釣 忍    185句

荵釣る軒に寄り添ふ女かな   闌更

作品
作者
掲載誌
掲載年月
雨さそふ揺れとなりけり吊忍 鷹羽狩行 199809
下町の風情残して釣忍 稲畑廣太郎 ホトトギス 199907
寺町の古き銅壷屋つりしのぶ 金子きくえ 春耕 199908
横向きし隙に売れけり吊忍 平子公一 馬醉木 199909
さみどりの雫のしきり吊り忍 雫槍紀代 199909
軒の風あるとも見えず釣忍 堀田知永 俳句通信 199909
街騒の届かぬ路地や吊忍 上田尚義 俳句通信 199909
やはらかき風のぬけ道釣忍 有山光子 遠嶺 199910
今年また亡母に船形釣忍 平田紀美子 風土 199911
雨脚の揃ひはじめし吊忍 奥田節子 火星 199911
潮騒を近くに宿や釣忍 田島秀代 遠嶺 199911
敗れたる子の黙長し吊忍 玉川悠 遠嶺 199911
水をやる手許だけ見え吊荵 千田百里 巴里発 199911
浅草の袋小路のつり忍 保坂さよ いろり 200007
先代の打ちし釘なり吊忍 小池槇女 火星 200008
昏れがての天下茶屋なり吊忍 城孝子 火星 200008
釣忍素顔の舞妓通りけり 城孝子 火星 200008
濡れ縁の三歩に足りぬ吊忍 うまきいつこ 200008
釣忍もの云ひたげに我もまた 友岡咲子 いろり 200009
釣しのぶ前の世すこし憶ひだす 小澤克己 遠嶺 200010
脳天に小さき音せり釣忍 伊藤翠 船団 200102
弔辞書き終へし頭上に吊忍 松崎鉄之介 200107
ほんにまあよう気のついて釣忍 辻享子 シャガールの女 200108
女系三代廟をふかく吊忍 長尾康子 風土 200109
降らずみの空の重さよ釣忍 津田経子 火星 200109
釣忍明治の風を引き寄する 川端実 遠嶺 200110
長考の末の放心吊忍 岡本まち子 馬醉木 200110
夕風に言葉ほぐるる吊忍 藤木竹志 馬醉木 200111
吊忍母住むだけの里となり 宮倉浅子 遠嶺 200111
東京と広島に時差つりしのぶ 梶浦玲良子 六花 200111
雨ありし名残の揺れや吊忍 鷹羽狩行 200207
先立たれいよよ坦然釣忍 葛迫空山 銀化 200207
たたう紙にありし小窓や吊り忍 沖祐里 200208
釣しのぶ吊りて真昼も宵めきぬ 佐藤よしい 風土 200208
吊忍つかの間の風肌を過ぐ 溝口八重子 雲の峰 200208
迷ひたる路地に夕風つりしのぶ 辻田明 200209
釣荵見てゐて風を見てをりぬ 進青亀 円虹 200209
遠山はその下となる吊忍 鷹羽狩行 200209
釣忍かけて老舗の佃煮屋 後藤志づ あを 200209
三山の微動だにせぬ吊忍 小澤克己 遠嶺 200210
しばし目を癒すさみどり吊忍 吉川智子 200210
釣忍一日聞き役通しけり 二瓶洋子 六花 200211
いひたげなくちびるうごくつりしのぶ 田口傳右ヱ門 銀化 200211
ぐい呑の底が明るし吊荵 梅村すみを 200301
吊忍ガラスの中に古地図あり 津田いちえ 遠嶺 200308
釣荵縁に亡母と長ギセル 平松かをる 六花 200308
釣り忍翁媼に流れ弾 吉弘恭子 あを 200308
下町の今日も雨呼ぶ釣忍 水原春郎 馬醉木 200309
襟足に風の囁き釣忍 上田繁 遠嶺 200310
江ノ電と軒を接しぬ釣忍 中根美保 風土 200310
愚痴聞くも介護のひとつ吊忍 和田照子 200311
釣忍日課の霧を吹きつけて 高橋誠一 200311
二階井戸に坂町の知恵吊忍 田中敬 200402
こくげんをたがはぬ風や釣忍 神蔵器 風土 200408
吊忍父の飲食すぐをはる 城孝子 火星 200409
吊忍一つが売れて風分つ 神蔵器 風土 200409
吊忍おわら育む坂の町 須原照子 京鹿子 200409
隠棲のあの頃ありき吊忍 村越化石 200409
手鏡にうすき疲れや釣忍 大場フサ子 京鹿子 200409
釣忍殖やして二人暮しかな 鈴木石花 風土 200410
人の死にともす灯のあり吊忍 近藤幸三郎 風土 200410
山好きの父は寝たきり釣忍 山田晴久 築港 200410
父の忌や葉を太らする吊忍 淵脇護 河鹿 200411
しもた屋のやうな教会釣忍 石川英利 百鳥 200411
水やればゆっくり廻る釣忍 中村碧泉 ぐろっけ 200411
踏切の脇の軒先吊忍 小池津や子 帆船 200501
アトリエにいそしむ黙や吊忍 坂井法 200508
つりしのぶ風も吹かぬに音たてて 瀧澤白絣 遠嶺 200509
金泥のごときまどろみ釣忍 高橋将夫 200509
吊り売りの風の高さに吊忍 沖祐里 200510
つりしのぶ菊坂に蔵のこりをり 小宮節子 春燈 200510
古民家の梁の太さや釣忍 青木久子 遠嶺 200510
この家の軒の高さに釣忍 伊藤紫水 風土 200511
釣忍わが放心を風に乗せ 中野英歩 八千草 200601
降り足らぬ雨の逃げ足釣忍 中野英歩 八千草 200601
恙なくゐるとの便り釣忍 水田清子 200607
釣忍いく度も同じこと問はる 田中藤穂 あを 200607
吊忍佃小路は風の道 水原春郎 馬醉木 200608
天翔る夢や真昼の釣忍 田島勝彦 遠嶺 200609
釣忍ところ変へねば忘れらる 宮津昭彦 200609
釣忍夕風はたと止みにけり 岩間冴子 200609
店閉ぢし隣家の軒の釣忍 石田玲子 200610
点滴の雫を数へ吊忍 久保東海司 200610
吊しのぶ拝啓敬具とむすぶ文 山元志津香 八千草 200701
ゼロ金利解除いつの日釣忍 中島英子 八千草 200701
藤村旧居山風よぶよ吊忍 平野きぬ子 八千草 200701
パリロンドンソウルトーキョー吊忍 北川美美 200705
釣忍ビルの谷間の一軒家 中村悦子 200708
釣忍吊るしてひと日風を待つ 松嶋一洋 200708
表札のまだ替へずあり釣忍 佐藤山人 200708
吊りしのぶ遅れて届く旅鞄 あきの澪 200709
散髪屋奥に居酒屋釣忍 高塚診次 200709
釣忍かかげ和菓子屋開店す 赤座典子 あを 200709
繰り言は一日一度釣忍 篠田純子 あを 200709
街道の履物店や釣忍 青木陽子 酸漿 200710
お茶漬は食べる点滴釣忍 篠田純子 あを 200710
通夜の灯に遠く軒端の釣忍 原田しずえ 万象 200711
読みすすむ頁いとしき釣忍 小林恵子 遠嶺 200711
釣忍手枕のまま暮れてゆく 貝森光洋 六花 200711
筆談にありがたうあり釣忍 遠藤実 あを 200807
釣忍分銅石の塩秤 和田照海 京鹿子 200808
釣忍遣水かかる下駄の先 森理和 あを 200808
戦前の町並み残り釣忍 齊藤實 200809
抜露地の暮色に憩ひ釣しのぶ 大曽根育代 遠嶺 200810
すぐそこを江ノ電が過ぐ釣忍 林昭太郎 200810
吊しのぶ本郷西片学者町 鈴木とおる 風土 200810
灯のつかぬ石灯籠や吊忍 井上あい 風土 200810
杖嫌ふ母の歩みや釣忍 小林朱夏 200811
菜箸の糸のしがらみ釣しのぶ 宮崎左智子 200908
起きぬけの一杯の水つりしのぶ 小島昭夫 春燈 200908
掛け水に一息吐ける釣忍 笠井清佑 200909
曲り家の風行止まる釣忍 堤京子 馬醉木 200910
人のため何かすること釣忍 小澤克己 遠嶺 200910
休日や家族で吊つて釣忍 谷村幸子 200910
磯小屋のトイレさはやか吊忍 禰寝瓶史 京鹿子 200912
吊忍枯るるにまかせ漆塗る 富田範保 201001
爪紅は立膝強ひる釣忍 佐藤喜孝 あを 201005
下町の猫も江戸つ子釣忍 中島玉五郎 201008
濡らしては呼ぶ川風や吊忍 コ田千鶴子 馬醉木 201009
身の丈の暮しのふたり釣忍 山荘慶子 あを 201009
良きドラマ終へたる静寂吊忍 清水侑久子 201010
一片の雲に夕日の釣忍 田中文治 火星 201010
風に倦み凪に倦みゐし釣忍 布川直幸 201106
遠き木へいつも眼のゆく吊忍 山多暢子 風土 201108
掛け水に一息入れる釣忍 笠井清佑 201109
吊しのぶ京に馴染の珈琲館 中村風信子 馬醉木 201109
吊忍老舗そば屋のつゆ辛し 林紀夫 春燈 201109
吊忍老いて母似と言はれけり 鳳蛮華 201110
年毎に減りゆく名草吊忍 小菅礼子 春燈 201110
老々の介護の家や釣忍 大西よしき ろんど 201110
病む生の子規や波郷や吊忍 コ田千鶴子 花の翼 201111
路地裏に浪速のなさけ釣忍 石谷淳子 雨月 201201
夕映えの水のしたたる釣忍 苑実耶 大河 201203
売り声の絶えたる路地や釣忍 原和三 末黒野 201204
大江戸の遊び心や吊忍 山本雅子 馬醉木 201207
甘へつ子やんちやつ子寝て吊忍 竹中一花 201208
川風の抜ける町家や釣忍 伊東和子 201209
つりしのぶ宅急便にするサイン 和田幸江 春燈 201209
釣忍おどろきやすき赤子の手 本杉千保子 万象 201209
百年家壁塗替へて吊忍 松本恒子 ぐろっけ 201209
断捨離を決めてをりけりつりしのぶ 日下部亞こ ろんど 201209
半日は一人なりけり釣忍 涼野海音 火星 201210
会はざれば平らな日々や釣忍 柴田佐知子 201211
吊しのぶ池に水音途切れなし 住田千代子 六花 201309
故郷の記憶は褪せず吊忍 小川凉 201310
解体の鴨居にのこる釣忍 三木千代 201311
路地裏の余白大事に釣忍 関根瑶華 201401
母方の父方のとて吊忍 辻水音 201409
デパートの八階に選る吊忍 大石よし子 雨月 201409
釣忍正面もつともらしく見ゆ 鈴木藤子 ろんど 201410
ひねもすの降りみ降らずみ吊忍 塙誠一郎 201410
この家の独り暮しや釣しのぶ 千葉惠美子 末黒野 201410
和紙のうへ滑る筆音吊忍 杉山弥生 末黒野 201410
さみどりの雫一滴釣しのぶ 田中淺子 201410
釣しのぶ相寄る星の煌めけり 加藤静江 末黒野 201411
釣忍正面もつともらしく見ゆ 鈴木藤子 ろんど 201502
砂浴びの雀見てをり釣忍 生田高子 春燈 201608
奥嵯峨の風のぬけみち釣忍 今井吉子 馬醉木 201610
吊忍ひとつ残して主逝く 金森教子 雨月 201610
釣忍生き方少し変へたき日 片山喜久子 雨月 201610
釣忍山風軒を吹き抜けり 笹倉さえみ 雨月 201610
夕風に水滴りて吊忍 塩見治郎 雨月 201610
淡交のほどよき間合吊忍 亀井福恵 京鹿子 201701
目立屋の座して半畳吊忍 中川句寿夫 ここのもん 201705
釣忍水したたらす機屋路地 那須淳男 馬醉木 201708
吊忍床屋に革の椅子ひとつ 井原美鳥 201709
マンションの軒端短し釣忍 斉藤マキ子 末黒野 201710
釣忍湯場ゆく人も暮れにけり 平沢恵子 春燈 201712
下町に残るやさしさ釣忍 豊谷ゆき江 春燈 201809
路地裏に漁協事務所や釣忍 中根美保 風土 201907
ありなしの風を軒端に釣忍 河野由美 馬醉木 201908
身の内へ青き夕風釣忍 阪倉孝子 201909
下町の暗き横丁吊忍 菅野日出子 末黒野 201909
尾道は坂の町なり釣忍 藤生不二男 六花 202010
吊忍一期一会の島の人 黒滝志麻子 末黒野 202011
ひと雨の去つて夕べの釣忍 渡辺やや 風土 202109
父のカネ母のクジラと釣忍 佐藤竹僊 あを 202111
とまどひの紐の長さや釣忍 竹中砂帰路 春燈 202208
吊忍庇の深き京町家 本郷公子 京鹿子 202209
軽井沢一人で老いる釣忍 手島百合子 やぶれ傘 202210
山鉾の発ちたる路地の吊忍 南うみを 風土 202210
吊忍ひとり暮しも佳しとせむ 笹村政子 六花 202210
釣忍母の高さに合はせけり 大西乃子 202212

 

2023年7月10日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。