寒 灯       202句

一穂の寒燈を守る志    柴田宵曲

作品
作者
掲載誌
掲載年月
寒灯下眼こりこり洗はるる 山川涛石 築港 199805
寒灯下救命装置外しけり 中沢三省 風土 199901
寒燈下過ぎし校廊闇重く 盛良孝 199904
寒灯の綺羅となるより濃き闇に 宮地玲子 円虹 199905
妻のみて寒灯繭のごとく点く 神蔵器 199905
焼却炉あり寒燈の夜もすがら 岡本眸 199905
終の王だり寒灯に銀の皿 品川鈴子 ぐろっけ 199912
寒灯や家居の時間経ち易く 稲畑汀子 ホトトギス 200001
寒灯に息整へて弾きはじむ 志方桜子 六花 200003
寒燈や人ぬつと出る異人館 酒井多加子 雲の峰 200003
整はぬ寝息窺ふ寒灯下 佐保美千子 円虹 200005
寝る前の旅のくつろぎ寒灯 稲畑汀子 ホトトギス 200101
寒燈を消す紐すこし足しておく 柴田雪路 200101
寒灯や村に一つの診療所 森脇恵香 俳句通信 200102
寒燈のひとつに数へ観覧車 小林一行 円虹 200104
寒燈の塊として列車過ぐ 山下由理子 200105
寒灯は凭れてくれる人を待つ 坂本敏子 京鹿子 200110
寒灯下独身通す弟よ 稲畑廣太郎 ホトトギス 200201
神将は秘仏におはす寒灯 乾フジ子 雲の峰 200202
絶望の淵に立ちたる寒灯下 西美知子 円虹 200203
夕潮の江は寒燈を弓なりに 閑田梅月 馬醉木 200204
寒燈下幼なじみの通夜に坐し 山田由利枝 雨月 200204
寒燈の届かぬ四隅久女の忌 華明日香 銀化 200204
地震七年寒灯愛しと見ゆるまで 北畠明子 ぐろっけ 200204
寒灯を暗く点じて商へり 塩川雄三 潮路 200210
結局は歌つてしまふ寒灯下 稲畑廣太郎 ホトトギス 200301
寒灯下馬鹿になり切り酒を酌む 稲畑廣太郎 ホトトギス 200301
寒燈下長靴ひそと集ひ寄る 鈴木まゆ 馬醉木 200303
紐引きて寒燈点すとき独り 大庭三千枝 200303
寒灯を引き寄せ句集編み始む 小澤克己 遠嶺 200304
寒燈下獺祭書屋とぞ遺墨 熊岡俊子 雨月 200304
寒燈のおのれを點すのみの闇 佐藤喜孝 靑寫眞 200304

 オペラ「ドン・カルロ」観劇

七色の声七色の寒灯下

稲畑廣太郎 ホトトギス 200312
それぞれに巣立つ子の部屋寒灯 阿部一彦 築港 200402
すき間なき一寒灯の舟溜り 蓮尾あきら 風土 200403
河口堰寒灯連ね瞬けり 梶島邦子 築港 200403
寒灯の杯は小ぶりに禁酒解く 有島夛美 河鹿 200406
寒灯すこし脚色する自伝 山元志津香 八千草 200407
寒灯や喪中の家のにぎやかな 堀内一郎 あを 200501
寒灯を消して漁船の朝となる 稲畑汀子 ホトトギス 200501
寒灯を消して仕事の山残す 稲畑汀子 ホトトギス 200501
東京の寒灯消して家路かな 稲畑汀子 ホトトギス 200501
誤字見つけ又読み返す寒灯 稲畑汀子 ホトトギス 200501
遅れ来し人に点さん寒灯 稲畑汀子 ホトトギス 200501

 H氏追悼

寺暗し寒灯いくつ連ねても

岡本眸 200501
寒灯のかたまるところ門司と呼ぶ 鷹羽狩行 200502
寒灯や机上の観世百番集 金子慶子 遠嶺 200503
寒燈や木喰仏に鑿の跡 蓮井崇男 対岸 200504
寒灯の一つが岸に戻り舟 梶浦玲良子 六花 200504
日にいちど向かふ机や寒灯 石啓子 築港 200505
寒灯の光の翼張りにけり 粟津松彩子 ホトトギス 200506
寒灯下ハープフルート賀を奏で 稲畑廣太郎 ホトトギス 200601
寒灯下「JAPAN」の黒き栞紐 淵脇護 河鹿 200602
沖暮れて船の寒灯すれちがふ 小嶋恵美 春潮 200602
手話の子のまなこ耀く寒燈下 渡邉友七 あを 200602
寒燈を引きよす妻の返し針 田上昭夫 四葩 200605
空に備へ寒燈に芭蕉七部集 瀧春一 常念 200606
寒燈に海より激し女の頭髪 八田木枯 晩紅 200606
寒灯も星に紛れてをりし村 小西龍馬 ホトトギス 200607
寒灯を賞でし宗旦欠灯篭 林日圓 京鹿子 200702
ていねいに手を洗ひをり寒燈下 山田暢子 風土 200702
けふ生きて一寒燈にねまりけり 福地初江 200702
一人には惜しき眺望寒灯 鈴木石花 風土 200704
寒灯のやうにぽつんと旅ごころ 小山徳夫 遠嶺 200705
海峡や市の寒灯列なりぬ 安原ときこ 遠嶺 200705
拓本は「銀河の序」なり寒燈 橋本良子 遠嶺 200705
寒灯やいまも使ひて糸切り歯 長沼紫紅 200705
君の過去聞けば寒灯潤みたる 稲畑廣太郎 ホトトギス 200707
寒灯の消ゆることなき丸の内 稲畑廣太郎 ホトトギス 200801
寒灯の文字となりゆくビルの窓 稲畑廣太郎 ホトトギス 200801
寒灯下序の舞といふ華やぎに 稲畑廣太郎 ホトトギス 200801

 祝「ひげ増」再開

寒灯の眩き中に再開す

稲畑廣太郎 ホトトギス 200801
鏡中にはたと母居る寒灯 岡本眸 200801
寒灯下父の死顔のやすらけく 峰尾秀之 200802
寒灯の点滅ビルの鼓動かな 古屋元 200802
ゐるはずの人居ぬ椅子や寒灯 松岡隆子 200803
寒灯もひくく星神司る 豊田都峰 京鹿子 200804
寒灯の沼を隔ててちらほらと 出木裕子 200804
例の物見たさに集ふ寒灯下 稲畑廣太郎 ホトトギス 200901
ものらみな影をもちゐし寒燈下 吉田空音 炎環 200902
寒灯や一座を占むる老いの席 吉田とよ子 春燈 200902
寒燈下摺り師のゆるぎなき手業 金田美恵子 ぐろっけ 200902
小走りに次の寒灯までの距離 北川英子 200903
執刀医成功告げる寒燈下 辻口八重子 ホトトギス 200905
全身麻酔の手術は果てて寒灯 北村香朗 京鹿子 200905
貨車とほくとほく寒燈運び去る 柴出良二 雨月 200905
寒灯下伝統を守る百二人 稲畑廣太郎 ホトトギス 201001
恋の数ほど寒灯の潤みけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201001
甦れ友よ寒灯明うせよ 稲畑汀子 ホトトギス 201001
寒灯の一つ動くは着陸機 泉田秋硯 201004
寒灯に浮く千体の陶狐 小山徳夫 遠嶺 201004
寒灯の己が微動も灯すかな 小山繁子 春燈 201004
寒灯や暖簾を掛くる音すなり 遠藤和彦 遠嶺 201005
寒燈の天へ天へと街更けず 倉橋あつ子 京鹿子 201005
寒灯の中のひとつは葬の灯 柴田久子 風土 201005
寒灯下音なく過ぎる通夜を守る 湯川雅 ホトトギス 201006
寒灯を消し活字より解かれけり 山田弘子 ホトトギス 201006
献杯に寒灯潤む宴かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201011
寒灯下少女のやうな伴明子 稲畑廣太郎 ホトトギス 201011
こころぼそくて寒灯をひとつ足す 辻美奈子 201101
寒灯下ひたすら水の流れ過ぐ 北川英子 201102
じんわりと寒燈ともる富貴楼 築城百々平 馬醉木 201103
セーヌ河寒燈曳きゆく船の道 濱谷和代 万象 201104
寒灯下妻のひときは小さかり 小川玉泉 末黒野 201104
寒灯の棚の砿石彩あはき 伊藤希眸 京鹿子 201104
寒燈やことんと小さき駅に着く 柴田良二 雨月 201104
一寒灯吊るす馬房の藁匂ふ 相沢有理子 風土 201105
寒灯の青果市場に早荷置く 齋藤博 やぶれ傘 201106
寒燈を振つてベル押す発車かな 有本勝 ぐろっけ 201106
寒灯を消してDVD佳境 稲畑廣太郎 ホトトギス 201111
寒灯を足して祝はる聖家族 稲畑廣太郎 ホトトギス 201112
寒灯に筆柔らかきガラシャの書 伊東和子 201202
寒灯に囲まれてゐる燧灘 山田六甲 六花 201202
寒灯の点りて日本一の塔 神戸やすを 201203
キャンドル二本点火寒燈明るさ増す 松橋利雄 光陰 201203
寒燈や染糸醂す沢の水 田中由喜子 馬醉木 201204
江の島へ寒灯続き海平ら 松本三千夫 末黒野 201204
寒灯下季寄せに残る母の文字 藤井啓子 ホトトギス 201205
寒灯や長押にのこる刀疵 倉谷紫龍 万象選集 201205
寒灯に人悼む色ありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201211
寒燈の影身じろがずひとり刻 塩路隆子 201301
寒灯を出で星空といふ灯 稲畑廣太郎 ホトトギス 201301
寒灯下セシールセリーヌタイガース 稲畑廣太郎 ホトトギス 201301
寒灯の消えて夜明の旅立に 稲畑汀子 ホトトギス 201301
一つづつ消えて寒灯なりしかな 稲畑汀子 ホトトギス 201301
母の家の寒灯ひとつ残りをり 辻美奈子 201301
かぎろひの丘へと続く寒灯り 塩路隆子 201303
我ひとり寒灯ひとつ風ひゅうと 大橋晄 雨月 201304
寒燈下目薬双つ的中す 佐藤山人 201304
寒燈下靴音堅く女連れ 丹後みゆき ぐろっけ 201304
時として人を拒みて寒灯 竹田ひろ子 ろんど 201305
山姥の影動くかに寒灯 竹田ひろ子 ろんど 201305
寒灯に躍り出したる刃文かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201311
寒灯下虚子寛ぎしままの部屋 稲畑廣太郎 ホトトギス 201311
寒灯を浴びて真つ赤な六健さん 稲畑廣太郎 ホトトギス 201401
寒灯下鏝の存問ありにけり 稲畑廣太郎 ホトトギス 201401
寒灯に闇のすばやく後退る 有松洋子 201403
寒燈や賽銭函をのみ照らし 定梶じょう あを 201403
白き便箋犯すごと書く寒灯下 松本三千夫 末黒野 201404
寒灯や小舟のごとき老夫婦 竹田ひろ子 末黒野 201404
祝ぎ心胸に響きて寒灯下 稲畑廣太郎 ホトトギス 201501
寒灯を点す誰かの影一つ 有松洋子 201502
寒燈や考が手帳の気骨文字 藤井寿江子 馬醉木 201502
寒燈や怒れば今も怖き父 藤井彰二 馬醉木 201503
過疎村のひとり暮しや寒灯下 呂秀文 春燈 201503
寒燈や塾の講師の淡き影 高野春子 京鹿子 201504
我包む真夜の寒灯丸くあり 竹田ひろ子 ろんど 201504
寒灯に急く足音の二・三人 山田佳子 201504
亡き母にまゐらす写経寒灯下 高橋照子 雨月 201504
拡大鏡に頼る齢や寒灯 西村しげ子 雨月 201505
寒燈を帰り来る子の部屋に満たす 押田裕見子 201506
寒燈に能舞の影立ち上がる ほんだゆき 馬醉木 201510
寒灯下幸若舞は回るまはる 稲畑廣太郎 ホトトギス 201512
櫻桃子忌の寒灯一つ道を成す 安立公彦 春燈 201602
寒灯余呉の湖畔の無人駅 辻由紀 雨月 201602
寒燈やウインナワルツに長湯する 赤座典子 あを 201602
福祉所の寒灯畳むごとく消え 荒井千瑳子 201604
寒灯のひとつふたつと過疎の村 小山繁子 春燈 201604
万年筆走る便箋寒灯 松本三千夫 末黒野 201604
寒灯を潤ませてゐる四季の歌 稲畑廣太郎 ホトトギス 201701
寒灯下ワインは己が色忘れ 稲畑廣太郎 ホトトギス 201701
微酔も泥酔も寒灯下かな 稲畑廣太郎 ホトトギス 201701
百人の句座一人づつ寒灯下 稲畑廣太郎 ホトトギス 201701
仕事場の寒灯明る過ぎるかも 稲畑廣太郎 ホトトギス 201701
寒灯を消して旅路の一歩かな 稲畑汀子 ホトトギス 201701
寒灯を消して旅路の一歩かな 稲畑汀子 ホトトギス 201701
寒灯下活字の大き書を選ぶ 藤井美晴 やぶれ傘 201703
読み止しの句集歳時記寒灯下 松本三千夫 末黒野 201704
縁日や筮竹鳴らす寒灯下 川田好子 風土 201705
寒灯下ミディアムレアに近江牛 稲畑廣太郎 ホトトギス 201711
寒灯を揺すり長崎ぶらぶら節 稲畑廣太郎 ホトトギス 201712
一本の寒灯醸す暗夜かな 大日向幸江 あを 201802
寒灯の机上もの音絶ゆるかな 安立公彦 春燈 201803
寒灯や天金くすむ智恵子抄 松本三千夫 末黒野 201804
りんの音の澄みし輪となる寒灯下 山内碧 201806
寒灯の赤く潤みて美酒進む 稲畑廣太郎 ホトトギス 201901
故郷の地震の記憶や寒灯 稲畑廣太郎 ホトトギス 201901
寒灯ホットミルクを飲めば膜 小山よる やぶれ傘 201903
柿右衛門皿寒灯をはみ出して 稲畑廣太郎 ホトトギス 201912
碗琴の音色寒灯潤ませて 稲畑廣太郎 ホトトギス 201912
よく見ても何かわからぬ寒灯下 小山よる やぶれ傘 202002
歳時記の古き書込み寒灯火 小原紀子 末黒野 202004
玉垣の内の祠に寒燈 善野行 六花 202005
寒灯下教皇ミサといふ奇跡 稲畑廣太郎 ホトトギス 202011
背をまるく豆選る嬶座寒燈下 石井美智子 風土 202011
終電の尾灯寒灯離しゆく 稲畑廣太郎 ホトトギス 202101
寒灯下八十路最後の母の愚痴 稲畑廣太郎 ホトトギス 202101
寒灯下カーテン越しに影二つ 稲畑廣太郎 ホトトギス 202101
寒灯下チェロはバッハの無伴奏 稲畑廣太郎 ホトトギス 202101
寒灯下恋文のペン走る音 稲畑廣太郎 ホトトギス 202101
寒灯下八掛の色ちらと見え 西本花音 春燈 202102
五六基の寒灯の守る小路かな 土井三乙 風土 202104
日記書く指がこわばる寒灯火 石川東児 202105
寒灯の飛び跳ねてゆく通過駅 森田明成 202107
聖櫃の赤き寒灯てふ孤高 稲畑廣太郎 ホトトギス 202201
寒灯下音潤みゆくノクターン 稲畑廣太郎 ホトトギス 202201
寒灯の一つ一つにあるたつき 青柳雅子 春燈 202203
寒灯の死角の隅に何か居る 小張志げ 春燈 202203
控室一寒灯を分け合ひぬ 亀井福恵 京鹿子 202203
寒灯や天金褪せし考の聖書 安田優歌 京鹿子 202204
寒灯に映ゆホトトギス創刊号 稲畑廣太郎 ホトトギス 202212
寒灯の燭一本といふ祈り 稲畑廣太郎 ホトトギス 202212
 

 

2022年1月10日 作成

「俳誌のsalon」でご紹介した俳句を季語別にまとめました。

「年月」の最初の4桁が西暦あとの2桁が月を表しています。

注意して作成しておりますが文字化け脱字などありましたらお知らせ下さい。

ご希望の季語がございましたら haisi@haisi.com 迄メール下さい。