目 刺     195句

風花のかかりてあをき目刺買ふ   石原舟月

作品
作者
掲載誌
掲載年月
肉じやがに目刺割勘仲間かな 小谷部東吾 199902
目刺焼く媼は里に古りにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 199903
胃のなかに溶くる目刺と遠き旧友とも 丸山海道 京鹿子 199905
黙黙食う嶺夫でありし目刺囓る 金子兜太 海程 199910
一生のうちの一日目刺し反る 松山律子 ヒッポ千番地 199910
妻の留守ゆつくりと覚め目刺焼く 皆川盤水 春耕 200004
いま文部大臣はたれ目刺噛む 朝妻力 俳句通信 200004
春愁や黙して目刺し頭から 保坂加津夫 いろり 200005
波音にあたまを向けて目刺干す 武井美代子 風土 200006
目刺焼くええんとちゃうんかでたらめも 児玉硝子 ヒッポ千番地 200007
手に熱く口にも熱き目刺食ふ 阿部寒林 200010
藁筵目なし目刺の空仰ぐ 大森美恵 風土 200106
目刺焼く炎の中の笑ひごゑ 男波弘志 200106
目刺焼き処生術などあるでなし 佐藤淑子 雨月 200106
青々と目刺のいのち灸り出す 平野隆志 銀化 200107
検査に倦み目刺のごとき貌となる 辻享子 六花 200107
目刺噛む卒寿の歯並健やかに 朝妻力 雲の峰 200204
御忍びで訪ねて来ては目刺喰ふ 朱間繭生 銀化 200204
食ふことのさびしさ目刺焼きにけり 佐藤真次 200205
目刺干すどこも入り組む島の道 高野清風 雲の峰 200205
無課税の申告かへり目刺買ふ 土肥屯蕪里 雲の峰 200205
仄かなる潮の香を添へ目刺着く 井上紘 雲の峰 200205
よそごとを考えてをり目刺食む 後藤志づ あを 200205
おだやかな故郷の海目刺焼く 小阪喜美子 遠嶺 200206
味を見て買へと生干し目刺焼く 遠藤真砂明 200206
俳諧の諧を大事に目刺焼く 吉田汀史 200206
行商の辨当箱の目刺かな 宮原みさを 花月亭 200208
目刺烟らせて誰にも会はざる日 山田弘子 円虹 200305
目刺焼く士族と書きし昔あり 左々法子 百鳥 200305
丁寧な言葉をつかひ目刺売る 田中正子 百鳥 200305
人の世の苦み目刺のもちてをり 坂本俊子 200306
白昼の何も見てない目刺の目 長岡新一 200306
吝嗇は今も続いて目刺焼く 吉村初代 築港 200306
目刺売る海より低きところにて 高倉和子 200306
島の目刺もろうてバスに匂ひもれ 近藤豊子 雨月 200307
固干しの目刺しょっぱき憾みかな 杉本美智江 雨月 200307
目刺食ぶ婉然と指汚しけり 風間史子 200307
焼け残る目刺の藁を抜きにけり 長谷川守可 百鳥 200307
フセインもブッシュも嫌ひ目刺焼く 木田千女 200308
かたくなに右むけ右の焼目刺 山元志津香 西の峰 200401
大年の皿に残りし目刺の頭 山田美惠子 火星 200403
目刺焼く戦火は人事にあらず 稲畑廣太郎 ホトトギス 200403
目刺焼くときの煙の行方かな 稲畑汀子 ホトトギス 200403
目刺焼く新選組を血縁に 神蔵器 風土 200404
沖荒れに車座の海女目刺焼く 大畠政子 雨月 200405
忌籠りの酒は少なに焼目刺 淵脇護 河鹿 200405
目刺焼くほほのあたりの目玉かな 迫口君代 河鹿 200405
オーブンに川の字描く目刺かな 安永圭子 風土 200406
細く長く生きても一人目刺焼く 長志げを 遠嶺 200407
目刺食ぶ曖昧といふ逃げの手も 加藤峰子 200407
目刺しさげ神田古書街薄暑かな 藤原浩 栴檀 200408
焼きながら味見をさせて目刺売る 豊岡美千江 築港 200505
針金のハンガーに干す目刺かな 浜和佳子 百鳥 200506
朝市の片隅に焼く目刺かな 小川夏葉 帆船 200506
父の日の尾頭こげし目刺かな 江崎成則 栴檀 200509
路地住の路地煙らせて目刺焼く 安陪青人 雨月 200604
目刺焼く父や火鉢の灰よごし 城孝子 火星 200605
さびしさは告ぐることなし目刺焼く 芝生南天 河鹿 200606
故郷の海の色なる目刺買ふ 松永弥三郎 河鹿 200606
土光さん偲ぶ目刺を焼きにけり 中上馥子 春燈 200606
ひとつかみ目刺も入れて旅仕度 山本喜朗 雨月 200606
潟の昼蜑手作りの目刺売る 竹内喜代子 雨月 200606
目刺一連右へならへをしてをりぬ 堀井英子 雨月 200606
目刺噛んで気骨の人を思ふべし 堀井英子 雨月 200606
町風のしかと抜けゆく目刺の眼 八木柊一郎 ぐろっけ 200606
目刺し干す生地の浜の海青く 長沼紫紅 200607
頭より目刺を食みて八十路過ぐ 上崎暮潮 ホトトギス 200610
たちまちに火に包まるゝ目刺かな 滝沢伊代次 万象 200703
びつしりと海の高さに目刺干す 高倉和子 200703
目刺手に政治談議の始まりぬ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200704
目刺食ぶ父の姿に似せしは神 岡田宜紀 春燈 200704
妻の留守目刺の焦げし頭を残す 渡邉友七 あを 200704
売られゐる目刺に伊豆の海の紺 木暮剛平 万象 200705
目刺など焦げて楽しき妻の留守 山口速 200706
目刺焼く終生貧を口にせず 陳妹蓉 春燈 200706
選挙カー続けて行けり目刺食む 松嶋一洋 200706
やけ酒と愚痴に付きあひ目刺噛む 横山迪子 六花 200706
参道に目刺も売られだるま市 本橋墨子 200706
ふぞろひに焼き上がりたる目刺かな 卓田謙一 万象 200708
竹の串抜いて目刺を解き放つ 鷹羽狩行 200804
目刺かじりかじりておのが闘志わく 岡有志 ぐろっけ 200805
カルテット目刺にも似て口揃へ 上原朝子 200806
いつの間に夫婦似て来て目刺焼く 深見眞弓 200806
目刺焼く香が何処より吉田山 岩崎憲二 京鹿子 200807
焼目刺好物の内魚嫌ひ 岩崎憲二 京鹿子 200807
目刺焼く煙の中に潮の香 きくちきみえ やぶれ傘 200905
強情は泪となりし目刺噛む 柳川晋 200906
品性は高く持つべし目刺焼く 尾野奈津子 春燈 200906
目刺焼くかつての大志消え失せて 辰巳比呂史 200907
目刺焼く軽い言ひ訳聞きながら 飯島風花 200907
焦げの匂ひも芳しき目刺かな 鷹羽狩行 201003
咽喉ぼとけ鳴らす目刺のにがみかな 上原重一 201004
目刺焼く母は火の丈ほど縮み 柴田佐知子 201005
皿に盛る目刺に山の明けにけり 樋口みのぶ 201006
目刺どれも少し反り身に乾きをり 丹生をだまき 京鹿子 201006
生ま干しの目刺に生姜醤油かな 丹生をだまき 京鹿子 201006
目刺焼く別の人生もしあらば 高橋秋子 201011
スーパーの棚は空っぽ目刺焼く 森下康子 201105
氷見湾の碧そのままに目刺焼く 松岡和子 201105
父母ありし日を身辺りに目刺焼く 木村傘休 春燈 201105
店先に試食の目刺煙あげ 伊藤百江 春燈 201105
海恋ひの眼抜かれし目刺かな 伊藤百江 春燈 201105
母と子の母逝きひとり目刺焼く 鈴木榮子 繭玉 201105
日没にカフェを閉ず日々目刺焼く 森理和 あを 201105
過ぎ行く日どうでもよくて目刺焼く 小林正史 201106
腸の苦みよしとす目刺かな 奈辺慶子 雨月 201106
目刺買ふ渡船の銅鑼に急かされて 柴田志津子 201107
節電の小暗きに慣れ目刺買ふ 相良牧人 201107
無器用に生きほろ苦き目刺焼く 清水元子 末黒野 201107
目刺焼いて老マルキスト矍鑠と 内藤三男 ぐろっけ 201107
魚屋の最前列の目刺かな きくちきみえ やぶれ傘 201107
目刺焼き加減にありし好き嫌ひ 伊藤とほ歩 ホトトギス 201203
あれこれと花の便りや目刺し焼く 柚木 澄 末黒野句集 201203
焦げさうな目刺にレモンジュッとかけ 丸山酔宵子 かさね 201205
目刺旨し始めは林檎箱の膳 石川笙児 馬込百坂 201206
充電より放電したき目刺焼く 田中貞雄 ろんど 201207
目刺焼く烟とげぬき地蔵尊 北崎展江 くりから 201209
七輪をもて東京に目刺焼く 北崎展江 くりから 201209
目刺食ぶ明日の日本背負ふ人 稲畑廣太郎 ホトトギス 201303
固干しの目刺の苦味気骨人 能村研三 201303
引き際の美学を嫌ひ目刺喰ふ 能村研三 201303
頭みぎ五匹いち連目刺焼く 松岡和子 201304
下戸なれど目刺しの苦味まるかじり 上原重一 201304
老人も目刺も堅い冬日和 坪内稔典 船団 201304
格言は確かに立派目刺焼く 柴田佐知子 201304
目刺焼く五黄土星のふたり住み 塩路隆子 201305
目刺焼くまなこの串を抜きながら 白数康弘 火星 201305
行儀よき目刺そのまま焼かれをり 辻佳子 馬醉木 201306
ながらへて飽食の世の目刺食ぶ 大橋伊佐子 末黒野 201306
割箸の先焦がしつつ焼く目刺 仙石君子 雨月 201306
目刺焼く胸に大海原の満ち 仙石君子 雨月 201306
七輪の目刺にくらき海の蒼 三枝邦光 ぐろっけ 201307
恙なき二人のくらし目刺焼く 山本雅子 馬醉木 201307
今日も又目刺を焼いて独りかな 原田小芝 春燈 201403
痛々し目刺の串のささくれて 大日向幸江 あを 201405
浜に干す目刺一連購ひぬ 片岡久美子 201405
健啖の夫の頤目刺食む 田中佐知子 風土 201406
外は雨目刺の腸のほろ苦し 久世孝雄 やぶれ傘 201406
列をなす目刺乱れのいささかも 大村仍子 雨月 201406
目刺焼く何とかなるを呪文とし 高橋道子 201406
焙られて哀れ目刺に目玉なし 上野進 春燈 201407
骨太と思えど粗鬆症目刺食う 鎌田慶子 ろんど 201407
減量の食事制限目刺焼く 山本無蓋 201405
うまい話乗つてはならぬ目刺焼く 能村研三 201504
魚心まだ捨て切れぬ目刺かな 柳川晋 201504
目刺焼けばまなこの穴に立つ焔ラ 片山博介 春燈 201505
人間を変へられないで目刺焼く 鈴木征四 201505
目刺の頭ほつと苦くて裟婆のよる 土屋草子 ろんど 201505
もう海に帰れないのね目刺焼く 波戸辺のばら 201506
海光を乱さぬように目刺干す 藤沢秀永 201507
穴だけの眼に睨まれて目刺食ふ 八木健 八木健俳句集 201509
目刺食ふ箸でざらりと焦げ落し 大崎紀夫 虻の昼 201510
野良猫の小さき返事目刺焼く 鈴木セツ 201604
人の言諾ひし日や目刺焼く 徳田千鶴子 馬醉木 201605
日常に葬式のあり目刺焼く 江島照美 201605
妻の留守一膳飯の目刺かな 小林のり人 春燈 201606
悪妻になりたき朝も目刺焼く 吉田悦子 201612
一串の目刺がこぼす海のいろ 藤岡紫水 京鹿子 201705
箱に列なして目刺の送らるる 高橋まき子 風土 201705
一日を米一合之目刺しかな 大日向幸江 あを 201704
目刺し焼くガスの火絞りまた絞り 大崎紀夫 やぶれ傘 201705
塩味のいささか強き目刺し食ふ 藤井美晴 やぶれ傘 201705
竹串の穴跡哀し目刺やく 高濱朋子 ホトトギス 201707
世渡りが下手で目刺を食うてをり 杉本光祥 201707
串さして顔失ひし目刺かな 山田佳乃 ホトトギス 201708
目刺しの場の女眉間に皺を寄せ 秋千晴 201707
オパール世代と囃され目刺頭より 内山花葉 201805
貰ひ来し納税証明目刺食ぶ 塙誠一郎 201805
潮の香のしてきて目刺焼き上がる きくちきみえ やぶれ傘 201805
晴天の切なく目刺干されけり 定梶じょう あを 201805
両どなり空家となりぬ目刺焼く 甲州千草 201806
目刺焼くパソコン遠隔操作中 中嶋陽子 風土 201806
尾鰭燃え海の蒼さの目刺かな 亀卦川菊枝 末黒野 201806
気を許し心を許し目刺焼く つじあきこ 船団 201809
ピカソもう古いとほざく目刺しかな 火箱ひろ 船団 201811
半生の目刺し半生のおじいさん 火箱ひろ 船団 201811
目刺焼く今宵の肴はらからに 小沢えみ子 201902
拘りは胸中のもの目刺焼く 大山夏子 201902
噛み味にはまる目刺や杯重ね 三羽永治 201902
頭から一気にかぶる目刺かな 伊藤紫水 風土 201904
藁すべの真先きに燃えし目刺喰ふ 道端齊 201906
身ほとりに目刺を焼きし名残あり 稲畑汀子 ホトトギス 202003
目刺焼く匂ひも馳走独り膳 両角富貴 末黒野 202006
地球には北極南極目刺し焼く たかはしすなお 202006
予定なきひと日や朝の目刺焼く 荒井ハルエ 京鹿子 202008
二度干しの目刺の青を深めけり 岡井マスミ 末黒野 202105
旨さうに少し焦がして目刺焼く 小池一司 やぶれ傘 202105
目刺焼く気負はずされど気は抜かず 川崎真樹子 春燈 202106
小指立て左手の目刺右手の猪口 宮崎洋 春燈 202106
引き際の美学を嫌ひ目刺喰ふ 能村研三 神鵜 202107
主役には大きさ足りぬ目刺かな 森由佳 末黒野 202107
魂の抜けゆく目刺ちぢみけり 西住三恵子 202108
目刺買ふ漢の素顔見られゐて 小川玉泉 薫風 202205
一連といふが悲しき目刺かな 内藤静 風土 202206
引き抜ける目刺の藁の気丈なる 中村瑞枝 202210

 

2023年3月7日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。