萍(浮草・根無草)     176句

萍の隙間怖れし昔かな    桂信子

作品
作者
掲載誌
掲載年月
萍をひろげてゐしは源五郎 山尾玉藻 火星 199807
中年や萍に影生れそめて 岡部玄治 199807
萍をコップのなかに飼ひ慣らす 深澤鱶 火星 199811
萍や秘密はのぞくためにある しおやきみこ 船団 199812
萍に指入れ暑くなりさうな 大島雄作 199901
萍の下の鯰の微笑かな 金子兜太 海程 199902
水鳥の留守に萍ふえゐたり 浜口高子 火星 199906
萍の花朽舟の中までも 斉木永久 馬醉木 199909
萍や小流れもまた史蹟なす 桑田青虎 ホトトギス 199912
呼びつつ追う浮草があり夢の川 斉木ギニ 海程 200004
頭からつぽに浮草の生ひはじむ 奥田節子 火星 200005
萍や淀の支流の泥の川 山田六甲 六花 200006
萍のにはかに田の面見せずなり 鷹羽狩行 200008
萍や河内の国の飛び地池 大山文子 火星 200008
萍は櫓のかげを流れけり 西田美智子 200010
萍の生ひ初む中に神の山 鬼頭桐葉 春蘭 200010
萍の漂泊ひとの声とあふ 高瀬哲夫 200102
第二楽章へ萍のひろがりゆく 能村登四郎 200108
水門を塞ぐ萍いきれかな 鷹羽狩行 200109
萍の陣に退散する雲か 中原道夫 銀化 200109
堰切つて出てゆく空よ萍よ 中原道夫 銀化 200109
浮草と少し流れて糸蜻蛉 佐藤悦子 百鳥 200110
萍の静止すなはち漂へり 辻美奈子 200110
緒絶川萍揺らす錦鯉 桜井菜緒 200202
萍をわけて商ふ舟の上 池上栄子 ぐろっけ 200207
萍や亀の甲羅の照りかげり 鈴木タマ子 百鳥 200208
萍やみんなつながるまで待ちて 渡辺昭 200209
萍の水の眠れる時間かな 小野寺節子 風土 200209
萍の動くともなく拡ごれる 岡淑子 雨月 200209
浮草の堰落つるときみどり濃し 比田誠子 百鳥 200210
ひしめいてをり萍と棒切れと 木下野生 200210
萍のごとく相寄り師弟たり 品川鈴子 ぐろっけ 200210
萍に水面わづかな水馬 加藤暢一 200211
浮草を御堂に寄する百重波 小阪律子 ぐろっけ 200211
大鉢に萍みちて空曇る 広瀬元 200307
萍のうらまで明るく神の庭 豊田都峰 京鹿子 200308
おしやべりの過ぎて萍殖えにけり 斉藤利枝子 対岸 200308
萍のぐるり一族郎党よ 南一雄 200309
肩寄せて風浮草の田の渚 丸山冬鳳 京鹿子 200309
大川の萍に空あるばかり 松たかし 火星 200310
萍の底に蠢く禍福かな 松本文一郎 六花 200310
萍やちょっと渡ってみませんか 鳥川昌実 六花 200310
浮草の息ととのふる雨あがり 藤原照子 余韻 200403
浮草にまみれて亀の昼下り 谷野由紀子 雲の峰 200407
萍や片づけ切れぬ身のほとり 中桐葉子 春燈 200409
萍の天水槽を密封す 斉藤利男 百鳥 200410
萍や人生は神のみぞ知る 稲畑廣太郎 ホトトギス 200506
萍に集つてくる水面かな 稲畑汀子 ホトトギス 200506
雨ならず萍をさざめかすもの 富安風生 200507
底なしの沼かもしれず根無草 高岡敏子 200509
萍に水の道あり蛇行せり 石平周蛙 対岸 200509
細波の皺を集めて根無草 大塚隼人 対岸 200509
萍の動きて水の動きだす 飯塚やす子 200510
風立ちて離ればなれの萍に 大島寛治 雨月 200511
一面の浮草の根を誰が思ふ 宇田秋思 ホトトギス 200601
萍の余白に雨の水輪かな 稲畑汀子 ホトトギス 200606
望雲の池ともなれり花浮萍 宇都宮滴水 京鹿子 200607
沈むを知らぬ浮草を突つきけり 小林朱夏 200607
水媒の村に落ちつく花萍 宇都宮滴水 京鹿子 200608
萍の緩き流に小雨降る 柳沢典子 酸漿 200609
浮草に似て晩年の揺れやすき 藤井昌治 200609
萍や風に別れて又会いぬ 藤原りくを 八千草 200702
浮草やかがめば近き水の息 北畠明子 ぐろっけ 200706
靜かなる町うきくさの水に沿ふ 瀧春一 200706
萍の無心に素踊りしてゐたり 瀬川公馨 200708
萍のふゆる静けさ人を恋ふ 西村梛子 馬醉木 200708
萍の大きく回る風の池 笹村政子 六花 200709
萍のあはひみなもに雲流れ 土井田晩聖 万事 200711
水温みはや浮草のおほふ池 関戸文子 酸漿 200806
萍の生ひ初め水面いろめけり 風間史子 200807
鼻先の萍を亀気にとめず 山田六甲 六花 200807
萍の版図のあをき夕日影 大島英昭 やぶれ傘 200808
雲遊のあと萍となつてをり 小山徳夫 遠嶺 200809
水面騒立ち萍の重ならず 風間史子 200809
萍を割つて水牛立ち上がる 野崎タミ子 炎環 200809
萍にうくといふ魂ありにけり 本多俊子 200910
浮草や藤沢周平生れし町 縄文人 炎環 200910
浮草の中の塒や鷭鳴けり 関根喜美 200910
感情線うすき掌の吾も根無草 山本敏子 ぐろっけ 200911
萍の陣取り合戦すすみゐる 淺井照子 京鹿子 201001
萍に小流いよよ澄みゐたり 渋谷ひろ子 酸漿 201001
萍の間にひらりと魚の影 ことり 六花 201007
萍の花をのけくる亀の首 田中文治 火星 201008
つまらなくなりて萍流れゆく 樋口英子 201009
萍のひとかたまりの暗さかな 松田泰子 末黒野 201010
根無草水には水の動きあり 吉清和代 万象 201010
漂うて萍となる真昼かな 山田六甲 六花 201107
田の縁に萍へばり付きゐたる 山田六甲 六花 201107
萍の陰にめだかの目が光る 山田六甲 六花 201108
萍や気儘に生きてままならず 村上絢子 馬醉木 201109
不自由を楽しんでゐる根無草 割田容子 春燈 201109
萍の下より夜の来りけり 柴田佐知子 201109
萍に雨太宰忌の夕ごころ 清海信子 末黒野 201109
萍や捨田のいつか沼のごと 鍋島武彦 末黒野 201109
萍や星のかたちに手をつなぎ 雨宮桂子 風土 201109
萍と空行く雲と山頭火 貝森光洋 六花 201109
萍や男泣くなと育てられ あさなが捷 201111
萍に生れしばかりの蛙の子 中條今日子 万象 201111
萍の流れてゐたる落し水 根橋宏次 やぶれ傘 201111
萍のからびて水の引きし跡 大島英昭 やぶれ傘 201111
萍に背中まるめて句を待てる 山田六甲 六花 201207
萍や時計回りに池の水 山田六甲 六花 201207
萍に頭出したるみどり亀 山田六甲 六花 201207
萍をかるがる歩く虫浄土 山田六甲 六花 201207
萍に寄り切られたる汀かな 山田六甲 六花 201207
萍や小学校は城の跡 広渡敬雄 201208
萍の動かざるごと亀のごとし 山田六甲 六花 201208
萍の身動きとれぬまで生ひし 山田六甲 六花 201208
空の青閉ぢ込めてゆく根無草 天谷翔子 火星 201209
萍にがんじがらめとなりし濠 矢野百合子 201210
稚魚の列すぐ萍に隠れけり 戸栗末廣 201210

うきくさや空巣老人の膕

 空巣老人=独居老人

瀬川公馨 201210
萍の犇めき土の色と化す 永田万年青 六花 201210
萍の花咲きしこと見つけたる 嶋田一歩 ホトトギス 201211
また雨の降る萬葉の萍に 本多俊子 201211
神域の沼仄暗し根無草 鈴木鞠子 末黒野 201211
萍の水一枚にたゆたへり 松田明子 201211
萍や逢瀬楽しむ鯉がをり 赤松赤彦 六花 201212
八橋の裏に萍群らがりぬ 石橋萬里 ぐろっけ 201310
浮草や人に呼ばれて鯉鳴けり 伊藤希眸 京鹿子 201311
萍の流れの形に干涸びし 浜口高子 火星 201309
神の田の水口越ゆる根無草 大山文子 火星 201309
浮草の群れて失ふ身の自由 高橋将夫 201409
最小公倍数浮草の殖えそむる 辻美奈子 201409
根無草ひとかたまりに流れけり 戸栗末慶 201409
萍を分けて神話の国覗く 岩下芳子 201410
萍の片寄りしげき微雨となり 能村研三 201410
浮草の途切れず水の流れけり 笹村政子 六花 201410
萍や一つはなれて雲に乗る 加藤静江 末黒野 201412
萍を分けて怪し気なる背鰭 押田裕見子 201412
子の後の風呂に萍浮いてをり 小林朱夏 201508
萍を分けて神話の国覗く 岩下芳子 201508
眺めれば漫ろに悲し根無草 王岩 あを 201508
「川の字」といふ安宿に根無草 天野美登里 やぶれ傘 201510
天のもの平たく受けし根無草 丸井巴水 京鹿子 201510
入水の姫を隠せり根無草 丸井巴水 京鹿子 201510
萍や水に日のある淋しさよ 間島あきら 風土 201609
萍や亀沈むとき眼をつむり 内海良太 万象 201609
萍の渦まで遠く近づくよ 山田六甲 六花 201609
田のへりの萍に風吹いてゐる 根橋宏次 やぶれ傘 201609
立錐の余地なき水面根無草 神谷さうび 末黒野 201610
萍や湖の奥より櫂の音 間島あきら 風土 201610
萍や武相を分かつ大運河 間島あきら 風土 201610
先づ萍除けて蹲踞洗ひけり 鈴木石花 風土 201610
萍や三日続きのタキシード 竪山道助 風土 201610
萍やいざ鎌倉の檄を待つ 竪山道助 風土 201610
萍を大鯉の背が押し開く 森田節子 風土 201610
萍を分けて怪しげなる背鰭 押田裕美子 201706
萍といへど根を持つ二三寸 大橋淳一 雨月 201709
萍を寄せては畦に擲てり 南うみを 風土 201710
浮萍を盛りあげ鯉のあらはるる 田中とし江 201712
萍やいざ鎌倉の檄を待つ 竪山道助 風土 201801
今朝はこぼす甕いっぱいの萍 津波古江津 船団 201805
木漏れ日に萍の影流さるる 住田千代子 六花 201809
萍を吹き寄せて風止みにけり 住田千代子 六花 201810
第二楽章へ萍のひろがりゆく 能村登四郎 201902
萍の紅葉はじまるころを旅 岩岡中正 ホトトギス 201904
萍のまはりの水に暮るるころ 大崎紀夫 やぶれ傘 201907
萍や水の流れに逆らはず 壺井久子 馬醉木 201908
鯉跳ねし跡を萍はや閉ぢぬ 中島秀夫 王水 201909
しろがねの萍に会ふ月あかり 井原美鳥 201909
萍や片寄るは状況証拠 鈴鹿呂仁 京鹿子 201909
萍を甲羅に亀の過ぎゆけり 住田千代子 六花 201911
浮草の小溝となりて汲み上げる 大内幸子 六花 201911
萍の揺れて小舟を囲みたる あさなが捷 202007
浮草や池塘の夢の覚めやらず 松川昌義 末黒野 202011
水底の空深ぶかと根無草 兒玉充代 202101
萍や昭和が変へし川の貌 森村江風 202108
萍に水より強き日の匂ひ 高橋あさの 202109
萍の天水桶をあふれをり 根橋宏次 やぶれ傘 202109
萍のかたまりやすき流れかな 立竹人 春燈 202208
照りかげりある浮草のひとところ 立竹人 春燈 202208
そこはかとなき萍のながれかな 立竹人 春燈 202210
萍が一夜に田の面埋めつくし 南うみを 風土 202210
根無草月を隠してしまひけり 大西乃子 202212
浮草の吹かれ夕空さざ波す 大橋松枝 202307

 

2023年7月24日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。