 國保八江 やぶれ傘 201302  
目に力みなぎる鰤の捌かるる 長節子 201302  
寒鰤を上等にしてふるさとへ 伊藤和子 201303  
鰤網の明日へ秘めたる脹り力 遠藤真砂明 201303  
寒鰤の胴に朱書きの値札投ぐ 広渡敬雄 201303  
寒鰤を捌く尾鰭の付け根まで 柴田佐知子 201303  
ふるさとの味噌の香ほのと寒鰤焼く 安田とし子 ぐろっけ 201304  
抱かれてもののふ振りに躍る鰤 山口誠 馬醉木 201305  
よき嫁のつもりで捌く寒の鰤 柿本麗子 千の祈り 201307  
鰤汁や父に告げたきことあまた 伊丹さち子 馬醉木 201312  
寒鰤を提げ夕星を急ぎけり 蘭定かず子 火星 201402  
寒鰤の薄き朱色に透きにけり 赤座典子 あを 201403  
朝市の鰤の切身の厚さかな 神谷さうび 末黒野 201403  
風の夜となるらし鰤に塩を打つ 浜福惠 風土 201404  
鰤かまの塩焼に寒うべなひぬ 塩田博久 風土 201404  
初鰤へ糶札飛べる氷見市場 豊田高子 万象 201404  
しやぶしやぶの寒鰤妻へ供へけり 小川玉泉 末黒野 201404  
火の粉散る尺塩の鰤波の花 金田けいし ろんど 201405  
糶残る鰤の一尾の背の傷 豊田高子 万象 201405  
鰤網を引き揚ぐ潮の瀧のごと 豊田高子 万象 201405  
漁終へて寒鰤一尾下げ戻る 播磨武子 雨月 201405  
大かまの鰤の煮つけや一人膳 石井雲雀 末黒野 201405  
嫁ぎ来し自慢の娘鰤捌く 津田富司 璦別冊 201408  

 

2014年12月9日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。