埋 火     109句

埋み火やつひには煮ゆる鍋の物   蕪村

作品
作者
掲載誌
掲載年月
埋火のほか父の目を知らざりし 中村正幸 系譜 199512
埋火のごとくに生きて母の唄 八木愁一郎 ぐろっけ 199902
手のひらに埋火ほどの夢あづけ 斎藤珠子 遠嶺 199904
埋み火をいくつ置き来し華甲かな 千田百里 巴里発 199911
十薬は埋み火であり誕生日 吉川真実 海程 199911
思案なほ炉の埋み火は熨となる 品川鈴子 ぐろっけ 199911
ふるさとの埋火父母の在るごとし 河口仁志 200001
埋火のごとし深夜の未完稿 岡本眸 200002
埋火に鉄瓶かけて僧はゐず 永野秀峰 ぐろっけ 200003
埋火の記憶に薬箪笥かな 岡本眸 200101
埋火や離ればなれに置く拳 大場佳子 銀化 200102
手紙焼くほどの埋火掻き起こす 辻前冨美枝 200102
埋火や言はざるべきか言ふべきか 竹村良三 200102
掘り起したき埋火といふあれば 能村登四郎 200108
離れがたくあり埋み火のある火鉢 能村登四郎 羽化 200110
吹き覚ます埋火顔を照らしけり 岡部玄治 200110
今の世に欠くるもの埋み火にあるぬくみ 能村登四郎 羽化 200110
身のうちに埋火を守る愉悦かな 坂本京子 200201
刹那永劫埋火をさぐりをり 高橋将夫 200201
年金といふ埋火をおこしけり 加藤富美子 200201
埋火であることにもう倦きてゐる 石山正子 銀化 200202
世に寧きもの埋み火と母の文 渡邊千枝子 馬醉木 200203
埋火のこれぞ六道あかりかな 栗栖恵通子 200203
埋み火の花のごときを掻きいだす 渡邊千枝子 馬醉木 200203
埋火や延命措置はおことはり 福田李枝子 京鹿子 200209
埋火の中の真相きな臭し 石原歌織 銀化 200302
埋火や敗戦論者たりし父 長山あや 円虹 200303
埋火をおもひつつ寝につきにけり 岩上とし子 200303
埋火となりて時間の余りをり 後藤立夫 ホトトギス 200303
埋火や父の笑ひの泣くごとし 冨田正吉 200304
埋火をかきたてて句に向ひけり 池田都 200304
埋火を掻けば風鳴る夜のひとり 田口信男 200304
夫を待つ埋火赤く掻き立てて 岩花秀子 200305
客人に埋火小さき積翠忌 辻口静夫 ホトトギス 200307
埋火に似たりや路地の小商ひ 藤井昌治 200401
埋火に鳴る真夜中の掛時計 川瀬さとゑ 雲の峰 200402
ともかくも子に埋火を残しをく 石原光徳 酸漿 200402
埋火や子の帰り来しドアの音 木村てる代 雲の峰 200402
埋火や軽く化粧ひて人を待つ 川野喜代子 雲の峰 200402
うなづきもせず埋火をつつきをり 森本さやか 雲の峰 200402
埋火や茶筌師の技連綿と 岡本明美 雲の峰 200402
埋火や生涯残る悔一つ 大西正栄 雨月 200404
埋火やこころの賢治童話集 川井政子 風土 200502
埋火のその頃のこと母のこと 藤井昌治 200503
埋火や記憶の底の祖父のこゑ 藤井昌治 200504
埋火や遠くなりゆく昭和の日 前迫寛子 河鹿 200504
埋火やこのごろにして解ること 渡部志津子 200512
埋火や縄座蒲団を勧めらる 武久昭子 風土 200603
埋火を組みなほしてや去年今年 宇田喜美栄 200603
埋火や髪に差し込む指の先 辻直美 200604
埋火や順にたどりし来し方を 高松由利子 火星 200604
埋火に黒き鉄瓶置かれたる ことり 六花 200605
埋火にふれて無口をよそほへり 村田冨美子 京鹿子 200605
埋火のごとしや子規を慕ふなり 藤井昌治 200702
埋火の灰清浄にして白し 上坂渥子 雨月 200703
鳶職の埋み火かこむ長話 黒澤登美枝 200703
埋火や忘れ得ざりし悔ひとつ 岡本眸 200704
埋火の目玉の覗く灰の中 貝森光洋 六花 200704
埋火やかつては野望ありし日も 赤羽正行 遠嶺 200705
埋火や師のよき言葉絶やすまじ 杉本光 200803
司馬遷の李陵埋火めきにけり 松田邦子 200803
能面展出でぬ埋火爆ぜしとき 浜口高子 火星 200803
埋火の目覚めてよりの力かな 貝森光大 六花 200804
埋火を掘り返しゐる無聊かな 中原敏雄 雨月 200805
埋火の灰の浮きたる昼さがり 若井新一 200805
埋火や誰にも言へぬこと一つ 棗怜子 春燈 201003
埋火に対峙し伝へたきことも 瀬口ゆみ子 ぐろっけ 201003
埋火の点となりたる箱火鉢 大貫美智子 万象 201004
埋火やこころにかかる一事あり 木場田秀俊 201005
埋み火のやう杜裏の紅椿 後藤那生 ろんど 201006
香炉の埋火入れどきを逆算す 鈴木てるみ ぐろっけ 201007
埋火やほのと菩薩の右手左手 土居通子 ろんど 201102
埋火やふつと安否を思ひをり 宮内とし子 201103
掘り起こし埋火恋の火のごとし 布川直幸 201112
埋火の包めど芯はたけりをり 石井勇 末黒野 201204
埋み火に炭を継ぎ足す祖母の朝 國保八江 やぶれ傘 201302
埋火や休み処の野点傘 鈴木一三 末黒野 201303
不意の客ありて埋火掘り返す 河口仁志 201304
埋火に少年の日を捜しけり 今井弘雄 春燈 201403
埋火や所作美しき小津映画 齋藤晴夫 春燈 201404
埋火やいつしか肩の触れ合ひて 石原健二 やぶれ傘 201404
埋火の熾るほむらの色動く 福山和枝 201404
埋火の安全神話見破れず 松林依子 201405
埋火に父と過せし月日かな 山田正子 201406
埋火の小さく小さく熾りをり 石坂比呂子 ろんど 201406
埋火や竹啼く夜さの汁粉椀 久保久子 春燈 201602
埋火に命そそぎて今しばし 柴田靖子 201605
我なりに胸の埋み火たやすまじ 本多俊子 201703
埋み火のかすかに残る傘寿かな 後藤マツエ 201703
埋み火をおこし親しむ峡の宿 及川照子 末黒野 201704
だんだんと体力埋火のやうに 吉武千束 201705
埋み火を消すなと夢に亡き子かな 高橋和女 風紋 201709
埋火の如き顔して占師 山田健太 風土 201801
埋火や父母ゐし頃の甦る 志方章子 六花 201803
埋火や本音は底の底にあり 西村白杼 京鹿子 201804
凍空の埋火と化し月の蝕 下田奉枝 雨月 201806
埋火やその半生を嫁として 下田奉枝 雨月 201903
埋火の消えて形見のような熱 松井季湖 201903
埋火や今更話すことでなし 木村梨花 春燈 201904
埋火や隙間だらけの父の里 山田健太 風土 201904
埋火や思ひ出したる妻の私語 塚本虚舟 やぶれ傘 201904
五年の流れ埋火赫のまま 鈴鹿呂仁 京鹿子 201912
埋火や境おぼろの生と死と 江島照美 202003
埋火や役者くづれの独り言 三上程子 春燈 202102
埋火や眼指遠き老学者 小嶋恵美 春燈 202103
埋火や昨夜の悔いのただ一つ 小張志げ 春燈 202103
胸にある埋火抱きこもりける 阪倉孝子 202104
埋火や恋の顛末話し出す 苑実耶 202112
埋火や竹馬の友の召されし夜 岩崎藍 末黒野 202204

 

2023年11月25日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

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