尺蠖虫     192句

尺蠖の哭くが如くに立ち上り    上野泰

作品
作者
掲載誌
掲載年月
尺取虫の背や人間を感じている
池田澄子
船団
199812
生半可に生きて晩年土壜割 小谷部東吾 199902
尺蠖の遺る気の腰の最初かな
飯塚ゑ子
ヒッポ千番地
199906
尺蠖の這へば子の手の従ひぬ
稲畑廣太郎
廣太郎句集
199912
尺蠖も迎へくれたる古道かな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200005
百度踏む尺蠖あらば擦り切れむ
中原道夫
銀化
200006
尺蠖に己が余生を計らるる
神蔵器
風土
200007
葉一枚尺蠖おろす世界かな
三村禮子
酸漿
200007
てのひらの尺蠖のさてどうするか
奥田節子
火星
200008
尺蠖虫ふらここ遊び余念なし
家塚洋子
酸漿
200009
尺蠖の尺の生みだす点と線
湯本道生
200009
尺蠖の空へ出られず枝の先
藤原かかし
200010
尺蠖の伸びゐしときの海青し
桑田真佐子
200010
尺蠖の進みゆく方頭かな
鬼頭桐葉
春蘭
200010
上り列車尺蠖虫が靴の上
市野記余子
海程
200011
尺蠖の雨に打たれてのびてをり
松沢久子
いろり
200104
尺蠖の枝になりきり風を聴く
高橋あさの
200107
尺蠖のゐて退屈を凌ぐなり
松本康司
銀化
200107
隧道の兩端に人尺取虫
佐藤喜孝
あを
200107
尺蠖や沖の瀬高くなりにける
栗栖恵通子
200108
尺蠖の尺取って生つなぎゐる
大橋敦子
雨月
200108
尺蠖の後生望む虚空かな
森谷彰
銀化
200108
尺蠖の腹筋眼にもおよびけり
原徹
銀化
200108
尺蠖に郡上の空のありにけり
大山文子
火星
200109
尺蠖の緑の枝となりすます
東芳子
酸漿
200109
果敢にも尺蠖尺取る大けやき
辰巳あした
雨月
200109
尺蠖の間尺にあはぬ大欅
大石よし子
雨月
200109
執拗にあそぶ漢や尺蠖と
東野鈴子
雨月
200109
山宮へいそぐわたしも尺蠖も
雨村敏子
200109
尺取虫サーカス蜘蛛はレース編む
松村美智子
あを
200109
尺蠖や真つ直ぐに立つ「御柱」
鈴木石花
風土
200110
宿坊の尺蠖の嶺を測りをり
和田照海
京鹿子
200110
枝先の宙を確かめ尺取虫
阪野徹
200111
百代を尺蠖五体投地して
利根川博
銀化
200111
尺蠖の芝居がはねて動き出す
利根川博
銀化
200111
尺蠖のやにはに尺を取りはじむ
大坂蛍火
200112
身をそらす尺蠖ほどには若くない
坂本敏子
京鹿子
200201
尺を取りはじめ尺蠖虫となる
稲畑汀子
ホトトギス
200206
尺蠖の多き木蔭と聞いて来し
稲畑汀子
ホトトギス
200206
落ちて来し尺蠖虫と分るまで
稲畑汀子
ホトトギス
200206
尺蠖の逃げ足尺をとる一途
白石峰子
円虹
200208
尺取りは今から行くのか帰るのか
松山律子
六花
200208
尺取の測りきれざる神の意志
西川織子
馬醉木
200209
尺蠖が天下茶屋よりひき返す
野澤あき
火星
200209
尺蠖に測られてゐる男かな
嶋崎茂子
百鳥
200209
尺蠖は余生とやらも計れるか
的場うめ子
ぐろっけ
200209
剃りあとの青さ尺蠖みだらぼけ
丸井巴水
京鹿子
200210
ちるちるみちる尺取向きを変へにけり
梶浦玲良子
六花
200210
枝になりきつてしまひし尺取虫
足立幸信
200312
尺取の尺取らずなり枝となる
石川元子
酸漿
200312
尺蠖の進む一分や飛行雲
新谷恵子
200312
尺蠖よ青山いたる処にあり
山元志津香
八千草
200402
尺蠖に首を測られむずがゆき
西島みね子
八千草
200402
尺蠖の歩みをわれの歩みとす
松本圭司
200408
糸ほどの尺蠖虫が胸反らす
武井美代子
万象
200409
尺蠖虫沖を眺めて折り返す
乗鞍三彦
春燈
200409
尺蠖虫野良着の寸を取りゐたり
乗鞍三彦
春燈
200409
尺蠖の尺の向かふの高嶺かな
淵脇護
河鹿
200409
尺蠖の端数省略したりけり
木村みかん
200410
尺蠖の枝先に来て立ち上り
福田かよ子
ぐろっけ
200410
真二つに尺取虫も刈られたる
秋千晴
200411
鳥止まり尺蠖そっと枝になる
山崎辰見
ぐろっけ
200411
尺蠖のちぢみて影を濃くしたり
菊地光子
200508
歩む尺蠖一目散のつもりかも
定梶じょう
あを
200508
尺蠖のまかり出でたるツアーバス
山口順子
200509
ぶら下がる尺蠖頭振るばかり
大坪景章
万象
200509
尺蠖になつて柔軟体操す
片岡静子
200509
腕を這ふ尺取庭の木へ戻す
原口洋子
栴檀
200509
逃ぐるにも尺取らねばや尺獲は
石垣幸子
雨月
200510
尺蠖の数を忘れて止まりしや
阪野徹
200512
枝先の尺蠖空に乗るところ
渡辺ひろし
200608
尺蠖の伸びきつてゐる夕茜
宮野照子
馬醉木
200609
尺蠖にてんごしてをる日和かな
谷村幸子
200609
知恵の輪に近づく形尺取虫
加藤峰子
200609
尺蠖の測るは人の心かも
八木柊一郎
ぐろっけ
200609
尺蠖を見てをり午後もひとりの日
藤井昌治
200609
尺蠖の縋る植木を車に積む
定梶じょう
あを
200609
尺蠖の背筋波打つ岳日和
松澤秀昭
200610
尺取ってとって尺蠖迷ひをり
松林順子
雨月
200610
尺蠖のその名よろこぶ永六輔
中野英歩
八千草
200612
尺蠖の突張り枝になりすまし
中野英歩
八千草
200701
矩尺はいらぬと大工尺取虫
中野英歩
八千草
200701
尺蠖は一目散に発条仕掛
中村星児
八千草
200701
尺蠖は常に単独登攀者
須田紅三郎
200706
尺蠖の次の一点定まらず
十川たかし
200708
尺蠖の間目を計る蔵の町
小林共代
万象
200708
周章狼狽尺蠖虫の枝の先
大橋敦子
雨月
200708
尺蠖の進まんとして縮みたる
高橋将夫
200709
尺取を肩より移す枝探す
森下賢一
春燈
200709
尺蠖の五分のいのちのすすみくる
ほんだゆき
馬醉木
200710
棒立ちの尺蠖に雨激しかり
川口崇子
万象
200710
尺蠖に答の深さを測らるる
吉田明子
200710
石道寺車のドアの尺蠖虫
波田美智子
火星
200710
徒疲れ尺取虫を邪見にす
松本鷹根
京鹿子
200808
尺蠖をもとのところへ戻したる
高橋将夫
200809
取り倦みて尺蠖風を聞きをりぬ
朝妻力
雲の峰
200810
背伸びして尺蠖あすを見てをりぬ
飛鳥由紀
200810
尺蠖の歩行は本質的であり
定梶じょう
あを
200810
老懶を忘れ尺蠖見てゐたり
野沢しの武
風土
200901
尺蠖をもとんところへ戻したる
高橋将夫
真髄
200907
尺取のしばらく虚空まさぐりぬ
野崎昭子
春燈
200908
尺蠖の足音じつと聞く大樹
加藤みき
200909
尺蠖の計る余生の淡きかな
鈴木良戈
200909
尺蠖に計られてゐる詩心かな
小林輝子
風土
200910
尺蠖や矩も鯨も知らぬ世に
上山永晃
春燈
200910
尺蠖の城の石垣計りをり
宮崎知恵美
万象
200910
尺蠖の体ななめに立ちあがり
中山静枝
201008
何欲るや尺蠖ときに咆哮す
佐藤山人
201009
尺蠖や次の一手をさがしをり
成田美代
201009
尺取虫見つけ幼の目が点に
三井尚美
ぐろっけ
201009
尺取虫とどまり背筋伸ばしけり
田中文治
火星
201010
尺取のたどりつきたるよいと巻け
梶浦玲良子
六花
201010
尺取虫進まんとしてまた縮む
遠藤実
あを
201012
尺取虫旅の紫蘇の実計りをり
小山ナオ子
酸奬
201012
尺蠖りの一歩は未知の国探し 森下岩男 風土 201106
尺取がつくる底辺三角形 鈴木セツ 201107
尺取虫笊の紫蘇の実計りをり 小山ナオ子 酸漿 201107
尺蠖やイナバウワーをして測り 森下康子 201108
尺蠖の尺を重ねて来たる日々 田中貞雄 ろんど 201108
手刀を切つて尺蠖折り返す 浅沼久男 201109
尺蠖の蓬莱橋を渡りける 川崎かずえ ろんど 201202
尺蠖を見てそのままに散歩道 米田文彦 かさね 201208
尺蠖や人は失意の膝を抱く 小嶋恵美 春燈 201209
芝広し尺蠖に余生計らるる 佐瀬晶子 ろんど 201209
目に余る男の世辞や土瓶割 新江たか ろんど 201211
尺蠖のリズムに山の閑動く 佐瀬晶子 ろんど 201212
尺蠖に計られてゐる余生かな 小林輝子 風土 201310
お得意はモンローウオーク尺取虫 貝森光洋 六花 201311
何尺も数えて尺取虫老ゆる 貝森光洋 六花 201311
尺蠖のインチに迷ふ竿の先 相良牧人 201311
尺蠖の尺取らず腹満たしをり 落合由季女 雨月 201311
尺蠖を小枝の先に移しやる 土井ゆう子 風土 201312
雨宿りしつつ葉裏の尺取虫 篠田純子 あを 201406
泊月の句碑に尺蠖箕面山 坂上香菜 201407
国分寺跡の尺蠖木を登る 宮田香 201408
尺蠖の路地を急いでをりにけり 林典子 雨月 201408
尺蠖の十の脚もて丈はかる 原田達夫 201408
尺蠖の空中ブランコ見てゐたり 瀬川公馨 201408
尺蠖の測らぬときは反り返り 森山暁湖 万象 201409
尺蠖虫の五体投地や青山河 鳥居美智子 ろんど 201410
尺蠖や事多き世を測りかね 間宮あや子 馬醉木 201508
尺蠖のまだ尺とらぬうすみどり 笹村政子 六花 201508
尺蠖やメートル法の世を生きる 八木健 八木健俳句集 201509
尺蠖の地球の尺を取らむとす 小林陽子 201509
尺蠖の進むΩオメガの文字のごと 平野みち代 201509
尺蠖の五体投地の一歩かな 中島芳郎 201509
尺蠖の測り残しの今日がある 熊川暁子 201510
尺蠖のなんて真面目な小枝ぶり 片山煕子 京鹿子 201601
尺蠖の逃げて本音をひた隠す 鈴鹿呂仁 京鹿子 201607
確かめてまた尺蠖の進みだす 柴田佐知子 201607
生れたての尺蠖歩む石の上 吉村さよ子 春燈 201608
尺蠖のいけしやあしやあとルビを打つ 鈴鹿呂仁 京鹿子 201608
尺蠖の少し思案の節目かな 白神知恵子 春燈 201609
尺蠖は余命を測ることもする 熊川暁子 201609
尺取虫尺を取りとり逃走中 火箱ひろ 船団 201702
粗方の罪は逃げ足尺取虫 鈴鹿呂仁 京鹿子 201707
尺蠖の宙より降りて地を計る 犬塚李里子 201708
尺蠖の縫ひ目を解く政治記者 鈴鹿呂仁 京鹿子 201709
伸縮もひと日のいのち尺蠖虫 横溝和恵 京鹿子 201711
「お茶をどうぞ」庭師の肩に尺蠖が 衣斐ちづ子 201807
尺蠖の屈伸続くやぶの中 篠崎志津子 やぶれ傘 201808
尺蠖や空間も亦丈を持つ 湯川雅 ホトトギス 201811
尺蠖や習おうかしらんヴァイオリン 阪野基道 船団 201812
尺蠖ののけぞつてゐる枝の先 稲葉三惠子 馬醉木 201909
尺蠖の歩みに巡る月日かな 高橋将夫 201909
尺蠖の怠けてゐたる葉裏かな 森岡正作 201909
尺蠖の墓石を計りゐたりけり 志方章子 六花 201910
天道に尺取虫のごとく居る 平野多聞 202002
尺蠖の空へと伸びて泳ぎをり 佐藤克江 202009
屈伸の尺蠖沼の橋進む 光成敏子 202102
尺蠖の五欲を計る術もたず 鈴鹿呂仁 京鹿子 202108
ひらがなで遊ぶ尺取り虫の性 奥中双樹 京鹿子 202110
尺蠖や閻魔の膝の尺をとり 岡野里子 末黒野 202209
尺蠖の吾に向かひし構へなり 井上静子 202209
尺蠖の計りきれない可能性 鷺山珀眉 京鹿子 202210
天辺の尺取空を持て余す 梶野興三 京鹿子 202211
尺取や高さ競ひし高層ビル 梶野興三 京鹿子 202211
尺蠖の五体投地や僧に似て 長谷川はまゆう 末黒野 202304

 

2023年6月28日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。