啄木鳥(きつつき・けらつつき)   187句

啄木鳥ぞ来てとまりたるあとさきも   山口誓子

作品
作者
掲載誌
掲載年月
啄木鳥の音の乾ける一夜庵
山田弘子
春節
199503
大峰に雲の一朶やけらつつき
塩路隆子
花衣
199605
木とともにきつつきの穴冬を越え
村越化石
199904
啄木鳥や文珠は智恵をしぼりゐて
神蔵器
風土
199911
疑問符のたくさんつく日けらつつき
小枝恵美子
ポケット
199911
啄木鳥の影よ確かに木を下り
城戸愛子
酸漿
199912
けらつつき山道すでに平らなり
石脇みはる
200002
木屑散らし熊啄木鳥留守や深雪晴
藤村美津子
春耕
200005
きつつきの音のまつはる忌を修す
青陽子
ホトトギス
200005
こげらつつく音のやみくも冴返る
星佳子
200006
新緑や青啄木鳥の声間をおきて
河内孝子
酸漿
200007
啄木鳥の木を掘る音や花曇
桑久保奈美子
酸漿
200007
うららなり青啄木鳥の声澄みわたり
大塚洋子
酸漿
200007
啄木鳥の穴縦列に芽吹きけり
大塚洋子
酸漿
200007
啄木鳥や木に嘴あてて何もせず
能村登四郎
200011
啄木鳥の内弁慶が遺産の森
丸山佳子
京鹿子
200011
啄木鳥の薬師を穿つ山日和
高野美佐子
俳句通信
200012
啄木鳥や水輪の生れて又生れて
豊岡清子
遠嶺
200101
樺の間の残雪蒼し啄木鳥谺
丹羽啓子
馬醉木
200104
啄木鳥や芽吹き初めたる楢大樹
青木政江
酸漿
200106
こげら打つひびき高円山萌ゆる
山陰石楠
200107
啄木鳥や山荘人の気配なく
稲畑汀子
ホトトギス
200110
啄木鳥の決まつて来る木荘のもの
稲畑汀子
ホトトギス
200110
小啄木鳥ゐて木立かすかな音発す
溝内健乃
雨月
200201
啄木鳥に文珠の智慧の大善寺
神蔵器
風土
200201
受け止めて重すぎるものけらつつき
篠田純子
あを
200201
禁猟は寺領の掟けらつつき
木船史舟
200202
啄木鳥やそれは旧暦育ちの木
禰寝瓶史
京鹿子
200202
白樺を日照雨過ぎたるけらつつき
海老澤映草
春耕
200202
けらつつき己苛み幹叩く
野口香葉
遠嶺
200202
降る雪に小啄木鳥が木々をめぐりをり
伊藤一枝
酸漿
200203
啄木鳥の巣の漆黒の穴小雪舞ふ
根岸善雄
馬醉木
200204
赤啄木鳥の枝に黙せり寒もどり
永見博子
酸漿
200204
啄木鳥の叩く音澄めり春朝日
長田秋男
酸漿
200204
青啄木鳥の社に籠る安居かな
阿部悦子
酸漿
200207
啄木鳥の打音が覚ます羊歯若葉
渡辺立男
馬醉木
200209
啄木鳥や森の静寂を貫きぬ
稲畑汀子
ホトトギス
200210
啄木鳥や扉のあるごとく森の口
鷹羽狩行
200211
啄木鳥や墓に海軍上飛曹
木下野生
200212
啄木鳥を見つけし足の濡れてをり
伊藤多恵子
火星
200302
冬あたたか小啄木鳥の降らす木屑かな
隅田恵子
雨月
200303
啄木鳥の音凍滝へ木霊せる
小西石蕗
円虹
200305
静寂あり春啄木鳥の一樹あり
小澤克己
遠嶺
200306
磨崖不動春のきつつき引寄する
伊藤白潮
200306
啄木鳥や見える限りの杉木立
藤枝五三子
帆船
200308
啄木鳥の溶岩に嘴研ぐ朝ぐもり
神宮きよい
馬醉木
200310
熊啄木鳥の開けたる穴に色なき風
星野淑子
200401
木へ嘆き訴へつづけけらつつき
山口速
200401
冬うらら小啄木鳥をまねて四十雀
三村武子
酸漿
200403
青啄木鳥の啓蟄の沢巡り鳴く
長田秋男
酸漿
200405
初桜啄木鳥きびきびと幹めぐる
朝妻力
雲の峰
200405
啄木鳥や片側暮れし森の木々
大曽根育代
遠嶺
200406
礼装の啄木鳥忙し大樹打つ
岡ハツ子
帆船
200408
赤啄木鳥を聽けばきくほど風のおと
佐藤喜孝
あを
200409
小啄木鳥鳴く行者の道や岩煙草
小松鈴子
酸漿
200410
留守がちな詩人の家や小啄木鳥来る
青木政江
酸漿
200411
きつつきや余力に使ふ竹箒
吉田明子
200411
山荘に二個のトランクけらつつき
片山タケ子
200412
啄木鳥や森の扉を出れば空
豊田都峰
京鹿子
200412
啄木鳥の声を描けば暮るる木々
豊田都峰
京鹿子
200412
啄木鳥や不意に展けて山上湖
久保知音
対岸
200412
啄木鳥笑ふたんこぶ赤く青くなる
東亜美
あを
200412
首振つて啄木鳥樅の幹たたく
木暮剛平
万象
200501
悪太郎の面とつたりけらつつき
中島陽華
200501
啄木鳥の幹を打つ音母校なり
冨永道子
百鳥
200501
北窓は木々に近しよけらつつき
真塩実
200502
けらつつき来て居ると夫声ひそむ
指尾直子
雨月
200503
雪被く樅より明けて啄木鳥こだま
根岸善雄
馬醉木
200504
芽吹山小啄木鳥の音の軽やかに
金川眞里子
百鳥
200506
落葉松を小啄木鳥が移る芽吹前
網野茂子
酸漿
200506
きつつきの樹を打つ音も木霊かな
大高芭瑠子
炎夏
200507
啄木鳥や湿原にあるいくさ跡
九万田一海
河鹿
200512
啄木鳥の木を叩き日を短かくす
成瀬櫻桃子
春燈
200512
深く息せり啄木鳥の止まぬゆゑ
成田美代
200512
いくたびも杉谷通りけらつつき
雨村敏子
200601
啄木鳥や森の精気を深呼吸
伊藤稔代
200603
啄木鳥や山荘の夜の孤独打つ
長山あや
ホトトギス
200603
啄木鳥の穴に差しゐる初日かな
岡村葉子
栴檀
200604
啄木鳥の木屑鮮し恵方道
岡村葉子
栴檀
200604
春告ぐる小啄木鳥の音を峡に聞く
久保田ヤスエ
酸漿
200605
松風や其の巨幹にけらつつき
瀧春一
常念
200606
木琴の鳴り出すロッジけらつつき
片山タケ子
200611
山毛欅の森メール手練れのけらつつき
佐々木新
春燈
200611
熊啄木鳥や衰亡の民文字持たず
江草礼
春燈
200701
啄木鳥や春日の禰宜の通ひ道
今越みち子
万象
200701
啄木鳥の叩き間近き朝のあり
坂本知子
酸漿
200702
赤啄木鳥の飛んで輝く雪けむり
門伝史会
風土
200703
寒晴や啄木鳥打つ音の絶え間なく
石垣幸子
雨月
200704
春の雨小啄木鳥また来し給餌台
吉野さと
酸漿
200704
啄木鳥の谺に氷湖わたり来ぬ
小林碧郎
馬醉木
200706
雪解雫と啄木鳥けら打つ音を重ねをり
新倉舒子
200706
啄木鳥や駆逐する記憶の塔
新関一杜
京鹿子
200710
きつつきの雛の声降る峠越え
伊藤希眸
京鹿子
200710
霧を出でまた霧に入る啄木鳥のこゑ
水原春郎
馬醉木
200711
工房に未完の像やけらつつき
高柳ちゑ
遠嶺
200801
啄木鳥や写真の裏の走り書き
いしだゆか
遠嶺
200801
五七五に穿つ情景けらつつき
浜田はるみ
遠嶺
200801
啄木鳥の谺となりし冬田打
戸栗末廣
火星
200802
啄木鳥の己が筋に励み打つ
室伏みどり
雨月
200802
青啄木鳥やまだ覚めやらぬ雪の朝
青木政江
酸漿
200804
啄木鳥げらの叩くひびきや木の芽風
坂上香菜
200805
きつつきや若葉ささめく谷の風
阿部ひろし
酸漿
200806
啄木鳥の雲の扉を開きたり
中田禎子
200808
啄木鳥の所在気づきしより山路
稲畑汀子
ホトトギス
200810
木をうちてきつつき示す高みかな
菊谷潔
六花
200810
啄木鳥やバッグひとつの一人旅
松山三千江
春燈
200812
石棺の火襷顕はけらつつき
小澤菜美
200911
啄木鳥に明け水音の木地師村
柴田良二
雨月
200912
啄木鳥や大樹のもとの力石
菅野日出子
末黒野
200912
保養所に木の香あたらしけらつつき
塩田博久
風土
200912
渋柿の熟れて青啄木鳥よく鳴けり
長田秋男
酸漿
200912
めはじきの小啄木鳥の梢の淑気かな
田中貞雄
ろんど
201001
啄木鳥に小屋たゝかれて夜明けたり
清水量子
201002
啄木鳥の音を捉へし木の高さ
山下美典
ホトトギス
201003
椎の木の枯れを急き立てけらつつき
戸栗末廣
火星
201003
啄木鳥に会ひたくてゆく大旦
園部早智子
ろんど
201004
きつつきの山頂にまでひびきくる
滝沢伊代次
万象
201009
啄木鳥の励む音あり梅雨の森
八木岡博江
酸漿
201009
梅雨空を青啄木鳥の声つらぬけり
木村コウ
酸漿
201010
青啄木鳥の巣立つ夜明の森を衝き
佐藤いね子
馬醉木
201012
啄木鳥の川打一打や過去穿つ
都丸美陽子
春燈
201012
啄木鳥の叩けば耳を寄せ合ひぬ
湯川雅
ホトトギス
201102
啄木鳥は谺が好きで叩きける
戸栗末廣
火星
201102
啄木鳥のゐて雪晴れの朝かな
白石正躬
やぶれ傘
201102
啄木鳥や雪晴となる大晦日
長田秋男
酸漿
201103
稜線を啄木鳥丸く仕上げゆく
稲畑廣太郎
ホトトギス
201104
耳成山の山気を深めけらつつき
石黒興平
末黒野
201104
赤げらの巣立ちて深む橅の森 久田澄子 馬醉木 201109
数へ日の今朝の木屑やけらつつき 鈴木千恵子 万象 201109
富士演習場啄木鳥か銃声か 稲畑廣太郎 ホトトギス 201110
ついていい嘘もある筈けらつつき 森下康子 201112
啄木鳥や水浄ければ紙を漉き 野中亮介 馬醉木 201112
啄木鳥や穂高へ逸る靴の音 渡邉英子 馬醉木 201112
啄木鳥の穿つにまかすまたぎ小屋 粕谷澄 馬醉木 201201
啄木鳥や空を映して水に皺 成田美代 201201
一心不乱とはけらつつきのこと 笠井敦子 201201
啄木鳥のドラムに玻璃の共鳴す 松岡利秋 かさね 201201
赤げらの芯を打ち込む一山忌 工藤節朗 201201
どの木にも朝日を配りけらつつき 大畑善昭 201202
晴れ渡る谷川岳やけらつつき 森清信子 末黒野 201202
木の幹に赤げら見えて大夏野 小林愛子 辻楽師 201206
啄木鳥や隣る家無き杣の宿 廖運藩 春燈 201212
啄木鳥の終日つつく大啖ひ 廖運藩 春燈 201212
啄木鳥や一町ごとの標石 南恵子 万象 201212
弱音吐く相手の欲しきけらつつき 村田岳洋 ろんど 201301
少し間を置き転調のけらつつき 成田美代 201302
啄木鳥のこぼす木屑を手の平に 森岡恵子 万象 201303
寒明やきつつきが樹をたたく音 上原重一 201304
啄木鳥の森とて通り抜けてをり 稲畑汀子 ホトトギス 201310
啄木鳥の音を残して荘を去る 稲畑汀子 ホトトギス 201310
二杯目の珈琲あつし啄木鳥こだま コ田千鶴子 馬醉木 201311
啄木鳥の木を打つ音によどみなし 高橋将夫 201312
啄木鳥の谺をかへす源氏山 瀬戸悠 風土 201312
赤帽子啄木鳥失敗土つつく 水谷直子 京鹿子 201312
けらつつき自筆を要す遺言状 北尾章郎 201312
ノックして森目覚めさすけらつつき 橋本靖子 201401
林間にかすかな音をけらつつき 白石正躬 やぶれ傘 201401
啄木鳥遠くロッジの庭に鶲来て 石垣幸子 雨月 201403
宿坊の浅き眠りやけらつつき 菅野日出子 末黒野 201412
珍しや啄木鳥来る大欅 本多遊方 春燈 201412
踏みかへて又叩きけりけらつつき 加藤静江 末黒野 201501
啄木鳥や雨唄叩く自己主張 鴨下昭 201501
春の啄木鳥いまだねむれる木を叩き 小坂優美子 馬醉木 201505
啄木鳥の句碑去ゆ難し檀の実 白澤よし子 馬醉木 201512
啄木鳥の響く切株多き森 成田美代 201512
忙しく小啄木鳥幹打つ下山道 須賀敏子 あを 201601
空家札下げてもみたき啄木鳥の穴 中田みなみ 201601
引きつづき信州の旅月いかに 稲畑汀子 ホトトギス 201609
県境の峠の霧やけらつつき 森清信子 末黒野 201612
音にある幹の太さやけらつつき 馬屋原純子 馬醉木 201701
啄木鳥の木を打つ音によどみなし 高橋将夫 蜷の道 201703
緑啄木鳥を追ふ夫の背や光る風 須賀敏子 あを 201705
啄木鳥に森の縮んでゆきにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201710
啄木鳥の音を吸ひ込む山の精 稲畑廣太郎 ホトトギス 201710
藁人形打つ啄木鳥の峪くらし 丸井巴水 京鹿子 201711
塔頭の落慶間近けらつつき 菅野日出子 末黒野 201712
啄木鳥の音がいには野の音となる 増成栗人 201901
一人とはよし啄木鳥の森へ来て 増成栗人 201901
啄木鳥や即身仏は何思はむ 雨宮桂子 風土 201902
啄木鳥の音色に引かれ独り旅 葦原葭切 春燈 201912
きつつきつつくきつくつつつくあの子 高貴美子 202001
木に穴を開くる構へやけらつつき 今村千年 末黒野 202001
花の昼響く緑啄木鳥ドラミング 須賀敏子 あを 202005
桜樹叩く春の小啄木鳥や背を立てて 山口郁子 末黒野 202007
無心とは啄木鳥が樹を叩く音 増成栗人 202011
城跡やすぐそこの木に啄木鳥が 田中藤穂 202011
落葉松を赤啄木鳥の打つ秋の色 七郎衛門吉保 あを 202012
啄木鳥や山荘の窓開け放ち 森清信子 末黒野 202111
啄木鳥や祖廟鎮守の巨木群 廖運藩 春燈 202112
啄木鳥や深山の里の痩伽藍 廖運藩 春燈 202112
啄木鳥に目覚めゆきたる森の精 稲畑廣太郎 ホトトギス 202207
啄木鳥や祖廟鎮守の巨木群 廖運藩 春燈 202212
啄木鳥や深山の里の痩伽藍 廖運藩 春燈 202212
啄木鳥や好みのリズムあるらしく 今村千年 末黒野 202212
啄木鳥や鎮守の杜の黙深き 亀卦川菊枝 末黒野 202212
啄木鳥の音よ鎌倉の七つ口 増成栗人 202212
飛び去りし啄木鳥穴に羽根残す 坂本和穂 やぶれ傘 202302
啄木鳥や高尾山中上り坂 高橋 均 やぶれ傘 202302

 

2023年9月5日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。