とろろ            200句

甲冑をうしろに置きてとろろ汁    斉藤夏風

作品
作者
掲載誌
掲載年月
衣更へてとろろ汁吸ふ芦屋かな 城孝子 火星 199808
ゆつくりとしてもをられぬとろろ汁 岡部玄治 199901
こだはりの鉢の一品とろろ汁 田口千恵子 199903
世渡りは二勝一敗とろろ汁 鈴鹿仁 京鹿子 199910
擂り鉢をおさえる役のとろろ汁 大平保子 いろり 199911
訪ひし山家日あたるとろろ飯 白鳥婦じゑ 酸漿 200002
湯の町の袋小路やとろろ汁 辻享子 六花 200003
とろろ汁懲悪すっと喉によし 藤井清久 海程 200004
とろろ汁啜りてひとりひとりかな 山尾玉藻 火星 200011
どことなく似てきし夫婦とろろ汁 高村洋子 遠嶺 200011
渓の湯や喉にやさしととろろ汁 石野冬青 馬醉木 200012
頭をば垂れていただくとろろ汁 村越化石 200101
いつからか任されてゐるとろろ汁 田中矢水 遠嶺 200102
羽子板市抜けて麦とろ食うべけり 沢ふみ江 春耕 200102
亡き父母の来て左右に坐すとろろ汁 田中藤穂 あを 200103
しつかりと摺鉢押ふとろろ汁 伊藤セキ 酸漿 200104
姪と来し女人高野のとろろ汁 小池槇女 火星 200110
むぎとろや秩父に西行戻り橋 神蔵器 風土 200110
とろろ汁鼻緒の切れし縁とも 波多洋子 銀化 200111
塩ききし焼魚の添ふとろろ飯 上田茂 200111
文殊さんの猫の来てをりとろろ汁 杉浦典子 火星 200112
師の言葉反芻しつつとろろ飯 竹川美佐子 いろり 200112
とろろ汁手酌の父に急かされり 西川よし子 春耕 200201
播粉木のいささか長めとろろ汁 荒川香代 200201
長生きをせよと盛らるるとろろ汁 村越化石 200202
とろろ汁話のこしを折られけり 武井美代子 風土 200202
一子相伝身中に滲むとろろ汁 渕田則子 200202
直哉読む刻忘れしの薯蕷汁 林友次郎 遠嶺 200202
蕉翁の庵まで二丁とろろ汁 山本喜朗 雨月 200203
むぎとろの障子あかりの供養膳 飯塚雅子 200203
とろろ汁すすり海鳴り聞く旅寝 豊田都峰 京鹿子 200212
正座とく囲炉裏の火色とろろ汁 鈴木實 百鳥 200212
擂鉢の音ねんごろにとろろ汁 佐藤章恵 雲の峰 200302
とろろ汁望み断ちたる子がひとり 小澤克己 遠嶺 200310
方言のとび交ふ宿のとろろ汁 松岡映子 帆船 200311
ふるさとの絆切れずにとろろ汁 加賀富美江 遠嶺 200312
弟の声の父似やとろろ汁 加藤峰子 200312
とろろ飯かつ込み急ぐこともなし 伊藤白潮 200312
青春は夢の彼方へとろろ汁 沼口蓬風 河鹿 200401
潮掛の道や師走の麦とろろ 朝妻力 雲の峰 200401
吉備路なる旅の終りの麦とろろ 岡淑子 雨月 200402
炉端より席の埋りしとろろ汁 藤原照子 余韻 200403
麦とろや窓に音なき日暮雪 北川孝子 京鹿子 200406
とろろ汁憶良に在りし泥鰌髭 今瀬剛一 対岸 200411
パリに根を下ろしえざりしとろろ汁 森下賢一 春燈 200411
かみあはぬあうんの呼吸とろろ汁 安部里子 あを 200411
麦とろや貧しき頃を想ひつつ 石山民谷 遠嶺 200411
麦とろや旅籠の梁に火伏神 中野薫 雲の峰 200411
飽食の時代の五穀とろろ汁 宮崎裕子 春燈 200412
生かされて生きて余生のとろろ汁 河西みつる 草の花 200412
こばむのも男のほこりとろろ汁 辻東國 草の花 200412
鷹が峰から歩き来てとろろ汁 米島艸一路 草の花 200412
母とその姑の擂粉木とろろ汁 小林和子 風土 200412
とろろ汁擂りつぱなしで姉逝きし 伊藤多恵子 火星 200412
浅間嶺のけぶれる夕のとろろ汁 小柴健一 春耕 200412
たつぷりとかけて残暑の麦とろろ 中川晴美 春耕 200412
老の身の一碗に足るとろろ汁 村越化石 200501
蔦の径歩き疲れてとろろ汁 法月幸子 200501
浅草も遠くなりけりとろろ汁 田中のりえ 200501
麦とろろ食うべて伊賀の祭見に 内山芳子 雨月 200501
とろろ飯山の和尚の頭かな 野中亮介 馬酔木 200511
夕ちかく晴れしみちのく麦とろろ 丸山照子 火星 200511
とろろ汁祖母の擂る手が浮びけり 児玉健 四葩 200512
四方山の話ともどもとろろ汁 村越化石 200512
四万十川しまんとの青のりを得てとろろ汁 柿沼盟子 風土 200512
山住みの雨の夕餉のとろろ飯 指尾直子 雨月 200512
同胞の集まりし日やとろろ汁 米須あや子 遠嶺 200601
妻をればこその好日とろろ汁 横松しげる 遠嶺 200601
とろろ汁なにか違つてゐるやうな 高橋道子 200601
大擂鉢はらから囲むとろろ汁 三澤いつ子 万象 200602
年忘れ武州の味のとろろ汁 田中藤穂 あを 200602
方言の不思議な魅力とろろ汁 千坂美津恵 200603
ゆつくりと一人の朝餉とろろ汁 木野本加寿江 火星 200603
気負ふこと失せしふたりのとろろ汁 笹倉さえみ 雨月 200603
顔寄せて四方山咄とろろ汁 村越化石 200612
たましいへ沁みいる春のとろろ汁 犬塚芳子 200705
とろろ汁運河が寂びゆくばかりかな 遠藤実 あを 200709
とろろ汁のどもとにある故山の風 豊田都峰 京鹿子 200710
とろろ汁家郷の味の濃かりける 豊田都峰 京鹿子 200710
たまきはる長寿の里のとろろ汁 鈴鹿仁 京鹿子 200710
朝夕の暗さに馴れしとろろ汁 金井充 百日紅 200711
とろろ汁信心うすく情の濃く 田中藤穂 あを 200711
九竅のよみがへりけりとろろ汁 延広禎一 200801
とろろ汁運ぶ揃ひの紺絣 塩田博久 風土 200801
縄文の土の匂ひやとろろ汁 浅田光代 風土 200801
丁子屋に芭蕉さんの間とろろ汁 近藤幸三郎 風土 200801
とろろ汁白粥月光菩薩在し 中山純子 万象 200802
ともどもに齢を加へとろろ汁 村越化石 200802
とろろ汁と決めて鞠子の宿に入る 落合絹代 雨月 200802
卸す音聞きつつ待てりとろろ汁 川原典子 酸漿 200802
平仮名に似たる晩年とろろ汁 南一雄 200803
とろろ汁ゆるめが妣の得意業 勝原文夫 ペン皿 200811
草臥れて子に委ねけりとろろ汁 竹内悦子 200812
麦飯にとろろ汁とて峠茶屋 和田一 雨月 200812
嫁姑気の合ふ食事とろろ汁 岸本林立 雨月 200812
風をきく山家の暮しとろろ汁 出口貴美子 雨月 200812
馬小屋のとっぷり暮れてとろろ汁 貝森光洋 六花 200812
長寿箸おろして今朝のとろろ汁 高谷栄一 200901
とろろ汁豊かな昭和にもう会えぬ 貝森光洋 六花 200911
常にある仮想敵国とろろ汁 竹内弘子 あを 200911
大ぶりの浅き茶碗へとろろ汁 稲垣眞弓 200912
父のことあれこれ憶ひとろろ汁 能勢栄子 201001
母の背の夢を重ねてとろろ汁 林友次郎 遠嶺 201001
おはひりやすの声につられてとろろ汁 安立公彦 春燈 201001
揺鉢を押さふる力とろろ汁 酒井湧甫 201001
食卓に朝日の届くとろろ汁 廣瀬雅男 やぶれ傘 201001
箸置は庭木の枝やとろろ汁 天野美登里 やぶれ傘 201001
床の間の軸は好日とろろ汁 宮島ムツ 末黒野 201002
辞世の句はやばや案じとろろ汁 武田巨子 春燈 201002
すりこぎを廻すリズムやとろろ汁 根本公子 末黒野 201003
家中に草の香の満つとろろ汁 西岡啓子 春燈 201011
晩年は自然体なりとろろ汁 川崎光一郎 京鹿子 201012
物がみな影曳く夜のとろろ汁 岡和絵 火星 201012
今もなほ摺子木は母とろろ汁 中田のぶ子 ろんど 201012
いい加減のうまくゆきけりとろろ汁 垣岡暎子 火星 201101
割箸にほのかなぬくみとろろ汁 田中文治 火星 201101
一介の夫は酌めりとろろ汁 小堀寛 京鹿子 201101
出し汁と黄身の渦巻とろろ汁 蓮尾みどり ぐろっけ 201101
せがまるる弥次喜多ばなしとろろ汁 塩路隆子 201102
食細くとこぼす夫にとろろ汁 東秋茄子 京鹿子 201102
たっぷりと玻璃の小鉢のとろろ汁 小林久子 201110
慰めの言葉はいらずとろろ汁 鈴鹿仁 京鹿子 201111
音立てて風荒るる日のとろろ汁 久米憲子 春燈 201112
垣間みる北信五岳とろろ汁 神@田恵琳 春燈 201112
本降りとなりし雨音とろろ汁 國保八江 やぶれ傘 201112
山風は山にかへりぬとろろ汁 松田泰子 末黒野 201112
噛み合はせ悪しとろろの素通りす 野口喜久子 ぐろっけ 201112
毛筆の手書き看板とろろ汁 松本恒子 ぐろっけ 201201
とろろ飯父の遺影にてんこ盛り 上野かりん ろんど 201201
夕鴉の声とび込みしとろろ汁 浜口高子 火星 201201
子と住まふ日々賜りてとろろ汁 村上絢子 馬醉木 201202
癒さるる一日の疲れとろろ汁 加藤八重子 末黒野 201202
早食ひを諫むる間なしとろろ汁 田中貞雄 ろんど 201202
癒さるる一日の疲れとろろ汁 加藤八重子 末黒野 201202
子と住まふ日々賜りてとろろ汁 村上絢子 馬醉木 201202
とろろ汁父の啜りてより啜る 山尾玉藻 火星 201210
妣が名は飯野真留子よとろろ汁 中島陽華 201211
かたみとて何もなきかなとろろ汁 石脇みはる 201211
決め事は後に回してとろろ汁 山田正子 201301
不機嫌の訳は婚約とろろ汁 松井洋子 ぐろっけ 201302
惜命のながきマフラーとろろ吸ふ 山本耀子 火星 201302
大まかに擂りて我が家のとろろ汁 秋葉貞子 やぶれ傘 201303
食細る姑へ新蕎麦とろろ蒸し 柿本麗子 千の祈り 201307
聞き流すことも覚えてとろろ汁 田中浅子 201311
恙なく昭和を生きてとろろ汁 小山繁子 春燈 201312
とろろ汁余生ともあれシンプルに 藤沢秀永 201401
とろろ汁女系家族は母の里 松本文一郎 六花 201401
粘つこく生きるとしやうとろろ汁 寺田すず江 201401
幸せは計れざるものとろろ汁 小倉正穂 末黒野 201402
句碑閑か鞠子の冬のとろろ汁 町山公孝 201402
とろろすり母子の夏のはじまりぬ 中山純子 万象 201409
とろろ飯麦つぶつぶと舌の上 稲岡長 ホトトギス 201411
隅田川の橋くぐり来てとろろ汁 内海良太 万象 201411
戸隠や舌ざはりよきとろろそば 藤岡紫水 京鹿子 201411
一つ二つ腑に落ちぬこととろろ汁 塩路五郎 201411
虫の音に酔うて夜更けのとろろ蕎麦 川崎利子 201412
とろろにはとろろのかたちありにける 柳川晋 201412
二日はや一人の夜のとろろ汁 木村ふく 馬醉木 201501
退屈な夫怒らせてとろろ飯 齊藤哲子 201501
庫裡の朝大すり鉢にとろろ汁 西村敏子 201501
とろろ汁丸子の宿にあらねども 大石よし子 雨月 201501
とろろ汁山の深さも味として 豊田都峰 京鹿子 201502
広重のことなど話しとろろ汁 内海良太 万象 201502
人恋ふは次の世までもとろろ汁 高橋将夫 201502
生き方に流儀はいらぬとろろ汁 松田都青 京鹿子 201503
滑りよき竹の靴べらとろろ汁 内海良太 万象 201503
とろろ汁三分の義理で啜りをり 松田都青 京鹿子 201503
人日のとろり喉越すとろろ飯 田伏博子 ろんど 201504
粘つこく生きるとしようとろろ汁 寺田すず江 明日葉 201505
今シーズン中継ぎ抑えとろろ汁 ねじめ正一 船団 201508
ひと筋の愚直さに生きとろろ汁 神宮きよい 馬醉木 201511
晩年の母似と言はれとろろ汁 浅田光代 風土 201512
とろろ芋闇を抜けでし白さかな 黒澤登美枝 201601
雑念を一気に擂れりとろろ汁 芝田幸惠 末黒野 201601
息長く続ける秘訣とろろ汁 高橋将夫 201601
十界に身を置きたるやとろろ汁 前田美恵子 201601
晩節を竹馬の友ととろろ汁 大島寛治 雨月 201602
目覚めけり二日のとろろ擂る音に 升田ヤス子 六花 201604
二日とろろ渦大きこと愛でて擂る 升田ヤス子 玫瑰 201604
言ひさしの愚痴呑込みぬとろろ汁 外山節子 末黒野 201612
とろろ汁秘境の宿に荷を解く 山田天 雨月 201701
なかなかや病院食のとろろ汁 高橋道子 201701
夫婦とは持ちつ持たれつとろろ汁 甕秀麿 201701
鎌倉の小路を巡り麦とろろ 岡野里子 末黒野 201702
為すことの遅遅と進まずとろろ汁 松橋輝子 末黒野 201702
うまの合ふ人と向き合ふとろろ汁 武藤節子 やぶれ傘 201702
好日や考の好みのとろろ汁 片岡さか江 末黒野 201704
雑念を一気に揺るやとろろ汁 芝田幸惠 末黒野 201704
売薬の一夜の宿やとろろ汁 中川句寿夫 ここのもん 201705
とろろ汁他人行儀なことを言ふ 中川句寿夫 ここのもん 201705
山廬忌のとろろたつぷり根来椀 徳田千鶴子 馬醉木 201811
石見路や茄子の煮込みととろろ蕎麦 延川五十昭 六花 201812
前を見るゆるき晩年とろろ汁 菊池和子 京鹿子 201901
生国の土の香仄ととろろ汁 岡田史女 末黒野 201902
ゆつくりととろろする肩母の声 小林紫乃 春燈 201911
とろろ汁一会の酔ひの醒め易し 安立公彦 春燈 201912
宿坊の朝の早しやトロロ汁 田中美恵子 201912
突然の泊り客とてとろろ汁 小池桃代 末黒野 202002
あつけなく夕餉終りぬとろろ飯 中田みなみ 202010
虎の尾と大三郎のとろろ汁 中島陽華 202011
定食のAについたるとろろ汁 江見巌 六花 202011
人間の丸くなりゆくとろろ汁 山本則男 202102
とろろ汁二人の椀の古りにけり 田嶋洋子 春燈 202112
肩凝の母の擂粉木とろろ汁 森岡正作 202112
共に老い夫は擂り役とろろ汁 水谷昭代 202112
つい口がすべってしまふとろろ汁 高橋将夫 202204
とろろ飯少年衿を汚しけり 皆川白陀 薫風 202205

 

2022年8月27日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。