麦 踏    186句

出ばやな籬の野べの麦踏に   白雄

作品
作者
掲載誌
掲載年月
麦踏や不仲の筈の父と子と 能村登四郎 199805
麦踏みの影引き来ては先立ちぬ 笠原ひろむ 199805
足取りの秒刻むごと麦踏めり 笠原ひろむ 199805
麦踏みの海を見て来し眼かな 小澤克己 遠嶺 199805
麦踏に巡礼声をかけてゆく 島田教夫 春耕 199806
老いて子の世話にはならず麦を踏む 保坂加津夫 会者定離 199900
麥踏の要領泉下に近づける 中原道夫 銀化 199903
麦踏をして太陽のほかは山 奥田節子 火星 199905
麦踏の足許に立つ土埃 松崎鉄之介 199905
いつか失せたる麦踏みのひとりかな 能村登四郎 芒種 199911
アンジェラス指呼に麦踏む漢かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 200002
海鳴りがして麦踏みの引き返す 小澤克己 遠嶺 200004
麦踏やクローン牛の恋の胸 市川伊團次 六花 200006
麦踏みの虚空を刻む父子かな 市川英一 遠嶺 200008
島原や媼麦踏む祈りの手 水原春郎 馬醉木 200104
麦踏めばむかしの生活見えてくる 保坂加津夫 いろり 200104
麦踏の後手組みの古習ひ 能村研三 200104
麦踏のひとりふたりと風の下 鈴木多枝子 あを 200104
麦踏むやときどき小石踏める音 飯塚ゑ子 火星 200105
麦踏の実体験や万歩計 泉田秋硯 200105
麦踏むや詩の一行をゆくやうに 小澤克己 遠嶺 200105
遠見にて麦踏む人の動かざる 能村登四郎 羽化 200110
ひとりなる麦踏にまたふり返り 能村登四郎 羽化 200110
麦踏の足止めて見る葬りごと 能村登四郎 羽化 200110
出漁の海を背に麦を踏む 能村登四郎 羽化 200110
麦踏むや赤城榛名をそびらにし 鈴木伊都子 200202
麦踏や半鐘古りし離れ里 矢上万里江 酸漿 200202
麦踏の折返すとき沖を見る 川島真砂夫 200203
麦踏や父によく似しうしろ影 登坂章一 春耕 200204
道化師のやうな漢や麦を踏む 小澤克己 遠嶺 200205
下校の子すぐ麦踏に加はれり 池内けい吾 春耕 200205
山を見て山に見られて麦を踏む 磯田富久子 200206
麦を踏む山懐の影ひとつ 戸村よねこ 遠嶺 200206
麦踏やこころのどこか己れ踏み 福山広秋 200206
麦を踏む月夜や母のふり向かず 梶浦玲良子 六花 200208
麦踏むや天に操り糸があり 小澤克己 遠嶺 200210
麦踏みて兄嫁一人里に老ゆ 吉沢かねよ 帆船 200304
はるかなる麦踏見つつ胸に踏む 阿部ひろし 酸漿 200304
耳遠き夫婦となりて麥を踏む 沢坂芳山 京鹿子 200304
麦を踏む襟元に風膨らませ 加藤峰子 200305
長男の一家見送り麦を踏む 遠藤若狭男 200305
地下に水奔らせ麦を踏んでをり 小澤克己 春の庵 200305
畝ごとに応へのありし麦を踏む 藤野力 馬醉木 200306
麦踏も死語か一條もなき大和 佐藤香女 京鹿子 200306
麦踏に普賢颪は矢の如し 上柿照代 馬醉木 200404
麦踏に大空があり大地あり 大橋敦子 雨月 200404
働いてゐるは足のみ麦踏める 大橋敦子 雨月 200404
麦踏みの折り返すとき天仰ぐ 土屋酔月 火星 200404
麦踏みて父子別々の胸の内 清水房夫 帆船 200404
麦踏の足跡のよくそろひたる 河野政恵 酸漿 200404
海原をしばし見てきし麦踏女 小澤克己 遠嶺 200405
麦踏みの足裏のすべて肉付きぬ 齊藤實 200405
麦踏みのはや立ち上がる麦のあり 杉江美枝 百鳥 200405
遠浅間麦踏む人の影長し 岡島國枝 栴檀 200405
背を向けて独り黙々麦を踏む 原田竜子 河鹿 200406
麦踏やひとりの埃ひとり立て 今井千鶴子 ホトトギス 200407
火の国の鼓動をしかと麦を踏む 中村房子 馬醉木 200407
麦を踏む多摩の横山昏るるまで 中島寿美 万象 200407
麦踏んで日本男児でありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 200502
麦踏の山影はすぐ引返す 稲畑汀子 ホトトギス 200502
麦踏の踏み方を先づ教はりぬ 稲畑汀子 ホトトギス 200502
父恋を麦踏む人に重ねけり 東芳子 酸漿 200504
麦踏みのときどき影を正したる 戸栗末廣 火星 200504
めづらしや麦踏む人をみつけたり 鎌倉喜久恵 あを 200504
山畑の傾げばかしぐ麦踏も 八染藍子 200505
何見んとして横向きに麦踏むや 八染藍子 200505
継ぐ子なき三反五畝や麦を踏む 清水喜造 帆船 200505
麦踏に明日香は昼の鐘を撞く 園多佳女 雨月 200505
後手を解かず麦踏みどこまでも 鈴木一明 築港 200505
麦を踏む還暦の身の軽きかな 五十嵐道夫 築港 200505
麦踏みの山脈揃ふ日なりけり 大曽根育代 遠嶺 200506
下校子の声を遠くに麦を踏む 白鳥彰子 200507
ひたすらに祈るがごとく麦を踏む 増田祐三 帆船 200507
イヤホーン付け団塊世代麦を踏む 藤原りくを 八千草 200508
麦踏や足裏に地球感じつつ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200602
麦を踏む男二人に背を向けて 稲畑廣太郎 ホトトギス 200602
麦踏を見し丘に街現じけり 阿部ひろし 酸漿 200603
父の忌や拓地に麦を踏みしこと 酒井康正 百鳥 200604
父と子のいちにち寡黙麦を踏む 深津一葉 200605
むかし叔父あり元旦に麦踏めり 高倉恵美子 200605
全身を光まみれに麦を踏む 斎藤くめお 対岸 200605
懸命に麦踏み海の拡ごれり 三崎由紀子 遠嶺 200606
麦踏みのふみ残したる近江富士 高橋千美 京鹿子 200606
麦踏の踏みとまるとき向き変ふる 西口万佐子 200606
土のユーモア麥踏む足どり手を腰に 瀧春一 瓦礫 200606
麦踏むかに祖母の凝る背を踏みし日よ 物江晴子 八千草 200609
影長くなりて麦踏み了へにけり 広田和子 200704
麦を踏む足の弱りし老いばかり 高倉恵美子 200704
麦踏を染むる夕日や怒濤音 芝山喜久子 馬醉木 200705
麦を踏む怡土富士の裾を少し踏む 小林朱夏 200705
後ろ手にポルカで踏みし麦の青 市橋章子 ぐろっけ 200706
麥踏の出て水鳥の移りけり 瀧春一 200706
腋熱くなるまで麦を踏みゐたり 白数康弘 火星 200712
麦踏みし靴を叩きて泥落とす 山田六甲 六花 200802
麦踏みてゐしが車と共に去る 泉田秋硯 200805
どつしりと構へし二人麦を踏む 米山喜久子 200806
麦を踏む足裏泣かせて笑わせて 米山喜久子 200806
麦踏みの学習の子の横一列 室伏やすし 200806
麦踏に声かけ村に入りけり 荒井和昭 200806
実直さ歩幅にも出で麦を踏む 伊吹文江 200807
一輌電車通り過ぎたる麦を踏む 高倉和子 200903
麦踏のたつた一人に百の畝 布川直幸 200904
麦踏みに灘あり島あり空のあり 荒井千佐代 200904
肩の陽をゆり落としつつ麦を踏む 小山徳夫 遠嶺 200905
父とまた麦を踏みつつ語りたし 小山徳夫 遠嶺 200906
戦友てふ夫婦の絆麦を踏む 小宮淳子 春燈 200906
後ろ手は働く形麦を踏む 福島茂 200907
麦踏のうしろを通る日のあえぎ 梶浦玲良子 六花 200907
麦踏みはいまやまぼろし分譲地 増田一代 201004
麦を踏む人ひとりとてなかりけり 東芳子 酸漿 201005
深大寺鐘に暮れゆく麦を踏む 中村翠湖 馬醉木 201006
麦踏むや海の汽笛に面をあげ 平野伸子 馬醉木 201006
平成の麦踏みやはり手は背ナに 山崎青史 ろんど 201006
麦の芽や畔踏みはづし踏みはづし 浜口高子 火星 201104
麦踏むや赤城越えくる雲迅き 木山白洋 馬醉木 201105
麦踏の青きバンダナ遠くより 波田美智子 火星 201105
麦踏や没り日の中の影二つ 田中文治 火星 201105
麦踏むやもう何事も急がざる 原友子 201105
後ろ手に影痩せてをり麦を踏む 木内博一 春燈 201106
長停車麦踏む人と言交し 熊切光子 末黒野 201106
麦踏みのひと遠目にも小柄なる 瀬島洒望 やぶれ傘 201108
我が生計一反五畝の麦を踏む 福島茂 201204
終生を長男の枷麦を踏む 柴田良二 雨月 201205
震度五はあったと思ふ麦を踏む 定梶じょう あを 201205
麦踏んで風のしぶきを浴びにけり 七種年男 201206
麦を踏む古戦場てふ静けさに 稲畑廣太郎 ホトトギス 201302
内海と外海行き来麦を踏む 田中貞雄 ろんど 201305
麦踏や気の遠くなる日の匂ひ 鴨下昭 201306
麦踏や地平に低き山うねる 瀧春一 花石榴 201312
日めくりをめくりて麦を踏みにゆく 瀧春一 花石榴 201312
真っ白な富士遠チに見て麦を踏む 江木紀子 雨月 201404
晴天と大地のあはひ麦を踏む 服部早苗 201405
麦を踏むゴッホに似たる人の影 塩路隆子 201405
両の手を父母に預けて麦を踏む 涌羅由美 ホトトギス 201406
麦踏んで踏んで夕日を連れて来る 涌羅由美 ホトトギス 201406
麦踏に七転八起教へられ 涌羅由美 ホトトギス 201406
麦踏みの男が熱きお茶を飲む 鴨下昭 201408
麦踏の墳の裏より現はるる 田中佐知子 風土 201411
麦を踏む地球の裏を響かせて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
後ろ手を崩さず麦を踏んでをり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
麦踏や大地の鼓動確かめて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
麦踏んで地の咳きを聞いてをり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
風に詩を紡ぎつつ麦踏んでをり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
麦を踏む水平線を近づけて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
麦を踏む蝦夷の大地を響かせて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
風に歩を止めることなく麦を踏む 稲畑廣太郎 ホトトギス 201502
麦踏や腰のばすたび仰ぐ富士 コ田千鶴子 馬醉木 201503
麦踏むや大地の磁場の懐に 辻美奈子 201503
常念岳の雪に踏ませる麦畑 米山のり子 馬醉木 201505
全快の友はれやかに麦を踏む 三橋玲子 末黒野 201505
麦秋の中の踏切ふいに鳴る 竹内タカミ 201509
めちやくちやに踏まれて麦の喜色かな 布川直幸 201602
麦踏みし日の寝ねがての貼り薬 中川句寿夫 あを 201604
麦踏みの歩調軍歌と一致せず 佐藤山人 201604
麦踏や遠き落暉に随ふ背 小林文良 春燈 201605
麦踏んできたる地下足袋洗ひけり 瀬島洒望 やぶれ傘 201606
子育てのやうしつかりと麦を踏む 内山花葉 201705
麦踏むや海馬の老いを憂へつつ 田辺博充 201707
宝くじ麦を踏みつつ買はむなど 定梶じょう あを 201804
麦踏みや何の種まくミレーの絵 三木亨 201805
青春のとんがる心麦を踏む 小張志げ 春燈 201805
風を背に波音聞きつ麦を踏む 海村禮子 春燈 201805
麦踏の足裏にとほき戦後かな 安立公彦 春燈 201805
麦踏のいつしか消えてまた居りし 安原葉 ホトトギス 201807
野の光受けて麦踏む老一人 安原葉 ホトトギス 201807
麦踏の無心を風の通り抜け 今井千鶴子 ホトトギス 201807
麦踏を残して出づる島渡舟 今井千鶴子 ホトトギス 201807
麦踏みて昭和一桁ぐわんばれる 大久保白村 ホトトギス 201811
麦を踏み途中のはずがゐなくなる 定梶じょう あを 201904
シベリアの俘虜髣髴と麦踏むは 山田六甲 六花 201905
同じ風受けて麦踏む父子かな 磯野青之里 六花 201905
三代目AIロボット麦を踏む 塩谷則子 船団 201910
麦を踏む蝦夷の大地をねぢ伏せて 田丸千種 ホトトギス 202006
幼子の後ろ手をして麦を踏む 広瀬済 やぶれ傘 202007
高御位たかみくら山へ額づき麦を踏む 山田六甲 六花 202103
麦踏めり長塚節の地を踏めり 森岡正作 202104
体験の子の目生き生き麦を踏む 由良則子 202105
ひたすらに使徒のごとくに麦を踏む 岩岡中正 ホトトギス 202107
麦踏んでひたすら祈ることのあり 岩岡中正 ホトトギス 202107
麦を踏む媼が一人影一つ 増成栗人 202203
地下足袋の無念無想や麦を踏む 板谷俊武 末黒野 202204
人を踏みいま故郷の麦を踏む 三木亨 202205
麦の芽や踏まれて伸びる意地もあり 河野智子 202205
麦踏の行つたり来たり影ふたつ 池谷鹿次 末黒野 202206
魂を呼び覚ます如麦踏める 稲畑廣太郎 ホトトギス 202302

 

2023年2月16日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。