足 袋      162句

白足袋のチラチラとして線路越ゆ    中村草田男

作品
作者
掲載誌
掲載年月
色足袋の闇に紙燭の匂ふかな 堀江かつみ 199901
白足袋のはたと止まりし岬かな 橋本良子 遠嶺 199904
体温で乾かぬ足袋よ帰路いそぐ 丸山佳子 京鹿子 199904
小津安二郎逝き白足袋のこはぜほど 嵯峨根鈴子 火星 199907
来し方も行方も美学足袋ぴしと 丸山佳子 京鹿子 200001
古足袋を束ね懸想をせし日々や ならぶ真希 200003
白足袋や額うつくしく結ひ上げし 山田弘子 円虹 200003
二千年へ九字切つてはくま白足袋 丸山佳子 京鹿子 200003
能を舞ふ外反母趾の足袋でけり 和田瑞子 銀化 200003
百段の磴に挑みて白き足袋 永田哲心 遠嶺 200004
合掌家守り来し衿持足袋真白 菅谷弘子 雨月 200005
色足袋を一足おろし冬に入る 後藤比奈夫 ホトトギス 200005
拇指の股に集中足袋の継 後藤比奈夫 ホトトギス 200005
老い母の一途さ見せて足袋をつぐ 杉本艸舟 200101
洗濯機より掴みだす足袋その他 山尾玉藻 火星 200101
白足袋の位置確と決め弓を引く 杢子安子 200102
石蕗咲いて今日一日の足袋白し 長尾康子 風土 200102
小抽出し今は廃れし色の足袋 西脇きぬ 京鹿子 200103
極まつた美には学べず足袋洗ふ 丸山佳子 京鹿子 200104
還らざる日々よ久しく足袋履かず 岡本眸 200104
忌を修し女は足袋を脱ぎにけり 竹内悦子 200107
足袋あかき妻が追ひゆく厨芥車 能村登四郎 200108
色足袋の母の形見となりしかな 永井房代 200112
足袋脱げば恨みびかりの鞐かな 林翔 200201
野良子猫大分馴れて足袋を嗅ぐ 川崎不坐 火星 200202
あひびきの余韻を引ける足袋洗ふ 佐藤節子 銀化 200202
おもかげの誰も足袋履く実南天 岡本眸 200202
足袋を履く仕種に女盛りかな 泉田秋硯 200203
きっちりと足袋穿き二日つまらなく 利根川妙子 200204
炎に浮かぶ法師の足袋と高下駄と 岡和絵 火星 200204
若き僧白足袋さゆる日の匂い 鈴木多枝子 あを 200204
屋根替の男の足袋のこむらさき 村上喜代子 百鳥 200205
足袋真白なるもはき替へお席入 植村よし子 雨月 200206
ふざけをる庭の芸妓は足袋跣足 常坂幸次郎 帆船 200210
蝋燭にシテ百万の足袋の影 吉弘恭子 あを 200301
別珍の色足袋を恋ふ夕厨 麻生當子 200303
身に添ひて来し父の足袋父の下駄 保田英太郎 風土 200303
白足袋の教頭と会ふ畷かな 吉田泰子 火星 200304
年ひとつ積みて白足袋洗ひけり 名取光恵 百鳥 200304
白足袋を叩いて干せり米寿母 田下宮子 200305
白足袋の指先までも意志通す 矢崎いと子 200307
すでに意を決してゐたる足袋白し あさなが捷 200312
参道を来る子の足袋のうすぼこり 岡本明美 雲の峰 200401
足袋を干す小さき家におぼえあり 中村雅樹 百鳥 200402
秀句秀句のあしたへ足袋の封を切る 丸山佳子 京鹿子 200403
色足袋にして商談をかたくなに 高千夏子 200403
普山式に雲より白き足袋ぴしと 丸山佳子 京鹿子 200405
尺貫法まだ爪先に足袋を穿く 真木早苗 八千草 200405
足袋白し奈落の底に立つときも 柴田佐知子 200405
涼流の音も一緒に足袋をぬぐ 丸山佳子 京鹿子 200407
白足袋の男の素性はかりかね 木村茂登子 あを 200501
白足袋の小鉤を直すワキ柱 立脇操 雲の峰 200502
白足袋の御子良子の歩のぎこつなし 祐森省造 雲の峰 200502
白絹の足袋をはかせて旅立たす 加藤峰子 200503
白足袋の七枚鞐先帝祭 関位安代 帆船 200504
梯子乗る足袋の白さや木遣歌 河原昭子 六花 200504
足袋きつく履きて女の隙見せず 久場俊子 馬醉木 200504
白足袋や内陣にての鈴と鉦 山崎靖子 200504
昔女ありけり色足袋を吊しをり 戸田和子 200504
黒足袋の裏懸命に白かりし 木村淳一郎 ホトトギス 200505
日と影の妻の歳月足袋を干す 田中武彦 六花 200505
その隙間埋められずして足袋をはく あさなが捷 200505
白足袋のひるがへりたり投地板 横井博行 万象 200510
三伏の白足袋まかる七七忌 有島夛美 河鹿 200510
夜ふけの灯足袋つぐ妻の母に見ゆ 竹貫示虹 京鹿子 200512
じか足袋に小はぜたくさん神の旅 定梶じょう あを 200512
大天井飛弾の工の作業足袋 鈴木榮子 春燈 200601
隠れ塚足袋の爪先より濡れて 品川鈴子 ぐろっけ 200601
爪先を揉んでなじます男足袋 伊藤白潮 200601
新しく二十三の足袋死を送る 坂元フミ子 河鹿 200602
黒足袋の鍛冶屋居並ぶ刃物市 山本あかね 百鳥 200602
能舞台清むる足袋の白さかな 村本真由美 遠嶺 200602
さやけしや黒子の白き足袋の裏 鎌須賀礼子 万象 200602
白足袋もすいとひと舞い先斗町 角谷美恵子 ぐろっけ 200603
出仕する僧の白足袋立ち上り 細川房代 百鳥 200603
屏風絵の焦翁の足袋濡れてゐし 山田六甲 六花 200603
生活苦しかりける頃の足袋ばかり 市場基巳 200604
足袋はきてすでに手順は決まりをり あさなが捷 200604
姉逝きて黄泉路寧かれ足袋穿かす 細川コマヱ 雨月 200604
色足袋や藤十郎を見にゆかむ 市ケ谷洋子 馬醉木 200605
誰かを信じ白足袋水を踏むごとく 八田木枯 晩紅 200606
抱かれゆく稚児の白足袋練供養 西山美枝子 酸漿 200610
爽けしや織子の足袋の草の色 大坪景章 万象 200612
弱気など微塵も見せず足袋を穿く 西口鶴子 遠嶺 200702
夜の法会有髪の尼の白き足袋 三澤治子 万象 200703
色足袋のひよつとこ役の芸達者 山部淑子 200704
白足袋や我が来し方に揺るぎなし 川畑はるか 遠嶺 200704
白足袋にゆづられにけり太鼓橋 丸山照子 火星 200704
五本指の足袋をはきたる庭師かな 高倉恵美子 200704
色足袋の阿閣梨に健歩あやからむ 武藤士侑 ぐろっけ 200706
真新し白足袋雪駄棚経僧 近藤豊子 雨月 200711
夜干してしめりの残る足袋二足 さのれいこ 春燈 200712
ふととまる戦後の写真足袋の穴 四條進 200802
別珍の赤き足袋ゆく京大路 三澤いつ子 万象 200802
白足袋の蹠美し躙り口 米澤しげる 春燈 200803
父恋しきつ目の足袋の盲縞 三浦ゑおり 風土 200803
いつせいに白足袋動く義士の列 川崎光一郎 京鹿子 200803
出仕の僧荷に新しき足袋を添へ 細川コマヱ 雨月 200803
舞ふ足袋の時に激しく毛利邸 大井邦子 ぐろっけ 200803
白足袋を下ろして人に逢ひに行く 林いづみ 風土 200804
彼の人の妻にはなれず足袋洗ふ 大木清美子 200805
母へ買ふ足袋の文数そらんずる 伊藤白潮 200810
二階より降り来し足袋の白さかな ことり 六花 200812
白足袋を皺無く履きて人嫌ふ 岡本眸 200901
足袋三足干す藤間流師匠宅 遠藤とも子 ぐろっけ 200902
枡席へ総見の足袋上がりけり 高松由利子 火星 200903
白足袋の母を思へり雛祭 高倉和子 200903
人形に小さき白き足袋履かす 井上正子 春燈 200904
足袋はいて老の一日のはじまれり 平野伸子 馬酔木 200905
白足袋の板に吸ひ付けられしかな 東亜未 あを柳 200912
畳踏む父と子揃ひの青き足袋 東亜未 あを 201001
ぶつきらほうの職人かたぎ足袋の穴 中野さき江 春燈 201002
白足袋のすぐに汚れし里神楽 中条さゆり 201003
鉦太鼓白足袋目立つ若き僧 鈴木多枝子 あを 201003
踊り子の床擦る足袋の白さかな 村松忠治 遠嶺 201004
白足袋や酒田に残る京訛 藤本一城 201004
白足袋を履きて身の芯通しけり 隅田享子 201005
眺へし足袋甲高は父に似て 鈴木セツ 201102
白足袋のゆると摺り足能舞台 魚谷美恵子 ぐろっけ 201102
轆轤蹴る足袋の爪先抜けしまま 山田六甲 六花 201103
替への足袋数寄屋袋に忍ばせて 中島霞 ぐろっけ 201105
またの世へ白足袋のまま舞ひながら 堀江惠子 201108
白足袋の裏の真白く干されけり 小田嶋野笛 末黒野 201203
白足袋のすぐに汚れてあたゝかき 久保田万太郎 春燈 201208
白足袋が木賊のあはひ来るところ 山尾玉藻 火星 201301
句会果て浅草に買ふ婚の足袋 福島吉美 万象 201302
足袋干して裏に表札ある舟屋 米澤光子 火星 201302
白足袋や摺り跡しるき能舞台 三輪慶子 ぐろっけ 201302
白足袋の錦天神出できたり 西村節子 火星 201303
にこにこ顔続けし疲れ足袋を脱ぐ 折橋綾子 201304
つぎあてし足袋なつかしや年のくれ 竹貫示虹 京鹿子 201312
干足袋を忘れられたる比丘尼かな 神田恵琳 春燈 201401
あたたかき足袋はいて立つお元日 佐藤喜孝 あを 201401
落慶へ僧の白足袋しづしづと 滝澤圭子 雨月 201402
片足を右足にのせ足袋鞐 吉弘恭子 あを 201403
足袋を縫ふ祖母は仕上げの木槌音 増田一代 201403
足袋裏の見えて正座の母小さし 一民江 馬醉木 201502
夫のはく足袋の小鉤を折返し 村田美代子 馬醉木 201503
逝く人にゆるめの足袋の縦むすび 渡部良子 馬醉木 201503
白足袋に間の緩急や能舞台 石倉千賀子 ろんど 201503
粥占や神主の足袋雪濡れに 浅田光代 風土 201504
うかうかと夢の世に足袋脱いで来し 熊川暁子 201504
色足袋にはきかへ母の顔となる 笹村政子 六花 201504
百姓能に懸くる男の足袋白し ほんだゆき 馬醉木 201510
色足袋を括つてありし白い糸 後藤立夫同 ホトトギス 201605
白足袋のこはぜピタリと寒に入る 渡辺やや 風土 201701
沈黙は弱気にあらず重ね足袋 片桐てい女 春燈 201704
白足袋や女房の役終りたる 竹内悦子 201705
色足袋や生涯妻のここのもん 中川句寿夫 ここのもん 201705
つつがなく一と日を終へて足袋を干す 今橋眞理子 ホトトギス 201706
長旅に疲れし足袋を洗ふ虚子 稲畑廣太郎 ホトトギス 201712
足袋履いて十七代目現はるる 稲畑廣太郎 ホトトギス 201712
足袋履きて爪立ち軽くなりしかな 永井惠子 春燈 201803
黒足袋に泥乾きゐる陶師かな 山田六甲 六花 201803
木通尼荷樽輪あけびににたるわre女旅足袋目めたびたびめうつ 高橋龍 201805
義理ひとつ果たせし足袋を脱ぎにけり 岸洋子 201906
干す足袋の小鉤きらきら寒椿 有賀昌子 やぶれ傘 202005
雪駄はみ出す黒足袋の若力士 坂口晴子 202007
足袋脱ぎて別れの未練断ちにけり 大西由美子 春燈 202102
裾捌く足袋の白さの気品かな 根本公子 末黒野 202104
あたためて履く白足袋や惜命忌 小田嶋野笛 末黒野 202203
指先のよろこぶ足袋を先づは脱ぐ 林いづみ 風土 202204

 

2023年1月12日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。