零余子飯(むかご・ぬかご)     171句

 

作品
作者
掲載誌
掲載年月
山路抜け来てむかご飯炊くことに 稲畑汀子 ホトトギス 199810
土間厨むかご飯炊く湯気ただやふ 高田幸枝 199911
湯上りの素顔がひかる零余子飯 戸田春月 火星 200001
ほろほろと山の声きくむかご飯 平田安生 風土 200001
音沙汰のなきが息災零余子飯 鈴木ミヨコ 200002
追分の風がうしろを零余子飯 浜口高子 火星 200012
物言いは歯に衣きせず零余子飯 長谷川鮎 ぐろっけ 200101
朱の椀の少し剥がれてむかご飯 谷口蔦子 ぐろっけ 200101
民宿のとりたてといふ零余子飯 村田明子 円虹 200102
むかご飯泊まりし宿の夕餉かな 松沢久子 いろり 200102
夕暮れの海鳴り聞いてむかご飯 山本田津子 200111
むかご飯独り暮しの無事と聞く 田中藤穂 あを 200112
零余子飯雨が昨日を遠くして 関薫子 百鳥 200112
零余子飯山を下りくる人を待つ 中田尚子 百鳥 200112
零余子飯父に戦死の弟あり 大山文子 火星 200201
窯開けの一日前の零余子飯 須山つとむ 船団 200202
零余子飯供へて姉の忌を修す 大谷茂 飛白 200208
母の忌へ母の伝へのぬかご飯 松岡映子 帆船 200212
ここにきて已れ大切零余子飯 近藤季美 銀化 200212
母の忌や零余子飯炊く夕しじま 関口ゆき あを 200301
むかご飯ほくほく人の恩ばかり 山田弘子 円虹 200301
もっちりと少し苦味の零余子飯 武智恭子 ぐろっけ 200302
兎追ひし山おもひつつ零余子飯 三嶋隆英 馬醉木 200303
産土の零余子飯炊く匂ひかな 井上良久子 帆船 200310
曲り屋の竈に噴きて零余子飯 品川鈴子 ぐろっけ 200311
ぬかご飯大工ふる里語りけり 松岡映子 帆船 200311
ふるさとの新米をもて零余子飯 近藤豊子 雨月 200312
山里の句会の馳走零余子飯 平松かをる 六花 200312
退院の母へ望みの零余子飯 小山香月 酸漿 200401
歳月を思ふひとりの零余子飯 江本路代 酸漿 200401
床几置く当尾の茶屋のむかご飯 小林成子 200402
ほくほくと懐旧の念むかご飯 斉藤陽子 雨月 200402
零余子飯招ばれ古風な貌となる 長谷川春 200404
零余子飯この世に小さき墓地買ふて 今井みつ子 帆船 200405
謙遜も嫌みとなりて零余子飯 長谷川鮎 ぐろっけ 200409
こまごまと妣の家計簿ぬかご飯 内藤ゑつ ゑつ 200411
校正子ねぎらふものに零余子飯 大橋敦子 雨月 200411
稚の歩の酔客のごと零余子飯 東亜美 あを 200412
塩辛を添へて婆さまへ零余子飯 田中峰雪 雨月 200412
子供達は大阪育ち零余子飯 堀志皋 火星 200501
六かしい顔してむかご飯を盛る 山田六甲 六花 200511
住職と芭蕉句碑見て零余子飯 重藤慶 築港 200512
摘み帰り零余子飯炊く心こめ 綿谷美那 雨月 200601
美味しさうに顔繕へり零余子飯 泉田秋硯 200601
零余子飯炊きて家族の揃ひけり 南原正子 酸漿 200601
父母の世の疾く遠ざかるむかご飯 久保田雪枝 雨月 200601
山峡に夕星かがよふ零余子飯 早水秀久 河鹿 200601
仏壇の学位記へ湯気零余子飯 品川鈴子 ぐろっけ 200610
曾祖父母祖父母父母零余子飯 篠田純子 あを 200611
故郷の素朴なる味むかご飯 渡邊由江 200612
週に一度帰り来る子にぬかご飯 城戸愛子 酸漿 200612
直会や長を覚悟のむかご飯 禰寝瓶史 京鹿子 200701
ありし日の父の笑顔やむかご飯 尾崎貞 春燈 200701
躊躇もなしに二杯目むかご飯 楯野正雄 200701
十三夜少しの零余子飯にして 内山芳子 雨月 200701
畑じまひして山盛の零余子飯 宮口文泰 万象 200701
懐石の〆は伊万里のむかご飯 山元志津香 八千草 200704
町内の生垣にて摘みむかご飯 手嶋小夜子 200711
ほくほくとまた良からむやむかご飯 大橋敦子 雨月 200711
むかご飯父誕生の日なりけり 水原春郎 馬醉木 200712
棲み古りていまだ余所者むかご飯 白井友梨 馬醉木 200801
ひとにぎりほど焚き増えしむかご飯 竹内弘子 あを 200810
この国の浮かれてゐるやむかご飯 久津見風牛 200812
身の内に思ひふくらむむかご飯 芝尚子 あを 200812
手のひらのむかご飯には足りぬ嵩 笠井敦子 200812
吟行のあとの夕卓むかご飯 鹿島釣人 炎環 200901
おほかたはよき道なりし零余子飯 冨松寛子 200901
零余子飯炊くにはあまりにも少な 伊藤トキノ 200901
夜の川の水脈のひかりや零余子飯 大崎紀夫 やぶれ傘 200901
ひと握りむかご貰ひて零余子飯 醍醐季世女 200901
零余子飯供へ濫掘詫び申す 佐藤山人 200902
零余子飯母の命日なれば欲る 野沢しの武 風土 200906
ふんはりと大盛りにしてぬかご飯 新関一杜 京鹿子 200909
零余子飯夫は在所を聞きたがり 小幡喜世子 ろんど 200912
零余子飯太き母の手なつかしき 松田洋子 200912
縁切寺拝して零余子飯ぬくき コ田千鶴子 馬醉木 200912
零余子飯叱咤激励受けに行く 島内美佳 ぐろっけ 201001
零余子飯高島茂のおほきな手 吉弘恭子 あを柳 201001
料亭の風流めける零余子飯 田中藤穂 あを柳 201001
粒毎に面構へあり零余子飯 米田正弘 201001
頬張りて嫁に来る娘とむかご飯 和田森早苗 201001
父母のこと知りゐる人と零余子飯 間宮あや子 馬醉木 201001
山の端に星またたきぬ零余子飯 徳井節子 馬醉木 201001
ねつとりが子には不評のむかご飯 吉田和子 ぐろっけ 201002
玉入れに奥の手のあり零余子飯 近藤倫子 ぐろっけ 201002
今さらに知ること多しむかご飯 藤田素子 火星 201002
独居の老に届きし零余子飯 久保田嘉郎 酸漿 201012
むかご飯能登の粗塩ひとつまみ 山田六甲 六花 201012
零余子飯一人の夜を永く生き 福田漣 201101
留守たのむ夫へ昼餉の零余子飯 山崎稔子 末黒野 201102
ああ言へば斯ういふ友や零余子飯 コ田千鶴子 馬醉木 201111
幸せもひとつ器にむかご飯 安武晨子 201112
むかご飯猪が出さうな夜なりけり 岩木茂 風土 201201
まず噛みて零余子一粒むかご飯 松本周二 かさね 201201
いにしへの人の香りか零余子飯 山本エリカ ろんど 201202
零余子飯炊けたところに出会せり 三橋早苗 ぐろっけ 201203
世辞言へぬ似た者夫婦むかご飯 和田郁子 粥の味 201209
ふるさとや墓参のあとの零余子飯 石脇みはる 201211
卓袱台は今死語となり零余子飯 橋本靖子 201211
もの忘れ気づかぬふりや零余子飯 野畑さゆり 201211
住み古ればここも故郷むかご飯 河合とき 末黒野 201301
むかご飯大きな零余子当りけり 佐藤喜孝 あを 201301
不揃ひの粒を楽しみ零余子飯 尾崎みつ子 雨月 201302
クラス会馳走の締めのむかご飯 十時和子 201302
身の丈の暮しがよけれぬかご飯 杉本綾 201311
零余子飯むしろ奢りの餉と思ふ 瀧春一 花石榴 201312
ログハウスに零余子飯噴く電子音 西畑敦子 火星 201312
亭主より一言あつて零余子飯 小池清司 かさね 201312
故郷の広がりゆきて零余子飯 柴田靖子 201401
郷愁を煽りたてたる零余子飯 片岡良子 雨月 201401
卓袱台の上に幸あり零余子飯 牧野慶 ろんど 201401
零余子飯妣の思はぬむかし聞く 荒木稔 ぐろっけ 201402
おぶひ紐もう捨てやうか零余子飯 甲州千草 201411
晩年も晩年扨もむかご飯 佐藤淑子 雨月 201412
零余子飯茂の手からアルミ弁当 佐藤恭子 あを 201412
始発駅に靴の洗ひ場零余子飯 岡本尚子 風土 201501
少食を旨とし老のむかご飯 佐藤淑子 雨月 201501
次の世へ持つて行かれぬむかご飯 鳥居美智子 ろんど 201502
持ち寄りし小さきゼリーとむかご飯 井浦美佐子 201504
むかご飯老いても人は母を恋ふ 白神知恵子 女坂 201508
雨音の屋根にきてゐる零余子飯 大崎紀夫 虻の昼 201510
だんだんと見えてくるもの零余子飯 徳田千鶴子 馬醉木 201510
むかご飯のあらき喉ごし一遍忌 錫木妙子 馬醉木 201512
酒少々塩少々の零余子飯 中島和子 やぶれ傘 201512
ライバルの不在をなげく零余子飯 秋月祐一 船団 201512
身の丈に暮す山里むかご飯 吉永すみれ 風土 201610
楷書すでに書けぬ齢よぬかご飯 渕上千津 201612
なにひとつ持たぬ幸せ零余子飯 大日向幸江 あを 201612
眼帯のはづれし夫へむかご飯 江見悦子 万象 201702
寸分も狂はぬ時計むかご飯 高木晶子 京鹿子 201703
手料理の味はひゆたか零余子飯 山口登 末黒野 201704
新米とはいつまでのこと零余子飯 中川句寿夫 ここのもん 201705
むかご飯ひとり楽しむひな暮し 大湊栄子 春燈 201801
考よ妣よいただきまする零余子飯 近藤紀子 201802
湾深くまで荒れてをり零余子飯 深川淑枝 201802
むかご飯茂出で来よ炊けました 佐藤恭子 あを 201812
俳味とはかくなるものか零余子飯 笹倉さえみ 雨月 201901
ひとりでに涙こぼるる零余子飯 大石よし子 雨月 201902
懐かしや塩加減良きむかご飯 小川玉泉 末黒野 201902
むかご飯おかめひよとこ親ゆづり 中谷富子 201903
ひた隠すことも力やむかご飯 永淵恵子 201905
漬けものは何にしようか零余子飯 天野美登里 やぶれ傘 201911
昨日より今日の元気や零余子飯 前田美恵子 201912
零余子飯疎開せし里懐しき 桜井知恵子 雨月 202001
零余子飯険しくなりぬ九十路 諸戸せつ子 春燈 202001
団欒の日々よみがへる零余子飯 大室恵美子 京鹿子 202002
大丈夫とは此れ焦げたるむかご飯 中島陽華 202002
零余子飯昭和のフィルム巻き戻し 山中志津子 京鹿子 202002
ほつこりと老いを養ふ零余子飯 芝田幸惠 末黒野 202004
塩加減よき猫舌のむかご飯 宮崎紗伎 春燈 202009
能登の塩振つて仕上げるむかご飯 奥田温子 やぶれ傘 202101
駆けくだる熊野三神零余子飯 農野憲一郎 春燈 202112
零余子飯釜ごと下げて友来る 望月郁江 春燈 202112
とほき日の我が家の定番むかご飯 溝越教子 春燈 202201
むかご飯山の隅借りわが家かな 岡本尚子 風土 202201
零余子飯不平は言はぬ大家族 小林清彦 末黒野 202201
昼食はむかご飯なり木曽街道 楠本和弘 202202
駆けくだる熊野三神零余子飯 農野憲一郎 春燈 202212
零余子飯釜ごと下げて友来る 望月郁江 春燈 202212
吾も猫も共に老いたり零余子飯 重実ひとみ 春燈 202301
零余子飯炊けましたよと告げにくる 木村秋草子 春燈 202301

 

2023年9月3日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。