田 螺    173句

はづかしと客に隠すや田螺あへ    几董   井華集

作品
作者
掲載誌
掲載年月
束の間の法縁なごむ田螺あえ 大沢みちの 青湖 199805
鑑真の案内に出でし田螺なり 山尾玉藻 火星 199807
畦川の田螺も供へ雛まつり 益本えりか 馬醉木 199807
田螺和あてがひぶちの晩酌に 小谷部東吾 199902
つき出しにまくろき田螺よごしかな 神蔵器 風土 199904
田螺取指一寸のあそびかな 神蔵器 199905
黙読のときに田螺の鳴けるなり 水野恒彦 199907
湖の日をごろり転がし大田螺 藤岡紫水 京鹿子 199907
プランクの定数とはなに田螺鳴く 宮嵜亀 船団 199907
バケツ半分登りてゐたる田螺かな 嵯峨根鈴子 火星 199907
田螺鳴く逍遥稔典同姓で 三神あすか ヒッポ千番地 199910
田螺和父人形とふたりで居る 栗林千津 船団 199912
岩鼻に風生まれをる田螺和 小形さとる 200005
田螺いま思ひを告げにゆくところ 河合城太 銀化 200005
土曜日の校長室の田螺かな 夏秋明子 火星 200006
有体にいへばくぎりの丸田螺 小形さとる 200007
家苞に田螺をすこし志摩の旅 二村蘭秋 雨月 200009
夏帽子あみだにしたる旅ごころ 禅京子 風土 200010
鰐口のきこえてきたる田螺かな 鬼頭桐葉 春蘭 200010
田の神をお連れ申して蜷田螺 ふけとしこ 船団 200011
またたけば日向と消えし田螺取 神蔵器 風土 200104
昼月の湿れみ距離に田螺かな 中塚龍之介 銀化 200106
毛穴ゆるんで田螺和などつまみをる 延広禎一 200106
家内ががらんと田螺鳴きにけり 奥田節子 火星 200106
日表に田螺鳴きけり宇治拾遺 山尾玉藻 火星 200106
田螺鳴き映る佛のかほ揺るる 黒田咲子 200106
田螺鳴くこころのどこかのぞかれて 後藤志づ あを 200106
東大寺夕べみちつつ田螺かな 岡井省二 200108
田螺和農を継がざる悔少し 松田雄姿 百鳥 200108
笑はんと伊賀の田螺のうごきけり 岡井省二 200110
田毎観音青田と田螺見守れる 櫻井康敞 200110
これは蜷これは田螺の道ならむ 有吉桜雲 200204
舌先が知る野の匂ひ田螺和 有吉桜雲 200204
簗かけしばかりに田螺五六匹 有吉桜雲 200204
韻文に田螺の声のよく響く 川名将義 銀化 200204
行き合うて黙殺蜷と田螺かな 青山岬 銀化 200205
丸田螺堅田の昼を笑へりき 小形さとる 200205
銅鏡の曇りなきとき田螺鳴く 水野恒彦 200206
貧乏の味を知らぬと田螺責め 志麻茜 銀化 200206
そこんとこ解せぬ田螺でありにけり 中原道夫 銀化 200304
泳げなくともへいきのへいざ田螺かな 佐藤喜孝 青寫眞 200304
田螺鳴く粒こまやかに昼の雨 朝妻力 雲の峰 200304
したごころまで似て来たる田螺かな 曽根治子 銀化 200305
故郷の棚田みな失せ田螺鳴く 高橋正彦 200306
天地の緩びてきたり田螺和 加藤みき 200306
耳ふかく澄み鳴く田螺村の昼 市場基巳 200307
時鳥昼はパスタにしろと言ふ 泉田秋硯 200309
戦時中食みし田螺のいまグルメ 物江晴子 八千草 200310
稲終へて雨音しるき田螺汁 竹中龍青 200312
田螺くる来し道戻る奇蹟なく 永田二三子 酸漿 200409
昂りし田螺の道でありしかな 山口奈代 河鹿 200409
ベランダにしばし佇む星月夜 竹内美登里 京鹿子 200409
赤米の花が咲いたよ大田螺 黒田咲子 200412
たにしたにし背中の埃重さうな 岡崎桂子 対岸 200505
大田螺次の世へ行く用はなし 高橋将夫 200506
跡取りのなくて荒れ田の田螺かな 石川笙児 200506
昔ばなし聞かされてをり田螺鳴く 近藤公子 200507
鑑真の御目思へり田螺和 深澤鱶 火星 200507
肝心の田螺がをらぬではないか 高橋将夫 星の渦 200507
不増不減田螺が鳴いてをりにけり 高橋将夫 星の渦 200507
虹生んでつぶやきやめぬ田螺たち 渡邉友七 あを 200508
水澄めり田螺も人もゐぬ田圃 佐藤喜孝 あを 200511
炎天の水の動きや大田螺 久保村淑子 万象 200511
冬耕の土塊まみれなる田螺 植竹美代子 雨月 200604
田螺煮てひとり呟きひとり応ふ 金田きみ子 200605
太陽の落し子田螺這ひ動く 瀧春一 瓦礫 200606
漱石もすでに古典や田螺鳴く 鮎川富美子 200606
春愁ふ田螺は蓋を閉ぢにけり 定梶じょう あを 200606
歩むときの田螺悉く歩みをり 瀧春一 瓦礫 200606
泳ぎたきしつぽのなくて田螺鳴く 定梶じょう あを 200606
田螺移るしんしんとしんしんと淋し 瀧春一 瓦礫 200606
古代世の田螺鳴きけり明日香村 塩路隆子 200609
朽ち八橋かけ替へどきよ鳴く田螺 山元志津香 八千草 200609
髭長き田螺が這ふてくる夜長 市場基巳 200702
穭田に田螺を掘りし幼き日 河野政恵 酸漿 200703
田螺のこゑ聞かず傘寿の誕生日 神蔵器 風土 200704

 悼 郡司野鈔君

 「泥まみれ父より継ぎし田の田螺」あれば

泥まみれの田螺残して逝かれけり

松崎鉄之介 200704
祖父の名の酒豪番付田螺鳴く 杉浦典子 火星 200705
田螺和へ胸の奥処に父母棲みて 成田なな女 春燈 200705
田螺鳴く萱葺門の裏手かな 本多俊子 200705
虎造の清水次郎長田螺鳴く 吉弘恭子 あを 200706
はればれと空仰がむと田螺這ふ 早崎泰江 あを 200706
杉箸を小さく使ふ田螺和 飯塚ゑ子 火星 200706
てつぺんのかわきはじめし田螺かな 竹内弘子 あを 200706
気散じに歩けば泥田に田螺這ふ 鎌倉喜久恵 あを 200706
眼を病みし曾祖母田螺口にせず 森山のりこ あを 200706
間違ひを起こして了ふ田螺かな 篠田純子 あを 200706
干涸びず日々過ごしをり田螺鳴く 早崎泰江 あを 200706
山峡ひの田螺料理や夜さりつつ 堀内一郎 あを 200706
彗星の遠ざかりゆく田螺また 佐藤喜孝 あを 200706
養殖の田螺田楽そろりかむ 長崎桂子 あを 200706
母親に似てきたらしい田螺鳴く 須賀敏子 あを 200706
田螺鳴いて浮き上りくる泡一つ 根岸善行 風土 200706
大同の深夜の露店に田螺売る 松崎鉄之介 200707
大田螺鳴けど手応へなかりけり 高橋将夫 200707
ことだまの國なる田螺鳴けるかな 水野恒彦 200707
千年の樹々に底あり田螺鳴く 浜口高子 火星 200708
御旅所のバケツの田螺鳴きにけり 浜口高子 火星 200709
触鬚張り窪みにでんと大田螺 中野英歩 八千草 200709
旅籠屋の郷土料理や田螺和 中村翠湖 馬醉木 200805
ほんたうの話のつづき田螺和 遠藤和彦 遠嶺 200806
竹筒の酒もてなさる田螺和 渡邉英子 馬醉木 200807
叩いても埃のでない大田螺 高橋将夫 200807
水底の田螺が昼の夢を見る 東良子 遠嶺 200807
叙勲とや田螺の道に朝日差し 大畑善昭 200807
水底の田螺に阿波の夕日かな 浅井敦子 万象 200808
夏燕泥の田螺がごろごろり 大坪景章 万象 200808
我が父祖の口の数ほど田螺鳴く 柳川晋 200905
田螺鳴く箸立ての箸隙間なく 杉本薬王子 風土 200906
田螺鳴く日々九十の自死に鳴く 田村葉 炎環 200906
なまぬるき山の風来る大田螺 中田禎子 200907
田螺鳴くうすらに暮るる田に佇てば 白石正躬 やぶれ傘 200907
千枚田たにしの火種まだ小粒 禰寝瓶史 京鹿子 200908
田螺這ふいづこ坐しても日のぬくみ 沼田巴字 京鹿子 200908
貞任の駆けし街道田螺鳴く 石崎浄 風土 200908
田螺和へ巻きもどされてゐる時間 奥田筆子 京鹿子 200909
田螺鳴く徹しきれざる人ぎらひ 村田冨美子 京鹿子 201001
明日はどうするじつとしたままの田螺 大山里 201005
山頭火に田螺のぬたを献上す 瀬川公馨 201006
こころまづしくて田螺をあはれめり 成瀬櫻桃子 櫻桃子選集 201105
鴉とて食べてゆかねば田螺鳴く 竹内悦子 ちちろ虫 201108
田螺鳴くだあれも居ない村のひる 豊田都峰 水の唄 201203
酒とるか命をとるか田螺鳴く 神蔵器 風土 201204
大田螺すでに人生達観す 高橋将夫 201207
田螺また転びし音の金盥 山本耀子 火星 201207
反射神経にぶくなりたる田螺かな 和田幸江 春燈 201209
御仏や泥鰌田螺を眠らせて 神蔵器 風土 201301
一・二枚日ののこりをり田螺鳴く 神蔵器 風土 201304
観覧車に乘つてみたいと田螺いふ 近藤紀子 201306
夏帽子一寸あみだにしてかぶり 副島いみ子 ホトトギス 201312
夢想だにしなき年賀の客来たる 山田六甲 六花 201401
河内野や田螺鳴かする月の出で 山尾玉藻 火星 201404
震源は竜宮あたり田螺鳴く 市ヶ谷洋子 馬醉木 201405
大田螺過去も未来も田の中に 高橋将夫 201406
田螺鳴く丈八寸の童子仏 雨宮桂子 風土 201407
赤腹が田螺の殻を蹴りすすむ 南うみを 風土 201408
里山の水の呟き田螺取 稲畑廣太郎 ホトトギス 201503
みちのくの亀と田螺の鳴き交はす 高橋将夫 201505
自ずから田螺は道を作りけり 江島照美 201506
越前は考のふるさと田螺鳴く 杉山哲也 馬醉木 201506
この域を脱し切れない田螺かな 岩月優美子 グピドの瞳 201506
曖昧は大人の智慧や田螺鳴く 梅村すみを 201506
指太は妣ゆづりなり田螺和 一民江 馬醉木 201507
水底の田螺に重き空と雲 きくちえみこ 港の鴉 201510
居眠りをしてゐるらしき大田螺 近藤喜子 201605
畦堀のいそぎ浚ひや田螺鳴く 吉村さよ子 春燈 201606
みづけむり立て夢を追ふ田螺かな 寺田すず江 201607
やはらかなところは苦し田螺鳴く 高橋将夫 201705
無意識の中にもぐつてをる田螺 高橋将夫 201705
フランスの田螺は鳴かぬと言はれけり 高橋将夫 201707
海鳴りの遠く田螺の鳴きにけり 本多俊子 201707
小走りに来て田螺鳴く集会所 荒井和昭 201707
田螺和肩より迫る峡の冷え 小林愛子 万象 201707
隠し田の田螺夕日にうごめけり 田勝子 万象 201708
ふるさとやキリストのごと田螺ゐて 神蔵器 風土 201803
鬼たちの酒の肴の田螺かな 高橋将夫 201805
古池の眷属めきて田螺涌く 谷村祐治 雨月 201806
池干されあはや田螺の晒さるる 谷村祐治 雨月 201806
田の神を迎へ田螺の這ひ出だす 浜福惠 風土 201807
東京つ子見た事もない田螺かな 本田保 春燈 201807
田水張りて撒き散らすかに田螺出づ 時田義勝 やぶれ傘 201808
藻をまとひ田螺田主と申すべく 南うみを 風土 201907
ぐわらぐわらと馬穴の田螺掴み見せ 南うみを 風土 201907
田螺禍の青田半分水光る 田中臥石 末黒野 201909
考への及ばぬ処田螺鳴く 亀田虎童子 202006
田螺から小さきあぶくひとつ立つ 泉一九 やぶれ傘 202007
この田螺琵琶湖の波に太りたる 井上和子 202010
早苗田の根方外来大田螺 廣畑育子 六花 202010
田螺和戦後と言ふは一時代 齊藤實 202104
枕は低くして休めよと田螺鳴く 浜福惠 風土 202107
人まばら豊旗雲に田螺鳴く 宮元陽子 末黒野 202108
田螺鳴く古墳のそばの沼あたり 白石正躬 やぶれ傘 202205
風呂釜の転がつてをり田螺鳴く 山浦紀子 春燈 202206
はい.いいえ二択拒めず田螺鳴く 鷺山珀媚 京鹿子 202206

 

2023年2月8日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。