逃 水     204句

逃ゲ水ニ住ム魚アリ名は知らず   山本純子

作品
作者
掲載誌
掲載年月
逃水や淡路山なみ指呼にして 高井去私 ひまわり 199806
逃水の果てし浮舟墳あたり 栗栖恵通子 199807
逃水のにげゆくところ鳥辺山 戸田悠 銀化 199904
逃水や乗れば千里の口車 渡辺純 京鹿子 199905
逃水の凹地にかはるところかな 奥田節子 火星 199907
逃水の誘ふ時間を睡りゐる 山野みどり 銀化 199907
逃水やかたまり動く人の脚 岡本高明 200005
逃水や逃がるるすべのなき齢 老川敏彦 200005
逃水を追ひて眼の濡れやすし 甲州千草 200005
逃水のごとくに職を失ひし 岡本久也 200006
あせらずの行く手花眼か逃水か 郡司野鈔 200006
武蔵野の逃水を追ひ秩父まで 當麻幸子 俳句通信 200006
地平線指し逃水を追うてゆく 金森教子 雨月 200009
逃水や助手席に置く試作品 三井孝子 六花 200010
逃水や後部座席のよくはしやぐ 望月周 百鳥 200106
逃水の方へ園児の列過ぎぬ 渡辺政子 俳句通信 200106
逃水のささ一服をしてまゐれ 中原道夫 銀化 200107
逃水や眠たくなりぬ直線路 佐藤貞子 雨月 200108
かの男逃水を追ふばかりにて 市場基巳 200109
逃水に歪みし漁船も客船も 浜田南風 200205
入口のやうに逃水置かれあり 佐藤喜孝 あを 200205
逃水や順位のつきし迷ひごと 赤座典子 あを 200205
逃水を追ひておのれを欺けり 鈴木良戈 200206
逃水に驢馬の荷車浮き沈む 蟇目良雨 春耕 200206
逃水の坂の学園通りかな 奥田節子 火星 200207
逃水にもつとも遠く呟けり 高田令子 200301
逃水やほほゑむのみの夢の母 清水節子 馬醉木 200305
逃水の果てに神棚ありにけり 栗栖恵通子 200305
先々に置きて乾きぬ逃水は 中原道夫 銀化 200305
虚言癖逃水に足濡らし來て 中原道夫 銀化 200305
逃水を追ひきて海の通せんぼ 谷口みちる 200306
逃水を追つて夢裡から夢中から 吉弘恭子 あを 200307
逃水に全身ぬらす恋の猫 吉弘恭子 あを 200307
逃水の大地に鏡置くごとし 近藤貞子 ぐろっけ 200307
逃水や疑ふ心すこしづつ 苑実耶 200310
逃水に渡すバトンを振りかざす 高橋とも子 百鳥 200406
逃水のいざなふ方や九十九里 松井のぶ 200407
逃水につづく海坂真つ平ら 雨村敏子 200408
逃水を追ひつめてゆく誕生日 小林和子 風土 200408
逃げおほす逃水北緯四十度 村上沙央 200409
逃水の逃げきり湖となりにけり 櫻井幹郎 百鳥 200411
逃水や罠にかからぬレグホーン 瀬下るか 200501
これからも懲りず逃水追ふつもり 伊藤白潮 200503
逃水やこたびも賞に届かざり 伊藤白潮 200505
逃水や身ほとりにあるミステリー 篠田純子 あを 200505
好きだから逃水ほどの距離を置く 伊藤白潮 200506
逃水の先に見え来し亡夫の村 中谷葉留 風土 200506
逃水や容易く夫を渡すまじ 奥田茶々 風土 200507
逃水の逃げきりしとき日の暮るる 望月晴美 200507
逃水やゲートを開ける州境 神田美穂子 万象 200508
逃水やいくら駈けても母遠し 長井順子 200509
生涯を逃水追いぬ自我追いぬ 田中時子 八千草 200511
逃水や平行線に倦みしころ 北川英子 200604
逃げ込める逃水追うて隧道へ 秋葉雅治 200605
逃水やサラブレツドの運ばるる 林いづみ 風土 200606
逃水やピッチャーの肩の息遣ひ 加藤みき 200606
身体のまるごと元素逃水も 大畑善昭 200607
逃水や道にはみだす花舗の鉢 吉田明子 200607
逃水や古城近づけ遠ざけて 山元志津香 八千草 200609
逃水やメロスの真実追ふごとし 山元志津香 八千草 200610
逃げ水を追ひ来てここが陸の果 鷹羽狩行 200704
逃水や歪が魅力の黒織部 上原重一 200705
逃水も攫つてくれぬ副作用 松井のぶ 200705
砂州一二里灘へ逃水追ひつめて 北川英子 200705
逃水を追へば展けし海の藍 徳田千鶴子 馬醉木 200706
逃水の窪みを跨ぐ大き足 岩下芳子 200706
逃水に漂ふひとを宥しけり 中田みなみ 200706
逃水や時速百キロすぐに超え 黒川淑子 200707
逃げ水の向う父母うしろ向き 助口弘子 火星 200707
逃水や途中までなら行ける橋 富沢敏子 200707
逃げ水に逃げられ今日のわれ残る 西川織子 馬醉木 200710
逃げ水の先を泳げり鯉幟 金井充 百日紅 200711
逃水や去りて遠より吾を呼び 新関一杜 京鹿子 200804
逃水の混み合ふ明治通りかな 小林奈穂 200806
逃げ水を追つてかの世に来てしまふ 高橋将夫 200806
白バイの逃水抜けて行きにけり 中田禎子 200806
逃げ水や近くて遠き子らの家 伊藤トキノ 200807
逃げ水やローマ神話の変身譚 嶋津治夫 200807
逃げ水を車窓にナミブ砂漠ゆく 島玲子 風土 200807
逃水の逃げためらへる砂丘かな 川口襄 遠嶺 200807
逃水やブッセの空のあなたまで 金子輝 春燈 200807
逃げ水の回しをるがに水車かな 米澤しげる 春燈 200807
逃水や振り込め詐欺の声の罠 遠藤 実 あを 200807
逃げ水や妻子の顔も見え隠れ 伊吹之博 京鹿子 200812
逃水の行方さへぎる流砂かな 原田達夫 200901
逃水を追ひて八十路をとうに越え 上田明子 雨月 200905
逃水に鳩踏みさうになりにけり 吉田空音 炎環 200906
逃げ水や電光板の自爆テロ 田村葉 炎環 200906
逃げ水や追へばすべては世迷ひごと 沼田巴字 京鹿子 200906
逃水やアインシュタイン舌を出す 尾野奈津子 春燈 200906
逃水の旧国道に入りけり 中谷葉留 風土 200907
逃水を追うて来たれば三毳山 須藤美智子 風土 200907
逃水に何の浮橋かかりをる 栗栖恵通子 200907
逃げ水の一瞬まどふ分岐点 山崎青史 ろんど 200907
逃げ水やゆつくりと追ふメキシカン 伊吹之博 京鹿子 200908
逃げ水の飛んで海峡八ノット 吉村摂護 200908
逃げ水は野に恍惚と置かれあり 渡邉友七 あを 200909
逃水に追ひつけぬまま離陸せり 渡部節郎 転舵の渦 200911
県境の逃水韋駄天走りかな 林いづみ 風土 201001
逃水を追ひし日ぐれのわすれ雲 豊田都峰 京鹿子 201005
何処までも逃水を追ふ旅にして 舩越美喜 京鹿子 201005
逃水の逃げ込む動物慰霊塔 矢口笑子 春燈 201005
逃げ水や自分で孫を産んだとか 篠田純子 あを 201005
逃げ水や系図に伏せ字ひと所 篠田純子 あを 201005
逃水を追ふ旅に似て我一世 小山ミツ子 末黒野 201006
逃水や相武国境近く住む 舘泰生 風土 201006
逃げ水に踏み込んでゆく手足かな 加藤みき 201007
逃水や磯路は自然のミュージアム 下山田美江 風土 201007
逃水を追うて深みに入りけり 楠原幹子 201007
逃げ水のやうな寢食共にかな 中山純子 万象 201008
おんおんと逃水遠のくばかりなり 久津見風牛 201009
逃水の向うに離陸する機体 大崎紀夫 やぶれ傘 201009
逃げ水やマヤ文明の調査隊 伊吹之博 京鹿子 201011
逃げ水やカーナビ頼る未知の里 大橋伊佐子 末黒野 201104
逃水やいつも追はるる役どころ 吉田政江 201105
逃げ水の先を行くなり修行僧 柴田佐知子 201105
逃水の末ちちははの国あらむ 清水節子 馬醉木 201106
行方不明者逃水の辺にゐるか 大畑善昭 201106
逃げ水の逃げおはせたるにじり口 梶浦玲良子 六花 201107
時を超え追ふ清姫と逃水と 柳川晋 201107
逃水の誘ふかなたの父と母 岩永はるみ 白雨 201203
逃げ水や新を求むる旅にあり 能村研三 201205
逃水を極めむと終の免許証 北川英子 201205
逃水の向ふは寂光浄土かと 宮内とし子 201205
逃水の送迎ありて滑走路 安藤しおん 201205
夫はもう逃水よりも遥かにて 辻直美 201206
逃水につつかへてゐる鼓笛隊 蘭定かず子 火星 201207
逃水や言ふこと聞かぬ牛連れて 城孝子 火星 201207
逃水や起伏少なき道続く 瀬島洒望 やぶれ傘 201207
逃げ水や遅れさうなる待ち時間 田渕昌子 京鹿子 201211
逃げ水に鴉の影の溺れをり 高野春子 京鹿子 201211
逃水を追ひかけて來し八十年 竹貫示虹 京鹿子 201303
逃水の車間捉へし後続車 能村研三 201305
思春期の子が逃水にさしかかる 辻美奈子 201306
帰りにも逃水のゐる葬りなり 大畑善昭 201306
逃水にきれいな足のハイ・ヒール 加藤みき 201306
逃水を追ひかけ夢を追ひかけて 舩山東子 ろんど 201309
過去も未来も逃げ水の中のやう 布川直幸 201404
逃水やチワワの鳴らす首の鈴 山田美恵子 火星 201405
逃げ水の行く手を阻む男山 前田美恵子 201406
逃げ水や湖岸道路を一周す 谷岡尚美 201406
逃水の前を野良猫突つ走る 森真二 201406
逃水や風狂の気は女にも 高橋道子 201406
逃げ水や未完に終はるははの私史 上村葉子 風土 201407
逃げ水や老将のポーカー・フェイス 加藤みき 201407
逃げ水を追うて遠くに来てしまふ 河口仁志 201407
逃水の逃げることなき岬径 宮内とし子 201407
逃水を酌みて歌へるローレライ 柳川晋 201407
逃水のあと唇の濡れてをる 雨村敏子 201407
ジヤンクシヨン過ぎて逃げ水加速する 澤近栄子 京鹿子 201501
逃げ水も征も追はぬ盤寿かな 竪山道助 風土 201505
逃水の水位高しと注意報 柳川晋 201505
逃水の追ひつめられて隧道へ 高橋道子 201506
逃水や試乗してみる高級車 小松誠一 201506
逃げ水に車つぎつぎ溶けゆけり 梅村すみを 201506
逃水は追ふな虚飾の愛と知れ 片桐てい女 春燈 201507
逃水の海に逃れでしまひけり 田所節子 201507
逃水の逃げきり図る料金所 塩野谷慎吾 201507
逃水や吾にすこしの女運 山本無蓋 201507
逃水は神のお洩らしかも知れぬ 八木健 八木健俳句集 201509
逃げ水やトンネルにわれ吸ひ込まる 工藤ミネ子 風土 201510
逃水の辺りたましひもゐるか 大畑善昭 201605
ハライソは逃水の先駆けゆかむ 荒井千佐代 201605
逃水を追ひ立てて来し四駆かな 服部早苗 201605
逃水へ上がる水陸両用車 齊藤實 201606
逃水が逃げ先惑ふ環状路 峰崎成規 201606
逃水の行き所なき曲り角 塩野谷慎吾 201606
逃水を追うて祭の甲冑隊 小林陽子 201607
逃水を追へば命の水の音 吉田順子 201607
逃水を追ひこすつもり人力車 宮崎高根 201608
逃水の道の湯島や聖坂 田中臥石 末黒野 201608
逃水や邂逅の名の出ずじまひ 小松誠一 201609
逃水のむかうからくる鼓笛隊 秋月祐一 船団 201701
逃水や地獄極楽誰も知らず 千田百里 201706
逃水をプラス思考でさらに追ふ 峰崎成規 201706
仮の世の逃水なれば夢幻なり 近藤喜子 201707
逃水を追ふやこの日が七十四 加藤昌安 末黒野 201708
逃水の逃げとどまりて海青し 小田司 馬醉木 201709
逃水の果は水田の近江富士 山田六甲 六花 201806
逃水や一桁違ふ宝くじ 荻布貢 201807
逃水を追ふてもみたりふたり旅 浜福惠 風土 201807
逃げ水や蹤いてきたのよさそったら 佐藤喜孝 あを 201811
逃げ水を追ひ追ひ行けば石となる 菊池和子 京鹿子 201901
逃げ水や過去は未来の糧とせん 安斎久莫 末黒野 201905
二十一世紀もやはり逃水か 柳川晋 201906
逃水や古き日記に予言あり 瀬戸薫 風土 201906
逃水や追ひつくことのなき女 江見巌 六花 201906
逃水の武蔵野遠くなりしかな 吉澤恵美子 春燈 201907
逃水やわが青春のビビアン・リー 小嶋恵美 春燈 201907
逃水やはぐらかさるる恋に似て 小原芙美子 風土 201907
逃げ水や路面電車のゆつたりと 伊吹之博 京鹿子 201907
逃げ水を追う後悔追うごとく 治部少輔 201909
逃げ水に自動制御の愛車かな 小林和世 202004
逃水のいざなふ自動運転車 能村研三 202005
逃げ水ヘキックボードを蹴り進む 中根美保 風土 202007
逃水や浮いては消ゆる詩のかけら 岡野里子 末黒野 202007
逃げ水や道を求むる修羅の人 江島照美 202007
逃水に溺れて帰り来ぬあなた 天谷翔子 202010
逃水や四つ葉マークの追ひつかず ふなかわのりひと 202105
逃水を追うて津軽に嫁ぎけり くどうひろこ 202106
逃水や遥けきものを眩しめり 里村梨邨 202106
逃水の車間捉へし後続車 能村研三 神鵜 202107
逃水や鎌倉古道公事道 内藤静 風土 202107
逃水や逆さまに見る道路地図 門伝史会 風土 202107
逃水や「恋のフーガ」てふ唄ありき 津川かほる 風土 202107
逃水や遠くを睨む鬼瓦 中野あぐり 春燈 202206
逃水を追うて異郷となつてをり 田中佐知子 風土 202207
追ひつけずゐて逃水の楽しくて 田中佐知子 風土 202207
逃水や思ひのほかを母は生き 田中佐知子 風土 202207
逃惑ふ逃水国道一号線 栗原完爾 春燈 202207

 

2023年3月26日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。